10 相続登記(不動産登記)義務化

(相続に関する当事務所の取扱業務)

① 相続登記申請の代理
相続登記申請手続事務の相談
相続登記に関する審査請求手続(不服申立手続)についての代理

② 遺産分割協議書等各種文案書類の作成代理
契約書等各種文案書類作成の相談

③ 公正証書作成の手続代理
公正証書作成手続の相談

④ 「相続放棄」・「限定承認」の申立

⑤ 遺産分割協議の調停申立書作成(裁判所への申立)
遺産分割協議の訴訟書類作成
調停申立書・訴訟書類作成事務の相談

(目次)

(1) 不動産(土地・建物)の相続登記義務化の「開始日」と「その理由」

(2) 長期間、相続登記をしないままの不動産がある場合、すぐに登記をしないといけないか

(3) 相続登記をしない場合、罰則があるか

(4) 相続登記義務化の制度がスタートした後、不動産を相続した場合にどのような登記をすればよいか

(5) 相続登記の相談はどこにすればよいか

(6) 不動産登記について、相続登記義務化制度以外の見直し点について(相続土地国庫帰属制度の創設)

(7) 令和8年4月までに施行されること

(8) 相続人申告登記(遺産分割協議がまとまらず相続登記ができないとき)

(1) 不動産(土地・建物)の相続登記義務化の「開始日」と「その理由」

ア 相続登記義務化の開始日
令和6年4月1日からスタートします。

イ 相続登記義務化の理由
「所有者不明土地問題」を防ぐための法律が令和3年4月に成立し、相続登記が義務化されました。

* 所有者が亡くなったのに相続登記がなされないと、登記簿を見ても所有者が分からず、国・県・市町村の復旧、復興事業等や個人間の売買取引を進められないという問題を回避するためです。

(2) 長期間、相続登記をしないままの不動産がある場合、すぐに登記しないといけないか。
相続登記義務化の制度は令和6年4月1日からスタートしますが、 相続登記の申請については、制度のスタートから3年間の猶予期間がありますので、3年以内に登記申請をすればよいです。

* 相続登記義務化制度がスタートする前に相続が発生していた場合も、相続登記義務化の対象となります。

(3) 相続登記義務化制度がスタートしたが、相続登記をしない場合に罰則があるか
正当な理由がないのに、不動産の相続を知ってから3年以内に相続登記の申請をしないと、金10万円以下の過料が科される可能性があります。

* 例外
相続の関係者が多くて、必要な資料を集めるのに時間が掛かって、3年以内に登記をすることができない場合などは、罰則の対象となりません。

(4) 相続登記義務化の制度がスタートした後、不動産を相続した場合にどのような登記をすればよいか

ア 相続人間で遺産分割の話し合いが整った場合
相続人間で遺産分割の話し合いが整った場合には、その結果を踏まえた相続登記をすることになります。

イ 相続人間の話し合いが難しい場合
この場合は、「相続人申告登記制度」を利用することができます。ただし、相続によって権利を取得したことまでは公示されないので、従来の登記とは全く異なるものです。

* 「相続人申告登記制度」は、令和6年4月1日にスタートします。

(ア) ひとまず、「相続人申告登記」(今回新たに設けられた制度)の手続を取ることで、相続登記義務化の義務を果たすことができます。

(イ) この手続は、自分が相続人であると申告して、それを示す戸籍を提出すれば完了します。

ウ 相続人申告登記
相続人が、申請義務を簡易に履行することができるようにする観点から、新たな登記制度が設けられました(不動産登記法第76条の3)。

(ア) 登記の内容
① 所有権の登記名義人について相続が開始した旨
② 自らがその相続人である旨

(イ) 登記の申出
申請義務の履行期間内(相続が発生してから3年以内)に登記官に申し出ることで、申請義務のみを履行したものとみなします。

* 登記簿に「氏名・住所」が記録された相続人の申請義務のみ履行したことになります。

(ウ) 申出を受けた登記官
所要の審査をした上で、申出をした相続人の氏名・住所等を職権で登記に付記します。

* 登記簿を見ることで、「相続人の氏名・住所等」を容易に把握することが可能となります。

(エ) 申請人
相続人が複数存在する場合でも特定の相続人が、単独で申し出ることができます。

* 他の相続人の分も含めた代理申出も可能です。
また、「法定相続人の範囲」及び「法定相続分の割合」の確定は不要です。

(オ) 添付書面
申出をする相続人自身が、被相続人(所有権の登記名義人)の相続人であることが分かる当該相続人の戸籍謄本を提出することで足ります。
* 相続人の資料取集の負担が軽減されます。

エ 相続登記申請義務のルール

(ア) 基本的義務(不動産登記法第76条の2第1項)
相続(特定財産承継遺言を含む。)や遺贈により、不動産を取得した相続人に対し、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記申請をすることが義務付けられました。

(イ) 遺産分割成立時の追加的義務(不動産登記法第76の2第2項、第76条の3第4項等)
遺産分割がされた場合には、実際上、相続人中において権利者の集約が図られることも多いと考えれられるため、遺産分割の結果を不動産登記に反映させることができれば、その後の土地の処分に当たっても便宜であることから、改正法では、遺産分割が成立した場合には、その内容を踏まえた登記申請をすることも義務付けています。

* 相続発生後は、全ての相続人が法定相続分の割合で、不動産をが共有することになるため、財産の処分には、相続人全員の同意が必要となり、財産の処分が難しくなります。

オ 相続人がすべき登記申請の内容(ケース別の説明)

(ア) 3年以内に遺産分割が成立しなかった場合

① まずは、3年以内に、「相続人申告登記」の申出を行います。
* 法定相続分での相続登記申請も可能です。

② ①の後に、遺産分割が成立したら
遺産分割成立日から3年以内に、その内容を踏まえた相続登記の申請を行います。

③ ①の後に、遺産分割が成立しなければ
それ以上の登記申請は、義務付けられません。

(イ) 3年以内に遺産分割が成立した場合

① 3年以内に、遺産分割の内容を踏まえた相続登記の申請が可能であれば
それを行えば足ります。

② すぐには、相続登記申請が難しければ
3年以内に、「相続人申告登記」の申出(法定相続分での登記申請も可能です。)行った上で、遺産分割成立日(死亡日ではありません。)から3年以内に、その内容を踏まえた相続登記申請を行います。

(ウ) 遺言者があった場合
遺言(特定財産承継遺言又は遺贈)によって不動産の所有権を取得した相続人が、取得を知った日から3年以内に、遺言の内容を踏まえた相続登記の申請(「相続人申告登記」の申告でも可です。)を行います。

(5) 相続登記の相談はどこにすればよいか
お近くや知り合いの司法書士事務所に相談してください。

(6) 不動産登記について、相続登記義務化制度以外の見直し点は、「相続土地国庫帰属制度の創設」です。

* 「相続土地国庫帰属制度」とは
相続や遺贈によって、土地の所有権を取得した相続人が法務大臣の承認を受けて土地を手放し、国庫に帰属させることを可能とする制度です。
(制度のスタート等)
制度のスタートは、令和5年4月27日です。なお、この制度を利用するには、審査料と負担金の納付が必要となります。

(7) 令和8年4月までに施行される予定

① 所有不動産記録証明制度
登記簿上の所有者として記録されている方の不動産を一覧的にリスト化し、証明する制度です。

② 住所変更登記義務化制度
登記簿上の所有者の住所等が変わった場合に、その登記の申請を義務化する制度です。

③ 職権(法務局)で住所等の変更登記をする仕組み
法務局と他の公共機関との情報連携により、法務局が職権で住所等の変更登記をする仕組みです。

④ 身の危険等ある場合に、登記対象者の現住所に代わる事項を記載する制度
DV被害等を受けている方を対象に、対象者が載っている登記事項証明書等を登記官が発行する際には、現住所に代わる事項を記載する制度です。

(8) 相続人申告登記(遺産分割協議がまとまらず相続登記ができないとき)

* 令和6年4月1日施行

ア 相続人申告登記の内容
相続人申告登記とは、登記上の所有者が亡くなったが、相続人間で遺産分割協議がまとまらないなどで、被相続人が亡くなってから3年以内に相続登記の申請をすることができない場合に、下記の2つの事項を法務局に申し出る制度です。その登記をすることよって、下記の罰則を免れることができます。

(1) 登記上の所有者が亡くなった旨

(2) 自らが相続人の一人である旨

イ 罰則
被相続人が亡くなってから3年以内に相続登記がなされない場合は、金10万円以下の過料に処せられます。

ウ 登記の方法等
この申出を受けると、法務局は下記事項を登記します。

(1) 申出をした相続人の氏名

(2) 申出をした相続人の住所等

* 注

① 通常の相続登記と相違し、持分は記載されません。

② 一人の相続人が、全員分をまとめて申出することも可能です。

③「相続人申告登記」は、相続により権利を取得したことの登記ではなく、被相続人が亡くなってから3年以内に相続登記を申請しなければならない義務を「履行」するための「報告的な登記」です。

④「相続人申告登記」の後、遺産分割協議がまとまり具体的な相続分を取得した際は、その遺産分割協議成立のから3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

エ 相続人申告登記に必要な書類

(1) 亡くなった人の除斥謄本

(2) 申出をする相続人の戸籍謄本

(3) 申出をする相続人の住民票