民事信託(家族信託)のすすめ

最近、家族信託(※)についてのご相談が増えております。No.170のブログでも採りあげましたが、家族信託をテーマとしたセミナー講師のご依頼も増えております。

あらためて信託についてご説明させていただくと、信託において、受託者(財産の管理を託された人のことです)が商売として財産管理を行うものを「商事信託」といい、商売として行わないものを「民事信託」というのですが、民事信託の中で家族が受託者になるものを一般的に「家族信託」と呼んでいます。

「信託」のほか、もしもの将来に備えて利用できる主な制度として、「遺言」や「成年後見制度」があります。
「遺言」は、法定の形式に従って作成することで、自分の財産の行く末を生前に決定することができる制度です。
「成年後見制度」には「法定後見制度」と「任意後見制度」があり、「法定後見制度」とは、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(後見人、保佐人、補助人)が、判断能力が十分でない本人の利益を考えながら、本人を代理して法律行為等を行うことにより、本人を保護したり支援したりします。
「任意後見制度」は、本人に十分な判断能力があるうち、将来において判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、財産管理等の事務について代理権を与える契約を公正証書で結んでおくというものです。

ただし、これらの制度にはデメリットがあることも事実。
たとえば「遺言」には、法定相続分にとらわれず財産を承継させることができるというメリットがある反面、数世代にわたって承継先を決めることができないというデメリットがあります。また、亡くなった夫が、残された妻の生活費のためにと、遺言で妻に財産を残していたとしても、夫が亡くなった時点で妻が認知症等で判断能力を失っていた場合、妻は相続した財産を使うことができないという問題も生じます。
「成年後見制度」には、判断能力が無くなった人の財産を第三者が管理し得るため、資産の保全が可能であるというメリットがある反面、積極的な資産運用(不動産の売却等)ができず、柔軟性を欠くというデメリットがあります。

信託は、これらの制度のデメリットを補うことができるため、これらの制度と併用することで、より柔軟な解決を図ることができる可能性を秘めた制度です。

実務においても、先に挙げた「遺言」や「成年後見制度」では対応しきれない問題に出会うことはたくさんありますし、より柔軟な解決を図るために、今後、信託制度が活用される場面は増えていくことと思われます。ご自身の財産管理の方法のひとつとしてご検討いただけると幸いです。

家族信託についてご相談、あるいはセミナー講師のご依頼をされる方がいらっしゃいましたら、田口司法事務所宛ご連絡ください。

※「家族信託」は、一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。

今朝のお供、
Oasis(イギリスのバンド)の『Definitely Maybe』。

                                  (佐々木 大輔)

not in this lifetime!?

金足農業の甲子園での活躍、素晴らしかったですね!!準優勝おめでとうございます。
それにしても、夏の甲子園大会でこんなに秋田県が注目され、盛り上がったのは久しぶりではないでしょうか。秋田県勢の決勝進出は第1回大会以来103年振り、第100回大会にして初めて深紅の優勝旗が白河の関を越えるのか。野球漫画では描けないような――あまりにも出来すぎたストーリーでフィクションならご法度のような――劇的なドラマを野球の神様は用意していました。

当初は出場校の56分の1でしかなかった金農に、勝ち残ることで多角的な光が当たるようになり、一戦ごとに成長していく選手たちのひたむきなプレー姿はもちろんですが、大雪の中での練習風景やベンチ入りメンバーが全員地元出身者といった情報、連日喜びに沸く秋田県民の様子が全国ニュースでもとりあげられた結果、にわかに応援の輪が全国に広がりました。
過熱気味のマスコミ報道には賛否があるようですが、秋田県民としては素直に嬉しい全国からの応援でした。

そして迎えた決勝戦。エリート軍団大阪桐蔭に立ち向かう雑草軍団金農という、高校野球ファンなら誰しも胸を躍らせる王道中の王道の物語に、思わず「あだち充ならどんな結末を描くのだろう?」なんて野暮な想像もしてしまいました。
しかしやっぱり大阪桐蔭は強かった。まさしく100年にわたる高校野球の到達点のようなチームでした。結果的に、今の甲子園大会はこのくらいのレベルでなければ優勝することはできないものなのかと、秋田県勢にとって途方もない道のりが待っているような気にさせられたのも事実です。

今大会は第100回大会ということで、「レジェンド始球式」も注目されました。過去の甲子園大会で活躍した元選手が毎日順番に始球式を担当するというイベントです。開会式直後の第1試合、松井秀喜氏(星陵出身)が始球式を務めた試合が奇しくも星陵の試合であったり、野球の神様はここでも粋な演出をしてくれました。
私も、準決勝第1試合の始球式を桑田真澄氏(PL学園出身)が務めると知った時は、「もし、金農が準決勝まで進み、組み合わせ抽選で第1試合を引いたら、34年前の準決勝が再現されることになる!」と密かに楽しみにしていました。
そして本当に実現した金農戦での桑田氏の始球式。野球の神様の存在を実感した瞬間でした。

「一世紀前の忘れ物を取りに行こう」。
ネットやSNS上で様々な言葉が呟かれたり、話題になったりしていましたが、その中で最も美しかったハッシュタグはこれ。100年の歴史とみんなの思いがつまった言葉です。
まあ、103年前に忘れ物をしてきたのは、金農ではなく我が母校なんですけどね・・・。

決勝戦終了後、両校の健闘を称えるように甲子園球場の空にかかったきれいな虹。時を同じくして秋田でも金農の校舎の上空に虹がかかりました。野球の神様がくれた最後のプレゼント。それは甲子園と秋田をつなぐ希望の架け橋でした。

秋田県勢が深紅の優勝旗を持って白河の関を越える日がきっとくる。そう遠くない未来に。
野球の神様が言うのだから間違いないでしょう!

今朝のお供、
サザンオールスターズの『海のOh,Yeah!!』。

                                   (佐々木 大輔)

思い出の味

先日、学生時代に通ったカフェのマスターが秋田にいらっしゃるというので久しぶりにお会いすることができました。

仙台にあったマスターのお店は、このご時世には珍しいいわゆる「クラシック喫茶」(死語?)でした。塵ひとつない清潔な空間。壁一面に整然と並べられた膨大な数のCD。ソナスファベール(イタリアのメーカー)の名スピーカーで鳴らされる音楽は、イタリアの青空のように明るく伸びやかで、特に弦楽器と声楽はうっとりするくらいの美しい響き。

私はいつもカウンターの真ん中の席に座り、他のお客さんや音楽の邪魔をしない程度に、マスターとの会話を楽しんでいました。注文を受けてから豆を挽き、1杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れられるコーヒーは、深い落ち着きの中にまろやかな甘味があり、簡単に真似できるものではありません。マスターと同じ豆を使って淹れているお店が仙台にもう1件あったのですが、同じ豆を使っていると言われてもにわかには信じられないくらい味は別物でした。私はマスターの淹れるコーヒーが好きでした。

マスターはコーヒーを淹れ終えると、客に提供する前に必ずひと口試飲して味を確かめます。
そして理想どおりの1杯が入ると、それまでの真剣な顔つきから一転、相好を崩し、「佐々木さん、今日の1杯はうまくできた。さあ、飲んでみて」と弾んだ声とともにコーヒーが差し出されます。そういう日のコーヒーは本当に美味しかった。もちろん、マスターにとっては理想どおりとはいえない日でも十分に美味しかったです。

残念ながらマスターは数年前にお店を閉めてしまい、今は実家のある山形県にお住まいですが、久しぶりにお会いしてもあの頃と変わっていない物静かな紳士でした。お店でもあまり口数の多い方ではなかったのですが、先日は再会を喜んでくれたのか、秋田のお料理と地酒の効果もあったのか、近況ばかりではなく若い頃のことまで饒舌にお話ししてくださいました。

後日、先日の御礼にと畑で育てているというメロンを頂きました。マスターの実直な人柄がうかがえる雑味の無いとっても美味しいメロンでした。
秋田に来ていただいたこと、声をかけていただいたことだけで嬉しかったのですが、その上プレゼントまで頂き感謝に堪えません。
今度は私が山形へ遊びに行きますね。

今朝のお供、
ハイティンク指揮シカゴ交響楽団の演奏によるマーラー作曲交響曲第3番。
私がマスターのお店で最後に聴かせていただいたCDです。

                                   (佐々木 大輔)