夏バテ防止

平年より12日早い梅雨明けとともに、私の苦手な暑い毎日がやってきました。皆さんいかがお過ごしでしょうか。私は夏バテ防止に頑張って栄養を摂りすぎたせいか、おなか周りがふっくらとしてきたことが悩みです。

よく考えてみるとただのビール腹のような気もしますが。

ビールは控えめにして、何かほかに涼をとれるものはないかと思案、それでは久しぶりに落語の『死神』でも聴くことにしましょう。

――人生うまくいかず自殺を考えている男の前に死神を名乗る老人が現れる。死神は男に対し、まだお前は死ぬ運命にないことを告げ、医者になることを助言する。死神曰く「病人はその足元に死神が座っていればまだ寿命ではなく、枕元に座っていれば間もなく」とのこと。足元にいる死神は呪文を唱えれば消えるという。

半信半疑のまま、試しに医者の看板を出すと大繁盛。どんな重病人でも足元に死神がいれば呪文を唱えて死神を消す。すると病人はたちまち快復。男は名医として名を馳せ、ぜいたくな暮らしを送るように。ところが、しばらくすると、なぜか出会う病人、出会う病人すべて死神が枕元にいる。次第に男の評判は落ち、また元の貧乏な生活に戻ってしまう。

そんな折、豪商から声がかかる。病床の主人を見れば、また枕元に死神。諦めるよう説得するが、少しでも延命できたら大金を出すと言われて欲に目がくらんだ男は、一計を案じ、店の男衆を集めると、死神がうたた寝をしている隙に主人の布団の四隅を持たせ、一二の三で頭と足の位置をくるっと反転。男は間髪を容れず呪文を唱え、死神を消した。これによって主人は見事に快復し、作戦は大成功。

その後、男の前に再び現れた死神は、男を非難し、火のついた蝋燭がたくさん並ぶ洞窟へと連れていく。死神は、それぞれの蝋燭が人の寿命だと説明、男の寿命は、間もなく寿命を迎えるはずだった主人を助けたために入れ替わってしまったと言い、今にも消えそうな蝋燭を指さす。驚いた男が延命を懇願すると、死神は新しい蝋燭を差し出し、これに火を移すことができれば助かると言う。

男は今にも消えそうな自分の蝋燭を持って火を移そうとするが、手が震えてうまくいかない。やがて「あぁ、消える…」との言葉を残し、演者がその場に倒れ込む――

上に書いたあらすじが標準のサゲ(オチ)ですが、噺家によっていろいろな創意工夫がされています。

一旦は男が火の移し替えに成功するパターンもあり、ホッとしてついた溜め息で消してしまうもの、洞窟を出たところで死神から「明るいところに出たんだから蝋燭は要らないだろう」と言われて思わず消してしまうもの、「おめでとう。今日がお前の新しい誕生日だ」と言われてバースデーケーキのローソクよろしく吹き消してしまうもの、「これで安心して眠られる」と言う男に「朝、目を覚ましてみろ、枕元に俺が座っているぞ」と死神が返すもの、などなど。

テキストは守りながら、演者によって巧みなくすぐりを入れたり、時代に合わせて解釈を変えたり、客層を見てサゲを変えたり。落語は音楽でいうとジャズに近いのかな。

死神登場ということで不気味さはあるものの、残念ながら特に涼しくなるような噺ではないですね(選択ミス)。

でも、笑ったことで腹筋が鍛えられて、結果、おなか周りは少しすっきりしたかも。

あぁ良かった。

あれ、笑ったら喉が渇いたな。

よし、ビールを飲もう!


今朝のお供、

HELLOWEEN(ドイツのバンド)の『HELLOWEEN(2021)』。

30年の時を経て、再びHELLOWEENの名のもとでカイ・ハンセン(g.89年脱退)がギターを弾き、マイケル・キスク(vo.93年脱退)が歌う。高校時代の私にとって二度と訪れないと思っていた奇跡のようなことが現実に!

                                   (佐々木 大輔)