5 会社設立

(当事務所の取扱業務)

① 登記申請の代理、登記申請手続事務の相談

② 登記付属書類の作成代理、それらの書類作成の相談

③ 株式会社の定款作成、定款認証手続の代理

④ 会社設立に関する文案書類の作成代理

⑤ 各種文案書類作成の相談

(目次)

(1) 会社設立

① 新会社法

② 新会社法における会社とは

③ 株式会社の設立

(2) 株式会社設立に際しての疑問点

(3) 持分会社の設立(合名会社・合資会社・合同会社) 

(1) 会社設立(営利法人)

ア 新会社法

(ア) 新会社法の意義
平成18年5月1日に施行された新会社法は、最近の社会経済情勢の変化に対応するため、会社に関する各種制度を見直すとともに、会社法の条文を現代用語の表記にして、分かり易く再編成しました。

・以下は、新会社法施行前の旧商法・有限会社法における会社規定と、新会社法における会社規定の相違点です。

あ 新会社法の基本的な考え方

① 会社法制の現代化 ② 会社法制の規制の緩和・自由化 ③ 機能的な観点からの整理

い 旧商法に規定されていた「合名会社・合資会社」
新会社法の施行に伴い、合名会社・合資会社のほかに合同会社制度を設け、持分会社として、新会社法に規定されました。

(イ) 有限会社制度の廃止
新会社法は、有限会社法を廃止し、今後設立する会社に関しては、有限会社制度の適用を認めません。

 株式会社と有限会社とは、1つの会社類型として一本化され、1つの法典で規制されています。

 現存する有限会社については、会社商号の中に「有限会社」の文字を残し、従来と変わらずに存続できます。ただし「① 総会の名称は、社員総会ではなく株主総会」となり、「② 社員の出資持分は、株式」となり、「③ 社員ではなく、株主」となります。
つまり、特例有限会社として、株式会社の1類型となっています。

 特例有限会社の性質

① 有限会社法は廃止され、会社法上の「株式会社」となりました。

② 機関設計

(ⅰ) 株主総会

(ⅱ) 取締役会

・取締役会は、設置できません。

・取締役2名以上置いた場合は、代表取締役を置くことができます。ただし、共同代表の定めはできません。

③ 株式を譲渡する場合は、株主総会の承認決議を要します。

④ 取締役・監査役の任期は、定款に定めない限り無期限となります。

⑤ 旧有限会社法時に、累積投票の定めがなされていなかった場合、累積投票の請求ができない旨の定款の定めがあるものとみなされます。

* 累積投票の意義
多数派による取締役の独占を阻止するための制度です。

・つまり、「株式会社が、株主総会において、同時に2人以上の取締役を選任する場合、一株につき選任すべき取締役の数だけの議決権を与え、それを特定の人に集中して行使することを許容する制度」のことです。

⑥ 会社法施行前に監査役を置いている場合は、「監査の範囲を会計に限定」しているものとみなされます。ただし、定款を変更して業務監査権を付与することができます。

⑦ 決算公告は不要です(株式会社は、決算期後、決算公告をすることが義務付けられています)。

⑧ 特例有限会社から下記会社への組織変更することが可能です。

(ⅰ) 株式会社 (ⅱ) 持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)

(ウ) 持分会社制度
合名会社・合資会社に、新しい企業形態である「合同会社」を加えて、これらを「持分会社」と総称し、会社法に規定されました。

イ 新会社法における会社とは
会社とは、営利活動をなすことを目的として法人格を取得したものであり、「株式会社」と「持分会社(① 合名会社 ② 合資会社 ③ 合同会社)」の2種に分類されます。

① 株式会社
株式会社は、旧有限会社を統合したものであり、更にこれらは「① 株式の流動性の高低(公開会社と非公開会社)」、「② 規模の大小(大会社とそれ以外の会社)」という2つの基準で分類されています。

*(ⅰ) 公開会社と非公開会社

a 公開会社
発行する株式の全部又は一部の譲渡が、自由(会社の承認なしに)にできる株式会社のことです。

b 非公開会社=発行する株式の全部又は一部の譲渡をする場合、取締役会又は株主総会の承認を必要とする株式会社のことです。

(ⅱ) 大会社と大会社以外の会社(いわゆる中小会社)

a 大会社
資本金5億円以上又は負債200億円以上の株式 会社のことです。

 大会社以外の会社=

資本金5億円未満、かつ負債200億円未満の株式会社のことです。

② 持分会社
持分会社とは、「(ⅰ)合名会社(ⅱ)合資会社(ⅲ)合同会社」の総称です。

・持分会社は、所有と経営が分離されず、社員でなければ業務執行をすることができません。

ウ 株式会社の設立手続
株式会社は、「① 定款の作成(公証人の認証が必要)  ② 出資者たる社員(株主)の確定 ③ 取締役会・監査役の設置等の機関決定」等をなし、本店所在地において設立の登記をすることにより、法人格を取得します。
なお、株式会社の設立方法には、発起設立と募集設立があります。

* 定款の意義
定款とは、実質的意義においては、「会社の組織・活動を定めた根本規則」であり、形式的には、「これらの事項を記載した書面」のことをいいます。

(ア) 発起設立
発起設立とは、発起人が、設立の際に発行する株式(設立時発行株式といいます。)の全部を引き受ける形態の設立方法をいいます。
発起設立は、発起人が設立時発行株式の全てを引き受けるため、他の利害関係人が存在しないので、募集設立よりも規制が緩やかです。

あ 発起人とは
発起人とは、実質的には会社設立の企画者ですが、形式的には定款に発起人として署名・押印(又は記名・押印)した者をいいます。なお、各発起人は、必ず1株以上の設立時発行株式を引き受けなければなりません。

い 発起人の資格
発起人の資格には、別段の制限はありません。
(発起人になれる例)

① 成年の自然人

② 制限能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人)

③ 法人

④ 外国人

う 発起人の員数
1人以上であれば何人でも差支えありません。

え 発起設立の登記に必要な主な添付書類

① 定款(公証人が認証した定款)

② 設立時役員の就任承諾書

③ 払込証明書(発行株式の金員が払い込まれた「発起人代表者の銀行通帳」等)

④ 印鑑証明書等

* 株式会社の設立時の定款には、発起設立・募集設立とも、公証人の認証が必要です。

(イ) 募集設立
募集設立とは、発起人が設立時発行株式の一部を引き受け、そのほかに株式引受人を募集して、株式会社を設立する形態の設立方法をいいます。

* 募集設立は、募集に応じた株式引受人を保護する必要があります。そのため、「創立総会の開催」や、設立登記申請書の添付書類として、株式払込金を証明するため、払込証明書に替えて株式払込取扱機関(銀行等金融機関)が発行する「払込金保管証明書」が必要となるなどの規制があります。

あ 募集設立の登記に必要な主な添付書類

① 定款

② 設立時役員の就任承諾書

③ 払込金保管証明書(銀行等金融機関の発行した証明書)

④ 印鑑証明書

⑤ 創立総会議事録等

* 株式会社の設立時の定款には、発起設立・募集設立とも、公証人の認証が必要です。

い 登記簿(登記記録)に記載される事項
「発起設立」・「募集設立」とも、登記簿(登記記録)に記載される主な事項は、次のとおりです。
① 商号 ② 目的 ③ 本店の所在場所 ④ 公告方法
⑤ 発行可能株式総数 ⑥ 発行済株式の総数 ⑦ 資本金の額 ⑧ 取締役の氏名 ⑨ 代表取締役の住所氏名
⑩ 株券発行会社であるときはその旨 ⑪ 取締役会設置会社であるときはその旨 ⑫ 監査役設置会社であるときはその旨


(2) 株式会社設立に際しての疑問点について

ア 商号

・商号は、公序良俗に反しなければ自由に選定することができます。

・商号には「① 漢字 ② カタカナ ③ ひらがな ④ ローマ字」を使用することができます。

イ 商号の調査

(ア) 同一商号登記の調査
必要です。
(理由)
会社の設立登記に際しては、同一所在場所(会社の場合は本店)で、同一商号を使用することが禁じられています。

・そこで、法務局にて、「同一所在場所」に「同一商号がないこと」を確認するための調査をする必要があります。

(イ) 類似商号登記の調査
不要です。
(理由)

① 旧商法第19条の商号登記の排他力の規定(類似商号の規定)
同一市町村内において、同一営業のための商号の登記はすることができない旨の条文は、削除されました。

② 旧商業登記法第27条(類似商号登記の禁止規定)
商号の登記は、同一市町村内においては、同一営業のため他人が登記したものと判然区別することができないときは、登記することができない旨の条文も削除されました。

(ウ) 不正競争の目的による商号使用の禁止
不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある商号を使用することは禁じられています。

* 商号使用によって、営業上の利益を侵害され又は侵害されるおそれのある会社は、営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれのある者に対して、侵害の停止又は予防を請求することができます。

ウ 会社の目的
会社の目的とは、会社の事業内容のことです。この事業内容は定款に記載され、会社事業活動は、定款に記載された目的の範囲に拘束されます。

* 類似商号規制の廃止
類似商号規制の廃止に伴い、目的を細分化する必要はなく、包括的な定款の記載も認められます。

・ただし、広く一般人が、容易に「事業内容」を判断できるように、ある程度の明確性、具体性を持たせるべきです。

エ 最低資本金制度の撤廃
資本金1円でも、株式会社を設立することができます。
(理由)
旧商法は、株式会社の最低資本金を1,000万円としていましたが、会社法は、最低資本金制度を撤廃しました。

オ 株主数
1人以上です。

カ 機関設定
「① 株主総会、② 取締役」は、必ず設置しなければなりませんが、「③ 取締役会 ④ 監査役 ⑤ 会計監査人」等を置くかどうかは任意です。

キ 取締役・監査役の任期

あ 取締役の任期
公開会社・非公開会社とも=原則、2年です。

① 公開会社
短縮のみ可能です。

* 定款に定めることにより、1年まで短縮できます。

② 非公開会社=短縮も伸長も可能です。

* 定款に定めることにより、1年以上10年以内とすることができます。

い 監査役の任期
「公開会社」・「非公開会社」とも、原則として4年です。

* ① 公開会社 =短縮も伸長もできません。

② 非公開会社=伸長のみ可能です。
短縮はできませんが、定款に定めることにより、10年まで伸長できます。


(3) 持分会社

ア 持分会社とは、「(ア)合名会社 (イ)合資会社 (ウ)合同会社」の総称です。 各会社の社員構成は、下記のとおりです。

(ア) 合名会社
社員全員が、「無限責任社員」である会社をいいます。

(イ) 合資会社
社員が、「無限責任社員」と「有限責任社員」で構成されている会社をいいます。

(ウ) 合同会社
社員全員が、「有限責任社員」である会社をいいます。

* 社員の意義
会社法上の社員とは、会社という社団の構成員をいいます。

① 株式会社

社員とは、株主のことです。

② 特例有限会社

社員とは、株主のことです。

③ 合名会社

社員とは、無限責任社員のことです。

④ 合資会社

社員とは、無限責任社員及び有限責任社員のことです。

⑤ 合同会社

社員とは、有限責任社員のことです。

イ 持分会社の設立
持分会社を設立するには、社員となろうとする者が定款(公証人の認証は不要)を作成し、その全員がこれに署名又は記名押印し、「社員の氏名又は名称及び住所」、「社員の無限責任又は有限責任の区別」等を記載(又は記録)した上で、本店所在地において設立の登記をすることにより成立します。

(ア) 合名会社
合名会社とは、社員全員が、無限責任社員である会社をいいます。

あ 設立の登記
合名会社は、本店の所在地において、会社設立の登記をすることにより成立します。

・これによって、法人格を与えられた会社は、権利義務の主体となります。

・合名会社の設立登記における主な添付書面は、次のとおりです。

① 定款(公証人の認証は不要)

② 代表社員を定めたときは、その互選を証する書面及び代表社員の就任承諾書

③ 委任状
司法書士等を代理人として登記申請をする場合に添付します。

い 登記簿(登記記録)に記載される事項

① 商号

② 本店

③ 公告をする方法

④ 目的

⑤ 社員に関する事項
社員の住所氏名、代表社員の氏名

(イ) 合資会社
合資会社とは、社員が「無限責任社員と有限責任社員で構成されている会社」をいいます。

あ 合資会社の設立手続

① 定款の作成
合資会社の設立のためには、定款の作成(公証人による定款の認証は不要)が必要です。

・定款には、次の絶対的記載事項(法律の規定により、必ず記載しなければならない事項)を記載し、これに無限責任社員及び有限責任社員の全員が署名又は記名・押印します。

(ⅰ) 目的

(ⅱ) 商号

(ⅲ) 社員の氏名・住所

(ⅳ) 本店及び支店の所在地

(ⅴ) 社員の出資の目的、及びその価格

(ⅵ) 各社員の有限又は無限の別

② 出資の履行とその時期

(ⅰ) 出資の目的

a 無限責任社員は、財産出資(金銭出資、現物出資)のほかに、信用又は労務を出資の目的とすることができます。

b 有限責任社員は、財産出資のみに限られます。

(ⅱ) 出資の履行時期
各社員は、必ずしも会社設立時に出資全部の履行をしなければならないものではなく、全社員の合意若しくは定款によって履行期を定めることができます。
(理由)
出資時期が、上記のように緩やかなのは、合資会社の無限責任社員は、会社の債務につき、債権者に対し連帯・無限の責任を負うので、社員が出資した財産の額は、債権者にとって必ずしも重要な関心事とはいえず、また出資の全部履行がなされていなくても会社債権者を害するものではないからです。

い 設立の登記
合資会社は、本店の所在地において、会社設立の登記をすることにより成立します。
これによって、法人格を与えられた会社は、権利義務の主体となります。
(設立登記の主な添付書類)

① 定款(公証人の認証は不要)

② 有限責任社員の出資の履行を証する書面(出資金領収書等)

③ 総社員の同意書(無限責任社員中から会社代表者を定めたとき等)

④ ある社員の一致があったことを証する書面

* 定款で、本店・支店の具体的所在場所を定めなかったときは、この書面によって定めます。

⑤ 委任状
司法書士等を代理人として登記申請をする場合に添付します。

⑥ 官庁の許可を要する事項の登記を申請する場合には、官庁の許可書又は認証がある謄本。

う 登記簿(登記記録)に記載される事項
登記簿(登記記録)には、次の事項が記載されます。

① 商号

② 本店

③ 公告をする方法

④ 目的

⑤ 社員に関する事項

(ⅰ) 無限責任社員・有限責任社員(有限責任社員の場合は履行した金額:責任の限度額を明らかにするため)の住所氏名

(ⅱ) 代表社員の氏名

(ウ) 合同会社
社員全員が、有限責任社員である会社をいいます。
なお、出資者の責任が有限でありながら、会社の内部関係については、組合的規律が適用されています。

あ 特徴

① 人格が付与されています(会社として登記される)。

② 内部規律の定款自治が強く認められています

* 原則として、社員全員が業務執行できる。ただし、業務執行社員を定めることも可能である等。

③ 有限責任社員だけで構成されています。

* 社員個人は、会社の債務を負担しません。

④ 社員(出資者)は1名のみでも、設立・存続が可能です。

⑤ 株式会社と同じように、最低資本金制度はありません(出資金は1円でもよい)。

⑥ 社員全員が業務を執行できます(対外的に会社を代表できる)が、業務執行社員を定めることもできます。

⑦ 出資の対象は財産に限られており、信用や労務の出資は認められません。

⑧ 会社は合同会社として登記され、業務執行社員は登記事項ですが、社員は登記事項ではありません。

⑨ 業務執行社員の任期はありません。

* 辞任しない限り、継続して業務執行社員の地位を有します。

⑩ 設立時定款の認証は不要です。

⑪ 特例有限会社・合名会社・合資会社と同様に決算書類の公告義務(決算期ごとに定款所定の公告方法にて、決算公告をしなければならない)はありません。

* 株式会社は、決算期ごとに決算書類の公告をしなければなりません。

⑫ 清算の方法として、合名会社・合資会社は法定清算又は任意清算を選択することができますが、合同会社は法定清算しかできません。

い 設立の手続
合同会社は、本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します。設立登記のための主な手続は、次のとおりです。

① 定款の作成(公証人の認証は不要)
社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名又は記名・押印しなければなりません。

② 設立時の出資の履行
合同会社の社員になろうとする者は、定款作成後、設立登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払込み又はその出資に係る金銭以外の財産(株式等の有価証券や不動産・動産等の財産です)の全部を給付しなければなりません。

う 登記簿(登記記録)に記載される事項

① 商号

② 本店

③ 公告をする方法

④ 目的

⑤ 資本金の額

⑥ 社員に関する事項

(ⅰ) 業務執行社員の氏名

(ⅱ) 代表社員の住所氏名