夏本番

秋田市も梅雨が明け、いよいよ暑い夏本番です。
とはいえ今年はすでに6月から暑い日が続き、全国的には40度を超えたところもありました。梅雨も東北北部以外はあっという間に明けてしまい、今後の水不足も心配です。
私も先月の仙台出張の際、さっそく猛暑日(35度以上)を体験しましたが、まだ暑さに慣れていない体には地獄のような暑さでした。
ところで、40度以上の日はなんと呼べばいいのでしょうか。どうやらまだ気象予報の用語としては存在しないようです。
猛暑日という用語も使われるようになったのは2007年(平成19年)から。
これだけ暑い日が日常的になることは、ひと昔前までは想定されていなかったのでしょう。

暑さの一方で大雨の被害も深刻です。
これらの異常気象の原因が何なのか、専門的なことはわかりませんが、地球温暖化や環境汚染もその一因であるかと思われます。

このような異常気象や環境汚染のニュースを見るたびに思い出すのが、星新一著「おーいでてこーい」(『ボッコちゃん』収録)です。

――台風が過ぎた村で不思議な穴が発見される。村人は動物の棲み処かと思い「おーいでてこーい」と叫んでみるが反応はなし。次いで小石を投げ入れてみるが底を打つ気配もなし。結局この不思議な穴は、様々な廃棄物を投げ捨てる穴として重宝され、その結果、海や空は澄み、地上には天空を目指して伸びる高層ビルが立ち並ぶように。
ある日、建築中の高層ビルの鉄骨の上で作業員がひと休みしていると、頭上から「おーいでてこーい」と叫ぶ声がする。見上げても澄み切った青空が広がるばかり。気のせいかと姿勢を戻した作業員を、小石がかすめて落ちていく――

この「おーいでてこーい」が書かれたのは1958年(昭和33年)。なんと今から64年も前のことで、まだ一般的な辞書には「公害」という言葉も載っていなかった時代です。
当時も今も変わらない、生産することばかりに熱心でその後始末を先送りする人間の弱さ、あるいは自分さえよければそれでいいという利己主義的な考え方。
そして今、世界が抱える地球温暖化や環境汚染は、これらのツケが回った結果ということでしょうか。

ただし、星新一自身は、後年のエッセイの中で本作について、公害問題と結び付けられたことにより、作品そのものとしての面白みが損なわれたと言及しています。
たしかに、一度発表された作品が著者の思惑を離れて思いがけない解釈がされたり、予言の書と崇められたりすることはままあるもの。
純粋に作品として楽しみながらも、そこから何を得るか、学ぶか、感じるか。
しかしこれは読み手に委ねられるものであります。
私は本作のストーリーの巧みさに唸りつつ、(環境問題に限らず)目先の利益を優先し問題を先送りし続けることへの警鐘として読みます。
先送りした問題は、結局のところ我々人間(未来の子供達)が自ら解決しなければならないのですから。


今朝のお供、

COLDPLAY(イギリスのバンド)の『X&Y』。

                              (司法書士 佐々木 大輔)