アーカイブ:2011年8月

申込みと承諾

日本の民法には、典型的な契約として売買や賃貸借など13種類の契約(「典型契約」などと呼ばれています)が規定されています。
今回から民法の回は、「契約」についてお話しさせていただきますが、まず総論的なお話から入り、その後、典型契約をひとつずつ取り上げていく予定です。
ということで、今回のテーマは「契約の申込みと承諾」です。

「申込み」とは、一定の契約を締結しようとする意思表示のことをいいます。「承諾」とは、申込みを受けてこれに同意をすることにより契約を成立させる意思表示のことをいいます。

では、申込みや承諾の効力が発生する時期はいつでしょうか。
店員さんと対面で、「これをください」「はい、どうぞ」と商品を買う場合には問題になりませんが、たとえば秋田に住んでいる人と東京に住んでいる人が契約をするときのように、離れた場所に住んでいる者同士が契約を締結する場合に問題となります。
結論は、原則として申込みの効力が発生するのは、申込みが相手に到達した時です。したがって、到達前であれば、申込みを撤回することができます。申込みのはがきを出した直後に翻意し、電話で撤回する場面をイメージしてください。
一方、承諾の効力が発生するのは、承諾の通知を発した時です。
なぜ申込みと承諾の効力発生時期が異なっているのかについては、民法典を起草した委員の間でも争いがあったところですが、現行の民法は、承諾者が承諾通知を発したら直ちに履行(物品の調達など)に移ることができるというメリットを重視しているようです。

とはいえ、承諾通知がなかなか到着しない場合、申込者は困ってしまいます。そこでこれを避けるため、申込者は、「8月31日までお返事ください」というように、承諾期間を定めて申込みをすることができます。承諾期間を定めれば、8月30日に承諾通知が発せられても、承諾期間内に届かなければ契約は成立しません。
ただし、遅れて着いた承諾通知に対して申込者がさらに承諾をすれば、契約は成立します。
また、承諾期間を定めた場合、相手が承諾を発する前であっても、承諾期間内は申込みを撤回することができません。
なお、承諾期間を定めなかった場合であっても、承諾通知を受けるのに相当な期間が経過するまでは、申込みを撤回することはできません。

 

今朝のお供、
R.E.M.(アメリカのバンド)の『COLLAPSE INTO NOW』。
独特な世界観をもった歌詞の内容は相変わらず難解ですが、音楽自体は近作に比べて聴きやすくなった気も。

(佐々木 大輔)