7 財産管理業務

(当事務所の取扱業務)

① 契約書等各種文案書類の作成代理・文案書類作成の相談

② 法令上の地位(遺言執行者・成年後見人等)に基づく財産管理
遺産整理手続業務

③ 簡易裁判所の「民事訴訟・民事調停」の代理
法律相談

④ 地方裁判所等へ提出する裁判書類の作成
裁判書類作成事務の相談

* 当事務所は、「税理士の業務である相続税の申告」を除き、「① 不動産の相続登記申請 ② 官公署へ提出する書類の作成代理及び提出代理 ③ 銀行等へ提出する書類の作成・銀行等からの預貯金の払戻し」等の業務を執行することにより、財産管理業務(遺産整理手続の業務等)を取り扱っております。


(目次)

(1) 司法書士の「附帯業務」としての財産管理業務等の明文化

(2) 遺産整理手続の必要性

(3) 司法書士の財産管理業務(司法書士法施行規則第31条)の範囲・事例

(4) 司法書士が担う財産管理業務の法的根拠

(1) 司法書士の「附帯業務」としての財産管理業務等の明文化
平成14年の司法書士法改正により、司法書士法第29条第1項第1号(司法書士の業務範囲の規定)及びこれを受けた司法書士法施行規則第31条が新設されました。

・これにより、「すべての司法書士(簡裁訴訟代理関係業務認定司法書士に限定されない)」が、いわゆる「財産管理業務」を行うことができる旨が、明文化されました。


(2) 遺産整理手続の必要性
相続人間で遺産分割協議が成立した後、「① 銀行・郵便局・信託銀行・証券会社などからの金員の払戻し、名義変更、解約手続 ② 不動産の相続登記申請手続 ③ 官公署への諸手続 ④ 相続税がかかる場合は相続税の申告(これは、税理士の業務分野です) ⑤ 不動産を換金したい場合は、その売却に伴う売買契約書の作成」などが必要になります。

・そこで、遺産整理手続を行う専門家も必要となります。


(3) 司法書士の財産管理業務(司法書士法施行規則第31条)の範囲・事例

ア 他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務(司法書士法施行規則第31条1項1号)

① 当事者の依頼に基づく財産管理業務

(ⅰ) 任意相続財産管理業務(遺産整理手続業務)
被相続人名義の相続財産を、遺産分割協議に従い各相続人に配分する業務のことです。
(例)

a 銀行預金や出資金等の解約手続

b 株式や投資信託等の名義変更手続

c 生命保険金や給付金の請求手続

d 不動産の売却

(ⅱ) アパート経営等収益物件の管理・運営に関する業務
(例)

a 賃料の収受

b 管理のための工事手配、費用の支出

(ⅲ) 不動産の任意売却業務

(ⅳ) 相続における「限定承認」の相続財産管理人支援業務

(ⅴ) マンション管理者の業務

② 法令上の地位に基づく財産管理業務

(ⅰ) 遺言執行業務(民法1010条)

(ⅱ) 成年後見人・保佐人・補助人(民法8条、12条、16条)

(ⅲ) 不在者の財産管理業務(民法25条)

(ⅳ) 相続人不存在による相続財産管理業務(民法952条)

(ⅴ) 相続人が数人ある場合の限定承認(民法936条)、相続放棄

* 「民法940条2項」の場合は、法定の相続財産管理業務

(ⅵ) 財産管理者(家事審判手続法)

(ⅶ) 任意後見業務

(ⅷ) 破産法・会社更生法等の管財・管理・監督業務

イ 他人の事業の経営…又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務
(司法書士法施行規則第31条1項1号)
(例)

① 中小企業支援、事業承継等のサポート

② 会社や団体の役員への就任

③ 企業との継続的法務顧問契約

* ただし、訴額が金140万円を超える「争いある事案」や、司法書士以外の士業の独占業務は、司法書士が受任することはできません。

・また、財産管理業務受任後に、法的な紛争が生ずることがほぼ確実となった場合は、管理業務事件処理途中であっても、辞任せざるを得ない場合があります。


(4) 司法書士が担う財産管理業務の法的根拠

ア 以下について、説明します。

① 司法書士の財産管理業務執行の歴史

② 司法書士の「附帯業務」としての財産管理業務等の明文化

③ 信認関係

イ ① 司法書士の財産管理業務執行の歴史
附帯業務については、本来的に争訟性を有する法律事務ではないことから、もともと特定の資格を有する者に限定されるものではなく、従前から、司法書士も裁判所において、「遺言執行者、相続財産管理人、不在者財産管理人、破産管財人」等に選任されて来ており、また、当事者の依頼による「遺言執行者の就任、任意の相続財産管理人、遺産整理人」等のほか、「任意売却等の財産管理処分業務」等を担って来ました。しかし、法律上の根拠規定はありませんでした。

② 司法書士の「附帯業務」としての財産管理業務等の明文化
平成14年の司法書士法改正により、司法書士法第29条第1項第1号を受けて、司法書士法施行規則第31条が規定されたことにより、司法書士が司法書士業務の附帯業務として、「財産管理業務(遺産整理手続業務、相続財産管理業務等)」を行えることが、法律上も明文化されました。

* 司法書士法施行規則第31条
司法書士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、「管財人、管理人その他これらに類する地位」に就き、「他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務」又は「これらの業務を行うものを代理し、若しくは補助する業務」を行うことができる。

③ 信認関係(委任者《相続人》と受任者《司法書士》の関係)

(ⅰ) 委任者(相続人)と受任者(司法書士)の関係は、通常の委任関係(対等な関係であり、自己責任を基本とする)ではなく、受任者が専門家である場合には、最初から知識・情報等において対等ではなく、委任者が高度の専門性を有する受任者に依存するという関係があることに着目し、そこから「信認義務」が生じると説明されています。

(ⅱ) この信認関係は、もともとは、信託契約の委託者と受託者の関係で説明されてきたものですが、信託も財産管理の一手法であることから理解できます。

(ⅲ) 「弁護士」と「司法書士」にのみ、附帯業務として「財産管理業務、成年後見業務」が、法令上、規定(弁護士法30条の5、司法書士法31条)されているのは、これらの業務が高度の信認関係に基づく必要がある ことから、法律事務を専門に業とすることができる法律資格であることによるものと考えることができます。

・これら条文の趣旨からすれば、法令上、財産管理業務を行うことができるのは「司法書士」と「弁護士」のみであるということになります。