『フェイク』

週末、お気に入りの映画、『フェイク』を観ました(本当に最近は、新しい作品よりも馴染みの作品に手が伸びます)。
マフィアの巨大ファミリーにたった一人で潜入し、壊滅に導いたFBI捜査官ジョー・ピストーネ(偽装名ドニー・ブラスコ)の実話に基づく映画です。

マフィアの一員であるレフティに接触する機会を得たドニーは、レフティに見込まれ組織に食い込み、一方のレフティは、人生の黄昏を迎える中、若いドニーに再び出世の夢を託します。
組織内部の抗争が激化する中、レフティとドニーは、“兄弟関係”を超えた絆を深めていきますが、向かう先の結末は、最初から決められていて・・・

落ち目のレフティを演じるのはアル・パチーノ。そのくたびれた哀愁を漂わせる様子は、これが『ゴッド・ファーザー』のマイケルを演じた男と本当に同じ人物かと目を疑うほど。
潜入捜査官としての任務と、レフティに対する愛情の狭間で葛藤するドニーを演じるのはジョニー・デップ。初めから二人の結末を知っている彼の目は、全編通じて悲しみと切なさに満ちています。

両名優が名を連ねた豪華な映画でありながら、あまり認知度が高いとはいえないのが残念なところ。特に、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『チャーリーとチョコレート工場』をきっかけにジョニー・デップのファンになった方には、ぜひ観ていただきたい映画です。

最後に全てを悟ったレフティの表情。潜入捜査を終え、その成功を形ばかりに表彰されるドニーの目。アル・パチーノとジョニー・デップの演技が素晴らしく、二人の間に築かれた親愛の情がどれほどのものであったのか、まっすぐ胸に迫り、熱くなります。

何度観ても、レフティがドニーに残した最後の言葉には、涙が止まりません。

 

今朝のお供、
LED ZEPPELIN(イギリスのバンド)の『LED ZEPPELIN Ⅰ』。
最近は、2ndよりも、この1stの方をよく手に取ります。

(佐々木 大輔)

ラトルの勇退

先日、ベルリン・フィル(BPO)の首席指揮者であるサイモン・ラトルが、2018年をもって、そのポストを退くことを発表しました。2018年はまだ5年も先のこと、とも思いますが、BPOの首席指揮者といえば、クラシック音楽界における最高峰のポスト。その後継者を選ぶための期間としては、必要にして十分ともいえます。
2018年、ラトルは64歳。指揮者としていよいよ成熟に向かう年齢ですが、彼は同郷であるビートルズの曲「When I’m Sixty-Four」の歌詞を引用し、「64歳になっても、僕を必要としてくれるかい?」と自らに問いかけ、今回の決断に至ったそうです。

ラトルは、若い頃からその才能を認められた存在で、20代から多くの一流オーケストラに招かれキャリアを積んできました。BPO、ウィーン・フィルの指揮台にもそれぞれ34歳、38歳でデビューしています(どちらもプログラムはマーラーの交響曲)。
1980年から98年まではバーミンガム市交響楽団の首席指揮者を務め、その間、当時あまり知名度の高くなかった同オーケストラを、名実ともに世界的なオーケストラに育て上げました。
94年には、30代の若さでナイトの称号(サー)が与えられています。

BPOの首席指揮者として白羽の矢が立ち、2002年に就任した時は47歳。これは奇しくも同ポストを34年間務めたカラヤン(カラヤンの場合は終身首席指揮者兼芸術総監督)の就任時と同じ年齢だったため、「ラトルの時代」「長期政権か」とも騒がれました。
ラトルの4期16年というのが長期なのかどうかは分かりませんが、残り5年、さらに素晴らしい演奏を聴かせてくれることを楽しみにしています。

退任後はフリーな立場で活動するのか、あるいは別のオーケストラの首席指揮者や音楽監督になるのか。
いずれにしても私としては、近年スケジュールの都合で共演の機会が少なかったウィーン・フィルとの共演回数の増加、若い頃に衝突して以来、関係が修復されているとはいえないコンセルトヘボウ管弦楽団やクリーヴランド管弦楽団との再演を期待しています。

 

今朝のお供、
FUN.(アメリカのバンド)の『SOME NIGHTS』。
収録曲「WE ARE YOUNG」により今年のグラミー賞で主要2部門(最優秀楽曲賞と最優秀新人賞)を受賞。
一度聴いたらメロディが頭から離れません。

(佐々木 大輔)

大鵬

先日、幕内最高優勝32回を誇る昭和の大横綱、大鵬が亡くなりました。秋田の老舗「菓子舗榮太楼」さんからお嫁さんをもらったこともあって、秋田にもゆかりのある方でした。
未だ歴代1位の座を譲らない優勝回数や2度の6連覇など、数々の記録を打ち立てた功績を称え、国民栄誉賞の授与が内定しています。

当然のことながら人気も絶大で、当時、通商産業省(現経済産業省)の官僚だった堺屋太一氏が記者会見で使用した「巨人、大鵬、卵焼き」(大鵬本人は好ましく思っていなかったとのことですが)のキャッチコピーや、取組時間には銭湯から人が消えると言われたことなど、その人気ぶりを示すエピソードには事欠きません。

私は、大鵬の取組をリアルタイムで観たことはありません。過去のVTRで触れることができるのみですが、懐の深さと柔軟な取り口で、いつの間にか自分の流れに持ち込み、得意のすくい投げで勝負を決する姿は、まさしく相撲の妙。

一方で、天才と呼ばれることを嫌い、常々「人より努力をしたから強くなった」と話していたそうです。その華やかな功績を支える実直な姿勢も、人々に好かれた要因だったのでしょう。

今年の初場所は、若貴なきあとの角界人気を支えた元小結高見盛の引退など、他にも寂しい話題がありました。
それでも、「美しい横綱」は、大鵬から貴乃花を経て、現在の白鵬へと受け継がれています。もう少し先のことになるかとは思いますが、この系譜に連なる新たな横綱の誕生をゆっくり待つのも、相撲ファンの楽しみですね。

 

今朝のお供、
ドナルド・フェイゲン(アメリカのミュージシャン)の『The Nightfly』。
音はもちろんのこと、ジャケットデザインが大好き。
週末(できれば土曜日)の夜、アナログ盤のジャケットを眺めながら、ウイスキー片手に聴きたくなる名盤です。

(佐々木 大輔)