9×9=81

ここのところ私がすっかりはまっているのは将棋。と言っても指すわけではなく(せいぜい頭の体操に簡単な詰将棋を解く程度です。)、ニュースなどでその戦いの行方を追いかけているだけのことです。

結局のところ、藤井聡太さんの影響です。ミーハーですみません。

5年前、14歳2か月で史上最年少プロ棋士(四段)となった藤井さんは、その後も数々の最年少記録を塗り替え、瞬く間に四冠(竜王・王位・叡王・棋聖)を獲得しました。

藤井四段が今や藤井四冠。

実は私、小学生の頃、学校の課外クラブで将棋クラブに入っていました。今では駒の動かし方を覚えている程度ですが・・・。思い返すと、他のみんなが「将棋」を指している横で、はさみ将棋や将棋崩しばかりやっていた記憶しかありません。だからちゃんとした将棋をあまり覚えていないのかなあ。祖父から囲碁を教えてもらってからも、五目並べばかりやっていましたし・・・。

当時、将棋を始めるに当たり、ルールや歴史が簡単にまとめられた「小学生のための将棋入門」的な本を何冊か読んだのですが、その頃のスター棋士といえば中原誠さんで、そのライバルとして米長邦雄さん、最年少名人となった谷川浩司さん、神武以来の天才と呼ばれた加藤一二三さん、そして大山康晴さんも現役でした。

その後の衝撃は何といっても羽生善治さん。1991年から2018年まで連続99期タイトルを保持し、2017年には史上初の永世七冠を獲得しました。永世の称号は、同一タイトルを一定期数獲得した者に与えられるものです。

ところで、羽生さんの世代は「羽生世代」と呼ばれ、森内俊之さん、佐藤康光さんなど同年代の層が厚いことでも有名です。これには谷川さんの存在が大きかったのではと想像されます。

谷川さんは1976年、加藤さん以来2人目の中学生プロ棋士となりました。その頃、全国の小中学校で将棋が大ブームになったとのことですから、ちょうど小学生であった羽生世代と重なっています。

その羽生さんが15年ほど前に著した本の中で言及していたのは、コンピュータの存在。

コンピュータがトッププロ棋士と互角の戦いができるようになる時期について、「早い人では2010年、遅い人では2050年と予想している」と書かれていました。

実際は、コンピュータが初めてプロ棋士に勝利したのは2010年のことであり、現役名人に完勝したのは2017年5月のことでした。そして、奇しくもその1か月後の同年6月、藤井さんが29連勝の新記録(しかもプロデビューから無敗)を樹立したのでした。

今、プロ棋士のほとんどがコンピュータの将棋ソフトを使って研究をしているそうです。AIの申し子にも思える藤井さんが新記録を樹立したのには因果を感じますが、意外にも藤井さんが将棋ソフトを取り入れたのはプロデビュー直前の頃だそうで、世代を考えると遅いくらい。藤井さんの強さのベースはアナログ的に鍛えられたものと言われています。

今後、藤井さんに憧れてプロ棋士を目指す本物の「デジタルネイティブ世代」がたくさん生まれることでしょう。そのような棋士たちと藤井さんがどのような戦いを繰り広げていくのか。

一方で、谷川さんや羽生さんのようなレジェンド、その下の世代である渡辺明さんたちが、これから台頭してくる世代の高い壁となることも期待します。

「強くなった時に見える風景を見てみたい」。

プロ棋士となった時に自らの目標として「最強の棋士」と色紙に書いた藤井さん。

タイトル保持数でも記録でもなく、ひたすら将棋が強くなることだけを目標とする姿勢。ストイックというよりも、本当に将棋が好きなんだなと感服します。

見習って私も業務に邁進します。


今朝のお供、

ベルナルト・ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏でブルックナーの交響曲第8番(1981年録音のもの)。

                                   (佐々木 大輔)