カートリッジ(レコードプレーヤー)の交換

少し前のことになりますが、レコードプレーヤーのカートリッジ(ざっくり言うと針のことです)を少しグレードアップしたものに交換しました。低音域はどっしりと腰が据わり、高音域にはきらめきが増し、中音域には厚みが出ました。さらに変わったのは余韻が深くなったことです。さすがに生演奏のようにとは言いませんが、演奏の終わりに「音」ではなく「音楽」を聴いたという充実感がしっかりと残ります。

そこで手持ちのレコードをとっかえひっかえ再生してみると、今まであまり魅力を感じなかった演奏が全く違った一面を見せ始めたのです。たとえば某ピアニストによるベートーヴェンの演奏。一音一音に演奏家の神経が行き届き、見事に音がコントロールされているさまが手に取るようにわかるのです。あまり好んで聴いてこなかったレコードでしたが、思わず2度3度と針を落としてしまいました。

私はいわゆるオーディオマニアではありませんので、ウン百万円もするようなオーディオ装置を所有しているわけではありません。機械工学的な理論もさっぱりです。
あくまでも音楽を楽しく聴くことを目的として組んだオーディオ装置ですが、それでも今回のカートリッジ交換で感じたのは、物事の本質を知るためにはある程度の投資が必要であるということです。ここをなおざりにすると本質を見誤ってしまう恐れもあります。
これは何もオーディオに限ったことではありませんね。
そして投資とは、単にお金を使えばいいというわけではありません。本質を見極める力は、どれだけの時間や手間をかけて本物や良質なものに触れてきたかということも大きくかかわります。与えられた情報を鵜呑みにしているだけでは育ちません。

オーディオの世界というのは繊細なもので、高価なものを組み合わせたからと言って必ずしも良い結果が得られるものではありません。価格が倍になれば音質も倍に良くなるものでもありません。明確な目的(どんな音で音楽を聴きたいのか)をもって、自分の耳で選択するものです(ここは真剣に)。
ブランドに惑わされず(これがなかなか難しい)、自分の耳を信じる。
他人の耳で聞くわけではありませんから、世評の参照もほどほどに。
たかが趣味、されど趣味。
趣味だからこそ、熱く真面目に真剣に。

AEROSMITH(アメリカのバンド)の『Permanent Vacation』。

                                   (佐々木 大輔)