(当事務所の取扱業務)
① 簡易裁判所「民事訴訟・民事調停」の代理、法律相談
② 地方裁判所等へ提出する「民事に関する裁判書類」の作成
③ 民事に関する裁判書類作成事務の相談
④ 和解書等各種文案書類の作成代理
各種文案書類作成の相談
(目次)
(1) 著作権の意義等
ア 著作権の意義等
イ 著作権制度の目的
ウ 著作物の意義等
エ 著作者等の権利
オ 法人著作と著作権登録
カ 著作権の報酬
キ 著作権の保護期間
(2) 著作権の侵害
ア 著作権侵害の成立要件
イ みなし侵害
ウ 著作権侵害行為に対する制裁措置
(3) 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律
(1) 著作権の意義等
ア 著作権の意義
著作権とは、自分の考えや気持ちを作品として表現したもの(著作物)を、創作した人(著作者)に対して、法律が与えた権利のことです。
* ① 著作権に関するルール
著作権に関するルールは、「著作権法」に定められています。
② 著作権の利用制限
著作権は、法律によって守られている権利なので、著作権者以外の者は、利用を制限されています。
・従って、他人の著作物を利用したいときは、著作権を持っている人から「利用許諾」を得ることが必要です。
③ 利用制限の例
(ⅰ) 会社の会議で、新聞のコピーを資料として配布する行為。
(ⅱ) 音楽をダビングして、カラオケ教室で練習用に生徒に渡して使用させる行為。
(ⅲ) 映画館等における映画の録音、録画を行う行為(映画の盗撮防止に関する法律)。
* 無断での映画の盗撮等の行為は著作権侵害となり、刑事罰の対象となります。
* ただし、日本国内における最初の有料上映後8か月を経過した映画については、この法律は適用されません。
④ 著作権の利用制限の例外
下記の場合は、複製が制限されません。
(ⅰ) 私的使用の場合(著作権法30条)
著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とするときは、一部の例外を除いて、その使用する者が複製することができます。
(例)
A テレビ番組を録画して、自分で観る。
B 音楽CDを録音して、自分で聴く。
(ⅰ) 図書館等における複製(著作権法31条)
図書館においては、調査研究、資料の保存の必要がある場合又は新たな入手が困難な著作物の場合は、複製することができます。
* 調査研究目的の場合
著作物の一部分のみを、図書館利用者1人について1部まで提供することも許されます。
(ⅲ) 正当な引用の場合(著作権法32条)
公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行うことができます。
* 引用の意義
引用とは、紹介、参照、論評などの目的で他人の著作物を自分の著作物の一部に組み入れて利用することです。
(ⅳ) 教科用図書等への掲載(著作権法33条)
(ⅴ) 教科用図書代替教材への掲載(著作権法33条の2)
(ⅵ) 教科用拡大図書等の作成のための複製(著作権法33条の3)
(ⅶ) 学校教育番組の放送(著作権法34条)
(ⅷ) 学校その他の教育機関における複製(著作権法35条)
(ⅸ) 試験問題としての複製(著作権法36条)
(ⅹ) 視覚障害者等のための複製(著作権法37条)
(⑪) 聴覚障害者等のための複製(著作権法37条の2)
(⑫) 営利目的としない上演・演奏(著作権法38条)
(⑬) 時事問題に関する論説の転載(著作権法39条)
(⑭) 政治上の演説等の利用(著作権法40条)
(⑮) 時事の事件の報道のための利用(著作権法41条)
(⑯) 裁判手続等における複製(著作権法42条)
(⑰) 行政機関情報公開法等における開示のための利用(著作権法42条の2)
(⑱) 公文書管理法等による保存等のための利用(著作権法42条の3)
(⑲) 国立国会図書館法によるインターネット資料及びオンライン資料の収集ための複製(著作権法43条)
(⑳) 放送事業者等による一時的固定(著作権法44条)
(㉑) 美術の著作物等の原作品の所有者による展示(著作権法45条)
(㉒) 公開の美術の著作物等の利用(著作権法46条)
(㉓) 美術の著作物等の展示に伴う複製(著作権法47条)
(㉔) 美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製(著作権法47条の2)
(㉕) プログラムの著作物の複製物の所有者による複製(著作権法47条の3)
(㉖) 電子計算機における著作物の利用に付随する利用(著作権法47条の4)
(㉗) 電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用(著作権法47条の5)
(㉘) 翻訳、翻案等による利用(著作権法47条の6)
イ 著作権制度の目的
著作権制度は、著作物を生み出す著作者の努力や苦労に報いることによって、日本の文化全体が発展できるように、著作物の正しい利用を促し、著作権を保護することを目的とするものです。
ウ 著作物の意義等
(ア) 著作物の意義
著作物とは、「思想」又は「感情」を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもののことです。
(イ) 著作物の具体例
① 小説・脚本・論文・講演、その他の言語による著作物
* 上記は、言葉によって表現された著作物です。
② 音楽の著作物
* 曲も歌詞も著作物です。
③ 舞踊又は無言劇の著作物
身振りや動作によって表現される著作物のことです。具体的には、「日本舞踊」、「バレー」、「ダンス」の振付けなどのことです。
④ 絵画・版画・彫刻、その他の美術の著作物
形や色で表現される著作物のことで、「漫画」・「書」・「舞台装置」などのことです。
⑤ 建築の著作物
建築の著作物とは、一般人が生活しているような建物ではなく、城や宮殿などのように建築芸術といわれるような建築物のことです。
⑥ 地図又は学術的な図面・図表・模型その他の図形の著作物
図形や図表によって表現された著作物のことです。「設計図」や「地球儀」なども含まれます。
⑦ 写真の著作物
人物や風景などを撮影した写真のことです。
⑧ 映画の著作物
劇場用映画・テレビ番組・ビデオソフト・ゲームソフトや動画サイトにアップされているコンテンツなど、物に固定された動画のことです。
⑨ プログラムの著作物
コンピュータプログラムのことです。
⑩ 二次的著作物
二次的著作物とは、上記①~⑨までの著作物を基にして創作された著作物のことです。このようにして出来た著作物も、基になった著作物(これを、原著作物といいます。)とは、別に保護されます。
(例)
(ⅰ) 外国の小説を日本語に訳したもの
(ⅱ) 小説を映画化したもの
(ⅲ) 楽曲を編曲したもの
(注意事項)
(ⅰ) 二次的著作物を作成する場合
原著作物の著作者の許可を得ることが必要です。
(ⅱ) 二次的著作物を利用する場合(外国の小説を翻訳して出版する場合)
「二次的著作物の著作である翻訳者の許可」のほか、「原著作物の著作者の許可」を得ることが必要です。
⑪ 編集者著作物・データベースの著作物
(ⅰ) 編集者著作物として
百科事典・新聞・雑誌などが保護されます。
(ⅱ) データベースの著作物として
内容が、コンピュータによって簡単に検索できるものは保護されます。
エ 著作者等の権利
(ア) 著作者の権利
著作者の権利は、「① 著作者人格権」、「② 著作権(財産権)」、「③ 補償金請求権」の3つ(下記のとおり)であり、それぞれ独立した権利です。
・その性質上「② 著作権(財産権)」と「③ 補償金請求権」は財産として処分することができます。
① 著作者人格権
著作物を通して表現されている著作者の人格を守るための権利です。
・なお、著作者人格権は、その性質上、他の人に譲ることはできません。
* (ⅰ) 著作者人格権の権利は、下記のとおりです。
A 公表権
著作者が、著作物を公表するかどうか、公表する場合はどのような方法で公表するかを決める権利です。
B 氏名表示権
著作者が、自分の著作物にその指名を表示するかどうか、表示する場合は本名にするか、ペンネームにするかを決める権利です。
C 同一性保持権
著作者が、自分の著作物のタイトルや内容を他の人に勝手に変えられない権利です。
(ⅱ) 著作者人格権の侵害
著作者の名誉や社会的評価を傷つけるような方法で著作物を利用すると、著作者人格権を侵害したとみなされる場合があります。
(侵害の例示)
A 著作者の了解なしに、著作物を他人に見せる行 為。
B 著作者の了解なしに、著作者の名前を公表する行為。
C 著作者の了解なしに、作品内容を変える行為。
(ⅲ) 著作者人格権の保護期間
著作者人格権は、著作者の生存中保護されます。
・ただし、著作者が亡くなった後でも、著作者人格権を侵害する行為をしてはならないと、法律で定められています。
② 著作権(財産権)
著作権者が、著作物の利用を許可してその使用料を受け取ることができる権利です。
* (ⅰ) 著作権法
著作権法は、著作権の内容について、著作物の利用方法によって、様々な権利を細かに定めています。
・従って、著作権法に定められている方法で著作物を利用するには、利用前に著作権者の許可を得ることが必要です。
(ⅱ) 著作権法に基づく利用方法
A 複製権 |
B 上演権・演奏権 |
C 上映権 |
D 公衆送信権 |
E 公の伝達権 |
F 口述権 |
G 頒布権 |
H 譲渡権 |
I 貸与権 |
J 翻訳権・翻案権 |
K 二次著作物の利用権 |
③ 補償金請求権
補償金請求権とは、下記のような請求権のことです。
(ⅰ) 私的録音・録画補償金請求権
(ⅱ) 教科書等掲載補償金請求権
(ⅲ) 試験問題複製補償金請求権
(ⅳ) ビデオ等貸与補償金請求権
(イ) 著作隣接権
著作物の伝達にとって重要な役割として、著作権法は、実演家、レコード製作者、放送事業者(有線・無線)について、著作者と同じようないくつかの権利を与えて、著作権に準じる取扱いをしています(著作権法89条以下)。
・このことを、著作隣接権といいます。
(例)
① 実演家の権利
(ⅰ) 氏名表示件
(ⅱ) 同一性保持権
(ⅲ) 録音・録画権
(ⅳ) 放送・有線放送権
(ⅴ) 送信可能化権
(ⅵ) 商業用レコードの二次使用料請求権
(ⅶ) 譲渡権
(ⅷ) 貸与権
② レコード製作者の権利
オ 法人著作と著作権登録
(ア) 法人著作
著作物は、作者の思想・感情が創作的に表現されたものなので、著作者は自然人たる創作者自身であるのが原則です。
・しかし、一定の要件を満たすときは、法人(会社・国・学校法人等)が著作者になることがあります。
・このように、法人が著作者になることを法人著作といいます。
(イ) 法人が著作者となる要件
法人が著作者となるには、下記の4つの要件を満たすことが必要です。
① 法人の発意(企画・決定)により、その指揮の下で著作物を制作すること。
② 法人の従業員が職務上制作すること。
③ 法人の名前で公表されること。
④ 従業員に制作を任せるときの契約や勤務規則その他に別段の定め(例:著作者は従業員となるなどの定め)がないこと(著作権法15条)。
(ウ) 著作権登録制度
あ 著作権登録制度の意義
日本の著作権法では、特段の手続をしないで著作権が成立しますので、登録をしなくても権利を取得することができます。
・ただし、「第一発行年月日の登録」や「著作権の譲渡の登録」など著作権制度を補完するためのいくつかの登録制度があります。
い 著作権登録の利点
著作権法に基づく登録手続は、権利を守るためのものではありませんが、権利を守る上で、下記のような利点があります。
① 実名の登録
作者名を表記していなかったり、無名・変名で公表された著作物について実名の登録を受けると、その登録を受けた者が著作者であると推定されるようになり、実名の著作者と同様の扱いが受けられます。
* 登録した場合の利点例
ペンネームで公表した場合の著作権保護期間の終期は、公表した年の翌年1月1日から50年が経過した時となります。
・ただし、実名の登録をすれば亡くなってから、更に50年間保護されます。
② 第一発行年月日の登録
文化庁においては、著作物を最初に発行又は公表した日を登録することができます。登録されると、その発行又は公表の事実が推定されます。
③ 創作年月日の登録
プログラムの著作物は、「公表」ということに馴染みませんが、創作年月日の登録ができます。
・登録されると創作年月日が事実として推定されます。
* 登録可能期間
登録は、創作後6か月以内でのみ可能です。
④ 著作権の移転と質権に関する登録
著作権の譲渡と質権の設定を登録できます。
* 登録の効果
この登録は、不動産の権利移転の対抗要件に似た効力があります。
⑤ 出版権の設定
出版権を登録すると、下記の事項を第三者に対抗することができます。
(ⅰ) 出版権の設定、移転、変更若しくは消滅又は処分の制限
(ⅱ) 出版権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅又は処分の制限
カ 著作権の報酬
著作者は、著作物の利用者から使用料を貰うことができます。
キ 著作権の保護期間
著作権の保護期間は、著作者が死亡した翌年の1月1日から50年が経過した時までです。
・ただし、映画の著作物の保護期間は70年です。
* 著作物を利用する際には、著作権者からの許諾が必要ですが、保護期間が経過すると著作権は消滅するので、その後は許諾を得る必要がありません。
(2) 著作権の侵害
ア 著作権侵害の成立要件
下記の内容に合致した場合は、著作権侵害となります(著作権法113条)。
① 著作物に関し
著作物が、第三者に無断で利用されていること。
② 著作権の存続に関し
著作物の著作権が、有効に存続しているものを無断で使用すること。
③ 国内法において保護される著作物に関し
著作権法によって保護を受ける著作物(下記の3つである。)を無断で使用をすること。
(ⅰ) 日本国民を著作者とする著作物
(ⅱ) 最初に日本国内で発行された著作物
* 最初に外国において発行されてから30日以内に、日本で発行されたものを含む。
(ⅲ) 条約により保護の義務を負う著作物
④ 原始的に著作権の目的となる著作物であること
* 著作権法の規定では、憲法その他の法令、国や地方公共団体が発する告示、裁判所の判決書などは著作権の目的とはならないので、これらの著作物を無断使用しても著作権侵害とはなりません。
⑤ 著作権が消滅していないものを無断使用すること。
⑥ 著作権が及ぶ範囲で利用されているものを無断使用すること。
イ みなし侵害
上記「ア」の要件を満たさない場合は、原則として著作権侵害(直接侵害)は成立しません。
・ただし、これらの要件を満たさない場合であっても、直接侵害の予備的行為があれば、著作権侵害と擬制されることがあります。このことを「みなし侵害」といいます。
ウ 著作権侵害行為に対する制裁措置
著作権侵害に対しては、「① 民事上の請求」と「② 刑事罰」の対象となります。
① 民事上の請求
民事上は、下記の請求権が認められています。
(ⅰ) 差止請求(著作権法112条)
著作権者は、著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、下記の行為を請求することができます。
A 侵害の停止
B 侵害の予防
* a 差止請求をするに際し
侵害行為組成物、侵害行為共用物の廃棄を請求することができます。
b 侵害行為組成物の例
違法に複製されたCD、DVDメディア等
c 侵害行為共用物の例
(a) 違法複製に用いられたパソコン
(b) 違法演奏に使用された楽器
d 差止請求の要件等
被告の故意又は過失は要件とされません。
・不可抗力による侵害であっても請求が可能です。
・侵害行為組成物、侵害行為共用物の廃棄も含まれます。
e 「著作権を侵害する」・「侵害するおそれのある」の判断基準時
事実審の口頭弁論終結時と解されています。
(ⅱ) 損害賠償請求
著作権者は、故意又は過失により著作権を侵害し、著作権者に損害を発生させた者に対し、発生した損害の賠償請求をすることができます(民法709条)。
* A 損害賠償を請求し得る期間(民法724条)
a 消滅時効期間
著作権者又は法定代理人が、損害及び著作権侵害を知った時から3年間行使しないときは、請求権は時効によって消滅します。
b 除斥期間
著作権侵害の時から20年を経過したときも、請求権は消滅します。
B 著作権侵害を原因として発生する損害の例
a 侵害の調査費用
b 司法書士・弁護士を訴訟代理人とした場合の費用
c 積極的損害
積極的損害とは、著作権侵害がなければ支払う必要がなかった費用のことです。
d 消極的損害
消極的損害とは、侵害品(海賊版)の流通による正規品の売上減退にように、著作権侵害がなければ得られるはずであった利益のことです。
* 損害額の算定等
(a) 著作権の対象たる著作物
無体物なので、著作権者がこれを立証するのは困難です。そこで、著作権法は、損害の推定規定等を設け著作権者(原告)による立証負担を軽減しています(著作権法114条1項~4項)。
(b) TPP11協定法改正後、対象が著作権等管理事業者に管理されている場合
使用料規程により算出した額(複数ある場合は最高額)を損害金として賠償を請求することができます。
(c) 損害額の算定方法
上記の損害額の算定方法は、補充規定であり、著作権法114条5項及び民法709条に基づいて、それらを超えた損害額の請求も可能です。
(ⅲ) 不当利得返還請求
著作権者は、著作権を侵害することによって利益を得ている者に対し、当該不当利得の返還を請求することができます(民法703条)。
② 刑事罰の例
(ⅰ) 著作権を故意に侵害した場合
10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処されます。また、懲役と罰金が併科されることもあります(著作権法第119条)。
(ⅱ) 法人の代表者、従業員等が著作権を侵害した場合
行為者のほか、当該法人も3億円以下の罰金に処せられます。
* 両罰規定の意義
両罰規定とは、行為した従業員も法人も刑罰を科されることをいいます。(著作権法124条)。
(ⅲ) 技術的保護手段の回避を行うことをその機能とする装置の複製物を公衆に譲渡、貸与した場合等
3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられます。また、懲役と罰金が併科されることもあります(著作権法120条の2))。
(ⅳ) 私的使用の目的をもって、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した場合
2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処せられます。また、懲役と罰金を併科されることもあります(著作権法119条3項)。
* A 過失によって著作権を侵害した場合
刑事罰が科されません。
・刑事罰が科されるのは、著作権を故意に侵害した場合のみであって、過失の場合は刑事罰が科されません。
(3) 環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律(平成30年12月30日施行)
ア 著作物等の保護期間の延長
この法律の発効により、著作者の死後などから50年であった保護期間 が、70年になりました。
* ただし、一度保護期間が切れたものは復活しません。
イ 著作権等侵害罪の一部非親告罪化
(ア) 著作権等侵害罪の一部非親告罪化
TPP協定の発効日である「平成30年12月30日」の前日までは、著作権侵害の多くは著作権者のみが告訴できるという「親告罪」でしたが、その一部について非親告罪となりました。
・非親告罪となることによって、著作権者の告訴がなくても、公訴を提起することができます。
(イ) 著作権等侵害罪が非親告罪化される要件
著作権等侵害罪は、下記の全ての要件を満たす場合に限って、非親告罪となります。
① 対価を得る目的があること。
② 有償著作物等(著作者が、有償で公衆に提供、提示している著作物)について、原作のままの譲渡や、公衆送信又は複製を行うものであること。
③ 有償著作物等の提供、提示により、得ることが見込まれる権利者の利益が不当に害されること。
* (ⅰ) 非親告罪となる例
海賊版を販売したり、ネットで提供したりする行為。
(ⅱ) 親告罪のままの例
コミケ(同人誌の販売を行う催し)などで販売される同人誌などの二次創作物。
ウ 著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段に関する制度整備(いわゆる、アクセスコントロールの回避等に関する措置)
アクセスコントロール(技術的利用制限手段)を不正に回避する行為(著作権者の利益を不当に害しない場合を除く)は、著作権侵害とみなされることになります。
* ① アクセスコントロールの不正回避行為
この行為は、著作権侵害行為とみなされますが、刑事罰の対象とはならず、民事上の請求のみが可能です。
② アクセスコントロールの不正回避を行う装置やプログラムを販売する行為
このような行為は、刑事罰の対象となります。
ウ 配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与
CDはもちろんのこと、インターネットなどを通じて直接配信される音楽(配信音源)についいても、放送などで使用された場合は、使用料を請求することができるようになりました。
オ 損害賠償に関する規定の見直し
(ア) TPP協定発効前に、請求可能だった損害賠償額
TPP協定発効前は、損害賠償額は、下記のいずれかで算出した額とするとされていました。
① 侵害物の数量×正規販売していた場合の利益額
② 侵害者が受けている利益額
③ 使用料として規定している額
(イ) TPP協定発効後に、請求が可能となった損害賠償額
TPP協定発効後は、上記(ア)に加えて、下記の著作権管理事業者によって管理されている場合は、その管理事業者が定めている使用料規定によって算出した額を損害額として賠償請求することができるようになりました。
(著作権管理事業者の例)
① 音楽の場合
(ⅰ) JASRAC
(ⅱ) NexTone
② 書籍の場合
出版者著作権管理機構(JCOPY)