アーカイブ:2014年2月

クラウディオ・アバドのこと

去る1月20日、イタリアの名指揮者クラウディオ・アバドが亡くなりました(享年80)。
アバドは、ウィーン・フィルとベルリン・フィルにデビュー後、ミラノ・スカラ座音楽芸術監督、ロンドン交響楽団首席指揮者(のちに同楽団初の音楽監督)、シカゴ交響楽団首席客演指揮者、ウィーン国立歌劇場音楽監督という音楽界最高のポストを歴任し、帝王カラヤンの後継としてベルリン・フィルの芸術監督も務めました。
名実ともに現代最高のマエストロでした。

私が好むアバドの録音として真っ先に指を折るのは、70年代に4つのオーケストラを振り分けたブラームスの交響曲全集の中から、ベルリン・フィルと演奏した交響曲第2番です。若きアバドの指揮のもと、カラヤンの楽器であったベルリン・フィルが、本当にのびのびと演奏していて(特にゴールウェイの吹くフルートが素晴らしい!)、まさにブラームスの田園交響曲と呼ぶにふさわしい、野を渡る爽やかな風を感じます。

ロンドン交響楽団を振ったラヴェルの『ボレロ』も忘れるわけにはいきません。アバドに惚れ込んだ楽団員が、最後のクライマックスで興奮のあまり思わず歓声を上げてしまったという録音で、(通常、楽譜に指示がないものは不要なものとしてカットされるのですが)この歓声はアバドの許可を得て、そのまま収録されています。すでに次代のウィーン国立歌劇場首席指揮者のポストが決まっていたアバドを、楽団員全員で引き止めたというエピソードを物語る熱演で、『ボレロ』嫌いな私でも惹きこまれる演奏です。

大病を患い、ベルリン・フィルを退いたのち、2003年に就任したルツェルン祝祭管弦楽団の芸術監督は、アバドの晩年を代表するポストでしょう。
ルツェルン祝祭管弦楽団は、若手オーケストラを母体として、一流オーケストラから首席クラスの演奏家や、普段はソリストとして活躍するスター演奏家が、アバドを慕って世界中から集まり、一年に一度結成されるオーケストラです。
アバドの十八番であるマーラーの交響曲を一曲ずつ取り上げてきましたが、第8番が残り、全曲演奏は実現しませんでした。
数年前にはベルリン・フィルとの特別演奏会で、今までほとんど指揮してこなかった交響曲『大地の歌』を演奏していたことから、『大地の歌』を含むマーラー・チクルスが、ルツェルンとのコンビで完成するのではと大いに期待していたのですが・・・残念です。

アバドは、知的で清廉な演奏により、音楽そのものの素晴らしさを教えてくれた真の芸術家でした。
ご冥福をお祈りします。

 

今朝のお供、
モーツァルトのピアノ協奏曲第12番(K.414)を、ルドルフ・ゼルキンのピアノ、アバドの指揮によるロンドン交響楽団の演奏で。
老巨匠ゼルキンのピアノを、親子ほど年齢差のあるアバドが優しくサポートする本演奏は、陽だまりの縁側で、ゼルキンが朴訥と語る思い出話を、アバドが微笑みながら聞いているという趣の温かい演奏です。 アバドは伴奏の名人でもありました。

(佐々木 大輔)

久しぶり!

先日、学生時代にお世話になった方と久しぶりの再会を果たしました。秋田には出張で来られたのですが、私と会うためわざわざ前日に秋田入りしてくれました。お忙しい中、ありがとうございます。
実は一度、当ブログ(2010/04/12)に登場している方です(ミッフィーが好きな方なので、以下、親愛の情をこめてミッフィーさんと呼ばせていただきます)。

何年振りでしょう。会った瞬間はさすがに少し照れくさかったものの、お互いの近況を報告した後は、昔のように取り留めもなく様々な話を。時事通信本社の部長職を務める博識な方ですから、話題は豊富です。
お互いに、漱石と落語の関係(『三四郎』における柳家小さん評など)や、太宰の短編「ダス・ゲマイネ」におけるヨーゼフ・シゲティ評を突き合わせ、一流の人間の持つ審美眼の鋭さを確認したり、ユダヤ人哲学者ハンナ・アーレントによるアイヒマン裁判の手記の話は、ホロコーストに関与した自身の行為を「命令に従っただけ」とするアイヒマンの証言を切り口に、組織における個人の役割やあり方についてのテーマへと展開したり。
また、劇作家平田オリザ氏の話を引用しながら解説してくれた「会話と対話の違い」は大変勉強になりました。

思い起こせば、ミッフィーさんと初めてお会いしたのは、英会話を通じてでした。インストラクターを交えたフリートークの場に、カーリング(トリノ・オリンピックにより、カーリングに注目が集まっていた頃でした)の解説本を持ち込み、カーリングの面白さについて熱心に語っていた姿を思い出します。
興味を持ったらひたすら真っ直ぐに。その熱い姿勢は全く変わっていませんでした。
そして、公平な考え方も。

久しぶりに遠慮なく「対話」を楽しめました。

あの頃より、少しは大人になった私を見せることができたでしょうか。
う~ん、たぶん無理だったと思います(反省・・・)。
会った瞬間から、懐かしさと嬉しさで、完全に学生時代の感覚に戻ってしまいました。
生意気なことばかり言っていた当時の私に対し、大きな体と寛容な心で接してくれたこと、今でも本当に感謝しています。

夢もうかがいました。
ミッフィーさんならきっと叶えられるでしょう。
応援していますよ。

また会える日を楽しみにしています。

今朝のお供、
エリック・クラプトン(イギリスのミュージシャン)の曲「Tears in Heaven」。
また聴かせてくださいね。あのサプライズと一緒に。

(佐々木 大輔)