消滅時効

今回はちょっとだけ法律のお話を。
現在、民法の改正作業が進められています。現行の民法は、なんと明治29年に制定されたものであり、これまでも時代に合わせて細かい改正は加えられてきましたが、今回の改正は、約120年振りの大改正です。

そんな中、先日、「消滅時効」の改正について新聞に取り上げられていましたので簡単に説明します。

現行の民法では、債権の消滅時効(行使できる権利を一定期間行使しない場合、その権利を消滅させる制度)は原則10年とされていますが、飲食店のツケ払い(1年。民法第174条第4号)や塾の授業料(2年。民法第173条第3号)、診療費(3年。民法第170条第1号)など日常生活に密接に関わる一定の債権については、1年から3年の短期消滅時効が定められています。

新聞によると、法務省が、この短期消滅時効を一律5年に統一する方向で検討しているとのことでした。たしかに、業種ごとに債権の消滅時効が異なっているのは分かりにくいですし、業種間に不平等感が生じるのも無理のない話です。

例として上で挙げた飲食店のツケ払いがらみでもうひとつ。
「出世払いでいいよ」という言葉を聞くことがあるかと思いますが、出世払いとは、法律上は不確定期限(発生時点が不明な期限)と解されています。
つまり、出世すればもちろんのこと、出世しないことが明らかとなった場合も、その時点で支払義務が生じてしまうのです。
通常、「出世しなかったから支払わなくてもいい」という契約はしない(意思ではない)との理由によるもので、大正4年に大審院(最高裁判所の前身)で判断されて以来、現在までその判断は変わっていません。

もちろん、出世払いにも消滅時効はありますが―期限が到来した時(出世した時又は出世の見込みがなくなった時)から時効期間が開始します―

 

今朝のお供、
Led Zeppelin(イギリスのバンド)の『Led Zeppelin Ⅱ』。

(佐々木 大輔)

日本酒外交

突然ですが、皆さん日本酒はお好きですか。
私は(量はたくさん飲みませんが)大好きなものですから、美味しい地酒のたくさんある秋田に生まれたことを感謝しています。
秋田に生まれたからこそ、日本酒を好きになったのかもしれませんが。

私は学生時代、新潟(4年)、仙台(4年)と酒どころで過ごしましたので、お酒を飲む機会が多く、その酒席には必ず日本酒が用意されていました。
ただし、用意されるのはその土地の地酒であり、(ライバルである?)秋田のお酒にお目にかかる機会はほとんどありませんでした。
しかし、私が秋田出身であることがわかると、酒席を共にした地元の方々から、それぞれの地酒の魅力を熱っぽく語られたうえで、「秋田のお酒はどれがお勧めですか」と聞かれました。
ついでに「お酒、強いのでしょう」とも(ご期待にそえず残念ですが、強くはありません)。

今までお付き合いをしてきた方々は、日本酒に詳しい方が多く、中には、秋田県民の私よりも、秋田の地酒について精通されている方もいらっしゃいました。

タイトルの「外交」とは少々大げさですが、県外に出たとき、秋田県民として、秋田の誇る文化のひとつである地酒をいかにプレゼンできるか。
強敵でもある新潟県民からは、「秋田のお酒は濃い」とよく言われました。新潟も宮城も地酒の多くは辛口。特に新潟は淡麗辛口ですから、私にとっては逆に物足りなく感じることもありました。

秋田をアピールするうえで、地酒は、それ自体が秋田の魅力的なコンテンツであるばかりか、一緒に酌み交わせばお互いの心をゆるりと溶かし、様々な話題に花を咲かせるために最高のアシストもしてくれます。

私も若輩ながら、最近は会合などを通じて、博識な皆様に美味しいお酒を教えていただく機会が多くなり、お気に入りの秋田の地酒がさらに増えました。
県外から遊びに来てくれる友人たちにも、今まで以上に秋田の地酒の魅力をお伝えできるのではと思っています。

 

今朝のお供、
Radiohead(イギリスのバンド)の『Hail to the Thief』。

(佐々木 大輔)

リヒャルト・シュトラウス

スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』のオープニングで勇壮に流れる音楽。作曲者はリヒャルト・シュトラウス。
これは、交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき(こう語った)』の第1曲「導入部」であり、映画のために作られた曲ではありませんが、そのはまり具合は観る者に強烈な印象を残します。
―キューブリック監督は、映画『時計じかけのオレンジ』でもベートーヴェンの第九を効果的に使用するなど、その音楽センスには感服せざるを得ません―

そして今年、そのR.シュトラウスは生誕150年のメモリアル・イヤーを迎えます。

映画に使用されたことにより、R.シュトラウスの作品中もっとも有名になった『ツァラトゥストラ』。きっと皆さんも、使用された第1曲「導入部」(1分半くらい)を耳にすれば、「あぁ、この曲か」と思われるはず。そして、その壮大な1分半で十分満足してしまうかもしれません。しかし私は、もう少し我慢して、是非とも続く第2曲「世界の背後を説く者について」も聴いていただきたい。大音響の「導入部」から一転、弦楽器を中心に得も言われぬ美しい旋律が奏でられます。
「導入部」のような、オーディオ・マニアにとって試金石ともいえる大音響にカタルシスを得る愛好家もたくさんいらっしゃるでしょうが、私にとっては、情熱の迸りの後に訪れる物憂げな気怠さと優しさが寄り添う陶酔感こそが、R.シュトラウスを聴く最高の歓びなのです。

そして美しさという点において、オペラ『ばらの騎士』の最後の場面で歌われる三重唱は、20世紀に作曲された最も美しい音楽のひとつではないでしょうか。
クライバー指揮ウィーン国立歌劇場の演奏(映像)に聴く三重唱では、時の流れの無情、過ぎ去りし日への憧憬、若さの輝きが交錯する刹那のきらめきが、クライバーの夢幻的なタクトによって紡がれます―まだ若い(と思っている)私は、同じクライバーの映像でも、79年のバイエルン盤の指揮姿に、より魅力を感じるけれど―

紹介は2曲にとどめるつもりでしたが、R.シュトラウスの美しさについて語るとき、どうしても晩年の作品である『4つの最後の歌』に触れないわけにはいきません。そのオーケストレーションの絢爛さゆえ、俗物と揶揄されることも多かったR.シュトラウスが、晩年に描いた純潔で崇高な愛の調べ。
お気に入りの録音は他にもありますが、ヤノヴィッツが歌い、カラヤンとベルリン・フィルが伴奏を務めた演奏の美しさを超えるものを私は知りません。

ちなみに、映画で使用された『ツァラトゥストラ』も、カラヤン指揮の演奏(1959年録音。ウィーン・フィル)でした。

今朝のお供、
Nine Inch Nails(アメリカのバンド)の『The Downward Spiral』。

(佐々木 大輔)