1 不動産登記

(当事務所の取扱業務)

① 登記申請の代理、登記申請手続事務の相談

② 登記添付書類の作成、取寄せ

③ 売買契約書等各種文案書類の作成代理、文案書類作成の相談

④ 登記に関する審査請求手続(不服申立手続)についての代理

(目次)

(1) 不動産登記の意義

(2) 登記記録について

(3) 所有権に関する主な登記について

(4) 所有権以外の権利に関する主な登記について

(5) その他の登記について

(6) 新中間省略登記

(7) 不動産登記の効力

(8) 登記済証を紛失した場合の対策

(1) 不動産登記の意義

土地や建物(以下、「不動産」という。)について、その所在や面積などの実状と、所有者の住所・氏名や担保の有無などの権利関係を、国家機関である法務局が管理する登記記録(いわゆる登記簿のことです。)に公示することにより、不動産取引の安全を図る制度です。


(2) 登記記録について

・登記記録は、1筆の土地又は1個の建物ごとに作成され、その登記記録は表題部と権利部に区分されます。

・表題部には、土地の場合「所在・地番・地目・地積等」、建物の場合「所在・地番・家屋番号・種類・構造・床面積等」が記録されます。

・権利部は、甲区と乙区に区分され、甲区には所有権に関する事項、乙区には所有権以外の権利に関する事項(地上権・賃借権・抵当権等)が記録されます。


(3) 所有権に関する主な登記について

ア 所有権移転登記

① 売買を原因とする所有権移転登記
不動産を目的する売買契約は、売主が買主に対し、不動産の所有権を移転することを約束し、買主が売主に対し代金を支払うことを約束することにより成立します。

・なお、実務では、買主が売主に代金全額を支払った後に所有権移転登記申請をするのが通例です。

② 贈与を原因とする所有権移転登記
不動産の贈与契約は、贈与者が受贈者に対し、不動産を無償で所有権移転することの意思表示をし、受贈者がそのことを受諾することにより成立します。

・なお、実務では、契約後直ちに所有権移転登記申請をするのが通例です。

③ 相続を原因とする所有権移転登記
ある人が死亡した場合において、その人(被相続人)が所有していた不動産を、相続した者の名義にするためになされる所有権移転登記です。

・なお、相続人が数人ある場合は、所有権移転登記の前提として、遺産分割協議をし、遺産分割協議書を作成しなければなりません。

イ 所有権保存登記

建物を新築したときやマンションを購入したときに、その所有権の登記名義を「建て主」や「マンション所有者」にするためになす登記です。


(4) 所有権以外の権利に関する主な登記について

ア 抵当権設定登記

金融機関等からお金を借りるときに、その担保のために、債務者又は担保提供者たる第三者(債務者以外の者で、担保提供をする者のことを物上保証人といいます。以下、「物上保証人」という。)の所有する不動産に設定されます。

・金融機関等の債権者は、債務者又は物上保証人が担保提供した不動産を、その所有者に占有を残したまま、担保提供者の使用・収益に任せながら、債務が弁済されない場合にはその不動産を競売して、その売却代金から優先的に弁済を受けることができます。

イ 根抵当権設定登記

根抵当権設定登記とは、金融機関等と企業、企業と仕入先などの間で反復継続して行われる取引から生じる債権を、当事者間で定めた金額の範囲内で担保するために、債務者又は物上保証人所有の不動産に担保権を設定する登記のことです。

・根抵当権は抵当権と違い、具体的に債権が発生していなくても設定することが可能であり、債権が消滅しても根抵当権は消滅せず、新たに発生する債権を引き続き担保します。

ウ 不動産質権設定登記

不動産質権とは、債権者が債権の担保として、債務者又は第三者(物上保証人といいます)の不動産を、その債務が弁済されるまで占有して、使用収益し、債務が弁済されないときは、目的不動産を競売して優先弁済を受けることができる約定の担保物権です。

・ただし、当事者の特約により「使用収益しないこと(不動産を占有しなこと)」とする例外が認められています。

・この権利を第三者に対抗するためには、不動産質権設定登記が必要です。

エ 不動産先取特権設定登記

(ア) 民法上の一般の先取特権

民法上の一般の先取特権は、「① 共益費用の先取特権 ② 雇人給料の先取特権 ③ 葬式費用の先取特権 ④ 日用品供給の先取特権」の4種類があります。

・一般の先取特権は、公平の原則、社会政策的配慮その他の理由により法定の債権が発生すればその債権の担保として、法律上当然に債務者の総財産について成立する法定担保物権です。

* 債務者の総財産に成立するとは、総財産を構成する個々の不動産、動産、債権その他の財産権ごとにそれぞれ一般の先取特権が成立するという意味です。

・一般の先取特権は、その登記をしなくても、「抵当権その他の特別担保を有しない債権者に対抗でき、その優先弁済権を行使することができます」が、特別担保との優先順位は登記の順位によって定まりますので、登記をするのがベターです。

(イ) 民法上の不動産の特別の先取特権

民法上の不動産の特別の先取特権とは、公平の原則等の理由により、不動産に関して法定の債権が発生すれば、その債権の担保として法律上当然に当該不動産について成立する法定担保物権です。

・民法によって認められている不動産の特別の先取特権は、「① 不動産保存 ② 不動産工事 ③ 不動産売買」により生じた債権を担保するものとして、債務者の当該不動産につき成立します。

・この権利を第三者に対抗するためには、「不動産保存・工事・売買の先取特権保存登記」が必要です。

・いずれも、法定の時期にその登記をすることにより、当該不動産の競売代金から、それぞれの順位に応じて優先弁済を受けられます。

オ 賃借権設定登記

土地・建物に賃借権を設定した場合、土地・建物の所有者に移動があっても、その所有者から引き続いて借りておく権利を保全しておくために、賃借権設定登記をしておく必要があります。

カ 地役権設定登記

地役権とは、設定行為により、他人の土地(承役地)を自己の土地(要役地)の便益に供するために、他人の土地に設定される権利です。

・地役権の主なものとして、「通行地役権」と「引水地役権」があります。

・この権利を第三者に対抗するためには、地役権設定登記が必要です。

キ 地上権設定登記

地上権とは、他人の土地において工作物又は竹木を所有するために、その土地を使用する権利であり、原則として土地の所有者と地上権を取得する者との設定契約によりその権利を取得します。

・この権利を第三者に対抗するためには、地上権設定登記が必要です。

ク 永小作権設定登記

永小作権とは、他人の土地に設定される耕作又は牧畜を目的とする権利です。

・永小作権は、地上権と異なり小作料の支払が要件となります。

・耕作や牧畜を目的とする土地の使用権は、賃貸借によっても設定し得るので、現在は、永小作権の設定はほとんど見られません。

・第三者対抗要件として、永小作権設定登記が必要です。

ケ 採石権設定登記

採石権とは、他人の土地において、設定行為の定めるところに従って、岩石及び砂利を採取する権利(物権)です。

・その権利を第三者に対抗するには、採石権設定登記をすることが必要です。

コ 信託に関する登記

信託に関する登記の種類は、大きく分けて4種類あります。

① 信託の登記
信託をするときに、信託に属したという旨を記載する登記

② 更迭に伴う移転の登記又は変更の登記

・受託者が任務終了で更迭したという場合には、所有権移転の登記。

・合有になっている場合に、一人が任務終了したような場合は変更の登記。

③ 信託原簿の記載を変更する登記

④ 信託登記の抹消

サ 立木に関する登記

土地に生立する樹木は、土地の一部をなすものであり、原則として土地を処分したときはその樹木もその処分に従います。

・明認方法による対抗要件
樹木の集団のみを、独立して、売買などにより所有権を譲渡することも可能です。この場合、立木登記又は明認方法を施すことにより、第三者対抗要件となしえます。

・立木法による所有権保存登記
樹木の集団のみを、その成立する土地と分離して独立に抵当権の目的とするためには、立木法による所有権保存登記を受ける必要があります。また、所有権保存登記を受ければ所有権の譲渡についてもその対抗要件とすることができます。


(5) その他の登記について

ア 所有権登記名義人表示変更登記

不動産所有者の住所や氏名が変わったときになす登記です。

イ 抹消登記

「抵当権の債務が消滅したときの抵当権抹消登記」、「根抵当権設定登記がなされていたが、継続的取引が解消されたときの根抵当権抹消登記」、「所有権移転登記を完了したが、錯誤によりなされたので、元の所有者に戻すときの所有権抹消登記」等がその例です。

ウ 抹消回復登記

抹消回復登記とは、登記の全部又は一部が不適法な原因によって抹消された場合にその登記を回復し、抹消当時に遡って抹消がなかったと同様の効果を生じさせる登記のことです。

エ 仮登記

仮登記とは、直ちに本登記をすべき「実体的要件又は手続的要件」が備わっていない場合に、将来、必要な要件が備わったときにする本登記のために、あらかじめ順位を保全しておく登記のことです。

オ 処分制限の登記

所有権その他の権利につき、その譲渡や他の権利の客体とする等の処分を禁止することを「処分の制限」といいますが、その法律効果を表す登記のことを「処分の制限の登記」といいます。

カ 判決による登記

権利に関する登記は、登記権利者及び登記義務者の共同申請を原則としていますが、登記権利者又は登記義務者が登記申請に協力しない場合に、いずれかが給付の訴え(登記手続請求訴訟)を提起し、勝訴判決を得た場合は、その判決正本に基づき単独で登記申請ができます。


(6) 新中間省略登記

ア 中間省略登記の意義

不動産の売買において、A→B→Cと所有権が移転された場合、Bを飛ばしてAからCへ直接、所有権移転登記をなすことをいいます。
(第三者のためにする契約を締結する意義:新中間省略登記の意義)
平成16年の不動産登記法改正前と実質上同様の不動産登記の形態を実現し、「① 現場の取引費用の低減の要望に応える」とともに、「② 不動産の流動化、土地の有効活用」を促進する目的から、ABCが売買等に関与する場合であっても、実体上、所有者が「A→C」と直接移転し、中間者Bを経由しないことになる類型(下記の2つ)の登記申請は、具体的な登記原因証明情報を明示した上で可能である。

① 「第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権移転登記」

② 「買主の地位を譲渡した場合における、売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権移転登記」

イ 中間省略登記そのものは、旧法でも、新法でも認められない。

中間省略登記は、実体上の権利変動の内容と登記の内容が不合致であり、権利の得喪及び変更の過程と態様を正確に登記に反映すべきものとする不動産登記制度の要請に反しており、却下されるべきものである。

・このことは「旧法においても、新法においても」何ら変更はありません。

* 旧法においては、新法と相違し、登記申請に当り、登記原因証明情報(所有権移転の経緯を詳細に記載した書面)の添付が義務付けられていなかったので、委任状の記載の内容に従って登記を受理していたため、結果として中間省略登記がなされていました。

ウ 新法における「新中間省略登記」の考え方

不動産取引において、A→B→Cと3者が関与するが、所有権はA→Cに直接に移転するのであれば、所有権移転登記の申請もA→Cへ直接、所有権移転登記が可能ではないかとの考えから、下記の2つの契約については、Bを飛ばしてAからCへ、直接移転する登記が可能となりました。

① 第三者のためにする契約方式による契約

② 売主の地位の譲渡契約方式による契約

エ 第三者のためにする契約方式における「契約の意義・契約書の特約の内容」

(ア) 契約の意義と経済的意義

(契約の意義)

第三者のためにする契約とは、契約の当事者が、自己の名において締結した契約によって、当事者以外の第三者に対して直接、権利を取得させることを内容とする契約のことをいいます。

(経済的意義)

第三者のためにする契約の経済的な意義は、要約者(買主)が諾約者(売主)の物を自らいったん取得して、これを受益者(第三者)に給付するという手続を省略して、諾約者(売主)から受益者(第三者)に直接給付することを可能にするという点にあります。

(イ) 契約書に記載すべき特約の内容

売主A・買主B・第三者C(Bからの買主)として契約した場合

① 第1の売買契約(AB間)に付す特約

(ⅰ) 第三者のためにする契約であることを明記
売主Aと買主Bとの契約で、第三者C(A、B間の売買契約には関与せず、Bの指定する者)が直接Aから所有権を取得する旨を定める。

(ⅱ) 所有権留保
AB間の決済が先行してなされる場合でも、Bが所有権の移転先を指定するまでは、所有権がAに留保されたままであることの確認事項を記載する。

(Ⅲ) 受益の意思表示の受領委託
所有権の移転先に指定されたCが、本来Aに対して行うべきである所有権の移転を受ける旨の意思表示(受益の意思表示)を、Bに対してすれば足りるようにする事項を記載する。

(ⅳ) 買主の移転債務の履行引受け
売買契約に基づき、買主BがCに対して負う所有権移転義務を、売主Aが買主Bに代わって履行することを引き受ける旨の記載をする。

② 第2の売買契約 (BC間)に付す特約

第三者の弁済

売買契約(BがCに対してA所有の不動産を売る契約《他人物売買》:民法560条)に基づき、BがCに対して負う所有権移転義務を、AがBに代わって履行することをCが承認すること(第三者の弁済:民法474条)の記載をする。

オ 売主の地位の譲渡契約方式における「契約の意義・契約書に記載すべき特約の内容、記載例」

(ア) 契約の意義

第三者のためにする契約ではなく、通常の売買契約を締結し、買主が当該売買契約における買主としての契約上の地位を第三者に譲渡するという方式の契約です。

(イ) 契約書に記載すべき特約の内容

売主A・買主B・第三者C(Bからの買主)として契約した場合
(特約の内容)

甲の地位の譲渡による場合の「A・B間の契約の内容」は、第三者のためにする契約の場合と異なり、単純な通常の不動産譲渡契約である。

* 通常の売買契約から生ずる買主の地位を、将来BからCに譲渡するだけのことであるから、AB間の契約内容は、契約上の地位を譲渡することができる程度に特定されていればよい。

・ただし、買主の地位の譲渡が可能なのは、BがAから所有権を取得する前の段階であり、Bが所有権を取得してしまった後は、譲渡が可能なのは所有権のみであって、「所有権を取得し得る地位」は譲渡ができない。

(ウ) 契約書の特約の記載例

売主A・買主B・第三者C(Bからの買主)として契約した場合の例です。 特約として、下記の所有権の移転時期に関する記載が不可欠です。

AB間の売買契約において、「BからAへの売買代金の支払が完了したときに、本件不動産の所有権がBに移転する」という特約です。

カ 「第三者のためにする契約」・「地位譲渡契約」における中間者の税負担

中間者に、「登録免許税」・「取得税」・「固定資産税」は掛からない。


(7) 不動産登記の効力

ア 不動産登記の効力

不動産登記の効力として、「① 対抗力、② 公信力、③ 権利推定力、④ 形式的確定力」が考えられます。そこで、その内容について説明します。

イ 対抗力の意義

不動産に関する物権の得喪、変更は登記をしなければ第三者に対抗できないという効力です(民法177条)。

(具体例)

① 例えば、AがBに、A所有の甲不動産を売って売買代金全額を受領しておきながら、Aがそのことを隠して、Cと売買契約を締結し、Cからも売買代金全額を受領したとします(つまり、二重売買です。)。

・この場合、先に所有権移転登記をとった者が、他の買主及び第三者に対し自己の所有権を主張(対抗)することができます。

・つまり、CがBより先に所有権移転登記をとった場合は、CはBに対し、甲不動産の所有権はCにあることを主張できます。
その結果、BはAに対し、債務不履行(履行不能)を理由に契約を解除し、「売買代金の返還」と「損害賠償(履行利益の損害賠償:その契約が履行されたなら、転売等により得られたであろう利益)の請求」することになります。

・しかしながら、Aがお金を費消してしまい、Bに対し売買代金を返還できないこともあり得ます。

・買主は、売買代金の支払と引換えに所有権移転登記をとらなければ、このようなリスクを負担してしまいます。

② お金を貸した担保として抵当権を設定した場合、登記した順序で担保の優劣が決まります。

・つまり、債務者が借り受けた金員の弁済ができない場合、抵当権が付された不動産は競売に付され、その代金は、第1抵当権者が全額弁済を受けた後でなければ、第2抵当権者は弁済に与ることはできません。

* 損害賠償の範囲たる「履行利益・信頼利益」とは
(意義)

債務者が契約に関して損害賠償を請求するにつき、どんな利益が害されたかを問題とする場合の区別です。

・債務不履行責任や瑕疵担保責任などにおいては、解除とともに損害賠償請求ができます。

・一般的には、債務不履行による損害賠償は履行利益のみが対象となります。

・信頼利益は、契約締結上の過失のような場合に限られます。

(契約締結上の過失とは)

売買等の対象物が原始的全部不能の契約は無効になります。そうすると不法行為責任しか追及できなくなり、原始的一部不能の場合に担保責任(契約責任)が認められていることと均衡を欠くことになってしまいます。そこで、信義則上、契約当事者は互いに相手方の財産を侵害しない義務を負っているものと解し、契約責任として信頼利益の損害賠償責任を負わせるべきであるとの考えによるものです。

(履行利益とは)

契約の有効を前提とし、契約が約定どおり履行されれば、債権者が得たであろう利益のことです。例えば、

① その土地を利用(例:賃貸)することによって得られたであろう利益

② 転売によって得られたであろう利益

(信頼利益とは)

無効の契約を有効と信頼したために失った利益のことです。
例えば、

① 有効な土地の売買契約と信頼して土地を見に行った費用

② 建築するために用意した資材の購入費

ウ 公信力

実体上存在していない権利関係が、登記記録に記録されている場合に、その登記を信用した第三者のために、その登記どおりの実体関係があるものとみなして権利を発生させる効力です。

* ただし、日本では、登記に公信力は認められていません。
(理由)
公信力を認めると、不実の登記がなされていた場合、真の権利者が保護されなくなるからです。

エ 権利推定力

登記記録に記載された事項については、その記録された事項の法律関係が、一応実際に存在するものと推定されるという効力です。

オ 形式的確定力

登記が存在する以上、その有効・無効に関係なく、以後は、登記手続上これを無視して行動することは許されないという効力です。


(8) 登記済権利証を紛失した場合の対策

ア 登記済権利証(又は登記識別情報)とは

「売買・贈与・交換・相続等」を原因として所有権が移転された場合、所有権移転登記をとることになります。登記手続が完了すると、法務局から登記済権利証(又は登記識別情報)が発行されます。

* 登記済権利証は、平成17年3月7日施行の「登記のコンピュータ化」により、名称が「登記識別情報」となり、登記識別情報には「12桁の英数字」が記載されています。

・登記済権利証(又は登記識別情報)は、売買や贈与等により所有権移転登記を申請する場合に、売主や贈与者の「本人確認や意思確認を証明する書類」としての役割を担い、所有権移転登記申請の添付書類の一つとなっています。

* なお、相続を原因とする所有権移転登記申請の場合は、登記済権利証(又は登記識別情報)の添付は不要です。
(理由)
亡くなった人の「本人確認や意思確認」は、できないからです。

イ 登記済証(又は登記識別情報)を紛失する例

登記済証(又は登記識別情報)を紛失する形態は様々ですが、下記の事例が多いようです。

① 保管場所を失念してしまう。

② 滅多に使用しない書類なので、不要物と勘違いして廃棄してしまう。

③ 大事なものと知らないで、家族がごみと一緒に処分してしまう。

ウ 登記済権利証(又は登記識別情報)が紛失した場合の注意事項

登記簿謄本(現在は、登記事項証明といいます)を取りよせて、登記内容を確認することが大事です。

・登記の内容に変動がなければ、登記済権利証(又は登記識別情報)を紛失したとしても何ら心配はいりません。

エ 登記済権利証(又は登記識別情報)を必要とする場合

登記済権利証(又は登記識別情報)は、「相続以外の所有権移転登記」や「抵当権設定登記」等を申請する際、添付書類として必要になります。

・所有権移転登記や抵当権設定登記等を申請する場合には、登記義務者の「本人確認や意思確認」のために、「① 登記済権利証(又は登記識別情報)、②印鑑証明書」を添付しなければなりません。

オ 登記申請に当り、登記済権利証(又は登記識別情報)を提供できない場合は、下記のような方法をとることになります。

① 事前通知制度を利用する方法(平成17年3月7日改定施行の不動産登記法23条1項・2項)

所有権移転登記等の申請に当り、登記済権利証(又は登記識別情報)を紛失した等の理由により提供できない場合は、事前通知制度を利用することができます。

(ⅰ) 事前通知制度の定義
事前通知制度とは、登記申請に当り、登記済権利証(又は登記識別情報)を提供できない場合は、登記義務者に対し「(A)当該登記申請があった旨及び当該登記申請の内容が真実であると思料するときは、(B)一定期間内に、その旨の申出でをすべきこと」を通知する制度です。

(ⅱ) 事前通知制度の手続
法務局から、登記義務者宛に事前通知書を発送し、登記義務者がその通知書の内容に異議がないと判断した場合は、その通知書に署名・押印(実印)の上、法務局に返送します。それを受け、法務局は登記手続を行います。

② 本人確認情報を利用する方法
当該登記申請が、登記申請を業とする資格者代理人(司法書士)によってなされる場合は、当該代理人が「本人確認情報」を作成し、登記官がその情報の内容を相当と認める場合は、事前通知制度を省略して直ちに登記手続を行います。

・つまり、法務局は登記済権利証(又は登記識別情報)を添付してなした登記申請と同様の事務処理をすることになります。