琥珀色の誘惑

ジャパニーズウイスキー、ものすごい人気ですね。以前の当ブログでも書きましたが、人気銘柄は軒並み終売や休売となっています。サントリーの「山崎」や「白州」などの年代物(12年など年数表記のあるもの)は、小売店ではほとんど見かける機会はありませんし、偶然見つけたとしても、メーカー希望小売価格の数倍もの値が付いています。年代物の代替品として流通に置いたはずのノンエイジ物(年数表記の無いもの)ですらほとんど見かけることはなく、こちらも小売店では倍近い値が付いています。

私が学生だった頃、「山崎12年」あたりなら、全国チェーンのカフェバーで、いつでも、懐にも優しいお値段で飲めたのです。ですから、年代物が品薄になり、流通品の多くがノンエイジ物に切り替わり始めた時期には、「山崎のノンエイジなんて。最低12年物じゃないと・・・」などとうそぶいていたものです(お恥ずかしい)。まあ、その気持ちに変わりがないこともないのですが、今では小売店で「山崎」や「白州」のノンエイジ物のフルボトルを見つけただけでも、ちょっとミーハーに興奮してしまうのです。

また、大手コンビニでは、年に数回、不定期で「山崎」と「白州」のノンエイジ物のミニボトル(フルボトルの4分の1サイズ)が販売されるのですが、入荷日などの情報がSNSなどで活発に取り交わされ、入荷とともに売り切れるという異常な状況が続いています。何を隠そう、うそぶいていた私も入荷情報を得て、足繫くコンビニに通い、運良く「山崎」と「白州」のミニボトルを数本入手することができました(ありがとう、情報社会)。

ところで、先ほどから「年代物>ノンエイジ物」という誤解を招くような流れで話をしてきましたが、必ずしもそういうものではないのがウイスキーの奥深さです。

年代物というのは、例えば12年物なら、最低12年以上熟成させた原酒を使うことが条件とされています(詳細は省略)。そのため、当然のことながら、10年寝かせた原酒に状態の良いものがあっても使用することはできません。そして、状態の良い10年原酒をあと2年寝かせたらもっと良い12年原酒になるかというとそういうわけではないのが難しいところ。

一方、ノンエイジ物は、掛け合わせる原酒の年数に縛りがありませんので、若い原酒を含め状態の良い原酒を自由に掛け合わせ、質の良いウイスキーを作ることが可能となります。ですから、自由度の高いノンエイジ物の方が味が良い場合もあれば、若い原酒をベースにしながらも掛け合わせる原酒に25年や30年といった長熟原酒が使われている贅沢なノンエイジ物もあります。

ウイスキーに年数表記を初めて持ち込んだのは、バランタインというブレンデッドウイスキーで、7年物が最初でした(今年、長い年月を経て、新たな「バランタイン7年」がランナップに加わりました)。それまでのウイスキーはノンエイジであることが当たり前。現在では年代物が主流ですが(最近はまたノンエイジに移行しつつあります。理由は長くなるので省略)、たとえば人気の高いアードベッグ(アイラ島のウイスキー)は、スタンダード品として10年物をラインナップしていますが、その他の商品はノンエイジ物がほとんどで、価格もレア度もノンエイジ物の方が高くなっています。近年評価の高いカヴァラン(台湾ウイスキー)のラインナップは、すべてノンエイジ物です。

なんだか今回はウイスキーのお勉強っぽくなってしまいましたね。

最後にひとつ、軽い小ネタで締めましょう。

ここまで話の例に出してきた「山崎」ですが、機会があったらボトルラベルに注目してください。よく見ると、「崎」のつくりの「奇」が「寿」になっています。この「寿」には、サントリーの前身である「株式会社壽屋」から現在まで受け継がれてきたウイスキーづくりへの熱い思いが込められているのです。

う~ん、いい話。

今宵はジャパニーズウイスキーの歴史に思いを馳せながら、難しい理屈は抜きにして、ゆっくりとグラスを傾けることにしましょうか。

今朝のお供、

STONE TEMPLE PILOTS(アメリカのバンド)の『CORE』。

                                   (佐々木 大輔)