詐欺罪2―機械は騙せるか

No.47で詐欺罪についてお話させていただきましたが、今回はその続きを。

詐欺罪とは、「財物等を入手するために相手を騙し、騙された状態にある相手が渡したその財物等を受け取ること」で成立する犯罪です(専門的な定義はNo.47をご覧ください)。

では、自動販売機のジュースを入手しようとする目的で、硬貨の代わりに金属片を投入口に入れて、ジュースを入手したとします。この場合、詐欺罪が成立するでしょうか?

自動販売機に金属片を硬貨だと思わせて、誤作動させたのだから、詐欺罪が成立するのではないか・・・とも思いますよね。
しかしこの場合、詐欺罪は成立しないのです。
なぜなら、詐欺罪というのは、人の錯誤(騙された状態)を利用する犯罪ですから、本来的に「人」に向けて行われる犯罪なのです。
つまり、自動販売機は機械であって人ではないので、詐欺罪が対象とする騙す相手には当たらないのです。
成立するのは、刑法235条の窃盗罪です(窃盗罪についてはまたの機会に)。
同じようなケースとして、拾った他人のキャッシュカードを使って現金自動支払機から現金を引き出した場合、磁石を使ってパチンコ玉を当たり穴に誘導して玉を流出させた場合も、詐欺罪ではなく窃盗罪になります。

次はちょっと事例を変えて。ジュースを入手しようと金属片を投入口に入れたものの、自動販売機が読み取らずジュースが出てこなかった場合には罪になるでしょうか?
詐欺罪が成立しないことはもうお分かりかと思いますが、窃盗罪はどうでしょう?

何も出てこなかったわけだし、ちょっとしたいたずらで許されるのではないか・・・。
いえいえ、そんなに甘くはありません。ほんの出来心だったとしても、ジュースを入手しようという気持ちがあったのですから、この場合でも窃盗未遂罪が成立します(窃盗罪は未遂も処罰されます)。

法定刑について。窃盗罪は10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

 

今朝のお供、
oasis(イギリスのバンド)の『(WHAT’S THE STORY)MORNING GLORY?』。
oasisファンの友人は、oasis解散後ヴォーカルのリアムが新たに結成したバンドBEADY EYEの新作をさっそく買ったようですが、私は未だ手が伸びず、棚から取り出すのはoasisの大好きな2ndアルバムです。

追伸:先週のブログ(No.50)、多くの方にご覧いただき、ありがとうございます。

 

(佐々木 大輔)