(当事務所の取扱業務)
① 示談書等各種文案書類作成の代理
示談書等各種文案書類作成の相談
② 争訴性がない事案の和解契約締結代理
③ 簡易裁判所における「民事訴訟」・「民事調停」の代理《代理人型訴訟》
法律相談
④ 地方裁判所に提出する裁判書類作成《本人支援型訴訟》
裁判書類作成事務の相談
(目次)
(1) 交通事故の損害賠償請求
(2)「交通事故の種類」と「保険の種類」等
① 交通事故の種類
② 自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)
③ 任意保険
(3) 自動車運転者の交通事故についての法律知識
① 交通事故を起こした場合の責任(民事上・刑事上・行政上)
② 民事上の責任の詳細
③ 損害賠償の対象となる損害項目
④ 損害賠償と自動車保険の活用法
⑤ 損害賠償を解決する方法
(4) 自転車の交通事故
① 自転車事故による責任
② 事故発生時の注意点
③ 自転車事故の損害賠償請求
(5) 交通事故が発生したときの「加害者・被害者」の対処方と「加害者の責任」
① 事故の際の応急措置(加害者)
② 事故の際の応急措置(被害者)
③ 加害者の責任
(6) 運行供用者の責任等
① 運行供用者責任
② 保有者と運行供用者との関係
③ 運転助手の責任
(7) 自動車登録の意義
(8) 交通事故に関する当事務所の具体的業務方法
① 行政書士の業務
② 司法書士の業務
(1) 交通事故の損害賠償請求
交通事故に遭遇したときは、その損害賠償請求のため、加害者若しくは被害者が契約している保険会社と交渉するのが通例です。
・その場合、保険会社が提示した金額と請求者側で考えている金額に相違があるというケースが間々みられます。そのような疑問がある場合は、法律の専門家に相談するのがベターです。
(2) 「交通事故の種類」と「保険の種類」等
ア 交通事故の種類
自動車の運転中、過失によって、人身の死傷事故を起こしたと
交通事故の種類は、下記のとおりです。
① 物損事故
車両のみが破損し、人的な被害が出なかった事故のことです。
② 人身事故
人的被害が出た事故のことです。
* ただ、交通事故のほとんどは物損事故です。
イ 保険の種類
保険の種類は、下記のとおりです。
① 自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)
② 任意保険
ウ 自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)
自動車を保有する場合、必ず自賠責保険に加入しなければなりませんが、この自賠責保険は、「死亡」や「傷害」といった「人身に対する損害」に対して支払われるもので、物損事故には自賠責保険は適用されません。
エ 任意保険
(ア)「物損事故」と「人身事故」の保険対象
① 物損事故の場合
物損事故の場合に認められる損害は、原則として「財産的損害」のみです。
* 物損事故の場合は、慰謝料などの精神的損害は、原則として認められません。
② 人身事故の場合
人身事故の場合は、「医療費・休業損害・精神的慰謝料」も保険の対象となります。
(イ)「物損事故」・「人身事故」の損害賠償の対処方
「物損事故」・「人身事故」の損害賠償に対処するためには、「自賠責保険」のほかに「任意保険」に加入していることが肝要です。
(ウ) 任意保険契約の種類
任意保険契約には、下記の2種類があります。
① 自動車につき締結される任意保険
自動車一台ごとに締結する任意保険のことです。
② 自動車運転者損害賠償責任保険(いわゆる「ドライバー保険」)
自動車を保有していないが、他人から借りた自動車を運転する機会のある人を対象とした任意保険のことです。
(エ) 任意保険で填補される損害の種類
任意保険には、これにより担保される危険に対応して、下記のような種類あります。
① 対人賠償保険
被保険自動車(保険証券記載の自動車)の所有、使用又は管理に起因して、他人の生命又は身体を害し、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害の填補を目的とする保険です。
* (ⅰ) 被保険者の範囲の例
A 記名被保険者(保険証券記載の被保険者)
B 記名被保険者と密接な関連のある者
(例) 記名被保険者の配偶者等
(ⅱ) 任意保険で填補される場合とは
填補されるのは、損害の額が、「自賠責保険」や「自賠責共済」によって支払われる金額を超過する場合の超過額です。
・そのため、対人賠償保険は、自賠責保険の「上積み保険」あるいは「上乗せ保険」などといわれています。
(ⅲ) 填補の対象となる損害賠償責任の内容
A 治療費
B 休業損害
C 将来の逸失利益
D 慰謝料等
(ⅳ) 対人賠償保険に保険金額の記載がある場合
被害者一名当たりの支払限度額を意味します。
* なお、保険金額を無制限とすることもできます。
・現在は、保険金額無制限として保険契約を締結しているのが通常です。
② 対物賠償保険(無制限の付与可能)
自動車の所有、使用、又は管理によって、他人の財物を損傷させ、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担した場合に、これによって被る損害を填補する保険です。
* (ⅰ) 被保険者の範囲の例
対人賠償保険と同じです。
(ⅱ) 填補の対象となる損害賠償責任の内容
被保険者が負担した法律上の損害賠償責任の額で、下記のようなものが対象となります。
A 被害財物の交換価格相当額
B 修理費
C 休車損害
D 代車費用
E 店舗破損による営業損失等の間接的損害
(ⅲ) 対物超過修理費特約
対物賠償保険では、自動車の時価額(事故当時の車両時価額)しか填補されませんが、修理費が自動車の時価額を上回った場合には、この特約を付加しておくことによって、自動車の時価額に金50万円(ほとんどの損保会社はこの金額です)をプラスした金額が保険の対象金額となります。
③ 自損事故保険
例えば、被保険自動車を運転中の者が運転を誤って、電柱に衝突して負傷したり、居眠り運転中にセンターラインをオーバーして対向車と衝突して負傷したような場合に、被保険者に生じた損害について自賠法3条に基づく損害賠償請求権が発生しない場合に、保険金を支払う任意保険です。
(ⅰ) 保険会社の支払責任の発生
保険会社の支払責任が発生するのは、事故の直接の結果として、被保険者が死亡したり、後遺症が生じたり、又は介護や医療を必要とする状態となったときです。
(ⅱ) 被保険者とは
下記の者です。
A 被保険自動車の保有者、運転者
B 上記以外の者で、被保険自動車の正規の乗用装置又は当該装置のある室内に搭乗中の者
④ 無保険車傷害保険
被保険者が、無保険自動車の所有、使用又は管理に起因する事故で死亡したり後遺障害を負ったりした場合に、被保険者又はその父母、配偶者若しくは子供の被った損害を填補することを目的とする保険です。
(ⅰ) 保険が支払われる場合
上記の損害について、法律上の損害賠償責任を負担する者(賠償義務者)がある場合に限られます。
(ⅱ) 被保険者とは
A 記名被保険者又はその配偶者
B 記名被保険者又はその配偶者の同居の親族
C 記名被保険者又はその配偶者の別居の未婚の子
D 上記以外の者で、被保険自動車の正規の乗用装置又は当該装置のある室内に搭乗中の
(ⅲ) 無保険自動車とは
下記のことをいいます。
A 被保険者を死傷させた相手方自動車が、対人賠償保険等を付していない場合
B 対人賠償保険等を付しているが、賠償義務者の故意、運転年齢条件違反などのため、その事故について保険金が支払われない場合
C 対人賠償保険を付しているが、その保険金額が被保険自動車の無保険車傷害保険の保険金額より低い場
D 当て逃げ等で相手方自動車が不明の場合
⑤ 搭乗者傷害保険
被保険自動車に搭乗中の者が、自動車の運行に起因する事故、又は自動車の運行中若しくは落下中の他物との衝突、火災、爆発又は自動車の落下により死傷した場合に、定額の保険金を支払う保険のことです。
* 被保険者
被保険者は、被保険自動車の正規の乗車装置又は当該装置のある室内に搭乗中の者に限られます。
⑥ 車両保険
被保険自動車が、「衝突、接触、墜落、火災、盗難、台風、洪水、高潮」などの偶然の事故によって損害を受けた場合に、保険金が支払われる保険のことです。
(ⅰ) 被保険者
被保険者は、被保険自動車の所有者であり、車検証の所有者欄に記載された者です。
* 下記の者が被保険者となります。
したがって、これらの場合、自動車を使用している買主などは、例え所有者でなくとも、売主やリース業者との契約上、売主やリース業者を被保険者とする車両保険を付ける必要があります。
A 所有権留保付売買契約の場合の被保険者
売主(自動車ディーラー・クレジット会社等)
B リース契約の場合の被保険者
リース業者
(ⅱ) 保険金の定め方
A 初めての登録から1年以内の新車の場合
新車価格
B 初めての登録から1年以上経た自動車
中古車価格
⑦ 示談代行付保険
対人・対物事故を起こした場合、その損害賠償問題の解決を、加害者又は被害者である被保険者に代わって保険会社が行うサービスのことです。
* 現行の自動車保険は、この「示談交渉サービス」が付いているのが一般的です。
⑧ その他の特約
(ⅰ) その他の特約として、下記のものがあります。
なお、内容の詳細については、保険会社へお問い合わせください。
A 運転者に関する特約
a 運転者限定特約
運転者を制限することで、保険料が安くなる特約です。
b 子ども特約
自動車保険の年齢条件を引き下げることなく、子どもの運転も補償対象にできる特約です。
c 臨時運転者特約
運転者限定とは反対で、契約者やその家族以外の人が運転している場合でも補償してもらえる特約です。
B 自動車への補償を厚くする特約
a 免責ゼロ特約
1回目の車両事故のみ、自己負担をしなくてもいい特約です。
b 車両新価特約
保険契約の自動車が全損になった場合、又は修理費が新車価格相当額の50%以上となった場合、実際に掛かる自動車の再取得費用(車両本体価格+付属品+消費税)又は修理費について、新車価格相当額を限度にお支払いする特約です。
* また、所定の要件を満たす場合は、再取得時諸費用保険金として、新車価格相当額の20%(金40万円限度)を支払ってもらえます。
c 車両全損時諸費用補償特約
車が全損となった場合に、諸費用を補償してくれる特約です。
d 他者運転危険担保特約
他人の車を運転しているときに事故を起こした場合でも補償してくれる特約です。
e 車両全損修理時特約
車両保険の支払の対象となる事故において、修理費が車両保険金額を超過した場合は、超過した修理費について、金50万円を限度に支払う特約です。
f 車両全損時諸費用補償特約
車が全損となった場合に、諸費用を補償してくれる特約です。
C 自動車以外の「人や物」への補償を厚くする特約
a ファミリーバイク特約
原動機付き自転車と、排気量が125cc以下のバイクを運転中に事故を起こした場合に補償してくれる特約です。
b おりても特約
車を降りてからの怪我などを補償してくれる特約です。
c 個人賠償責任特約
自動車以外の事故を起こした場合に、被保険者及び同居の家族を対象に補償してくれる特約です。
(例)
・犬の散歩をしていて通行人に噛みついてしまった。
・自転車事故を起こしてしまった。
・運動中に相手に怪我をさせてしまった。
d 身の回り担保特約
通常車両保険では自動車事故を起こした場合、トランク内の物品は補償の対象外となります。それを補償してくれるのが「身の回り担保特約」です。
D その他の特約
a 弁護士費用特約
示談交渉をするときに支払う「弁護士への報酬」や「訴訟費用」を補償してくれる特約です。
b 女性のお顔手術費用特約
自動車事故を起こしたとき、乗車している女性が顔に怪我をしてしまい手術が必要となったときに保険金が支払われる特約です。
c 地震・噴火・津波による車両全損時一時特約
地震・噴火・津波により、保険契約した自動車のフレーム、サスペンション、原動機などに所定の損害が生じた場合や自動車が流失又は埋没し発見されなかった場合、あるいは運転席の座面を超えて浸水した場合などに、「地震・噴火・津波による車両全損時一時金」として金50万円が支払われる特約です。
* なお、車両保険金額が金50万円を下回る場合は、その金額が支払われます。
d ロードアシスタンス特約
自動車が事故、故障等で走行不能となったことにより発生するレッカー車の費用及び応急処置費用に対し、金15万円(ほとんどの損保会社がこの金額です)を限度に保険金を支払う特約です。
e ロードアシスタンス運搬後諸費用特約・ロードアシスタンス事業用特約
ロードアシスタンス特約の支払対象となる事故、故障又はトラブルにより走行不能となり、かつレッカー牽引された後に、被保険者が負担した下記の費用を一定の限度内で支払う特約です。
記
宿泊費用・移動費用・引取費用・代車費用
f 事故・故障時代車費用特約
ロードアシスタンス特約の支払対象となる事故、故障又はトラブルにより走行不能となり、かつレッカー牽引された場合、又は車両保険の支払対象となる事故により契約の自動車に損害が生じた場合に、修理などで自動車が使用できない期間など、所定の支払対象期間のレンタカー費用を支払う特約です。
(3) 自動車運転者の交通事故についての法律知識
ア 交通事故を起こした場合の責任
交通事故を起こした場合、自動車運転者は「① 民事上」、「② 刑事上」、「③ 行政上」の3つの責任を負うことになります。
① 民事上の責任(損害賠償責任・民法709条、710条、711条)
加害者は、被害者の財産・身体等に対する損害賠償責任を負います。
② 刑事上の責任(刑罰)
加害者は、下記のような刑罰に処せられます。
・ただし、下記は、平成30年1月1日現在の法律の規定です。
(ⅰ) 刑法上の刑罰
業務上過失致死傷(刑法211条)
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金に処する。
・重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
(ⅱ) 自動車運転処罰法の刑罰
A 自動車運転処罰法の制定
自動車運転による致死傷に関し、平成25年11月27日に、「自動車運転処罰法」という名前の法律が制定され、刑法から独立して規定されました。
・この法律は、平成26年5月20日から施行されました。
* 自動車運転処罰法の正式名称
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰にする法律」といいます。
B 危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法2条)
下記の行為により、人を死に至らしめたり、怪我をさせた場合に適用され、下記の刑罰が科されます。
(危険運転行為の内容)
a アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
b 自動車の進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
c 自動車の進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
d 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
e 赤信号又はこれに相当する信号等を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
f 通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
(危険運転致死傷罪の刑罰)
a 人を負傷させた場合―15年以下の懲役
b 人を死亡させた場合―1年以上の有期懲役
C 過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
・ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
D 免脱罪・加重規定等があります。
a 過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱の罪(自動車運転処罰法4条)
b 無免許運転による加重の罪(自動車運転処罰法6条)
E 業務上過失致死傷罪・過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪の関係
a 過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)
過失運転致死傷罪の適用には、飲酒や薬物の影響で正常な運転が困難な状況にあったことや、危険を認識しながら故意によって発生させた事故であることを立証しなければなりません。
* その立証ができなければ、「自動車運転処罰法5条の過失運転致死傷罪」ではなく、「刑法211条の業務上過失致死傷罪」が適用されます。
b 業務上過失致死傷罪(刑法211条)・過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)・危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法2条)の関係
上記の結果、過失運転致死傷罪は、業務上過失致死傷罪(刑法211条)と危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法2条)の中間にあるといわれています。
c 業務上過失致死傷罪・過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪の刑罰の比較
(a) 業務上過失致死傷罪(刑法211条)
5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金
(b) 過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)
7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金
(c) 危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法2条)
・負傷事故の場合―15年以下の懲役
・死亡事故の場合―1年以上の有期懲役
(ⅲ) 道路交通法上の刑罰
下記の場合、道路交通法違反として罰則(懲役・罰金等)が科されます。
記
a 無免許運転の禁止(道路交通法64条、117条の3の2第1項第1号)
b 酒気帯び運転等の禁止(道路交通法65条第1項、117条の2第1項第1号)
c 危険防止の措置(飲酒検知拒否等で警察官の停止に従わなかった者:道路交通法67条、119条第1項第8号)
d 無免許の者に対する自動車等の提供(道路交通法65条第2項、117条の2第1項第2号)
e 酒類の提供(道路交通法65条第3項、117条2の2第1項第5号)
f 酒気帯び運転者への同乗(道路交通法65条第4項、117条の3の2第1項第3号)
g 交通事故の場合の措置(交通事故を起こした場合の警察官への報告義務等:道路交通法72条第1項、117条)
h 速度違反(道路交通法22条第1項、118条第1項第1号)
③ 行政上の責任(「免許の停止・取消し」、「反則金」)
(ⅰ) 免許の停止・取消し
交通事故を起こすと、違反の態様によっては「免許の停止」や「取消し」の対象となります。
(ⅱ) 交通反則通告制度(反則金)
道路交通法には、交通反則通告制度があります。これは、交通違反の度に刑罰を科していたのでは、国民のほとんどが前科者となりかねません。そのような ことを回避するために、軽微な交通違反については、反則金を納めれば刑事訴追しないということにしたのです。
イ 民事上の責任の詳細
「民事上の責任」と「運行供用者責任」は、下記のようになります。
* 運行供用者責任の意義
自賠法は、「自動車という危険なものの運行を支配している者」や「自動車から利益を受けている者」に、事故そのものに直接関係がなくても賠償責任を負わせています。
・これらの者が負わなければならない責任を、運行供用者責任といいます。
(ア) 民法上の責任
故意・過失による行為によって他人に損害を与えると、加害者はその人が被った 損害を賠償しなければなりません。これは、不法行為責任であり、民法709条 以下に定められています。
・交通事故の場合も同様です。自動車の運転者が運転を誤って人に損害を与えれば、民法709条の不法行為責任に基づき損害賠償義務を負います。
(イ) 民法709条と自動車損害賠償保障法(自賠法)第3条の関係
加害車の運転者がその車の所有者であるときに、被害者が加害者に損害賠償を求める法的根拠は、民法709条(不法行為責任)及び自賠法3条(自動車損害賠償保障法の責任)のどちらも根拠になります。
・そこで、どちらか一つの責任について立証できれば損害賠償請求ができます。
あ 責任追及の要件
① 民法709条を根拠とする損害賠償請求の場合の被害者の立証事項
(ⅰ) 加害者の違法な行為によって損害が生じたこと。
(ⅱ) 加害者に故意、過失があったこと。
② 自賠法3条を根拠とする損害賠償請求の場合の被害者の立証事項
(ⅰ) 相手が、その自動車の運行供用者であること。
(ⅱ) その運行によって生命・身体を害され、それによって損害が生じたこと。
い 運行供用者が、自賠法3条による責任を免れるには、下記のことを証明する必要があります。
① 運行供用者及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと。
② 被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと。
③ 自動車に構造上の欠陥又は機能上の障害がなかったこと。
う 自賠法3条の損害賠償責任は、人身事故のみに適用されます。
自賠法3条に基づく損害賠償責任は、人の生命・身体を害したことによって生じた損害賠償にしか適用されません(対人事故に限られます)。
* 対物事故による損害は、民法709条の不法行為の原則によって処理することになります。
① 運転者の責任追及
民法709条の不法行為責任の規定によります。
② 運転者の会社の責任追及
民法715条の使用者責任の規定によります。
ウ 損害賠償の対象となる損害項目
交通事故の損害賠償については、事故の被害の態様から、「① 人身事故 ((ⅰ)傷害による損害、(ⅱ)後遺症による損害、(ⅲ)死亡による損害)」と「② 物損事故」に大別されます。
(ア) 人身事故の場合
あ 傷害事故による損害
(あ) 狭義の傷害
治療の結果、ほぼ元に戻るような傷害のことです。
(狭義の傷害による損害の例)
① 財産的損害
治療費、付添人費用、雑費・通院交通費、休業損害等
② 精神的損害
入院通院治療に対する慰謝料
(い) 後遺症を伴う傷害
治療を受けても元に戻らない傷害のことです(例:片足切断、失明、むち打ち症等)。
(後遺障害による損害の例)
① 財産的損害
後遺障害による逸失利益
② 精神的損害
後遺障害に対する慰謝料
い 死亡事故による損害
下記「①、②」の合計額となります。
① 財産的損害
(ⅰ) 死亡に至るまでの「治療費、付添人費用、雑費・通院交通費、休業損害」等
(ⅱ) 葬儀費用
(ⅲ) 生存していたなら取得したであろう逸失利益
② 精神的損害
死亡慰謝料
* (ⅰ) ただし、「a 死亡した被害者に対する慰謝料」と 考えるのか、「b 残された遺族に対する慰謝料」と考えるのか説が分かれていますが、結果的には、どちらの説をとっても同じ金額となります。
(ⅱ) 内縁の配偶者も、損害賠償請求権を有します。
(イ) 物損事故の損害の算定方法
自動車事故によって、「自動車・店舗・商品・塀・電柱」などいわゆる物品が破損された物損事故の損害について説明します。
あ 物損事故に適用される法律
(あ) 物損事故と自賠責保険の関係
① 自動車事故の加害者(不法行為者)の損害賠償責任についての法律は、民法709条(不法行為者自身の責任規定)や民法715条(不法行為者の使用者の責任規定)があります。
② しかし、昭和30年に自動車損害賠償保障法(自賠法)が成立し、自動車事故のうち人身事故については、自賠法が民法より優先して適用されることになりました。
③ 物損事故については、自賠法は適用されず、また、自賠責保険も適用されません。
(い) 被害者の立証責任等
「自賠法」と「民法709条、715条」との差異は、立証責任の点でも相違しています。
① 民法における立証責任
民法では、加害者に過失があったことを、被害者が立証しなければなりません。
② 自賠法における立証責任
自賠法では、加害者が自ら自分の無過失を立証しない限り、加害者に過失があるとされます。
・ただし、過失相殺は別途、検討対象となります。
③ 損害額の証明
民法上でも自賠法上でも、被害者が受けた損害額については、被害者自身が証明しなければなりません。
④ 任意保険(対物保険)
物損事故については、自賠責保険の適用はないので、自動車所有者はご自分で対物の任意保険を掛けておくことをお奨めします。
い 車両損害の認められる範囲
(あ) 自動車を破損した場合
① 損害額の目安
(ⅰ) 修理費相当額
車の修理が可能なとき。
(ⅱ) 評価損価格
車を修理し、修理が完成しても評価損(又は「格落ち損」という)があるとき。
(ⅲ) 全損したときは、下記の価格
事故直前の自動車の価格(中古車価格)から、全損自動車の下取り価格(スクラップ価格)を差し引いた額。
② 修理費
自動車が修理可能なときは、修理費が損害となり、加害者は被害者に対し支払義務を負います。通常、この修理費は、自動車修理工場の「見積書」や「請求書」の金額を信用して処理されています。
* 修理費が、自動車の価格(事故直前の中古車価格)より高額となる場合(判例)
(ⅰ) 修理費全額を支払え。
(ⅱ) 自動車の価格(事故直前の中古車価格)より高額の修理費は認めない。
・つまり、事故直前の中古車価格を限度とする。
上記2つの判例がありますが、(ⅱ)の判例が有力です。
③ 「評価損」(又は「格落ち損」という)の場合
破損した被害車を修理したにもかかわらず、原状回復ができない損傷が残り、あるいは事故歴が付いたことにより商品価値の下落が見込まれる場合、これを「評価損」といいます。
* 評価損の算定方法(判例)
現実に修復されない瑕疵が残存し、かつ下取りされない限り、その評価価値の下落は将来の予測の問題になるので、評価の基準(評価損の額)をどのように算定するかという問題が生じます。その評価にはいくつかの方式がありますが、修理費基準方式が一般的な方式です。
(修理費基準方式の内容)
修理費の何%とするものです。
* 一般的には30%程度が多く、修理の内容、修理費の額によっては、20%~15%程度というものもあります。
(い) 修理不能の場合
全損とは、修理不能の場合ですが、それ以外にも、修理費が高額になり、事故直前の車の価格よりも修理費の方が高くなってしまう場合も、全損に準じて考えるのが妥当です。
(う) 休車料や代車料
事故に遭い、車を使えなくなった場合、被害者は「休車料」か「代車料」のどちらか一方の請求ができます。
* 言葉の意味等
① 休車料とは
事故車の修理期間中とか新車が届くまでの期間中、その車を使用できなかったことによって生じた減収分のことです。
② 代車料とは
事故車の修理期間中とか新車が届くまでの期間中、代わりの車を借りた場合の借料のことです。
③ 営業車の場合
休車料又は代車料の請求ができます。
* 両方を請求することはできません。
④ 自家用車の場合
営業ではないので、代車料のみ請求することができます。
(え) 自動車同士の衝突と過失相殺
衝突した車両の修理費合計額を算出し、その合計金額を過失割合で負担します。
(事例)
A車とB車が衝突して、「A車の修理代が30万円、B車の修理代が10万円(損害合計額は40万円)」で、過失は、「A車側が8割、B車側が2割」だった場合
(結論)
Aの負担は32万円(40万円×0.8)、Bの負担は8万円(40万円×0.2)となり、Bは自分の過失が2割しかないのに、Aから8万円しか取れないので、2万円は自己負担となります。
・Aとしては不満でしょうが、物損事故の損害賠償額の計算方法はこのようになっています。
う 自動車の破損以外の損害
物損事故の場合、破損対象は「店舗、商品、塀、電柱」など、自動車以外の物品を破損することもあります。この場合には、物損に対する損害賠償の問題とともに、営業ができなかったことによる補償の問題も起こってきます。
(あ) 修理費と営業補償(休業補償)
① 修理費
(ⅰ) 建物の復元費用
(ⅱ) テーブル等は原則として中古価格。
* ただし、中古価格が分からない場合は、むしろ新品を揃える価格(損壊したものと同程度の品物の価格)を損害とみるほかありません。
② 営業補償(休業補償)
(例えば、食堂の場合)
食堂の一日平均の売上額から支出しないで済んだ経費を差し引いた額に、営業できなかった日数を掛けた金額となります。
(い) 物を全損した場合
例えば、ブロック塀や電柱を破損した場合、「前と同じ構造の物を新しく作る価格」となります。
え 物損を填補する損害保険
物損の場合、自賠責保険の適用はありません。以下に記載するのは、すべて任意保険(加入を強制されない保険)です。
(あ) 対物賠償保険
① 自分の所有ないし管理している自動車が、他人の自動車、家、塀その他の財物を破損し、加害者が被害者に対し、損害賠償責任を負担することになったときに、加害者に支払われる保険です。
② 被害者請求の制度(保険金の請求に当たり、被害者からの請求が要件となること)はありません。
③ 契約者側が、酒酔い運転で事故を起こした場合にも支払 われます。
④ もらい事故対策のため、対物賠償保険を付しておくこと を推奨する特約
A 弁護士特約
B 対物超過修理費特約
(い) 車両保険
自分の自動車が、交通事故、火災、盗難などによって破損又は喪失したときに、その損害を契約者に支払ってくれる保険です。
・契約者(所有者)が自分の運転ミスで自分の車を破損したときも、保険金支払対象となります。
・他の車にぶつけられたときも、保険金支払対象となります。
* この場合、「① 自分の車両保険」を先に適用するか、「②相手方の対物賠償保険」を先に適用するかは自由です。
(う) 自動車運転者損害賠償責任保険
この保険は、通称「ドライバー保険」とか「ペーパー保険」といわれています。
・この保険は、「対人」と「対物」があります。
・前記の対物賠償保険は、自動車に掛ける保険ですが、ドライバー保険は、人(運転免許証のある運転者)に掛ける保険です。
(え) 自家用自動車保険
これは、昭和51年に保険会社が売り出した保険で、「① 対人賠償保険 ② 自動車事故保険 ③ 無保険車傷害保険 ④ 搭乗者傷害保険 ⑤ 対物賠償保険」の5つの保険をセットしたものです。
・現在は、車両保険も基本契約に組み込んだ自家用自動車総合保険が主流です。
・この保険の特色は、保険会社が契約者のために示談代行をする点にあります。
(ウ) 損害の総額に影響する事由(過失相殺・好意乗車)
あ 過失が双方にあった場合
交通事故は、加害者・被害者の双方に過失があったことにより発生することが多いです。したがって、公平の見地からも過失に応じて損害を分担することになります。
・実務では、日弁連交通事故相談センターが発表した「過失割合認定基準表」を参考にして、損害の算定をしています。
* 過失割合認定基準表の意義
昭和40年代に入り、過去の裁判例を基にして、事故の態様ごとに過失の割合をパターン化した表のことです。
・過失割合認定基準表が利用されるのは、「① 任意保険を請求する場合」と、「② 民事訴訟で損害賠償を請求する場合」です。
い 好意乗車
車を電柱にぶつけるなどして、好意で乗せてあげた同乗者に怪我をさせた場合も、全く無関係な人に損害を与えた場合と同じように損害賠償しなければなりません。
エ 損害賠償と自動車保険の活用法
交通事故の適切な解決には、自動車保険への加入が必須条件です。
(ア) 自動車保険の種類
あ 加入が強制かどうかによる区別
① 強制保険(自賠責保険:対人賠償責任保険です。)
加入が強制されている保険のことです。
② 任意保険(対人・対物に適用される賠償責任保険です。)
加入するかしないかは、本人の自由意思に任されている保険のことです。
い 「対人賠償責任保険」と「対物賠償責任保険」
① 対人賠償責任保険(自賠責保険・任意保険)
被害者の生命・身体を害したことによって損害を填補する保険です。
② 対物賠償責任保険(任意保険)
被害者の所有物などを破損したことによって生じた損害を填補する保険です。
う 任意保険の種類
① 対人賠償責任保険
上記「い」①のとおり
② 対物賠償責任保険
上記「い」②のとおり
③ 自損事故保険
事故によって損害を受け、誰にも損害賠償を請求することができない場合のための保険です。
④ 無保険車傷害保険
相手の車が無保険のため、相手から損害賠償を受けられない場合のための保険です。
⑤ 搭乗者傷害保険
保険契約している車に搭乗していて、事故により怪我をしたり、死亡したときに出る保険です。
⑥ 車両保険
保険契約している車が、事故により破損したときに出る保険です。
(イ) 賠償責任保険の性質
交通事故を起こしたとき、加害者や運行供用者などの加害者側が被害者に対してその被った損害を賠償しなければなりませんが、この加害者側の負担する損害賠償額を填補するのが「賠償責任保険」です。
(ウ) 保険金額と賠償額
自動車保険は保険金額が定められていますが、対人・対物賠償責任保険の保険金額は、事故の発生により支払われる保険金ではありません。
・これは、支払われる保険金の最高限度額を示すものです。
(エ) 自賠責保険と任意保険
自賠責保険と任意保険の「対人保険」は、被害者の生命・身体を害したことによって生じた損害の賠償責任を填補するものです。
・任意保険の「対人保険」は、自賠責保険で賠償できなかった部分を填補するものです。
* 人身傷害の場合の実務上の取扱い
人身事故の場合は、まず、自賠責保険を適用し、不足額があった場合に任意保険を適用するのが原則ですが、実務上は、事故後、取り敢えず、損害保険会社が被害者に医療費等を支払い、損害額が確定した後に、自賠責保険に対し求償する取扱いをしています。
あ 自賠責保険(対人のみ対象となる保険)
自賠責保険は、強制保険という性格から保険料も安く、保険金額も低額になっています。
・傷害による損害については、保険金額は金120万円しかなく、医療費を支払えばほとんど余剰はなくなってしまいます。
・死亡による損害、後遺症による損害についても、加害者に一方的な過失があった場合などは、自賠責保険では賠償することはできません。そこで、任意保険が必要となってくるのです。
・自賠責保険の保険金額は、死亡、傷害、後遺障害の場合で異なります。
記
(平成30年1月1日現在の自賠責保険の最高額)
① | 死亡による損害 | 金3,000万円 |
② | 傷害による損害 | 金120万円 |
③ | 後遺障害による損害 | 各「後遺障害の等級」ごとに定められた保険金額 |
い 任意保険(対人・対物が対象となる保険)
任意保険の保険金額は、対人保険については、一人いくらという決め方をします。
(例)
① 傷害・後遺障害の場合
任意保険の保険金額を金5,000万円と決めると、被害者が怪我をして後遺症が残った場合、自賠責保険で填補されない傷害部分と後遺障害部分を合わせた損害額が金5,000万円になるまで任意保険で填補されます。
② 死亡の場合
任意保険の保険金額を、金5,000万円と決めると、自賠責保険の金3,000万円と任意保険の金5,000万円の「合計の金8,000万円」まで填補されます。
(オ) 自賠責保険の特質
あ 被害者請求
自賠責保険では、被害者が直接保険会社に請求して賠償金の支払を受けることができます(自賠法16条)。
い 重過失による減額
損害賠償額を決める場合、被害者側の過失も考慮され、過失の割合に応じて加害者側の賠償額が少なくなります。
* 重過失による減額の意味
自賠責保険では、任意保険と相違し、被害者に重大な過失がない限り賠償金を減額することはありません。
・この減額のことを、「重大な過失による減額」といいます。
う 自賠責保険請求権の消滅時効
自賠責保険の被害者請求権は、事故発生時から3年で消滅時効にかかります(自賠法19条)ので、3年以内に請求することが肝要です。
・入院期間が長引く場合は、被害者請求をするなどして、時効中断の手続をとるべきです。
(あ) 自賠責保険の消滅時効
自賠法16条1項及び17条1項の規定による請求権は、被害者又はその法定代理人が「① 損害」及び「② 車の保有者」を知った時から3年を経過したときは、時効によって消滅します。
* ① 自賠法16条1項
被害者は、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払を請求することができる。
② 自賠法17条1項
被害者は、保険会社に対し、損害賠償額の支払のための仮渡金の支払を請求し得る。
(い) 消滅時効中断の方法
保険会社が保険金を支払えば、債務承認(支払時から3年間は消滅時効にかからない。)となるし、保険会社から「債務承認書」にサインしてもらうことによって時効中断となります。
(う)「自賠責保険請求権の消滅時効」と「不法行為による損害賠償請求権の消滅時効」
① 自賠責保険請求権の消滅時効
A 加害者請求権の消滅時効(自賠法23条、保険法95条)
損害賠償金の支払を請求し得る時から3年で時効消滅します。
B 被害者請求権の消滅時効(自賠法19条)
下記のとおりとなります。
a 傷害による損害
事故時から3年
b 後遺障害による損害
症状固定時から3年
c 死亡による損害
死亡時から3年
② 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(民法724条)
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、被害者又はその法定代理人が「損害」及び「加害者」を知った時から3年間行使しないときは時効によって消滅します。
・不法行為の時から20年を経過したときも同様となります(除斥期間)。
* (ⅰ) そこで、何らかの事情で請求が遅れ、時効にかかる恐れがある場合には、時効中断の手続をとる必要があります(民法147条以下)。
(時効中断事由:民法147条)
a 裁判上の請求
b 差押
c 仮差押
d 仮処分
e 承認
(ⅱ) 消滅時効期間が経過しそうになったとき
あらかじめ保険会社に連絡し、その承認をとっておくのも、消滅時効を中断する方法の一つです。
(え) 後遺障害がある場合
自賠責保険では、症状固定の日を損害の発生日とし、その時から損害賠償請求権の消滅時効が進行するとしています。
え 任意保険の特質
最近の任意保険の加入者のかなりの人が、「自家用自動車総合保険」に加入しています。
* 自家用自動車総合保険における「示談代行」とは
事故を起こした加害者や運行供用者に代わって、保険会社が被害者と示談交渉を行うというものです。
・この保険に加入しているときは、ほとんどの場合、保険会社が示談交渉をします。
・もし、示談が成立せず裁判になったときでも、ほとんどの場合、保険会社が、その顧問弁護士を加害者側の代理人として訴訟を提起してきます。その場合、加害者側の弁護士費用も保険会社が負担してくれます。
オ 損害賠償を解決する方法
(ア) 当事者を確定する
まず、当事者を確定しなければなりません。
あ 事故の当事者が存在している場合
被害者が損害賠償請求権者で、加害者あるいは運行供用者が賠償義務者となります。
い 被害者が死亡した場合
死亡した被害者の相続人全員が、加害者側に対して賠償請求することができます。
① 被害者に内縁の配偶者がいるとき
内縁の配偶者も、損害賠償請求権を有します。
② 被害者の近親者
被害者の近親者も、損害賠償請求が認められることがあります。
(イ) 損害を証明する資料の収集
損害については、被害者が証拠を収集して証明する責任を負います。
(ウ) 事故の態様を知る
あ 損害賠償額を確定するに当たって
損害賠償額を確定するに当たっては、過失割合が大きく影響します。
・過失割合を判断する上での大きな要素は、事故態様です。
い 事故態様を知るための重要な要素
事故態様を知るための重要な要素は、下記のような刑事記録です。
① 事故直後の当事者の供述
② 実況見分調書からなる刑事記録
(エ) 当事者間で話し合いがつかなかったとき
被害者と加害者側間で、事故の損害賠償について、示談が成立しない場合が多々あります。そのような場合は、最終的には裁判で決着をつけるしかありません。
あ 決着をつける方法
① 当事者間で、「和解」や「示談」によって解決する方法
② 財団法人交通事故紛争処理センターに申し立てる方法
これは、加害者が任意保険に入っているときにとりうる方法です。
* (ⅰ) 申立てがあると処理センターでは
保険会社の担当者を呼び出し、被害者との示談の斡旋をしてくれます。
(ⅱ) 示談に至らないときでも
場合によっては、処理センターの審査委員会が損害賠償額について、裁定という判断を下すこともあります。
③ 裁判手続(調停申立・訴訟提起)をとる方法
(ⅰ) 調停
話し合いによって事件の解決を図ろうとするものです。
・しかし当事者間に合意が成立しなければ、調停は不調となり事故の解決ができません。
(ⅱ) 訴訟
裁判官が判断(判決)してくれますので、最終的な解決方法となります。
(オ) 訴訟と「弁護士・司法書士の費用」
あ 当事者間で話し合いがつかなければ
被害者としては、最終的には訴訟にするにしかありません。
い 訴訟を提起するには
弁護士や司法書士に依頼することになりますが、依頼することにより費用が発生します。
う 交通事故訴訟(不法行為による訴訟)
裁判が判決で終了する場合は、弁護士等の費用(弁護士・司法書士に掛かった費用)が損害の一部として認められます。
* (ⅰ) 裁判を起こしても、裁判の途中で和解が成立した場合
弁護士等の費用を請求しないのが慣例となっています。
(ⅱ) 弁護士等の費用の意味
判決で認められる弁護士等の費用は、被害者(原告)が弁護士・司法書士と委任契約した「弁護士・司法書士の報酬」の額ではなく、交通事故と相当因果関にある金額に限られ、一般的には裁判所で認められた損害額(過失相殺され、既払金も控除された金額)の1割 程度が認められる事例が多いです。
(4) 自転車の交通事故
ア 自転車事故発生による責任
自転車事故で他人に怪我を負わせたり、物を損壊したりすると、自動車事故と同じように「① 民事上 ② 刑事上 ③ 行政上」の責任が生じます。
イ 事故発生時の注意点
まず、警察に届け出て「実況見分、現場検証」を経た上で事故証明を取得することが肝要です。
あ 事故証明は
下記の証拠資料となります。
① 民事上 | : | 損害賠償の請求、被害者の慰謝料の算定 |
② 刑事上 | : | 刑事罰 |
③ 行政上 | : | 行政罰 |
い 被害者の救護
事故を起こした場合は、救急車を呼ぶなどの緊急処置が必要です。何も処置せずその場から立ち去ったりすると、「ひき逃げ事故」として、重い罰が科されたり、慰謝料が加算されることになります。
ウ 自転車事故の損害賠償請求
損害賠償請求は、相手方に対し民法上の不法行為責任を問うものであり、被害者が、加害者の「故意・過失」や「損害」等を立証する必要があります。
(5) 交通事故が発生したときの「加害者・被害者の対処方」と「加害者の責任」
ア 事故の際の応急措置(加害者)
① 加害者の応急措置
事故を起こしたときの加害者のとるべき行動は、下記のとおりです。
(ⅰ) 被害者の救護措置をする。
(ⅱ) 警察へ事故の届出をする。
(ⅲ) 加入している損害保険会社へ連絡する。
(ⅳ) 事故の状況を正確に把握する。
② 緊急措置義務(道路交通法72条1項前段)
道路交通法72条1項前段は、交通事故により、人が死亡又は負傷したり、物が壊れたときには、その当事者である運転者やその他の乗務員がとらなければならない措置義務(緊急措置義務)を定めています。
・この義務の内容は、下記のとおりです。
(ⅰ)「運転の停止及び状況」の確認義務
自動車の運転者やその他の乗務員は、その乗っている自動車が何かに衝突したと感じられたときは、直ちに運転を停止して、事故の内容や程度、状況等を確かめ、人や物に対する被害の有無を確認しなければなりません。
(ⅱ) 負傷者の救護義務
事故によって人が負傷した場合には、直ちに救護しなくてはなりません。
* A これを怠ると、いわゆる「ひき逃げ」(救護義務違反)、となり、厳しい処罰が課されます。
B 負傷者を救護せず、あるいは負傷者を他の場所に運 んで放置する行為は、「保護責任者遺棄罪」(刑法218条)やケースによっては「殺人罪」(刑法199条)」に該当することになります。
(ⅲ) 道路における危険防止措置義務
救護義務を尽くした後は、引き続き交通事故が起ることを防ぐため、道路上の危険を除去する義務を負います。
* A 緊急措置義務は、加害者・被害者の双方に課されています。
この義務は、事故の責任の有無にかかわらないので、相手方が一方的に悪い場合でも、この措置をとらなければなりません。
B 2台以上の自動車による事故の場合
加害車両・被害車両を問わず、いずれの自動車の運転者等にもこの義務が課されています。
③ 事故報告義務(道路交通法72条1項後段)
自動車事故を起こした自動車の運転者等は、「緊急措置義務」のほかに、人の死傷又は物の損壊を伴う事故について、警察官等に対し直ちに「事故を報告」する義務を負います。
* (ⅰ) 報告内容
A 事故が発生した日時及び場所
B 死傷者の数及び負傷者の負傷の程度
C 損壊した物及び損壊の程度
D 事故車両の積載物
E 発生した事故について講じた措置
(ⅱ) 報告義務の範囲(道路交通法72条1項後段)
報告義務の範囲は、上記A~Eのみです。
* 報告義務の範囲に含まれない例
A 運転者の住所・氏名
B 免許証の内容
C 車体の番号
D 事故の原因
(報告が不要である理由)
事故の原因等は、報告者の刑事責任に関する事項なので、警察が刑事手続により捜査すべきであり、敢えて進んで報告すべき義務はないからです。
(ⅱ) 警察官の指示に従う義務(道路交通法72条2項)
報告をした運転者が、最寄りの警察署の警察官から、「警察官が現場に到着するまで現場を去ってはならない」と命じられた場合には、これに従わなければなりません。
④ 保険会社への事故通知義務
自動車事故が発生した場合には、直ちに、下記事項を自動車保険契約を締結している「保険会社」又は「取扱代理店」に連絡しなければなりません。
A 事故発生の日時
B 事故発生の場所
C 事故の概要
* 正当な理由がなく、保険会社等への連絡を怠った場合には、保険金の支払が拒絶されることがありますので注意してください。
⑤ 事故状況の調査と証拠の収集
事故の当事者は、後日のため、「事故の状況の調査」や「証拠の収集」をしておく必要があります。
イ 事故の際の応急措置(被害者)
自動車事故の被害者が負傷している場合は、被害者本人が応急措置をすることはできませんので、その関係者がこれを行うことになります。
・その際、被害者本人の立場で注意すべきことは下記の事項です。
① 加害者及び加害車両等の確認
(ⅰ) 加害者の確認
下記事項の確認が肝要です。
A 加害車両の運転者
B 加害車両の運行供用者
a 運転者の雇い主
b 加害車両の所有者
* 加害車両の所有者は、自動車検査証で調査可能です。
C 加害車両の運転者の氏名・住所
* 免許証等で調査可能です。
D 運転者と所有者の関係
E 当日の運行目的
F 加害車両の普段の使用状況
G 自賠責保険・任意保険につき
自動車損害賠償責任保険証明書で調査可能です。もし、これがないときは、ナンバープレートに記載された登録番号を記録することが肝要です。
・その他、任意保険の保険会社名、契約者名、契約番号、契約内容等の調査
② 警察への届出
加害者は、警察や警察官に対して事故の届出をする義務を負っていますが、加害者が届出をしないような場合には、被害者が届け出るべきです。
* 警察への届出をしないデメリット
警察への届出をしないと、下記のことが行われないので、事故状況につき争いが生じた場合の客観的な証拠がないことになってしまい、問題解決に支障を来たします。
(ⅰ) 保険請求手続に必要な交通事故証明書が発行されません。
(ⅱ) 警察の捜査が行われません。
③ 保険会社への事故通知
被害者が、自動車保険に加入している場合には、保険金を受け取るために、その「契約保険会社」や「取扱代理店」に対し、下記事項を通知しなければなりません。
A 事故発生の日時
B 事故発生の場所
C 事故の概要
④ 事故状況の調査と証拠の保全・収集等
被害者も事故の当事者として、後日のために、事故の状況の調査や証拠の保全、収集をしておかなければなりません。
⑤ 事故現場の保全
自動車事故の当事者は、加害者・被害者いずれの立場であっても、事故により発生する「民事上の問題」及び「刑事上の問題」に対処するために、事故の状況を正しく把握し、事故原因を明らかにする必要があります。
* そのために、大切なのは、事故現場の保全です。
・警察の調査(実況見分)が終わるまでは事故現場をそのままにしておくべきです。
⑥ 証拠の収集
(ⅰ) 証拠の収集は、下記の方法で行います。
A 警察官が実況見分等をする。
B 警察官が、実況見分調書や関係者の供述調書を作成する。
* a 民事事件においては、常にこれらを利用できるわけではありません。
・不起訴処分の場合、利用できるのは、原則として実況見分調書だけです。
b 加害者の場合は、刑事責任の追及に対処するためにも、当事者として独自に証拠を収集する必要があります。
(ⅱ) 証拠の取集方法
A 事故状況を記録する。
B 目撃者や相手方等の供述を聞き、書き留める。
ウ 加害者の責任
① 自動車事故を起こしたときの運転者の責任
自動車の運転者が事故を起したとき、負わなければならない責任は下記の3つです。
(ⅰ) 民事上の責任
(ⅱ) 刑事上の責任
(ⅲ) 行政上の責任(行政処分)
① 加害者たる運転者の責任の内容
(ⅰ) 民事上の責任
A 不法行為責任(民法709条)
不法行為責任に基づく損害賠償責任を負います。
B 自動車保有者の責任(運行供用者責任:自賠法3条)
自動車の保有者は、自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任に基づく損害賠償責任を負います。
a 相手方運転者の人身損害
・治療費等の積極損害
・逸失利益
・慰謝料
b 車両の修繕費等の物損
* 民事上の責任のうち、人身事故については、民法709条の不法行為責任に優先して、自賠法3条の運行供用者責任が適用されます。
(ⅱ) 刑事上の責任
自動車の運転中、過失によって、人身の死傷事故を起こしたときは、「刑法の業務上過失致死傷罪(刑法211条)」又は「自動車運転処罰法の過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)」に該当することとなります。
* A 業務上過失致死傷罪(刑法211条)
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」に処する。
・重大な過失により人を死傷させた者も同様とする。
B 過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
・ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
(ⅲ) 行政上の責任
行政上の責任は刑罰ではありませんが、下記の処分がなされます。
A 運転免許の取消し
B 運転免許の停止
③ 加害者の3つの責任とそれぞれの関係
加害者は、上記の3つの責任をそれぞれ負うことになります。
(6) 運行供用者等の責任等
ア 運行供用者の意義(判例の考え方)
判例は、事故を起こした自動車の「運行支配」及び「運行利益」を有する者が、運行供用者であるとしています。
* ① 運行支配とは
危険物の管理者は、危険物から発生した損害の賠償責任を負うべきであるという考え方です。
② 運行利益とは
報償責任的側面から導かれる要素です。
(報償責任の意義)
利益を上げる過程で従業員等が他人に与えた損害は、利益を得る者がその賠償責任を負うべきであるという考え方です。
イ 運行供用者責任
① 民法上の救済
自動車事故による被害者に対する民法上の救済方法は、下記のとおりです。
(ⅰ) 不法行為に関する規定(民法709条)の適用
(ⅱ) 使用者責任に関する規定(民法715条)の適用
* これらの規定は、原則として、被害者が加害者の「故意・過失」を立証しなければならないという困難が伴うので、被害者に不利益をもたらします。
・そこで、その不利益解消という目的を含めた「自賠法」が、昭和30年に施行されました。
② 自動車損害賠償保障法(自賠法)の大要
自賠法の大要は、下記の3点です。
(ⅰ) 人身事故については、自動車の運行供用者に無過失責任を負わ せることにした(自賠法3条)。
* 自動車の運行供用者が、自動車損害賠償責任を免れるには(自賠法3条後段)
自動車の運行供用者が責任を回避するには、下記の3点を立証しなければなりません。
A 自動車の運行供用者に故意・過失がなかったこと。
B 被害者又は第三者に故意・過失があったこと。
C 事故自動車に構造上の欠陥及び機能の障害がなかったこと。
(ⅱ) すべての自動車について、強制保険契約の締結を義務付けた (自賠法11条以下)。
* 強制保険の種類(下記のいずれかに加入しなければ自動車の運行ができません)
① 自動車損害賠償責任保険
② 自動車損害賠償責任共済
(ⅲ) 自動車損害賠償保障事業を創設した。
* 自動車損害賠償保障事業とは
ひき逃げ事故のように加害者不明等の場合に、政府が被害者に損害を填補する事業のことです(自賠法71条以下)。
③ 「運行供用者」に関する最近の判例
(ⅰ) 東京地八王子支判平成13・8・2
加害車(貨物自動車)の運転者が、加害車を所有する会社との間で雇用契約を締結していなかったが、会社の指揮、命令の下で加害車を使用運転中に被害者と衝突し、被害者を受傷、死亡させた事故につき、その会社には自賠法3条の責任がある。
(ⅱ) 東京地判平成14・10・24
加害車(普通乗用自動車)を所有していたA会社からBが無償で借り受け、更にCに貸与した後、Cが運転中、その過失によって被害者に傷害を負わせた事故につき、A会社は、特段の事情がない限り自賠法3条所定の「運行支配」と「運行利益」を失わない。
ウ 保有者と運行供用者との関係
① 保有者とは(自賠法2条3項)
保有者とは、「自動車の所有者」その他「自動車を使用する権利を有する者」で、「自己のために自動車を運行の用に供する者」のことです。
* 問題点
下記の運転を、保有者として争いうるかどうか?
(ⅰ) 無断私用運転
(ⅱ) 泥棒運転
② 保有者との間に雇用関係などがある場合の保有者の責任
上記の「(ⅰ) 無断私用運転」・「(ⅱ) 泥棒運転」の場合において、それらの者が保有者との間に保有関係があるときは、保有者は運行供用者としての責任を問われることになります。
③ 無断私用運転に、保有者責任ありとする判例(金沢地判昭和49・10・9)
従業員が、上司の許可を得ないで、日曜日に、会社所有の自動車のキーを持ち出して、その自動車を運転帰途中生じた事故について、その会社につき、「(ⅰ) 会社と従業員のとの雇用関係、(ⅱ) 運転者としての職務内容、(ⅲ) 日常の運転、(ⅳ) 管理関係、(ⅴ) 無断運転の範囲・時間」などの諸般の事情を客観的に観察し、しかもキーの保管、自動車の管理状況に照らし、その会社は、従業員の私的利用を厳禁していたともみられないなどとして、その会社の保有者責任を認めた。
④ 泥棒運転に関し、保有者責任(運行供用者責任)有無の判例
(ⅰ) 最判昭和48・12・20(運行供用者責任なし)
タクシー会社内に保管中のタクシー自動車の窃取による泥棒運転中の事故について、泥棒運転者は窃取タクシーを支配していたもので、タクシー会社には、その運行を指示、制御すべき立場にはなく、その運行利益も帰属していたとはいえないことが明らかであるとして、タクシー会社の運行供用者責任を認めなかった。
(ⅱ) 最判平成5・3・16(運行供用者責任あり)
友人の父経営の鈑金工場内だけで使用中のフォークリフトを無断運転中に生じた事故について、父親の運行供用者責任を認めた。
⑤ 無償借受者が運行支配・利益を持つ場合(最判平成9・11・27)
無償で、2時間後には返還する約束で自動車を借り受けた者が、約1か月後に起こした事故について、借主が借り受けた自動車の運行を支配していたとして、貸主の運行供用者責任を認めなかった。
エ 運転助手の責任
事故発生当時、運転助手として業務に従事し、その者の過失により傷害又は死亡事故が発生した場合は、その発生につき相当因果関係が認められれば、運転手と共に運転助手も民法709条に基づく損害賠償責任を負わなくてはなりません。
(7) 自動車登録の意義
① 道路運送車両法4条
自動車は、自動車登録ファイルに登録を受けたものでなければ、これを運行の用に供してはならない。
② 道路運送車両法5条
1項 登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ、第三者に対抗することができない。
2項 前項の規定は、自動車抵当法第2条ただし書に規定する大型特殊自動車については、適用しない。
(8) 当事務所の「交通事故」に関する具体的業務方法
ア 行政書士の業務
① 文案書類作成代理業務
「保険金請求書類」・「示談書等文案書類」作成代理業務を行います。
② 争訟性のない場合の、示談契約締結業務等
(例えば)
加害者が事故責任を自認する場合、「① 加害者との過失割合や賠償額等の話合い・協議を被害者から受任した範囲で代理」し、「② 合意の示談書を作成の上、当事者に署名・押印してもらい、保険金支払請求につなげる」ことは、行政書士の合法的な契約締結代理業務に該当します。
③ その他
(ⅰ) 行政書士は、当事者(加害者又は被害者)の依頼に基づいて、交通事故に係わる「調査」や「保険金請求手続」を行います。
(ⅱ) また、被害者に代わり、損害賠償額算出に供する基礎資料の作成、損害賠償金の請求までの手続等を行います。
イ 司法書士の業務
① 代理人型訴訟業務
司法書士は、訴額が140万円以内の民事事件につき、簡易裁判所での訴訟代理権を有しているので、代理人として「裁判外和解」、「民事訴訟(民事訴訟・民事調停)」等の業務を行います。
* 「物損事故」・「人身事故」の場合で、損害賠償請求金額が金140万円以内の事件についての業務事例
(ⅰ) 代理人として相手方と交渉し、裁判外和解により事件の解決を図る。
(ⅱ) 和解が難しい場合は、 訴訟代理人として訴訟(民事訴訟・民事調停)を追行する。
② 本人支援型訴訟業務
司法書士は、地方裁判所の損害賠償請求訴訟においては、本人支援型訴訟を行います。
* 訴額が、金140万円を超える損害賠償請求事件については、司法書士に訴訟代理権がありませんが、裁判書類の作成権限があります。
・そこで、裁判の当事者たる本人が、自ら法廷に立って訴訟を追行したり、調停ができる場合には、「訴状の作成」、「準備書面等の書類作成」をすることにより、訴訟業務を行います。