1 相続(相続放棄・限定承認・単純承認)

(当事務所の取扱業務)

① 相続登記申請の代理
相続登記申請手続事務の相談
相続登記に関する審査請求手続(不服申立手続)についての代理

② 遺産分割協議書等各種文案書類の作成代理
契約書等各種文案書類作成の相談

③ 公正証書作成の手続代理
公正証書作成手続の相談

④ 「相続放棄」・「限定承認」の申立

⑤ 遺産分割協議の調停申立書作成(裁判所への申立)
遺産分割協議の訴訟書類作成
調停申立書・訴訟書類作成事務の相談

(目次)

(1) 相続の意義

(2) 相続が開始された場合に、相続人のとり得る方法

① 相続放棄

② 限定承認

③ 単純承認

(3) 死後の財産管理

① 遺言執行者による財産の管理

② 家庭裁判所の選任に係る管理人による財産の管理等

(4) 法定相続情報証明制度

(5) 相続法の改正による新制度創設等(令和元年7月1日施行以降分)

① 令和元年7月1日施行分

(ⅰ) 特別寄与制度の創設

(ⅱ) 預貯金の払戻制度の創設

(ⅲ) 遺留分制度の見直し

(ⅳ) 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置

(ⅴ) 遺言執行者の権限の明確化

(ⅵ) 相続させる旨の遺言の効力

② 令和2年4月1日施行分

(ⅰ) 配偶者居住権(配偶者短期居住権を含む)の創設

③ 令和2年7月10日施行分

(ⅰ) 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設

(1) 相続の意義
亡くなった人(被相続人といいます。)の財産(資産・債務とも)を、その人の死後に、「法定相続分の割合」、「遺産分割協議の決定」又は「被相続人の遺言」に基づき、相続人等に承継させることをいいます。


(2) 相続が開始された場合に、相続人採り得る方法は次のとおりです。

① 相続放棄
被相続人の債務が、資産を上回っていることが明らかな場合、相続人は相続を拒否する必要があります。

・そこで、相続人各自が、「相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に、家庭裁判所に相続放棄の申立をすることにより、最初から相続人でなかったことにすることができます。

* 相続人間で遺産分割協議をし、相続財産を取得しないことにしたところ、相続開始から3か月経過後、被相続人の債権者から「被相続人の債務又は連帯保証債務」の請求を受けたが、どのように対処したらよいか?
請求が来てから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立をすることにより、請求を拒否できる。

② 限定承認
被相続人の債務が、資産を上回っているかどうか判明しない場合、相続人は、相続してもよいものかどうか迷ってしまいます。

・そこで、相続人全員から、「相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に家庭裁判所に限定承認の申立をすることにより、被相続人の債務や遺贈によって生じた債務を相続財産の範囲内で弁済し、相続人の固有財産では責任を負わないという「留保付き相続の承認」をすることができます。

③ 単純承認
被相続人の死亡後、3か月以内に、「相続放棄も限定承認もしなかった場合」や、「相続財産の一部を費消するなど、相続の意思が推測される場合」には、相続を承認したことになるので、資産・債務とも相続したことになります。

・その結果、もし被相続人の負債が相続財産を上回った場合は、相続人の固有財産で弁済する責任を負うことになりますので、相続が発生した場合は、被相続人の財産の処分につき慎重に対処することが必要です。


(3) 死後の財産の管理

ア 遺言執行者による財産の管理

① 遺言により、遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者が相続財産を管理します。

② 遺言があっても、遺言執行者が指定されていなければ、利害関係人の申立てにより、家庭裁判所が管理人を選任することができます。

イ 家庭裁判所の選任に係る管理人による財産の管理等

① 推定相続人排除の審判確定前の遺言の管理
推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後、その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、利害関係人らからの請求によって、遺産の管理について必要な処分として、管理人を選任することができます。

* 推定相続人の廃除の意義(民法892条)
遺留分(相続人の最低相続分)を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除(相続権を喪失させること)を家庭裁判所に請求することができる。

② 遺産分割申立事件中の財産の管理
遺産分割の申立があった場合において、財産の管理のため必要があるときは、家庭裁判所は、申立により又は職権で、遺産分割の審判の効力が生ずるまでの間、相続財産の管理人を選任することができます。

③ 相続の承認又は相続放棄前の相続財産の管理
相続人は、単純承認、限定承認又は相続放棄をする前においては、「その固有財産におけると同一の注意」をもって相続財産を管理しなけれなりません。

・ただし、利害関係人らからの請求によって、家庭裁判所は、いつでも相続財産の保存に必要な処分として、管理人を選任することができます。

* 「固有財産における同一の注意義務」の意義
民法が、相続人の注意義務の程度を表すために用いた概念です。

・「自己の財産におけるのと同一の注意義務」(例:民法659条・940条1項)、「自己のためにするのと同一の注意義務」(例:民法827条)と同じ意味です。

・相続においては、「相続の承認」・「相続の放棄」が確定するまでは、相続財産は相続人の「固有財産」とは別個に管理されることから、「固有財産におけるのと同一の注意義務」という言葉が用いられています。

④ 限定承認の場合における相続財産の管理
限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければなりません。

*(ⅰ) 限定承認者が1人の場合
家庭裁判所は、利害関係人らからの請求によって、いつでも、相続財産の 保存に必要な処分として、管理人を選任することができます。

(ⅱ) 限定承認をする相続人が数人ある場合
家庭裁判所は、相続人のなかから、相続財産の管理人を選任しなければなりません。

・この管理人は、相続人のために相続人に代わって、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をすることができます。

⑤ 相続放棄の場合の相続財産の管理
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が、相続財産の管理を始めることができるまで、「自己の財産におけるのと同一の注意」をもって、その財産の管理を継続しなければなりません。

*(ⅰ)「善良な管理者の注意義務」の意義
その者の属している職業や社会的地位に応じて一般的、客観的に期待されている注意義務のことです。

(ⅱ)「自己の財産におけると同一の注意義務」の意義
特別な場合は、注意義務の程度が軽減され、行為者の具体的な注意能力に応じた注意義務を尽くせば足りるという意味です
(例:民法659条)。

⑥ 財産分離後の相続財産の管理
財産分離の請求があったときは、家庭裁判所は、相続財産の管理について、必要な処分として、管理人を選任することができます。

* 財産分離の意義(民法941条,950条)

(ⅰ) 相続債権者又は受遺者の請求による財産分離(第1種財産分離制度:民法941条)
相続財産及び相続人の固有財産を合わせれば債務超過状態にあって、かつ、固有財産の方が債務超過の度合いが大きい場合に、相続人が単純承認をすることによって、相続債権者又は受遺者が不利益を受ける事態を防止するため、相続財産を相続人の固有財産から分離することを認める制度です。
(事例)
相続財産で相続債権者へ相続債務を弁済する場合、6割の弁済が可能なときに、固有財産で固有債務を弁済すると4割の弁済にとどまるようなとき、両者を合算して相続債務の弁済率が6割を下回ることを防止するような場合に用いられます。

・なお、後者の場合は、相続債権者等による相続財産破産の申立によっても同様の効果を達成できます。

(ⅱ) 相続人の債権者の請求による財産分離(第2種財産分離制度:民法950条)
相続財産が債務超過であるにもかかわらず、相続人が相続放棄や限定承認をしない場合に、相続人の固有債権者の利益を保護することを目的として、その者による財産分離の申立を認めたものです。
(事例)
固有財産が資産超過で、相続財産が債務超過である場合が典型例です。

・固有財産が債務超過であっても、その超過の度合いが相続財産のそれよりも小さい場合は、なお分離の実益があります。

⑦ 相続人不存在の相続財産の管理(民法951条)
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人となります。その場合、家庭裁判所は、利害関係人らの請求によって相続財産の管理人を選任しなければなりません。


(4) 法定相続情報証明制度

ア 法定相続情報証明制度の開始
平成29年5月29日から、全国の登記所(法務局)において、各種の相続手続(不動産・預貯金・有価証券等の相続手続)に利用することができる「法定相続情報証明制度」が開始されました。

イ 法定相続情報証明制度の意義
法定相続情報証明制度とは、登記所(法務局)に、「相続内容の分かる戸籍・除籍謄本等」と相続関係を一覧にした「相続関係図(法定相続情報一覧図)」を提出し、登記官からその一覧図に認証文を付した写しを交付してもらい、その法定相続情報一覧図を利用することにより、各種(不動産登記・預貯金・有価証券等)の相続手続をなすことができる制度のことをいいます。

* ① 法定相続情報制度のメリット
戸籍・除籍謄本等を何通も収集する必要がなくなります。

② 法定相続情報取寄せ費用
無料です。

ウ 法定相続情報証明制度の手続の流れ

① 申出(法定相続人又は司法書士等の代理人)

(ⅰ) 戸籍・除籍謄本等を収集

(ⅱ) 法定相続情報一覧図の作成

(ⅲ) 申出書に必要事項を記載し、上記(ⅰ)・(ⅱ)の書類を添付して、登記所に法定相続情報証明書の交付を申し出ます。

* A 証明される情報
提出された「戸籍・除籍謄本等」に記載された情報に限られます。

・なお、相続放棄や遺産分割協議により相続人が変更したときの証明は対象外です。

B 数次相続の場合の証明
一人の被相続人ごとに作成されます。

② 確認・交付(登記所)

(ⅰ) 登記官が確認し、法定相続情報一覧図を保管します。

(ⅱ) 認証文付き法定相続情報一覧図の写しを、申出者に交付します。

・戸籍・除籍謄本等を、申出者に返却します。

* 交付手数料
徴収しません。

③ 利用
各種相続手続(不動産登記・預貯金の振分け・有価証券の振分け等)に利用することができます。

* A 戸籍・除籍の束の代わりに各種相続手続において、提出することが可能です。

B この制度は、戸籍・除籍の束に代替し得る選択肢を追加するものであり、これまでどおり戸籍・除籍の束で相続手続を行うことを妨げるものではありません。

C 相続放棄や遺産分割協議をしたときは、それらの書類を別途提出し、相続人を明らかにして相続手続をすることが必要です。


(5) 相続法の改正による新制度創設等(令和元年7月1日施行以降分)
民法の相続編に関し、現代社会とマッチしない点が多々あったところ、その是正のため、下記の事項の創設や、見直しがなされました。

ア 令和元年7月1日施行分

① 特別寄与制度の創設(民法1050条)
相続人以外の被相続人の親族が、無償で被相続人の療養看護を行った場合には、相続人に対して金銭の請求ができるようになりました。

* 参考例
長男の妻が、無償で長男の父親(相続人は、長男と次男のみ)の療養看護を行った場合には、長男の妻は相続開始後、父親の相続人(長男・次男)に対して、療養看護に尽くした分の金銭の請求ができます。

・これにより、介護等の貢献に報いることができ、実質的な公平が図られることになりました。

② 預貯金払戻制度等の創設

(ⅰ) 被相続人が金融機関等へ預けていた預貯金が、遺産分割の対象となる場合に、各相続人は、遺産分割が終わる前でも、一定の範囲で預貯金の払戻しを受けることができる制度が創設されました。これには、下記「A・B」の2つの方策があります。

A 家庭裁判所の判断を経ずに預貯金の払戻しをする方策
預貯金の一定割合(金額に上限あり)については、家庭裁判所の判断を経なくても、単独で、金融機関の窓口において支払を受けられます。

* 金額の上限
一つの金融機関から払戻しが受けられる金額の限度は、金150万円です。

(A) 計算式
(相続開始時の預貯金の額(口座基準))×1/3× (当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分)=単独で払戻しをすることができる額

(B) 参考例
被相続人の相続人が2人(例えば、長男と長女の2人)で、被相続人の死亡時(相続開始時)の預貯金額が金600万円、銀行が一行の場合
(計算式)
金600万円×1/3×1/2=100万円

・したがって、長男の払戻可能額は、金100万円となります。

B 家庭裁判所の判断を経て預貯金の仮払いを得る方策
この方策は、限度額を超える比較的大口の資金需要がある場合に適しています。

(ⅱ) 保全処分の要件緩和
仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められます。

③ 遺留分制度の見直し(民法1046条)

(ⅰ) 遺留分を侵害された者
遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭を請求することができます。

(ⅱ)「遺贈」や「贈与」を受けた者が、金銭を直ちに準備できない場合
遺留分の請求を受けた者が、金銭を直ちに準備できない場合には、家庭裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができます。

(ⅲ) 遺留分制度の見直しによるメリット

 遺留分減殺請求権の行使により、共有関係が当然に生ずることを回避することができます。

 遺贈や贈与の目的財産を、受遺者等に与えたいという遺言者の意思を尊重することができます。

④ 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置(民法903条)
婚姻期間が、20年以上である夫婦間で居住用不動産(居住用建物又はその敷地)の遺贈又は贈与がなされた場合については、原則として、その不動産は相続の対象とならないので、遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。

* 優遇措置設置によるメリット
このような規定(被相続人の意思の推定規定)を設けることにより、原則として、遺産の先渡しを受けたものとして取り扱う必要がなくなり、配偶者は、相続により、より多くの財産を取得することができるようになりました。

⑤ 遺言執行者の権限の明確化(民法1012条1項、1015条)
改正法は、改正前の「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」とする民法1013条の規定に追加して、「前項の規定に違反してした行為は無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない」旨の規定を追加しました(民法1013条2項)。

* 民法は、下記のように遺言執行者の権限と地位の明確化を図りました。

(ⅰ) 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

(ⅱ) 遺言執行者の権限の範囲内において、遺言執行者であることを示してなした行為は、相続人に対し直接に効力を有する。

⑥ 「相続させる旨の遺言」の効力
今般の相続法改正により、「相続させる旨の遺言」の取扱いにつき、下記(ⅱ)の事項のメリットが生じました。

(ⅰ) 相続法改正前の「相続させる旨の遺言」の判例の解釈
相続法改正前の判例は、遺言によって、「相続させる旨の権利を承継した場合は、登記なくして第三者に対抗できる」としていました。

・これにより、下記のようなデメリットが生じていました。

 遺言書の存在の有無及び遺言署の内容を知りえない相続
債権者・債務者等の利益を害していました。

 登記制度や強制執行制度の信頼性を害するおそれがありました。

(ⅱ) 相続法改正後の「相続させる旨の遺言」の取扱い(メリット)
相続させる旨の遺言についても、「法定相続分を超える部分については、登記等の対抗要件を具備しなければ、善意の第三者に対抗することができない」ことになりました。

* 相続法改正後のメリット内容

A 遺言書の存在の有無や遺言書の内容を知りえない「相続債権者・債務者」等の利益や第三者の取引の安全を確保することができます。

B 登記制度や強制執行制度の信頼を確保することにもつながります。

(ⅲ) 「相続させる旨の遺言」がある場合の対抗要件の事例

A 登記が対抗要件とされている場合
不動産については、「相続させる旨の遺言」がある場合でも、早期にその相続登記の手続を行わないと、相続人の一部が法定相続分について、自らの相続登記をして善意の第三者に売却してしまった場合には、その第三者に対抗(自己の所有権だと主張すること)することができないことになりました。

B 登録が対抗要件とされている場合
自動車のように、登録が対抗要件となっている場合も上記と同様の解釈になります。

(ⅳ) 上記「早い者勝ち」に対抗する手段(不動産につき)
被相続人の生前に、被相続人と法定相続分以上の不動産を相続する者の間で死因贈与契約を締結し、その旨の仮登記をとっておく方法があります。



イ 令和2年4月1日施行分
配偶者居住権(配偶者短期居住権を含む)の新設

(ⅰ) 遺産分割による配偶者居住権の取得
配偶者が、相続開始時に被相続人の所有の建物に居住していた場合に、配偶者は、遺産分割において配偶者居住権を取得することにより、終身又は一定期間、その建物に無償で居住することができます。

・また、「配偶者短期居住権」という権利も創設されました。

A 配偶者短期居住権の意義
配偶者が、相続開始の時に遺産に属する建物に住んでいた場合には、一定期間(例えば、その建物が遺産分割の対象となる場合には、遺産分割が終了するまでの間)は、無償でその建物を使用することができます。

B 配偶者居住権が設定された居住建物の固定資産税負担者
固定資産税の納税義務者は、原則として、固定資産の所有者とされているので、居住建物の所有者が納税義務者となります。

* ただし、改正法においては、居住建物の通常の必要費は、 配偶者が負担することとされており、固定資産税は通常の 必要費に当たると考えられので、居住建物の所有者が固定資産税を納付した場合には、配偶者に対して求償することができると考えられます。

(ⅱ) 遺贈による配偶者居住権の取得
被相続人が遺贈等によって、配偶者に、配偶者居住権を取得させることもできます。

* 新設によるメリット
配偶者は、自宅で居住しながら、その他の財産も相続で取得することができます。

ウ 令和2年7月10日施行分
法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設

(ⅰ) 自筆証書遺言を作成した者は、法務大臣の指定する法務局に遺言書の保管を申請することができます。

A 遺言書の保管の申請(申請の管轄と保管担当者)
遺言者は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(法務大臣の指定する法務局)の遺言書保管官(法務局の事務官)に対し、遺言書の保管を申請することができます。

B 遺言書保管所の指定及び具体的な管轄
遺言書保管所の指定及び具体的な管轄は、「法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設」の施行日たる令和2年7月10日)までの間に定められます。

C 保管の対象となる遺言書
保管の申請の対象となるのは、自筆証書による遺言書のみです。

* 申請書の具体的様式の決定
申請書の具体的様式は、「法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設」の施行日たる令和2年7月10日までの間に定められます。

D 「遺言書の保管の申請」、「遺言書の閲覧請求」、「遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付請求」
上記の申請や交付請求をするには、手数料を納める必要があります。

* 申請や交付請求に要する費用額の決定
申請や交付請求に要する費用額は、「法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設」の施行日たる令和2年7月10日までの間に定められます。

(ⅱ) 遺言者の死亡後に、相続人や受遺者が実務上なし得る行為は、下記のとおりです。

A 「遺言書保管事実証明書」の交付請求
遺言者の死亡後に、相続人や受遺者らは、全国にある遺言書保管所において、遺言書が保管されているかどうかを調べることができます。

B 「遺言書情報証明書」の交付請求
相続人や受遺者らは、遺言書の写しの交付請求をすることができます。

C 「遺言書情報」の閲覧請求
相続人や受遺者らは、遺言書を保管している遺言書保管所において、遺言書を閲覧することができます。

* 創設によるメリット

(A) 家庭裁判所の検認は不要
遺言書の保管所に保管されている遺言書については、 家庭裁判所の検認が不要となります。

(B) 遺言書保管官からの「遺言書保管」の通知
遺言書の「閲覧」や「遺言書情報証明書」の交付がなされると、遺言書保管官は、他の相続人に対し、遺言書を保管している旨を通知します。