仕事納め

穏やかだった12月も年末を迎えていよいよ冬本番の様相を呈してきました。
帰省される方、旅行される方、皆さん気をつけて行動してくださいね。

師走とはよく言ったもので、バタバタしているうち気が付くと今年もあと数日で終わり。
歳を重ねたせいか1年経つのが本当にあっという間に感じます。

今年を振り返ってみると、例年以上に秋田県に注目が集まった年でした。
先月には男鹿のナマハゲがユネスコの無形文化遺産に登録されましたし、夏の甲子園における金足農業高校の活躍は鮮烈でした。
ピョンチャン五輪で金メダルを獲得したザギトワ選手に秋田犬のマサル(女の子ですけど)がプレゼントされたことで、あらためて秋田犬にも注目が集まりました。一方、秋田犬の展示が県内各地で盛んに行われた結果、秋田犬がストレスで体調を崩すという残念なニュースも。秋田犬はもともと人に触れられるのを苦手とする犬種です。話題になるのはいいことですが、正しい理解と知識に基づいて秋田犬の魅力を広めていくことも必要でしょう。

さて、私の年末年始の過ごし方は、紅白歌合戦を見て、除夜の鐘を聞いて、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを見て、箱根駅伝を見て・・・と、毎年変わらない気がしますが、慌ただしい日々を過ごしていると、むしろ変わらない穏やかな生活に喜びを感じます。
朝起きて、いつものカフェで買ったコーヒー豆を丁寧に挽き、お気に入りのカップで充実した1杯のコーヒーを飲む。休日にしか過ごせない贅沢な時間。先日一目惚れして購入した新しいコーヒーカップをおろすのも楽しみ。
そうだ、今年はまだ「第九」を1回も聴いていなかった。う~ん、誰の演奏で聴こうかなあ。
私が幼い頃、母親が良く聴いていた懐かしいフリッチャイ指揮のレコードに、久しぶりに針を落としてみようかな。

色々楽しいことを考えながら、もういくつか寝ると新しい年。
心の充実が来年の仕事の活力となりますように。

来年もよろしくお願いいたします。

今朝のお供、
QUEEN(イギリスのバンド)の『Live at Wembley ‘86』。

                                   (佐々木 大輔)

遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言)

今回は、最近依頼が増えている遺言書について少しお話を。

遺言書を残すことで、法定相続分の修正をすることが可能となります。
例えば、相続人が配偶者(夫にとっての妻、妻にとっての夫)と子供が2人という場合、配偶者の法定相続分は2分の1となりますが、配偶者のみに全財産を相続させることも可能となります。
一方で、法定相続割合で相続させる場合でも、それを希望するのであれば、その旨書き残しておくことが望ましいでしょう。
また、遺言書には、「残された相続人のみんなで協力しながら仲良く暮らしてほしい」といった思いを残すこともできます。ただし、この部分には法的な効力はありませんので、「付言事項」という形で記載されることとなります。とはいえ、残された相続人の方々にとって、亡くなった方が明示した気持ちや思いというのは、大きな意味を持つものです。

ところで、遺言書は、民法に定められた方式に従って作成しなければ効力が生じません。民法で定められた遺言の方法には7種類ありますが、今回のブログでは、その中で活用されることの多い自筆証書遺言と公正証書遺言に絞って説明します。

(1)自筆証書遺言
自筆証書遺言の要件は、遺言の全文・日付・氏名を自書し、押印すること、です。

(2)公正証書遺言
公正証書遺言の要件は、以下のとおりです。
①証人2人以上が立ち会うこと。
②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授。
③公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させる。
④遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、押印する。
⑤公証人が、その証書は方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押す。

(3)自筆証書遺言のポイント
正確に作成するにはハードルがけっこう高いことです。厳格な形式を求められ、ミスがあると遺言書全体が無効になってしまう危険性があります。
また、被相続人が亡くなった後、原則として、家庭裁判所に相続人全員が集まって、「検認」という手続が必要となります。

※「検認」とは、相続人に対し、遺言が存在することとその遺言の内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日時点における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

(4)公正証書遺言のポイント
一般的に、専門家である弁護士又は行政書士が文案を作成し、この文案を基に公証人が公正証書の形式に調えます。

(5)遺言書作成業務
遺言書作成業務は弁護士又は行政書士の業務です。

(6)費用
専門家による調査及び文案作成の報酬のほか、戸籍等取寄せ等の経費がかかります。また、公正証書遺言の場合、公証人の手数料がかかります。
詳細につきましては、当事務所宛お問い合わせください。

遺言書の作成をご検討されている方は、どちらの方式で遺言書を残すのが適当であるのかも含めてご相談いただければアドバイスいたしますので、一度当事務所までご連絡ください。

(佐々木 大輔)

揺らぐ常識

「普通」とは何でしょう。よく言われるように、平均値の人間はどこにも存在しません。目に見えない、存在するかどうかも怪しい、多数による暗黙の合意でしかない「普通」。多様性が求められる現代において、個性的であるかどうかは「普通」を基準として判断されるため、かえって個性よりも「普通」とは何かが問われることとなります。

こんなことを考えさせられたのは、先日、村田沙耶香著『コンビニ人間』を読んだため。
数年前、芥川賞を受賞し話題となったことから読まれた方も多いかと思います。

――主人公の古倉恵子は、30代半ばの現在に至るまでコンビニでのアルバイトを続けている。幼い頃から変わり者であった古倉は、マニュアルに沿ってコンビニで働いている間のみ社会の一員として「普通の人間」でいることができる。しかし、30代半ばで定職についていない、結婚もしていない、彼氏もいない古倉に対し、周囲からの干渉は日毎に増していく。そんな中、新しく男性バイトの白羽が入ってくる。いつか起業するとうそぶき、周囲の人間を見下し、古倉の生き方を「恥ずかしい」として否定する白羽。そんな彼も、実は社会の求める「普通」に適合できないことにコンプレックスを抱えていた――

この白羽という人物がまた曲者で、クズっぷりが凄まじく、読んでいて本当に腹が立つのですが、彼の言動にイライラすること自体、私も普通とか常識とか当たり前といったものに自分が染まっている証左なのではないか、と思ったりもします。

『コンビニ人間』は150ページ程度。しかも純文学特有の持って回ったような表現を使わず平易な文章で書かれていて読みやすい。にもかかわらず、読み終えた後には、正常と異常の境目に立たされたような眩暈(めまい)を覚えるほどのショックを受けました。

もう一冊。こちらはもう、あまりにも有名な三島由紀夫の『仮面の告白』。太宰派を自認する私としては、三島作品には縁遠いのですが、『コンビニ人間』の読了を契機に手に取りました。三島の文章が明晰であるがゆえ、主人公である「私」の素顔と社会の求める「正常」との隔たりが、冷酷なほどに際立っています。

両作品の主人公とも普通の(正常な)人間になろうと、異性を好きになってみたり、同棲を始めてみたりと試みる姿を見るにつけ、三島の苦悩もコンビニのアルバイト店員の苦悩も、「普通」ではない者のアイデンティティー(あるものがそれとして存在すること。本人であること)という部分において根源的には同じなのだ・・・なんて一括りにしてしまうと、文学ファンからは「何もわかっていない」とお叱りを受けそうですが。

今朝のお供、
Manic Street Preachers(イギリスのバンド)の『The Holy Bible』。

                                   (佐々木 大輔)