(当事務所の取扱業務)
① 簡易裁判所「訴訟・民事調停」の代理、法律相談
② 地方裁判所等へ提出する裁判書類の作成
③ 裁判書類作成事務の相談
④ 和解書等各種文案書類の作成代理
各種文案書類作成の相談
(目次)
(1) 肖像権の意義
(2) 肖像権の侵害にならない場合
(3) 肖像権の侵害になる場合
(4) 肖像権に関連する著作権の問題
(1) 肖像権の意義
肖像権は、他人から無断で写真や映像を撮られたり、無断で公表されたり、利用されたりしないように主張できる権利のことです。
・肖像権は、下記のような2つの要素から成り立っています。
① プライバシー権
被写体としての権利で、その被写体自身、若しくは所有者の許可なく撮影、描写、公開されない権利のことです。
* プライバシー権の詳細
他人から無断で写真や映像を撮られたり、無断で公表されたり、利用されたりしないように主張できる権利のことです。
・判例
判例は、古くから、上記のような人格的利益が法的に保護されることを認めています。この権利は、人格権に即した権利です。
② パブリシティ権
パブリシティ権とは、著名性を有する肖像が生む財産的価値を保護する権利のことです。
* パブリシティ権の詳細
著名性を有するということから、一般的にはタレント・スポーツ選手・芸術家等の有名人に認められることになるが、有名人の場合、個人としてのプライバシーが制限される反面、一般人には認められない経済的価値があると考えられています。
・財産権の側面を持つ権利である。
有名人は、顧客を商品等に引きつける力が生まれ、経済的価値が高まると考えられています。
・このような、顧客を商品等に引きつける力を「顧客吸引力」といいます。
・パブリシティー権は、判例も古くから認めてきた権利です。
(2) 肖像権の侵害にならない場合
ア 下記のような場合は、肖像権の侵害になりません。
① 被写体の同意があること。
② 人物が特定できないこと。
③ 公の場所での行動・公の行動であること。
④ 被写体の人物が、被写によって社会生活においてマイナス要因とならないこと。
イ 肖像権の侵害になるか否かは程度問題
人物をありのまま公開したり、本人の許可なく撮影され、人物が特定できるとしても、被写体にとってダメージなかったり、少なかったりした場合は、肖像権の侵害にならない可能性が高いです。
(事例)
下記のような場合が、上記の例です。
(ⅰ) 単に外を移動している場合
(ⅱ) 公共施設や公道にいる場合
(ⅲ) 公開の場所・公開の方法の拡散性が高いとはいえない場合
(3) 肖像権の侵害になる場合
ア 下記のような場合は、肖像権の侵害に当たる行為となります。
① 被写体の容貌がはっきりと確認できること。
② 本人から許可を得ていない画像・動画であること。
③ SNSなど拡散性が高い場所へ公開されていること。
* 肖像権の定義は曖昧
屋外での一般的な風景写真を撮ったからといって、肖像権の侵害として、損害賠償請求をされることはほとんどないといっても過言ではありません。
・ただし、拡散性の高いインターネットなどでの投稿に利用する場合 は「撮影していることをはっきり分かるように示したり」、「同意をとったり」、「掲載時に被写体からの削除要請に対応する文章を入れる」など、可能な限りの対応をしておくと安心です。
イ 肖像権の侵害があった場合の対策
肖像権の侵害があった場合は、下記のような対策を講ずることができます。
① 投稿者やインターネットサイトの運営者に削除請求をする。
② 下記の法的(民事訴訟の提起)措置をとる。
(ⅰ) 画像や動画の差止請求をする。
(ⅱ) 不法行為による損害賠償請求をする。
* 不法行為による損害賠償請求(民法709条)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
ウ 肖像権の侵害と刑事問題
肖像権を利用して恐喝行為をするなどの刑事事件を起こした場合は、当然、刑事問題となりますが、単純な肖像権の侵害は犯罪とはならず刑事問題にはなりません。
エ 裁判例
① 最高裁平成24・2・2判決(ピンク・レディー無断写真掲載事件)
人の氏名、肖像等を無断で使用する行為は、(1)氏名・肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、(2)商品等の差別化を図る目的で氏名、肖像等を商品等に付し、(3)氏名、肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら氏名・肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、当該顧客吸引力を排他的に利用する権利(いわゆるパブリシティ権)を侵害するものとして、不法行為となる。
② 大阪地裁平成29・3・23判決(損害賠償請求事件)
被告が、Ritmixのマスタートレーナーのパブリシティー権について独占的な利用許諾を受けるなどしているところ、被告が原告との取引終了後も上記トレーナーの画像をホームページ等に掲載したことが、上記パブリシティ権を侵害する不法行為を構成する。
③ 東京地裁平成26・11・27判決(風俗店の情報雑誌に自分の顔が掲載されたことに対する肖像権侵害の訴え)
(事例)
原告が、被告の発行する風俗店の情報誌に、無断で顔写真を掲載されたことにより、肖像権を侵害されたとして、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案。
(判決の要旨)
被告には、本件雑誌に本件写真を掲載するに当たって、被写体である原告の承諾の有無について確認する義務を怠った過失が認められるところ、広告主との間で、本件雑誌に掲載する広告内容について、被告において責任を負わない旨の契約を締結したことをもって、本件雑誌の本件写真を掲載されることにより肖像権を侵害された原告との関係で、責任を免れるものとはいいがたいなどとして、被告による不法行為の成立を認めた上で、原告が被った精神的損害を金20万円と認定して、請求を一部認容した。
④ 東京地裁平成26・9・25判決(週刊誌の記事・写真でプライバシー権・パブリシティ権・著作権が侵害されたとした訴え)
(事案)
原告が、養育していた里子に対する傷害致死の容疑で逮捕された直後に、被告が発行した週刊誌に掲載された記事及び写真により、原告の名誉が毀損されたほか、原告の著作権・パブリシティ権・プライバシィ権等が侵害され、刑事裁判に深刻な影響をもたらし、その結果、原告は有罪にされたなどと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償及び民法723条(名誉棄損における原状回復)に基づく謝罪広告の掲載を求めた事案。
(判決の要旨)
本件各記載の一部について、原告の社会的評価を低下させるものと認めたが、いずれも公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的で行われ、摘示事実ないしその主要な部分は真実であったと認められるなどとして、名誉棄損の成立を否定したほか、人格権侵害等に係る原告の主張をも否定して、請求を棄却した。
(4) 肖像権に関連する著作権の問題
写真や録画を公開するときには、肖像権に関連して著作権の問題が発生する可能性があります。その事例を紹介します。
① 有名な美術品の写真を使用した場合
有名な美術品は、著作権ですが、保護期間が経過すると、パブリックドメインとなって誰でも利用することができます。
・ただし、有名美術品を撮影した写真は、撮影した人に著作権がありますので、その写真を無断で利用することはできません。
* パブリックドメインの意味
著作権が放棄されて、社会全体の共有財産とされるインターネット上の領域のことです。
② 有名な割烹等料理店の料理を撮影し、ウェブサイト上にアップする場合
料理は、著作権の対象として認められていないので、著作権の侵害にはなりません。
・ただし、その料理店が撮影を禁止している場合は、拡散性の高い媒体に掲載することや、その画像が経済的な利益に結び付くようなときは、店の許可を得る必要があります。
* ① ウェブとは
インターネット上に散在する情報を検索・表示するためのシステム。
・ホームページの形で様々な情報を閲覧・公開することができます。
② ウェブサイトとは
関連ある一連のウェブページがまとまっておかれている「インターネット上での場所」。
③ 屋外で風景写真を撮影したときに、たまたま個人の建物が映ってしまった場合
芸術的な価値があると認められている建物や美術品として造られた建物以外は著作物とはならないので、この場合は著作権の侵害になりません。
・ただし、建物の中に入って撮影する場合や、芸術性のある建物で著作権の期限が切れていない建物を撮影するときは、管理者に承諾を得ることが必要です。