2 遺言

(当事務所の取扱業務)

① 自筆証書遺言書の原案作成
公正証書遺言書の原案作成・公証証書作成手続
秘密証書遺言書の原案作成・公証証書作成手続
上記遺言書作成の相談

② 遺言書等各種文案書類の作成代理
各種文案書類作成の相談

③ 遺言執行業務(遺言執行者の受任)

(目次)

(1) 遺言の意義

(2) 遺言執行者
遺言執行者の権限の明確化

(3) 遺言書の主な方式
法務局における自筆証書遺言書の保管制度の創設

(4) 遺言書作成の注意点

(5) 相続させる旨の遺言の効力(令和元年7月1日施行)

(1) 遺言の意義
遺言とは、生存中、一定の方式で示された個人(被相続人)の意思を、その人の死後、それに即した法的効果を与えるという制度です。

・個人は、死後の自分の財産の行方についてもその意思で自由に決定することができます。民法は、遺言者の最後の意思を尊重して、一定の事項につき、遺言者の死後の法律関係が、遺言で定められたとおりに実現することを法的に保障しています。


(2) 遺言執行者

 遺言内容を実現するためには、多くの手続を行わなければなりません。そして、これらの手続には、法的な専門知識が必要とされる場合も多く、なかなか順調には進まないのが現実です。

・そこで、遺言内容の実現に必要な手続を、第三者の立場から実行する「遺 言執行者」を選任することができます。

・遺言の内容を実行する際に起こりうる紛争を防ぎ、かつスムーズに手続を進行させるためにも、司法書士等の法律の専門家を、遺言執行者に選任することをお薦めします。

* なお、当事務所は、遺言執行者の職務を行っています。

イ 遺言執行者の権限の明確化(令和元年7月1日施行:民法1012条1項、1015条)
改正法は、改正前の「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」とする民法1013条の規定に追加して、「前項の規定に違反してした行為は無 効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない」旨の規定を追加しました(民法1013条2項)。

* 民法の下記のように、遺言執行者の権限と地位の明確化を図りました。

① 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

② 遺言執行者の権限の範囲内において、遺言執行者であることを示してなした行為は、相続人に対し直接に効力を有する。


(3) 遺言書の主な方式は、次のとおりです。

① 自筆証書遺言
遺言者が、「遺言書の全文・日付・氏名」を自書し、これに押印することよって成立します。なお、遺言書を封筒に入れて封印することは自筆証書遺言の法定要件ではありませんが、後日の紛争を防止するため、作成された遺言書を封筒に入れ封印をしておくことをお勧めします。

・自筆証書遺言書を使用して、遺言執行するには、家庭裁判所に検認の申立てをし、検認してもらった遺言書を使用することが必要です。

* (ⅰ) 裁判所の検認
封筒に入れ封印された自筆証書遺言書については、開封せずに家庭裁判所へ手続をとり、家庭裁判所で開封して、検認して貰う必要があります。

(ⅱ) 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(令和元年7月10日施行)
令和元年7月1日より、自筆証書遺言書を作成した者は、法務大臣の指定する法務局に遺言書の保管を申請することができます。内容は、下記のとおりです。

A 遺言書の保管の申請(申請の管轄と保管担当者)
遺言者は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(法務大臣の指定する法務局)の遺言書保管官(法務局の事務官)に対し、遺言書の保管を申請することができます。

B 遺言書保管所の指定及び具体的な管轄
遺言書保管所の指定及び具体的な管轄は、「法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設」の施行日たる令和2年7月10日)までの間に定められます。

C 保管の対象となる遺言書
保管申請の対象となるのは、自筆証書による遺言書のみです。

* 申請書の具体的様式の決定
申請書の具体的様式は、「法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設」の施行日たる令和2年7月10日までの間に定められます。

D 「遺言書の保管の申請」、「遺言書の閲覧請求」、「遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付申請」
上記の申請や交付請求をするには、手数料を納める必要があります。

* 申請や交付請求に要する費用額

自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧

申請・請求の種別 申請・請求者 手数料
遺言書の保管の申請 遺言者 一件につき,3900円
遺言書の閲覧の請求(モニター) 遺言者
 関係相続人等
一回につき,1400円
遺言書の閲覧の請求(原本) 遺言者
 関係相続人等
一回につき,1700円
遺言書情報証明書の交付請求 関係相続人等 一通につき,1400円
遺言書保管事実証明書の交付請求 関係相続人等 一通につき,800円
申請書等・撤回書等の閲覧の請求 遺言者
 関係相続人等
一の申請に関する申請書等又は
一の撤回に関する撤回書等につき,
1700円

※ 遺言書の保管の申請の撤回及び変更の届出については手数料はかかりません。


E 遺言者の死亡後に、相続人や受遺者が実務上なし得る行為は、下記のとおりです。

(A) 「遺言書保管事実証明書」の交付請求
遺言者の死亡後に、相続人や受遺者らは、全国にある遺言書保管所において、遺言書が保管されているかどうかを調べることができます。

(B)「遺言書情報証明書」の交付請求
相続人や受遺者らは、遺言書の写しの交付請求をすることがきます。

(C)「遺言書情報」の閲覧請求
相続人や受遺者らは、遺言書を保管している遺言書保管所に行って、遺言書を閲覧することができます。

F 創設によるメリット

(A) 家庭裁判所の検認は不要
遺言書の保管所に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認が不要となります。

(B) 遺言書保管官からの「遺言書保管」の通知
遺言書の「閲覧」や「遺言書情報証明書」の交付なされると、遺言書保管官は、他の相続人に対し、遺言書を保管している旨を通知します。


② 公正証書遺言
「(ア)公証人と2人以上の証人の立会いを得て、(イ)遺言者が公証人に遺言の趣旨を口授し、(ウ)公証人がこれを筆記して、遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させて、(エ)遺言者及び証人が筆記の正確なことを確認した後、各自がこれに署名・押印し、(オ)公証人が、その証書は、方式に従って作成されたものである旨を付記して署名・押印する」方式の遺言書です。

・自筆証書遺言書と相違し、家庭裁判所の検認を要せず、その証書を使用して、直接、遺言の執行をなすことができます。

・ただし、公証人の作成手数料が掛かりますので、自筆証書遺言書を作成するよりは経費負担が多くなります。

③ 秘密証書遺言
「(ア)遺言者が筆記し、又は第三者に筆記してもらった遺言書に遺言者が署名・ 押印した後、(イ)遺言者がその証書を封じ、証書に使用した印章で封印し、公証人 1人及び証人2人以上の前にその封書を提出し、自己の遺言書であること等を申述 します、(ウ)次に、公証人が証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載し、(エ)最後に、遺言者・証人・公証人が封紙に署名・押印する」ことよって成立する遺言書です。

・家庭裁判所の検認を要せず、その証書を使用して、直接、遺言の執行をなすことができます。

④ 特別の方式として、下記のような遺言があります。
「(ⅰ)死亡危急者の遺言 (ⅱ)伝染病隔離者の遺言 (ⅲ)在船者の遺言 (Ⅳ)船舶遭難者の遺言」の4つです。

(ⅰ)死亡危急者の遺言(民法第976条)

ア 死亡危急者の遺言の要件

(ア) 死亡危急時とは
要件は、疾病その他の理由により、死亡の危急に迫ったことです。

* 必ずしも医師の診断による客観的な危篤状態を指すものではなく、「客観的に死期の近いことを思わせる相当の事実があり」、「主観的に遺言者が死亡の危急に迫っていることを自覚していること」で足ります。

(イ) 証人3人以上の立会い
他の方式では、証人が2人以上となっているものが多いが、本方式では3人以上とされています。

* 「口頭遺言であること」、証人の一人が筆記しなければならないこと」、「遺言の内容に疑いが生じた場合に決しやすいこと」が考慮されたものです。

(ウ) 口授・筆記・読み聞かせ等
死亡危急者は、証人の1人に遺言の趣旨を口授し、口授を受けた者が筆記し、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人が筆記の正確なことを承認し、署名し、印を押さなければなりません(民法第976条第1項)。

* 日付の記載
日付の記載は、死亡危急者遺言の要件ではないので、遺言書に作成の日として記載された日付が正確性を欠いていても、遺言は無効とはなりません。

(エ) 証人の署名及び押印
遺言者の「署名、押印」は必要とされず、証人のみが「署名、押印」を求められています。

* あ 署名は、証人自身がすることが必要です(大判大14・3・27)。

い 押印は、拇印でも足ります(大判大1・11・30)。

う 他人に指示して、代わりに印を押させても差し支えありません(大判昭6・7・10)。

え 遺言者のいない場所で、「署名、押印」した場合でも、遺言の効力を認めることを妨げません(最判47・3・17)。

お 証人の「署名、押印」は、遺言者の生存中にしなければなりません(判例)。

(オ) 遺言者が、口がきけない者である場合等の特則
遺言者の趣旨を通訳者の通訳により申述して、口授に代えなければなりません(民法第976条第2項)。

* 遺言者又は証人が耳の聞こえない者であるときは、筆記内容を通訳人の通訳により伝えて、これに対する読み聞かせに代えることができます(民法第976条第3項)。

イ 遺言の確認
作成した遺言書は、遺言の日から20日以内に、証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に請求して、確認の審判を得なければなりません。

(ア) 遺言の確認
遺言が、遺言者の真意に出たものであるかどうかを判定するためのものです(民法第976条第5項)。

(イ) 遺言の確認の審判
遺言の有効要件と解されているが、遺言の有効性自体を確定させるものではありません。

* 心証の程度
遺言の確認に当たり、遺言者の真意について家庭裁判所が得るべき心証の程度は、確信の程度に及ぶ必要はなく、一応遺言者の真意に沿うと判断される程度の緩和された心証で足ります(東京高決平9・11・27)。

ウ 死亡危急者遺言の効力
遺言者が死亡した時に効力を生じます(民法第985条)。

* ただし、遺言者が死亡危急事態を脱し、普通方式によって遺言をすることができるようになった時から6か月間生存するときは、その効力を生じません(民法第983条)。

(ⅱ) 伝染病隔離者の遺言(民法第977条)

ア 伝染病隔離者のための遺言
伝染病のために隔離された者は、警察官1人及び証人1人以上の立会いの下で遺言書を作成することができます。

* 通常の生活場所とはかけ離れた場所にいる者のために定められた特別の方式です(隔絶地遺言の1つ)。

イ 伝染病隔離者遺言の要件

(ア) 伝染病のため、行政処分によって交通を絶たれた場所にいること。

(イ) 警察官及び証人1人以上の立会いがあること。

(ウ) 遺言書の作成
遺言者は、遺言書を作成しなければなりません。

* あ 自筆である必要はないが、口頭での遺言は認められません。

い 日付の記載は、必要事項ではありません。

う 隔離状況にあった時期に作成された遺言書の証明方法立会人である警察官が、その職務として証明すべきものです。

(エ) 遺言者らの署名・押印
遺言者、筆者、立ち会った警察官及び証人は、各自が署名し、押印しなければなりません。

* 署名又は押印ができない者がある場合
立会人(警察官)又は証人が、その事由を付記しなければなりません。

ウ 伝染病隔離者遺言の効力
遺言者が、普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6か月間生存するときは、その効力を生じません。

(ⅲ) 在船者の遺言(民法第978条)

ア 在船者の遺言
船舶中にある者は、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いをもって遺言書を作成することができます(隔絶地遺言の1種)。

イ 在船者遺言の要件

(ア) 船舶中に在る者
船舶とは、主として航海の用に供されるものをいいます。

* あ 船舶が、航行中であるか、港湾に停泊中であるかを問いません。

い 遺言者が船員であるか、旅客あるいは一時的乗船者(不法乗船者も含む。)であるかを問いません。

う 普通の方式の遺言が困難な状況にある者についても、本条の類推適用を認めることができます。
(例)飛行機内にいる者

(イ) 船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会い
船長又は事務員は、職責によって在船者の遺言に立ち会います。

* あ 事務員とは
船長以外の船舶職員をいいます。
(例)
船員法に職員として定められている「航海士、機関長、機関士、通信長、通信士、国土交通省令に定めるその他の海員」

い 船舶の例
河川・湖を航行する船も含まれますので、海員には限られません。

(ウ) 遺言書の作成及び遺言者らの署名・押印
遺言者は、遺言書を作らなければなりません。

* あ 自筆である必要はありませんが、口頭での遺言は認められません。

い 遺言者、筆者、立会人及び証人らは、各自が遺言書に署名し、押印しなければなりません。

う 署名又は押印ができない者がある場合
立会人又は証人は、その事由を付記しなければなりません。

ウ 在船者遺言の効力
この方式による遺言は、遺言者が在船のまま死亡した時に効力を生じます。

* 遺言者が上陸して、普通の方式による遺言をすることができるようになった時から6か月間生存するときは、その効力を生じません。

(ⅳ)船舶遭難者の遺言(民法979条)

ア 船舶遭難者の遺言
遭難した船舶中で死亡の危急に迫った者が、遺言をする場合は、証人2人以上の立会いの下で、口頭で遺言をすることができます。

イ 船舶遭難者遺言の要件

(ア) 船舶遭難の意義
船舶遭難とは、船舶自体が座礁し、あるいは衝突等の原因で滅失の危機に現実にさらされていることをいいます。

* 上記状況の例

あ 遭難し漂流している船舶中において、病気その他の理由でその者のみが死亡の淵にある場合

い 乗船者全員が、危険な状態にある場合

(イ) 口頭での遺言
口頭での意思表示自体が遺言を構成します。

* 口がきけない者の遺言の方式
通訳人の通訳による意思表示自体が遺言を構成します。

(ウ) 筆記・署名・押印
口頭での遺言又は通訳人の通訳による遺言は、証人がその趣旨を筆記して署名し、押印することになります。

* あ 筆記
筆記は、遺言者の面前で遺言者の意思表示と連続して行う必要はありません。
・一般死亡危急者遺言のように、遺言者・証人に対する読み聞かせ、及び閲覧、筆記の正確性の承認も求められていません。

い 筆記内容の正確性について
確認の手続において審査されます。

ウ 遺言の確認
証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に請求して、遺言の確認を得なければなりません。

* あ 確認の手続の意味
遺言が、遺言者の真意に出たものであるかどうかを判定するためのものです。

い 確認の期間
遅滞なく請求するものとされており、期間の定めはありません。
・ただし、船舶遭難の危機状況を脱した後、国内地に上陸してから1か月程度を基準とすべきと考えられています。

エ 船舶遭難者遺言の効力
遭難者の死亡の時から効力を生じます。

* 遺言者が、普通方式による遺言をすることができるようになった時から6か月間生存するときは、その効力を生じません。

(4) 遺言書作成の注意点

 遺言書の作成に当っては、次のことに留意する必要があります。

① 意思能力がなくなった時点での遺言書の作成はできません。
遺言書は、個人が亡くなった場合、自己の財産をどのように相続人に承継させるかの意思表示ですから、判断能力がある間にすることが必要です。したがって、意思能力が無くなった段階では遺言をすることができません。

② 自筆証書遺言書の作成に当っては、方式を順守する必要があります。
具体的事例についての有効・無効の取扱いは、下記のとおりです。

(ⅰ) 遺言者が遺言の全文を自書すること

a 有効な事例

(a) 手で書けない場合は「口、腕、足」で書いてもよい。

(b) カーボン紙を使って複写してもよい。

b 無効な事例

(a) 機器(タイプライター・ワープロ等)によって作成された遺言書

* 自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日施行)
2019年1月13日から、自筆証書遺言についても、財産目録は手書きで作成する必要がなくなりました(ワープロ等の作成でよい)

・ただし、財産目録の各頁に署名・押印をすることが必要です。

(b) 遺言者の指示があったとしても、他人によって作成された遺言書(自筆が要件となる)

イ 遺言書の日付

① 有効な事例

・作成日付として、遺言者の「還暦の日」、「銀婚式の日」とした記載した遺言書。

② 無効な事例

・日付のない遺言書。

・日付印を押印した遺言書。

・年月の記載はあるが、日の記載のない遺言書。

・「○年○月吉日」と記載されている遺言書。

ウ 遺言者の自署する氏名と自署の方法
(有効な事例)
日常用いている「ペンネーム、芸名、屋号、通称」でもよい。
(理由)
同一性が確認できればよいので。

・また、遺言書に自署がなくても、封筒に自署があれば、遺言書は有効となる。

エ 遺言者による遺言書への押印
(有効な事例)

・実印(市役所等に登録された印鑑)でなくても、「遺言者の認印、拇印」でもよい。

・他人の手で支えてもらってなした遺言者の押印。

・遺言者の依頼により、他人が遺言者の面前でなした押印。

・遺言書を封入した封筒に、遺言者が自署した氏名の下部への押印。

オ 遺言書の封入との関連事項

① 有効な事例

・遺言書を封入していない遺言書。

・遺言書を封入したが、封印していない遺言書。

* ただし、「秘密保持、偽造・変造防止のため」封入し、封印することをお勧めします。

② 封入し、封印された自筆証書遺言書は、家庭裁判所に検認申立てをし、家庭裁判所で開封し、検認して貰うことが必要です。

もし、家庭裁判所に遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し又は家庭裁判所外で開封した場合は、金5万円以下の過料に処せられます(民法第1005条)。

カ 遺言書の加除・変更

① 遺言書の文字の加減、その他の変更は遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を文書の余白に付記して、特に署名し、かつ、その変更の場所に印(氏名の下部に押したと同じ印)を押さなければ、遺言書の効力が生じません(民法968条)。

② 遺言書の加除変更の効力(最判昭56・12・18)
明らかな誤記の訂正については、方式違反があっても、遺言者の意思を確認するについて支障がないので、遺言の効力に影響を及ぼしません。

キ 共同遺言の禁止
遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることはできません。

* つまり、1人ずつ遺言書を作成することが必要です。


(5) 相続させる旨の遺言の効力(令和元年7月1日施行)
今般(令和元年7月1日)の相続法改正により、「相続させる旨の遺言」の取扱いにつき、下記②の事項のメリットが生じました。

① 相続法改正前の「相続させる旨の遺言」の判例の解釈
相続法改正前の判例は、遺言によって、「相続させる旨の権利を承継した場合」は、登記なくして第三者に対抗できる」としていました。

・これにより、下記のようなデメリットが生じていました。

(ⅰ) 遺言書の存在の有無及び遺言署の内容を知りえない相続債権者・債務者等の利益を害していました。

(ⅱ) 登記制度や強制執行制度の信頼性を害するおそれがありました。

② 相続法改正後の「相続させる旨の遺言」の取扱い(メリット)
相続させる旨の遺言についても、「法定相続分を超える部分については、登記等の対抗要件を具備しなければ、善意の第三者に対抗することができない」ことになりました。

* 相続法改正後のメリット内容

(ⅰ) 遺言書の存在の有無や遺言書の内容を知りえない「相続債権者・債務者」等の利益や第三者の取引の安全を確保することができます。

(ⅱ) 登記制度や強制執行制度の信頼を確保することにもつながります。

③ 「相続させる旨の遺言」がある場合の対抗要件の事例

(ⅰ) 登記が対抗要件とされている場合
不動産については、「相続させる旨の遺言」がある場合でも、早期にその相続登記の手続を行わないと、相続人の一部が法定相続分について、自らの相続登記をして善意の第三者に売却してしまった場合には、その第三者に対抗(自己の所有権だと主張すること)することができないことになりました。

(ⅱ) 登録が対抗要件とされている場合
自動車のように、登録が対抗要件となっている場合も上記と同様の解釈になります。

(ⅲ) 上記「早い者勝ち」に対抗する手段(不動産につき)
被相続人の生前に、被相続人と法定相続分以上の不動産を相続する者の間で、死因贈与契約を締結し、その旨の仮登記を取っておく方法があります。