(当事務所の取扱業務)
① 簡易裁判所の「民事訴訟・民事調停 」・「裁判外和解」の代理
法律相談
* 債権額(訴額)金140万円以内の「労働債権(賃金・退職金・残業代・解雇による慰謝料等の損害賠償金)」の請求についての代理
・上記事件の法律相談
② 地方裁判所等へ提出する裁判書類の作成
裁判書類作成事務の相談
* 「本訴提起の訴状・準備書面」、「仮処分の申立書・準備書面」、「労働審判の申立書・準備書面」等の作成
・上記の裁判書類作成事務の相談
③ 和解書等各種文案書類の作成及び作成代理
各種文案書類作成の相談
* 争訟性がない事案ついては、行政書士の業務として、代理人として和解書を作成し、和解契約締結業務をなし得る。
(目次)
第1 労働契約
(1) 労働契約の意義
(2) 交通事故の種類と保険の種類等
(3) 労働契約の成立
(4) 労働契約の内容
第2 労働組合関係
(1) 労働組合
(2) 解決手段
(3) 団体交渉
(4) 労働協約
第3 解雇
(1)「解雇の意義」・「解雇に対する法令上の制限」
(2) 解雇理由の類型ごとの留意点
第4 退職の意思表示の取消し、無効(退職届の提出と意思表示の瑕疵)
第5 辞職の問題点
第6 解雇と損害賠償
第1 労働契約
1 労働契約の意義
ア 労働契約の定義
労働契約とは、労働者が、使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することをいいます。
* 労働契約が成立していれば、労働契約法などの労働法が適用されます。
イ 労働者・使用者の意義
① 労働者
労働者とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいいます。
② 使用者
労働契約法上の使用者とは、労働契約の基本的義務(賃金支払義務)を負う者のことです。
2 労働契約の基本原則
労働者を、「国籍・信条」等で差別してはならない。また、公民権行使を保障しなければなりません。
・労働者は、プライバシー侵害、セクシャル・ハラスメント、パワーハラスメントを受けない権利を有しています。
3 労働契約の成立
ア 合意による成立
労働契約は、労働者と使用者の意思の合致により成立します。
・口頭でも、書面でも労働契約を締結できます。
イ 労働条件明示義務
労働契約締結に際しては、労働条件を明示しなければなりません。
・明示された労働条件が事実と異なる場合には、労働者は、労働契約を解除することができます。
(ア) 労働条件の詳細(労基法施行規則5条)
使用者は、労働者に対し、下記事項を記載した書面を交付して、労働条件を明示しなければなりません。
① 労働契約の期間
② 就業場所・従事すべき業務
③ 労働時間
* 労働時間の意義
始業・就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇等
④ 賃金の決定・計算・支払の方法・時期
⑤ 退職
* 解雇事由を含む。
(イ) パートタイム労働者(短時間労働者)の労働条件
パートタイム労働者については、使用者は、労基法の労働条件明示義務以外に、下記事項を明示する義務を負っています。
① 昇給
② 退職手当及び賞与の有無
ウ 採用・採用内定
労働者の採用については、使用者が労働者の募集を行い、労働者がこれに応募した労働者を採用するかどうかにつき、使用者の自由に委ねられています。
・また、新卒者の採用においては、就労開始の半年前に採用内定という手続が行われます。
エ 試用期間
試用期間中に労働者を解約するにも、客観的に合理的な理由が必要です。
・ただし、通常の解雇よりも緩やかに判断されます。
(ア) 試用期間の意義
試用期間とは、労働者採用後、通常3か月から6か月程度の使用期間をおいて、労働者としての適格性を観察して評価する期間のことです。
・使用期間を経た上で、本採用を決定します。
(イ) 最高裁の考え方
試用期間中であっても、労働契約が成立しており、解約権が留保されているとしています。
オ 期間の定めある労働契約
(ア) 労働契約の期間
期間の定めのある労働契約の期間は、原則3年を超えてはなりません。
・特例の場合=特例の場合のみ、5年が上限となります。
・契約期間中の解約=契約期間中は、やむを得ない事由のない限り解約できません。
(イ) 期間の上限が、5年まで認められる労働契約
① 専門的な知識、技術又は経験(専門的知識等)があって、高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約。
② 満60歳以上の労働者との間で締結される労働契約。
4 労働契約の内容
(1) 労働契約と就業規則
労働契約は、口頭の合意によっても成立します。
* ① 合意原則
合意された内容が労働契約の内容になり、これが労働条件となるのが原則です。
② 実務
労働契約の詳細な内容は、就業規則により定められます。
ア 労働契約の内容
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立します(労働契約法6条)。
イ 就業規則とは
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、所定の事項を記載した書面(就業規則)を作成することが義務となっています((労基法89条)。
① 就業規則の記載事項
(ⅰ) 絶対的記載事項
a 始業・就業時刻、休日、休暇等
b 賃金の決定、計算及び支払方法、賃金の締切り及び支払時期、昇給に関する事項
c 退職に関する事項(解雇の事由も含む)
(ⅱ) 相対的記載事項(制度設定には、就業規則への記載が必要)
a 退職手当
b 臨時の賃金、最低賃金
c 食費・作業用品等の労働者負担
d 安全・衛生
e 職業訓練
f 災害補償、業務外傷病扶助
g 表彰・懲戒制度
h その他、当該事業所の全労働者に適用される旨の定め
* これらの記載によって、ほとんどの労働条件が網羅されます。
② 就業規則の種類
実際の就業規則は、本体の就業規則のほかに、下記の種類があります。
(ⅰ) 給与規程(賃金規程)
(ⅱ) 退職金規程
(ⅲ) 出向規程
(ⅳ) 安全衛生規程等
* a これらは、本体の就業規則とは別に、別冊にしていることが多い。
b 就業規則は、「正社員、パート社員、臨時社員、契約社員、嘱託社員」の種別に応じて作成されていることも多い。
③ 就業規則作成手続
(ⅰ) 就業規則の作成
就業規則は、使用者が一方的に作成するものです。
(ⅱ) 就業規則の作成、変更の際の意見聴取義務(労基法90条)
就業規則の作成、変更をする場合は、労働者過半数代表(労働組合又は過半数代表者)の意見を聴取しなければなりません。
・ただし、承諾は不要です。
* 労働組合又は過半数代表者の意味
a 労働組合とは
会社の従業員たる労働者の過半数で組織する労働組合のことです。
b 労働者の過半数代表者とは
労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては、労働者の過半数を代表する者のことです。
(ⅲ) 就業規則の労働基準監督署への届出
使用者は、就業規則を作成又は変更した場合、労働基準監督署へ届け出なければなりません(労基法89条、罰則120条)。
* なお、就業規則の届出の際は、労働者の過半数代表者から聴取した意見を記載した書面を添付しなければなりません。
ウ 就業規則の労働協約に対する効力
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとされます(労働契約法7条)。
① 就業規則が労働契約の内容となる効力(労働契約の効力)
労働契約の内容は、原則として、労働契約を締結する時に、使用者が定めていた就業規則の内容(労働条件)によることになります。
② 要件
(ⅰ) 合理性と周知性
a 合理性=合理的な労働条件を定めていること。
b 周知性=就業規則を労働者に、周知させていたこと。
(ⅱ) 周知させる労働者
a 新たに労働契約を締結する労働者
b 既契約の他の労働者
(ⅲ) 周知させていなかった場合
a 原則
周知させていなかった場合は、労働契約の内容として請求することができません(労働契約法7条)。
b 例外
退職金の請求
* (a) 根拠
信義則上、使用者に支払義務があるので。
(b) 退職金規程につき
就業規則の最低基準効により、周知手続がなくても効力を生じると解されています。
(ⅳ)「就業規則の届出、意見聴取」の手続
労働契約法7条の効力要件ではありません。
* a 労働契約法7条
労働契約の内容は、就業規則で定める労働条件によるものとする。
b 実質的に周知されていれば足り、就業規則の届出や意見聴取は手続要件となりません。
③ 効果(労働契約法7条の効果)
就業規則の定めが、労働契約の内容になります。
④ 労働契約法7条の適用範囲
(ⅰ) 新たに労働契約を締結する場合
労働契約法7条が適用され、就業規則の定めが労働条件となります。
(ⅱ) 既に労働契約が締結されているが、就業規則が存在せず、新たに就業規則を作成する場合
労働契約法7条は適用されません。
・よって、この場合の労働条件は、労働契約の内容が優先します。
⑤ 就業規則の最低基準効力
就業規則で定める労働条件を下回る条件を合意した労働契約(ないし労働契約の一部分)は、無効となります。
・この場合、就業規則の労働条件が労働契約の内容になります。
(2) 労働契約と労働協約
ア 労働協約とは
(ア) 労働協約の定義
労働協約とは、労働者が組織する「労働組合」と「使用者」の間で締結された労働条件その他に関する協定のことです。
(イ) 形式等の要件
① 労働者・使用者が記名・押印した書面を作成すること。
② 労働協約の表題は、覚書、念書等何でもよい。
* 書面の内容が、「労働条件」や「労使関係」のルール等を合意(協約)した内容であればよい。
イ 労働協約の労働契約に対する効力
労働契約の内容は、就業規則によって定められます(労働契約法7条)。
* 労働協約がある場合
労働協約が、就業規則に優先して、労働契約の内容を規律することになります(労基法16条、労働契約法13条)。
ウ 労働協約より有利な労働条件を定めた労働契約
個々の労働協約の趣旨を解釈して決定することになります。
(3) 労働契約、就業規則、労働協約の関係
ア 「就業規則」と「労働契約」の意義と関係
① 就業規則
就業規則は、法令及び労働協約に反することができません(労働契約法13条)。
② 労働契約
労働契約の内容は、合理的な労働条件を定めた就業規則の内容によることになります(労働契約法7条)。
* 労働契約は、法令及び労働協約に反することができず、就業規則によって規律されています。
イ 「強行規定・労働協約・就業規則・労働契約」の一般的優劣関係
下記のような優劣関係にて適用されます。
① 強行規定(法律の規定)
② 労働協約
③ 就業規則
④ 労働契約
第2 労働組合関係
(1) 労働組合
ア 労働組合の定義
労働組合とは、労働者が主体となって、自主的に労働条件の維持・改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体(又はその連合体)のことです(労働組合法2条)。
(内容)
① 労働組合は、会社の内外を問わず、2人集まれば自由に結成できます。
② 会社内の労働組合に加入していたとしても、会社の外に存在する組合(ユニオン)に加入することもできます。
③ 憲法にも労組法にも、労働組合が企業内に組織されるべきものとの規定は存在しません。
④ 参加者の所属は、一切問われません。
イ 対等決定の手段
対等決定原則の宣言を定めた規定は、下記のとおりです。
① 労働基準法2条1項
労働条件は、労働者と使用者が対等の立場において決定すべきものとする。
② 労働契約法3条1項
労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、変更すべきものとする。
* 普通の労働者が、個人・独力で、対等決定を実現することはほとんど不可能であり、労働組合に団結して、使用者と交渉するしか方法がありません。
ウ 法内組合と法外組合(憲法組合)
(ア) 労組法における労働組合の自主性確保
下記の労働組合には、労組法による保護は与えられません。
① 使用者の利益代表者が参加する労働組合
② 使用者から経費援助を受けている労働組合
* 自主性確保の主たる事例
(ⅰ) 不当労働行為に対する救済(労組法7条)
(ⅱ) 労働協約への規範的効力の付与(労組法16条)
(イ) 法内組合と法外組合(憲法組合)
① 法内組合
法内組合とは、労組法上の保護を受ける組合のことです。
② 法外組合(憲法組合)
法外組合とは、労組法上の保護を受けることができない組合のことです。
* 法外組合(憲法組合)であっても、憲法28条の趣旨に沿う組合は、「団体交渉等団体行動」を行う権限があり、かつ「刑事・民事」の免責が認められます。
(ウ) 労働組合の種類
① 従業員組合(企業組合)
当該企業を基盤に、当該企業の従業員の団体として結成される労働組合のことです。
* 同一産業内で、産業別組合を組織し、更にこの産業別組合(産別)が集合して全国組織(ナショナル・センター)が結成されています。
・最大のナショナルセンターは、連合です(61の産別、組織人員約662万人)。
② ユニオン(合同組合)
企業を基盤とせず、地域あるいは職種・職能を基盤として、どんな企業の従業員でも、あるいはフリーの労働者でも加入できる労働組合のことです。
(エ) 「ユニオン」のメリット・デメリット
① メリット
いつでも、1人でも加入できることです。
* 詳細
(ⅰ) 会社との間に問題が発生したときに、飛び込んで加入することができます。
(ⅱ) 当面、問題がなくとも、企業組合と同時にユニオンに加入することができます。
(ⅲ) 自己の問題が解決した後、ユニオンに残るか否かは、労働者の自由です。
② デメリット
個々のユニオンは、小さな組織であるため、労働組合としての力量、交渉力が十分でないユニオンもあると言われています。
* 詳細
(ⅰ) どのユニオンも、「法律違反を是正させること」、「法律を守らせること」はできます。
(ⅱ) 上記(ⅰ)以外に、「労働者の権利、利益」を実現するには、力不足なユニオンもあるようです。
(ⅲ) ユニオンの加入に当っては、ユニオンの「中心メンバー」や「担当オルグ(組織者)」と気が合うか否かも大事な調査項目です。
(オ) 企業組合とユニオンの二重加盟
「企業組合」と「ユニオン」の二重加盟も可能です。
(理由)
憲法にも労組法にも、複数の労働組合に同時に加入すること(二重加盟)を禁止する規定はありません。
エ 労働者と労働組合
賃金などの収入によって生活する者(労働者)は、労働組合を結成したり、加入したりすることができます。
・労働契約によって賃金を得て働いている者はもとより、形式上の契約は「請負」や「委託」であっても、請負代金や委託料によって生活する者も労働組合を結成することができます。
オ 組合員の権利と義務
組合員は、下記の権利を有し、義務を負っています。
① 所属する労働組合のすべての問題に参与する権利
② 均等に扱われる権利
③ 組合費を支払う義務
* ユニオンにおいては、共済加入が義務とされていたり、紛争解決に当って、会社から解決金を得た場合には、カンパを要請されることもあります。
④ 民主的に決定された組合方針に従う義務
(2) 解決手段
ア 労使紛争の解決手段
(ア) 個別労使紛争を解決する手段として、下記の方法があります。
① 直接交渉
② 行政の場など(ADR)を使っての交渉
③ 労働委員会へのあっせん申立
④ 裁判所の手続(労働審判、仮処分、本訴訟)
(イ) 「行政の場など(ADR)を使っての交渉」の具体的内容
① 「都道府県労働局の局長が行う助言・指導」と「労働局に設けられた紛争調整委員によるあっせん」
* (ⅰ) 都道府県労働局の意義
厚生労働省の県の出先機関のことです。
・県内の労基署を管轄しています。
(ⅱ) 労働局に設けられた紛争調整委員の意義
メンバーは、「弁護士・学者・社会保険労務士」などです。
(ⅲ) あっせんの意義
労使の間に立って、労使の話合いの促進を図ることです。
(ⅳ) あっせんの根拠
個別労使紛争解決促進法4条、5条以下に記載されています。
② 都道府県労働委員会が行う個別労使紛争についてのあっせん
* (ⅰ)「あっせん」を行うことができることの根拠
個別労使紛争解決促進法20条。
(ⅱ) 労働委員会の機能
労働委員会は、本来の業務として集団的労使紛争(労働組合と会社の労働争議)についてのあっせん機能を有しています(労組法20条等)。
③ 各自治体(産業労働局などが主管)が行政サービスとして行う労使紛争についてのあっせん
④ ADRによるあっせん
* (ⅰ) ADRとは、ADR促進法に基づき、担当大臣から認証された機関です。
(ⅱ) 労使関係における認証ADRとしては、各都道府県に、社会保険労務士会が設置した総合労働相談所があります。
⑤ 各県の弁護士会が設置している仲裁センター(又は紛争解決センター)
イ 個別交渉と組合による交渉
直接交渉には、下記の方法があります。
① 誰の援助も受けずに、個人的に行う場合。
* 個人では、会社と対等の立場に立てない場合は、相当な援助を求めるべきです。
② 専門家(弁護士など)に依頼(委任)して個人的に行う場合。
③ 労働組合に加入又は結成して、労働組合として行う場合。
ウ 裁判所での手続
(ア) 裁判所での解決手続には、下記の方法があります。
① 本訴訟
② 仮処分の申立
③ 労働審判の申立
(イ) 各手続のメリット・デメリット
① 本訴訟
(ⅰ) メリット
・すべての証拠を調べます(反対尋問有り)。
・「保全の必要性」は不要です。
・仮執行が付けば控訴されても、執行力があります。
(ⅱ) デメリット
・進行が遅い(判決確定までに、かなりの日数がかかります。)
* 第1回目の口頭弁論期日は、訴え提起後、概ね30日後。判決が出されるまでは、数回の口頭弁論が必要です。
(ⅲ) 代理人
a 弁護士
b 認定司法書士(簡裁代理権のある司法書士)
* 簡易裁判所管轄の民事訴訟・民事調停
請求額金140万円以内の労働債権の請求(賃金・残業代・退職金・慰藉料等損害賠償金)
(ⅳ) 訴訟書類(訴状・準備書面)の作成
司法書士(すべての司法書士)
* a 「使用者会社の代表者又は支配人、個人の使用者」又は労働者が法廷に立って、訴訟にて労働問題を争う場合は、司法書士に「訴状・準備書面」の作成権限があります。
b 司法書士が裁判書類を作成することによって、訴訟当事者を支える訴訟のことを、「本人支援訴訟」といいます。
② 仮処分
(ⅰ) メリット
a 早い(第一回目の審理期日は、申立後、概ね2週間後)。
b 安い(申立印紙代:2000円)。
c 異議が出ても、執行力があります。
(ⅱ) デメリット
a 「保全の必要性」が要件となります。
b 人証は、調べられません。
(ⅲ) 代理人
弁護士
(ⅳ) 申立書類(仮処分申立書・準備書面)の作成
司法書士
* 「使用者会社の代表者又は支配人、個人の使用者」又は労働者が仮処分の当事者となって仮処分の審理をする場合は、司法書士に「仮処分申立書・準備書面」の作成権限があります。
③ 労働審判
(ⅰ) メリット
解決が早い
* a 第1回目の期日は、概ね申立後40日後です。
3回以内の期日で結論が出ます。
b 安い(申立の印紙代:本訴の半分)。
c 適正な判断が期待できます。
* 労使双方から任命された「審判員の存在、役割」により、適正な判断が期待できます。
a 柔軟な審理がなされます。
b 労使双方の利益調整型事件も対象となります。
(ⅱ) デメリット
a 「複雑な事案」は、労働審判の利用に適しません。
b 異議が出ると執行力がありません(本訴訟へ移行する)。
c 異議が出ると三審制になりかねません。
d 調停偏重の危険があります。
(ⅲ) 代理人
a 弁護士
b 許可代理人
(ⅳ) 申立書類(労働審判申立書・準備書面)の作成
司法書士
* 「使用者会社の代表者又は支配人、個人の使用者」又は労働者が労働審判の当事者となって労働審判の審理をする場合は、司法書士に、「労働審判申立書・準備書面」の作成権限があります。
④ 参考(ADRの場合)
(ⅰ) メリット
a 安い。
b 速い。
(ⅱ) デメリット
a 強制力がありません。
b 解決率が低い。
(ⅲ) 代理人
a 弁護士
b 特定社会保険労務士
(3) 団体交渉
ア 団体交渉とは
(イ) 団体交渉の意義
団体交渉とは、「労働組合が組合自身及び組合員の権利・利益の増進・維持・回復のために会社と行う交渉」のことです。
(例)
① 社員の賃上げ交渉
② 解雇問題についての交渉
(イ) 団体交渉権保護の根拠
団体交渉権は、憲法28条(勤労者の団結権)に基いて、労組法7条2号(不当労働行為)が使用者に団交応諾義務を設定していることに起因します。
(ウ) 団交の方法
団交は、「事実」と「法及び道理」に基づいて行われなければ適正な解決、そして労使関係の安定・信頼に資しません。
イ 団交事項
会社で起こっているすべての問題について、団交を求めることはできませんが、「個別労使紛争に関する問題」はすべて団交事項となります。
* 法律上の抽象的な権利を具体化するのも、団交の重要なテーマです。
ウ 使用者
団交を求める相手方は使用者です。
* 使用者の意義
当該団交事項について解決能力を持っていなければ、使用者とはなりません。
・団交事項によっては、使用者が変わります。
・直接の労働契約関係になくても、実質的な解決能力を持つ者は、使用者となり得ます。
エ 団交の進め方
(ア) 団交は、「団交事項」について、解決を目指して真剣に語り合う場であり、この目的を達成するための規制(誠実団交義務)はあるが、団交ルールについての法規制はありません。
(イ) 団交を拒否する使用者に対し
団交ルールの未確定などを理由に団交を拒否することは許されず、このような態度をとる使用者に対しては、下記の行動をとることになります。
a 粘り強く説得する。
b 労働委員会に、下記事項を提起する。
(事例)
(a) あっせん申請
(b) 不当労働行為の救済申立
オ 誠実団交義務
団交は、労使とも誠実に行わなければなりません。
① 団交事項に関する情報・データの共有
団交事項に関する情報データは、同じテーブルで議論できるように、共有とされなければなりません。
② 合意に達しない場合
真摯に話し合ったが合意に達しない場合は、団交打切りが認められます。
③ 合意に達した場合
合意内容を書面に記載(協約書を作成)し、協約の締結をします。
カ 諸原因による解雇問題の団交と注意点
(ア) 解雇問題の団交方法
① 労働組合は、下記内容を具体的に確定させた上で、反論します。
a 解雇の態度(普通解雇か否か)
b 解雇の根拠(該当する就業規則等)
② 法律違反(労基法19条、20条など)の解雇である場合は、いったん撤回させます。
* 解雇手続規程がある場合の解雇
その規程を遵守しているか否かを確認します。
③ 解雇に伴う手続
「解雇理由証明書、離職票の交付、予告手当の支払」は、速やかに実行させます。
(イ) 諸原因による解雇問題の団交
① 勤務態度を理由とする解雇の団交
「勤怠不良(遅刻・欠勤など)、勤務懈怠、私傷病による能力低下、欠如」などが解雇理由とされている場合は、下記事項も検討対象となります。
(ⅰ) 具体的事実が解雇に値するものか否か。
(ⅱ) 会社が、これを是正・向上させる努力をしたか否か。
(ⅲ) 他部署であれば勤まるか否か。
② 勤務成績を理由とする解雇の団交
③ 非行・非違行為を理由とする解雇の団交
④ 経営上の都合による解雇、内定取消に対する団交
⑤ 雇止め、派遣切りに関する団交
⑥ 高齢者の継続雇用に関する団交
⑦ 退職強要に関する団交
⑧ 労働条件の切下げに対する団交
⑨ 人事に関する団交
⑩ 労働時間・残業代など団交
⑪ ハラスメントと団交
ハラスメントによる解雇の場合は、下記事項をよく検討すべきです。
(ⅰ) 団交に馴染むハラスメント(いじめ)か否か。
(ⅱ) 組合員の心身の状況と見合うか、医学的見地からも検討すること。
(ⅲ) 会社として意図しないハラスメントでも、会社には職場環境整備義務があります。
⑫ 倒産
(4) 労働協約
個別紛争に限らず、組合と会社との間の懸案事項が、話合い(団交に限らない)により解決(交渉が妥結)した場合は、その内容を、正確に書面化するのが通常であり、また必要です。
(ポイント)
① 会社と交渉がまとまったら、独立した事項ごとに書面化して、労働協約とします。
② 労働協約書
書面には、労使の「記名・押印」が必要です。
③ 労働協約に定める期間
3年以下であること。
* (ⅰ) 期間中の解約
期間中の一方的解約はできません。
(ⅱ) 期間の定めのない場合
「90日告知」で、いつでも解約することができます。
(5) 労働協約と組合員の労働条件
適法な労働協約には、規範的効力が付与され、組合員の労働条件を設定・変更できます。
第3 解雇
1 「解雇の意義」・「解雇に対する法令上の制限」
(1) 解雇の意義等
ア 解雇とは、労働者の意向に関わらず、労働契約を終了させる使用者の一方的な意思表示のことです。
イ 意思表示の方法
意思表示は、「書面」でも「口頭」でも可能です。
(ア) 意思表示の内容
雇用契約を終了させる旨が明らかにされていれば足り、「解雇」という文言が用いられていなくてもよい。
(イ) 解雇理由の表示
労働者から、解雇理由の求めがあった場合は、書面で解雇理由を明らかにする必要があります。
ウ 解雇の種類
解雇は、大きく分けて、以下の2種類があります。
① 懲戒解雇・諭旨解雇
労働者に対する制裁罰の意味を持つ解雇のことです。
② 普通解雇
上記①以外の解雇はすべて、普通解雇と呼ばれています。
* 整理解雇も普通解雇の一類型です。
(2) 解雇に対する法令上の制限
ア 解雇権濫用法理(労働契約法16条)による規制
解雇に対する規制として最も重要な事項は、「① 合理的理由 ② 社会的相当性」の有無により、解雇の有効性を判断する解雇権濫用法理(労働契約法16条)です。
* その他にも、個別法令による解雇権の制限があります。
イ 個別法令による解雇制限
解雇権濫用法理(労働契約法16条)は、あらゆる解雇に適用されますが、個別法令により、一定の場合、解雇が禁止されています。
(解雇禁止の例)
① 業務上の傷病による休業期間中の解雇(労基法19条1項)
② 産前産後の休業期間中の解雇(労基法19条1項)
③ 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労基法3条)
④ 法違反の申告等を理由とする解雇
⑤ 不当労働行為解雇
* 下記のような言動があったことを理由とする解雇は、不当労働行為として無効です(労組法7条1号)。
(ⅰ) 労働組合の組合員であること
(ⅱ) 労働組合に加入したり、結成しようとしたこと
(ⅲ) 労働組合の正当な行為をしたこと
⑥ 性差別の解雇(均等法6条)
⑦ 婚姻、妊娠、出産等を理由とする解雇(均等法9条)
⑧ 育児・介護休暇を理由とする解雇(育児・介護休業法10条、16条)
⑨ 公益通報(内部告発)を理由とした解雇(公益通報者保護法3条)
(3) 就業規則、労働協約の条項と解雇の有効性
ア 就業規則の解雇条項の拘束力
・就業規則に記載された解雇事由以外の事由に基づいて、解雇できるかについては、諸説があります。
・就業規則や、労働協約に違反した解雇は無効とされます。
(ア) 就業規則に記載されている「解雇条項の拘束力」
あ 就業規則と解雇の関係についての考え方
この問題は、就業規則に記載された解雇事由が例示列挙か、制限列挙かをめぐって争われてきました。
* その意味は、下記のとおりです。
① 例示列挙とする考え方
使用者には、解雇権があるのだから就業規則に記載された解雇事由以外の事由によっても解雇できるとする考え方です。
② 制限列挙とする考え方
就業規則の記載内容は、労働契約の内容になるのであり、就業規則で解雇事由を列挙している以上、使用者自らが解雇できる場合が制限されているとする考え方です。
* 労働契約法7条
ただし、その内容が、合理的であり、かつ、労働者に周知されている必要があります。
い 裁判例
裁判例は、様々です。
① 例示列挙説(寿研究所事件:東京地判昭49・12・9)
② 限定列挙説(東京高判昭53・6・20)
う 労働者に対する制裁罰としての懲戒処分(懲戒解雇)の考え方
労働者に対する制裁罰としての懲戒処分(懲戒解雇)の場合、懲戒処分の事由は、例示列挙と解されています。
(イ) 就業規則、労働協約の手続条項
就業規則や労働協約において、「解雇」や「懲戒」について規定されていることが多々あります。
あ 就業規則、労働協約の規定に違反して行われた解雇の効力
規程違反があるという理由のみで、解雇が無効であるとされるのが一般的です。
い 解雇の効力の判断基準
下記の基準を検討して判断することになります。
① 規程違反
② 解雇権濫用法理等
(4) 解雇予告義務
ア 解雇予告のポイント
① 解雇に際しての手続
(ⅰ) 解雇予告を行う。
(ⅱ) 解雇予告手当を支払う(これは、解雇のための義務です)。
② 解雇の有効性
解雇の有効性は、下記の手続と判断が必要です。
(ⅰ) 解雇予告(予告手当の支払)をすること
(ⅱ) 解雇権濫用法理等による判断をすること
イ 解雇予告制度が適用にならない労働者(労基法21条)
解雇予告義務の規定は、下記の労働者には適用がありません。
① 日々雇い入れられる者
* 1か月を超えて引き続き使用されている場合を除く。
② 2か月以内の期間を定めて使用される者
* 所定期間を超えて引き続き使用されている場合を除く。
③ 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
* 所定期間を超えて引き続き使用されている場合を除く。
④ 試用期間中の者
* 14日を超えて引き続き使用されている場合を除く。
ウ 罰則(労基法119条)
使用者が、解雇予告制度に違反した場合は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。
エ 解雇予告の民事上の効力
解雇予告は、予告した期間の満了によって雇用契約を終了させる意思表示であり、解雇の意思表示の一つです。
オ 解雇予告義務に違反した解雇の効力
解雇予告の除外認定事由がないのに解雇予告をせず、予告手当も支払わないで解雇した場合の解雇の効力について、判例の考え方は、下記のとおりです。
(相対的無効説:細谷服装事件 最判昭35・3・11)
即時解雇としては効力が生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後30日の期間を経過するか又は通知の後に予告手当の支払をしたときは、そのいずれかの時から解雇の効力が生じます。
・この立場によれば、「解雇予告」や「予告手当の支払をしなかったこと」のみにより、解雇が無効になることはありません。
2 解雇理由の類型ごとの留意点
(1) 普通解雇(労働者の落ち度《ミス、非違行為》を理由とする解雇)
ア 普通解雇の意義
懲戒解雇・諭旨解雇以外の解雇はすべて、普通解雇といいます。
・普通解雇とは、原則として、労働者の落ち度(非違行為)を理由とする解雇のことです。
* 非違行為の意義
① 法に違う行為のことです。又は非法のことです。
② 整理解雇も、普通解雇の一類型です。
イ 労働者の落ち度(非違行為)を理由とする解雇の例
① 職務懈怠
② 勤怠不良(無断欠勤、遅刻等)
③ 業務命令違反
④ 職務規律違反
⑤ 私生活上の犯罪・非行
* 当該解雇が懲戒事由に該当する場合でも、企業の側で、懲戒解雇を選択せずに、普通解雇とすることも少なくありません。
・この場合は、「退職金」や「解雇予告手当」が支払われます。
ウ 解雇権濫用法理に基づく判断
(ア) 解雇の有効性の判断
解雇権濫用法理(労働契約法16条)によって判断されます。
* 労働契約法16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
(イ) 解雇された労働者から「解雇の有効性」を争う例
① 非違行為の存在自体を争う。
* 事実認定の問題となります。
② 会社が主張する「労働者のとった行為」そのものは認めるが、労働者の行為は非違行為に該当しないとして争う。
* 解雇に「合理性」と「相当性」があるかという評価の問題となります。
③ 非違行為を行ったことは認めるが、これに対して解雇するのは、処分として重すぎる(相当性を欠く)として争う。
* 解雇に「合理性」と「相当性」があるかという評価の問題となります。
エ 懲戒解雇との類似性
① 制裁の機能
労働者の非違行為を理由とする普通解雇は、実質的には制裁としての機能を営むものです。
② 労働契約の終了
労働者に労働契約の終了という重大な不利益をもたらします。
③ 弁明機会の付与
適正手続としての「告知と聴聞」の原則(弁明機会の付与)が適用されます。
(2) 懲戒解雇・諭旨解雇(企業秩序違反に対する懲戒解雇・諭旨解雇)
ア 懲戒解雇・諭旨解雇とは
(ア) 懲戒解雇の意義
懲戒解雇とは、企業秩序違反行為に対する制裁罰である懲戒処分として行われる解雇のことです。
* 秩序違反行為の例
① 職務懈怠
② 勤怠不良(無断欠勤、遅刻等)
③ 業務命令違反
④ 職場規律違反
⑤ 私生活上の犯罪・非行等
(イ) 懲戒解雇の事例
通常は、「解雇予告」がなく、「解雇予告手当の支払」がなされることもなく即時に解雇がなされ、退職金の全部又は一部が支給されないことが多い。
(ウ) 懲戒解雇に類似した処分
① 諭旨解雇
諭旨解雇とは、懲戒解雇を若干軽減した解雇のことです。
② 諭旨退職
諭旨退職とは、会社側が、「退職願・辞表等」の提出を勧告し、所定の期間内に勧告に応じない場合は、懲戒解雇にするなどの取扱いをするものです。
(ⅰ) 諭旨退職は、懲戒処分の一種です。
諭旨退職は、依頼退職のような形式をとりますが、懲戒処分の一種です。
(ⅱ) 諭旨退職の法的効果
懲戒解雇と同様に、法的に争いうると解されています。
イ 退職金の支給
大半の企業では、就業規則で、懲戒解雇の場合は「退職金の全部又は一部」を不支給とする旨の規定を置いています。
(判例の立場)
判例は、一定の要件が充たされていれば、不支給・減額が許されるとする説(限定的合法説)を採るものが多い。
ウ 懲戒解雇、諭旨解雇の有効要件
(ア) 解雇の判断基準
懲戒解雇・諭旨解雇の有効性は、普通解雇の場合と同様に、解雇権濫用法理(労働契約法第16条)によって判断されます。
* ① 解雇権濫用法理
解雇権濫用法理とは、下記の基準にて解雇権濫用が判断されるという考え方です。
(ⅰ) 客観的な合理性
(ⅱ) 社会通念上の相当性
② 労働契約法
(ⅰ) 労働契約法第15条(懲戒)
使用者が、労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
(ⅱ) 労働契約法第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。
(イ) 「懲戒解雇・諭旨解雇」における懲戒処分としての有効要件
① 懲戒事由等を明定する合理的な規定の存在
(ⅰ) 懲戒事由及び懲戒の種類が就業規則(若しくは個別の労働契約)に記載され(労基法89条)、労働契約の内容になっていることが必要です。
・これらの規定は、限定列挙と解されています。
(ⅱ) 就業規則(懲戒規定)が、労働者に周知されていること
(ⅲ) 規定の内容が合理的であること
② 規定に該当する懲戒事由があること
* 就業規則に規定された懲戒事由に該当する事実の意味
懲戒解雇処分がなされる時点で、使用者が認識していたものに限られ、懲戒処分後に発覚、認識した事由をもって懲戒処分の有効性を基礎づけることはできない(最判平成8・9・26)。
③ 罪刑法定主義類似の原則
(ⅰ) 不遡及の原則
当該行為が行われた後に制定された就業規則の懲戒事由に基づき、懲戒処分をすることは許されません。
(ⅱ) 一事不再理の原則
過去に、既に懲戒処分の対象とされた事由に関して、重ねて懲戒処分にすることは許されません(東京地決平9・10・26)。
* ただし、懲戒処分の内容(種類)を決定するに際して、過去の懲戒処分歴を情状として斟酌することは禁じられるわけではありません。
④ 相当性の原則・平等扱いの原則
(ⅰ) 相当性の原則
懲戒処分の重さは、規律違反の種類・程度その他の事情に照らし相当なものでなければなりません。
(ⅱ) 平等扱いの原則
同じ規程に違反した場合は、これに対する懲戒処分も同種・同程度あることを要します。
⑤ 適正手続を経ていること
就業規則や労働協約上、労働組合との協議や懲戒委員会の討議を経るべきことが定められているときは、この手続を遵守する必要があります。
エ 懲戒解雇の普通解雇への転換
使用者は、同一の企業秩序違反行為について、懲戒解雇の意思表示をするともに、予備的に「普通解雇」の意思表示をすることがあります。
・この場合、「懲戒解雇の効力」と「普通解雇の効力」がそれぞれ判断されます。
オ 懲戒解雇の有効性についての裁判例
① 業務命令違反
業務命令(配転命令違反等)が適法であり、かつまた業務命令違反が企業秩序に重大な影響を及ぼす場合は、懲戒解雇が有効とされます。
② 勤務懈怠・勤務不良
職務懈怠等の度合いが重要な判断要素になります。
③ 業務妨害、職場規律違反
業務妨害などの度合によって判断が左右されます。
④ 経歴詐称
経歴詐称が、懲戒解雇などの重い処分に該当するのは、職務遂行能力に関連する事項や、企業の社会的な信用に重大な影響を及ぼす可能性のある場合に限られます。
⑤ パソコンの私的利用
懲戒解雇のためには、私的利用を懲戒事由として明定するとともに、その禁止を十分に周知しておく必要があります。
⑥ 私生活上の非行、犯罪
私生活上の行動であっても、それが企業秩序に直接に関連したり、企業の社会的評価、信用に大きな影響を及ぼすこともあり得るので、私生活上の非行、犯罪も懲戒事由になり得ます(最判昭49・2・28)。
⑦ 多重就職
多重就労に対して懲戒処分を課すことができるは、企業運営とって重大な支障を来たすおそれがある場合に限られるべきです。
* 上記事例
競業会社で就労することで、企業秘密、ノウハウが漏洩するようなおそれがある場合。
(3) 労働者の能力・適性欠如(不足)を理由とする解雇
当該労働者の能力や適性が、就業規則にいう「勤務成績が(著しく不良)」等に該当するという形で争われます。
・しかし、このような条項がなければ、能力・適性の欠如(不足)を理由とする解雇ができないわけではありません。
(理由)
① 「就業規則」そのものが存在しないこともあります。
② 「就業規則」に、「その他、前記各号に準ずる重大な事由」などといった概括的な条項に基づき解雇されることもあります。
(4) 私傷病による能力欠如を理由とする解雇
私傷病(通勤災害も含む)や傷病の後遺症によって従前の職に復帰することが困難な場合、「労働者の労務提供の不能」や、「労働能力・適性の欠如」を理由として解雇されることがあります。
(5) 整理解雇
整理解雇と「4要件法理」
整理解雇の有効性は、下記の4つの要件に基づいて検討する必要があります。
① 人員削減の必要性があること
② 解雇回避努力を尽くしたこと
③ 人選が合理的であること
④ 説明・協議を尽くすなど、解雇手続が相当であること
* 「①と②」は関連するが、「③と④」は互いに独立した要件といえます。
(6) 会社解散(事業廃止)と解雇
ア 会社が解散した場合の労働者の立場
会社(法人)が解散すれば、労働契約の一方当事者が消滅することになるので、労働者との労働契約関係も終了することになります。
イ 「解散」や「破産」によって法人格が消滅した場合
事実上事業が停止したとしても、法人格が存在する限り、通常の整理解雇と同様の法理が適用されます。
ウ 解散決議の有効性
会社解散が、不当労働行為意思(組合つぶし)などの不当な目的や動機に基づく場合、その決議が無効となるかが問題となります。
* 親会社や他の関連子会社への契約関係の承継
会社が解散した場合、労働契約関係も終了するのが原則ですが、親会社や他の子会社に対して、労働契約関係の承継を主張できる場合があります。
(7) 不当労働行為解雇
ア 不当労働行為の意義
不当労働行為とは、労働組合の組合員であることや、正当な労働組合活動をしたことを理由に(不当労働行為意思に基づき)、使用者が労働者に対し、下記のような不利益な取扱いをすることです。
① 労働組合や組合員に対して行う不利益な取扱い。
(労組法7条1号)
② 団体交渉の許否
(労組法7条2号)
③ 組合結成や組合の組織運営、活動を妨げる支配介入行為
(労組法7条3号)
* 不当労働行為意思に基づく不利益取り扱いの典型例
(ⅰ) 解雇
(ⅱ) 本採用拒否
(ⅲ) 雇止め
(ⅳ) 定年後の再雇用拒否
イ 不当労働行為の効力
(ア) 不当労働行為意思に基づく解雇は、労組法7条に違反するものとして無効です。
* また、解雇権を濫用するものとしても無効です。
(イ) 不当労働行為の救済方法
① 労働委員会による救済
② 裁判所による救済
ウ 労働委員会による不当労働行為救済制度
(ア) 救済制度
不当労働行為については、労働委員会による不当労働行為の救済制度が活用できます。
(イ) 労働委員会の構成
① 都道府県労働委員会
② 中央労働委員会
* 都道府県労働委員会の判断に対する「不服申立の審査等」を行う機関です。
(8) 有期雇用と契約期間途中の解雇
ア 契約期間途中の解雇と解雇権濫用法理
契約期間途中での使用者による解約(解雇)については、期間の定めのない契約における解雇と同様、解雇権濫用法理適用されます。
* 有期労働契約においては、
契約期間の満了に伴う雇止め(更新拒絶)の効力が争われ、解雇権濫用法理が類推適用されることがあります。
イ 契約期間途中の解雇の効力を争う場合の留意点
解雇が無効と判断された場合、期間の定めのない契約の場合と同様、「地位確認」と「賃金支払」が認められます。
(9) 定年制と再雇用拒否
ア 定年に関する法規制
高齢者雇用安定法により、60歳未満の定年の定めは無効とされていますが、同法の2004年改正(2006年4月1日施行)により、以下のいずれかの措置を講ずることが義務付けられています。
① 定年年齢の法定年齢
* 2006年4月に62歳。その後順次引き上げられ、2013年には65歳へ引き上げる。
② 定年の定めの廃止
③ 継続雇用制度の導入(ただし、「定年の定めの廃止」をしない場合)
* 継続雇用制度の意義
現に雇用している高年齢者が希望するときは、定年後も引き続いて希望者全員を雇用する制度のことです。
イ 再雇用と解雇権濫用法理
労使協定(若しくは就業規則)が定める「基準」に該当しないとして再雇用されなかった者が、再雇用拒否を無効として係争するケースが増えると思われます。
* 雇用継続制度の導入
過半数労働組合(若しくは過半数代表者)との書面による協定により、「継続雇用制度」の対象となる高年齢者に係る「規準」を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、希望者全員を対象としない制度でも、「継続雇用制度」の措置を講じたものとみなされます(高齢者雇用安定法9条2項)。
(10) 派遣労働と解雇
ア 常用型派遣と解雇権濫用法理
(ア) 派遣労働の意義
派遣労働とは、雇用主である事業主(派遣元)から他の事業主(派遣先に)派遣されて、派遣先の指揮命令に服して労働する労働形態のことです。
(イ) 派遣労働の形態
派遣労働の形態には、下記の2種類があります。
① 常用型派遣
派遣元企業に常時雇用されつつ、派遣先企業で労務を提供するものです。
② 登録型派遣
派遣元事業主に「氏名」や「可能な業務」を登録しておき、仕事が発生したとき、その期間だけ派遣元事業主との間で労働契約を締結し、派遣先企業で働くものです。
・登録型の場合は、常に有期雇用ということになります。
・労働者派遣法の定め(派遣法40条の2)
(ⅰ) 原則:派遣期間3年まで。
(ⅱ) 一部の業務:派遣期間の制限を設けない。
イ 登録型派遣と解雇、雇止め
同一の派遣先で同一の業務に従事するものとして派遣契約が更新される場合には、有期雇用の雇止めと同様の問題が生じます。
* つまり、「解雇権濫用法理の類推適用の可否」の問題が生じます。
(11) 変更解約通知
ア 変更解約告知とは
(ア) 変更解約告知の意義
使用者による労働条件の変更の申込に、労働者が同意しない場合に行われる労働契約の解約(解雇)を変更解約告知といいます。
(イ) 変更解約告知と解雇の相違
労働契約関係の解消そのものを目的とするのではなく、労働条件の変更を目的とする点が、通常の解雇とは異なります。
(ウ) 変更解約告知の果たす役割
変更解約告知には、新たな労働条件による再雇用の申込をしつつ、労働者がこれに応じないときには解雇という方法をとることです。
イ 異議留保について
(ア) 異議留保の意義
変更解約告知を受けた労働者が、新たな労働条件に従って暫定的に就労しつつ、裁判手続で労働条件変更の当否を争う権利を保障することをいいます。
(イ) 裁判手続において
① 労働条件の変更が合理的と判断された場合
「新たな条件に従う」か、「解雇されるか」を選択します。
② 労働条件の変更が不合理と判断された場合
労働条件は元に戻されます。
第4 退職の意思表示の取消し、無効( 退職届の提出と意思表示の瑕疵)
(1) 退職届の提出方法
① 一方的解約(辞職)の通知
② 合意解約の申込
③ 合意解約の申込に対する承諾
(2) 意思表示の瑕疵等
① 意思表示に瑕疵(心裡留保、通謀虚偽表示、錯誤、詐欺、強迫)がある場合
民法の規定に従い、「意思表示の取消し」や「無効」を主張できます。
② 合意解約が公序良俗違反の場合
民法90条により、無効を主張できます。
(3) 取消し・無効が認められた場合
解雇無効の場合と同様、下記のことが認められます。
① 労働契約上の地位確認
② 賃金の支払請求
③ 慰謝料請求(精神的苦痛に対する慰謝料)
第5 辞職の問題点
(1) 辞職に関する法律の定め
労働者の辞職については、労働法における整備が不十分なため、民法の規定に委ねられています。
① 期間の定めのない労働契約の場合
(ⅰ) 2週間の予告期間をおけば、使用者・労働者共その理由のいかんを問わず辞職することができます(民法627条1項)。
(ⅱ) 期間によって報酬を定めた場合(例えば月給制)
解約の申入れは、次期以降についてすることができ、当期の前半までに行わなければなりません。
② 期間定めのある労働契約(有期労働契約)
(ⅰ) 労働者は、「やむを得ない事由」がある場合に、直ちに辞職することができます(民法628条)。
・ただし、やむを得ない事由が、労働者の過失によって生じたもので、使用者に損害が生じた場合には、その損害を賠償する義務を負います(民法628条ただし書)。
(ⅱ) 労基法上(労基法附則137条)は、1年を経過すればいつでも自由に退職することができます。
* a 労働基準法附則137条
期間の定めある労働契約を締結した労働者は、労働基準法の一部を改正する法律附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
b ただし、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限ります。
(2) 辞職についての現状
労働者が「やむを得ない事由」によらず辞職の申出でをし、以降の労務提供を拒否した場合の問題解決方法
就労の意思のない労働者に労務の提供を強要することはできないから、損害賠償の問題として処理されます。
(3) 労使合意による別段の定め
下記方法により、上記のような民法の規定の適用を排除することができます。
① 当事者間の個別合意
② 就業規則への記載
(4) 他で就労した場合の賃金の控除
解雇の効力を争っている間に、他社で就労して賃金を得た場合、そのことを理由に「地位確認」や「賃金支払」が拒否されることはありません。
第6 解雇と損害賠償
(1) 解雇と損害賠償
解雇の有効性を争う場合、下記の損害賠償請求をすることがあります。
① 慰謝料
解雇によって被った精神的苦痛を、金銭の支払をもって慰謝するものです。
② 消極損害(逸失利益など)
解雇がなければ得られたであろう経済的利益を補填するものです。
(事例)
「地位確認、賃金支払」は求めず、損害賠償のみを請求する場合。
(2) 不法行為と債務不履行
① 損害賠償請求が認められるには、下記の要件が必要です。
(ⅰ) 解雇が、解雇権濫用法理によって無効とされること。
(ⅱ) 解雇が「不法行為(民法709条)」又は「債務不履行(民法415条)」に該当すること。
② 賠償請求の法的根拠
(ⅰ) 不法行為(民法709条)
解雇に伴う損害賠償としては、慰謝料が請求されるのが一般的であり、慰謝料請求は不法行為において認められます(民法710条)。
(ⅱ) 債務不履行(民法415条)
セクハラにより、退職を余儀なくされた女性労働者による損害賠償請求において、労働契約上の配慮義務(就業環境整備義務)違反による債務不履行が主張され、裁判所がこれを認めました(京都セクハラ事件)。
* a セクハラについて
セクハラについて、均等法で、「使用者の就業環境整備義務」が条文化されています。
* 均等法とは
均等法とは、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」の略称です。
・均等法11条は、セクハラについて、「使用者の就業環境整備義務」を規定しています。
b セクハラでない退職強要事案(判例)
「労働者を、その意に反して退職させてはならない」という使用者の義務を認め、債務不履行に基づく損害賠償義務を認めています。
③ 「不法行為」と「債務不履行」の効力等の相違
実務上、「不法行為」と「債務不履行」を厳密に区別することなく、両者の成立を主張するのが無難です。
(両者の効力の相違点)
(ⅰ) 時効期間
a 不法行為 =営利・非営利を問わず3年
b 債務不履行=・営利会社・商人は5年
c 非営利は10年
(ⅱ) 遅延損害金の利率
a 不法行為 =営利・非営利を問わず5%
b 債務不履行=・営利は6%
c 非営利は5%
(ⅲ) 損害賠償請求権の起算点
a 不法行為 =解雇がなされた日
b 債務不履行=損害賠償の請求をした翌日
(ⅳ) 弁護士費用の認否
a 不法行為 =請求認容額の1割程度が認められます。
b 債務不履行=認められません。
④ 慰謝料請求
(ⅰ)「地位確認」、「賃金請求」とともに「損害賠償請求」をする場合
逸失利益などの消極損害は認められないから、請求するのは慰謝料ということになります。
(ⅱ)「地位確認」・「賃金請求」を求めず、逸失利益と共に慰謝料を請求することもあります。
(ⅲ) 解雇そのものは無効と判断しつつも、ストレートに慰謝料請求を認める裁判例は、ほとんど見られません。
* むしろ、慰謝料請求を棄却する裁判例の方が多い。
(その理論的根拠:判例)
a 解雇が無効であっても、解雇をした使用者の判断には無理からぬものがあり、損害賠償請求権(不法行為)を成立させるような違法性はない。
b 解雇が不法行為に当るとしつつも、解雇期間中の賃金が支払われることにより、労働者の精神的苦痛は慰謝されている。
⑤ 逸失利益
(ⅰ) 逸失利益(損害賠償請求)
解雇された会社への復職を求めない場合は、「地位確認」・「賃金支払」の請求をせず、損害賠償請求だけをすることになります。
(慰謝料についての裁判所の判断基準)
裁判所は、身体障害を伴わない純粋な精神的苦痛に対する慰謝料については、それほど大きな金額を認容しない傾向にあります。
(ⅱ) セクハラ事案での逸失利益の認容
セクハラによって退職を余儀なくされた事案で、「地位確認」・「賃金支払」は求めないものの、損害賠償として、慰謝料のほか、逸失利益(解雇されなければ得られたであろう収 入)を請求する例が多くなっています。
* a 裁判例
最近の裁判では、逸失利益を認めることは通常です。
b みなし解雇とは
労働者が、就労を継続することが困難な状況におかれているため、自ら退職を選択した場合のことです。
・この場合、解雇に対するのと同様な法的効果を及ぼします
(理由)
実質的には、解雇された場合と何ら異ならないので、「みなし解雇」といいます。
(ⅲ) セクハラ以外の退職強要ケース(判決)
セクハラでない一般の「退職強要型の事案(数名の退職)」において、逸失利益の請求を認めました。
(判決内容)
a 逸失利益として、6か月分の賃金相当額
b 会社都合退職の退職金と、自己都合退職金との差額
c 慰謝料として、1人当り50万円~100万円
d 弁護士費用として、「a~cの合計額の1割相当額」
(ⅳ) 解雇に対して逸失利益を認めた例
解雇の事実を認定しつつ、逸失利益の請求を認めた裁判例が現れています。
(裁判例:大阪高判平13・3・6)
雇用契約を締結し、若しくはその申込みをしつつ、就労に至る前に会社が契約を解除し、若しくは契約締結に至らなかった2名の労働者に対して、6か月分の給与相当額を基本とし、そこから受領済みの雇用保険の金額、その後就労して得た賃金等を控除した金額を逸失利益として認めました。
(ⅴ) 認容される逸失利益の額
逸失利益を認める場合、6か月分の賃金相当額を認めるものが多い。
・ただし、これを6か月に限る理論的根拠はありません。
(3) 労働契約の終了と雇用保険
① 雇用保険の概要
労働契約関係が終了した場合には、雇用保険による失業給付を受けることができます。
* 雇用保険は、5人未満を雇用する農林水産業を除き、労働者を雇用しているすべての事業所に適用されます。
② 解雇無効を争う場合の仮給付
解雇無効を争っている場合には、仮給付として失業保険を受けることができます。
* 具体的手続
(ⅰ) 解雇を争って係争中であることを示す文書(裁判所の事件継続証明書等)を提出して、仮給付として受給したい旨を申告する。
(ⅱ) 仮給付の場合も、離職票は必要となる。
* よって、解雇を争う場合でも、事業主から離職票を受け取る必要がある。
③ 使用者の手続懈怠と損害賠償
雇用保険加入の手続懈怠によって、労働者に損害が生じた場合は、使用者は労働者に対して損害賠償義務を負います。
(理由)
雇用保険へ加入手続をすることは、単なる公法上の義務にとどまらず、使用者の労働契約上の義務であり、その手続懈怠は、労働者に対する「債務不履行」ないし「不法行為」を構成します。
(4) 労働契約の終了と社会保険(健康保険、厚生年金)
① 労働契約終了と資格喪失
労働契約が終了すると、下記のような手続が必要となり、かつ、資格喪失となります。
(ⅰ) 事業主
「社会保険(健康保険・厚生年金保険)」の資格喪失の届出を行う。
(ⅱ) 被保険者
被保険者としての資格は、退職の日の翌日から失われます。
② 解雇無効の場合の処理
裁判所等によって、解雇無効(地位確認)の判断がなされた場合、資格喪失の効力は遡及して有効となります。
・よって、資格喪失は遡及して取り消されます。
* この扱いは、和解によって解決を図った場合も同様です。
③ 使用者の手続懈怠と損害賠償
(判例:奈良地判平18・9・5)
採用面接で社会保険への加入について、「正社員でないと加入できない」旨の虚偽の説明を受けて、加入を諦めた労働者の請求に基づき、厚生年金・健康保険に加入していれば支払を免れたはずの国民年金・国民健康保険の保険料相当額及び厚生年金への加入手続をしていれば受けられたはずの給付額と現実の給付額の差額等の支払が命じられました。