金照寺山

皆さん、NHKで放送されている「にっぽん縦断 こころ旅」という番組をご存知ですか。全国の視聴者から手紙やメールで寄せられた思い出の場所を、俳優の火野正平さんが自転車で巡るという番組で、視聴者のエピソードや思い出の風景が魅力的なのはもちろんのこと、地元の人々との交流を通じて正平さんのチャーミングな人柄がしのばれる素敵な番組です。

先々週(6月30日から7月4日)の放送は、秋田県の旅でした。
山形県から秋田県に入り、青森県へと抜ける秋田縦断の旅。私の住む秋田市は、金照寺山が思い出の風景として紹介されました。
金照寺山とは、秋田市中心部にある標高わずか56.4メートルの可愛らしい山です。

手紙主さんは、12歳の時、東京から秋田の中学校に転校してきた方で、最初のうちは方言もわからず、なかなかクラスになじめないでいたそうです。そんなある日、担任の先生の提案で、毎週日曜日の朝、先生も含めクラスメートのほとんどが、金照寺山の頂上に集まって遊ぶことになりました。みんなで走り回ったり、ソリで遊んだり、何か特別なことをしたわけではないけれど、毎週日曜日、金照寺山で過ごす時間が、手紙主さんにとってクラスメートと仲良くなるかけがえのない時間だったそうです。
手紙主さんは、2年足らずでまた東京に戻ったため、秋田は遠い思い出の地となってしまったそうですが、40年経った今でも、金照寺山の頂上から見た秋田市内、遠くに広がる山々を懐かしく思い出すとおっしゃっていました。

もちろん番組のハイライトは、正平さんが金照寺山頂上からの風景を紹介するシーンなのですが・・・残念ながら、現在の金照寺山は草木が生い茂り、秋田市内も遠くの山々もほとんど望めない・・・というオチ。

金照寺山からの風景は、番組的には(そして手紙主さんにとっても)少々残念な結果となりましたが、手紙主さんのことを思い、さりげなく手を差し伸べてくれた担任の先生の優しさに心が温かくなりました。
そして、秋田を離れた今でも、担任の先生のこと、秋田の風景を、大切な思い出として心に留めていてくれる手紙主さん。秋田市民として感謝に堪えません。
願わくは、金照寺山が、在りし日の姿を再び取り戻してくれる時がくればなあ。

 

今朝のお供、
井上陽水の曲「少年時代」。
後日談によると、思い出の担任の先生から連絡があったとのことです。
良かったですね、手紙主(ミッフィー)さん!

(佐々木 大輔)