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寅さん

ふと思うことがあります。

――寅さんが今ここにいたら何て言うかな――

昨年末から今年にかけて、毎週1本ずつ、映画『男はつらいよ』シリーズ全50作品(※)の全てを、1作目から順に観ました。

何度か観た作品もありますが、観返すその時々で感じること、考えさせられることは変わります。

まあ、寅さんと同じく妹がいる私としては、やはり“兄としての”寅さんに感情移入することが多いのですけれど。

若い頃は、寅さんの恋愛(おじさんとおばさんの恋愛なんて…)にも、満男(吉岡秀隆さん)の恋愛(世代が近いとこそばゆくって…)にもあまり感情移入できなかったものですが、年を重ねて改めて観直した今回は、満男の恋模様に惹かれました。

ただしそれは満男の恋愛そのものにというより、“若い恋愛”が象徴する過ぎ去りし日々への郷愁だったのかもしれません。

寅さんのファッションは一貫して変わりませんが、さくら(倍賞美津子さん)をはじめとするほかの登場人物のファッションは時代を映します。劇中に登場する車は、一般の乗用車でさえもデザインに味わいがありました。このような“時代”を観るのも毎回の楽しみでした。

また、俵万智さんの『サラダ記念日』がベストセラーになった年は軽やかな短歌を取り入れるなど、各作品で時代のトレンドを扱いつつも、どんなときでも変わらない寅さんの人となりにはホッとさせられました。

寅さんの温かさについては、「電気ストーブのような温かさじゃなくて、お母さんがかじかんだ手をじっと握ってくれたときのような、体の芯からからあたたまるような温かさ」(46作目)という表現がまさにぴったりです。

寅さんこと渥美清さんが亡くなったのは1996年。

48作目(1995年)の寅さんは阪神・淡路大震災後の復興ボランティアとして神戸へ。

天災、戦争、コロナ禍・・・どんな時代にも人々の悲しみがあります。

そんな人々の気持ちにそっと寄り添い続けた寅さん。

48作目のラスト、「みんな苦労したんだなあ。本当に皆さんご苦労様でした」が寅さん、そして渥美清さん生涯最後のセリフでした。

寅さんも本当にお疲れさまでした。


※ 渥美清さんが生前に収録した48作品と没後に制作された2作品


今朝のお供、

AC/DC(オーストラリアのバンド)の『Power Up』。

変わらないことの偉大さ。

                              (司法書士 佐々木 大輔)

1日1本

このところすっかり映画にはまってしまい、1日1本を目安に観ています。といっても、手にする初見の映画と馴染みの映画の比率は2:8といったところで、結局、馴染みの映画を繰り返し観ているだけのような気もしますが・・・。
今回は、最近観た中から、何度観てもいいなあと思う映画を紹介します。

『スティング』。
鮮やかな逆転劇。大どんでん返し。内容に触れてしまうとせっかくの仕掛けが台無しになってしまうので、まだご覧になられていない方はぜひ見事に騙されてください。
なので、今回取り上げるのは衣装。私の大好きな『ローマの休日』でも衣装を担当したイーディス・ヘッドが担当しています。『ローマの休日』ではアン王女の可憐な雰囲気を演出していましたが、本作では伊達男のスーツファッションを堪能させてくれます。それにしても、若かりし頃のロバート・レッドフォードは、(全盛期の?)ブラッド・ピットそっくりだなあ。

『セント・オブ・ウーマン』。
盲目の偏屈な退役軍人フランク中佐を演じるアル・パチーノの迫力に圧倒される作品です。
帰省の費用を稼ぐため、苦学生チャーリーがすることとなったアルバイトは、中佐の姪一家が家族旅行に出掛けている間、中佐の身の回りの世話をするというもの。
レストランで出会った若い女性とタンゴを踊るシーンや、チャーリーの必死の説得で自殺を思いとどまるシーンなど、徹頭徹尾アル・パチーノの熱演に引き込まれますが、物語としては、最後、中佐がチャーリーを救うために一席打つという、いかにもアメリカ的な結末によって尻すぼみになってしまうのがとても残念。ただし、この演説シーンにおけるアル・パチーノもやはり凄いので、一見の価値ありです。

『ノッティングヒルの恋人』。
ジュリア・ロバーツ扮するスター女優アナ・スコットと、ヒュー・グラント扮する流行らない書店の経営者ウィリアム・タッカー。映画撮影のためロンドンの平凡な街ノッティングヒルに滞在していたアナが、偶然ウィリアムの書店を訪れたことから始まるラブストーリーです。
立場の違うふたりの恋愛という設定は、まさしく『ローマの休日』(何度も取り上げてすみません)と同じ設定です。恋に落ちるのが唐突すぎるなどツッコミどころは多々ありますが、そもそもスター女優と一般男性が恋に落ちるという夢物語ですから、細かい理屈は抜きでいきましょう。
「私だってひとりの女性。目の前の人に愛されることを願っている」というアナの告白は、何度観てもウルッときます(言われてみたいものだ)。
そして最後の記者会見。『ローマの休日』へのオマージュとして、これ以上素敵な結末は考えられません。

さて、皆さんのお気に入りの映画は何ですか。

 

今朝のお供、
桑田佳祐の『がらくた』。
がらくたという名の15の宝物。

(佐々木 大輔)

年末を迎えて

年末を迎え気持ちもそわそわしておりますが、心を落ち着かせるためにも、高校時代から毎年楽しみにしているバイロイト音楽祭の録音をFM放送で聴きながら(NHK-FMでは、毎年、今夏行われたバイロイト音楽祭の模様を年末に放送してくれます)、今年一年を振り返っています。

さて、クリスマスは皆さんいかがお過ごしでしたか。
私はクリスマスにぴったりの映画『ラブ・アクチュアリー』を観ました。何度目の鑑賞か分からないほど繰り返し観ている映画で、今さら紹介するのも・・・という感じですが。

映画の冒頭に流れるナレーション。
―人は言う。
現代は憎しみと欲だけだと。
実際そうだろうか。
・・・
9月11日の犠牲者がかけた最後の電話も憎しみや復讐ではなく愛のメッセージだった。
見回すと実際のところ、この世は愛が満ち溢れている―

映画は複数の愛の物語が並行して進行します。
愛の形はさまざま。親子、夫婦、友人、もちろん恋人。道ならぬ恋もあります。特に斬新な愛の形が提示されるわけでもなく、むしろ定番とも言える9つのストーリーで構成されています。
それぞれの愛は甘いばかりではなく、苦く、切なく、悲しい。それも当たり前のこと。
でも、これらのありふれたエピソードの数々こそが、「愛はいたるところにある(Love actually is all around)」ことの証左なんでしょう。

今年一年、周りの皆さんから頂いたたくさんの愛に感謝し、恩返しができるよう準備万端に整え、新しい年を迎える所存です。
なお、ブログは毎月中旬に配信させていただきます。

今朝のお供、
サザンオールスターズの曲「心を込めて花束を」。

(佐々木 大輔)