オペラという媚薬
来年の話をすれば鬼が笑うと言いますが、そろそろ始めても許されるのでは?
ということで、さっそく来年の話をしますと、2013年は、オペラ史に名を刻むヴェルディとワーグナーの生誕200年を祝うアニバーサリー・イヤーです。イタリアオペラとドイツオペラを代表するこの両雄は、奇しくも同じ年(1813年)生まれ。来年はオペラ好きにはたまらない1年になりそうです。
オペラは、歌、演技、演奏、演出等全てを楽しめる総合芸術です。
昔は、オペラと言えば歌手の時代でした。指揮者が誰であるか、演出がどうであるかといったことは二の次で、観客の関心は専らスター歌手。
もちろん、歌手の歌声に酔い、拍手喝采する楽しみは今も変わりありませんが、カラヤンが帝王と呼ばれる存在になった頃から、オペラは指揮者が主役の時代に入りました。告知ポスターには「カラヤンの○○」「クライバーの○○」と謳われ、上演そのものにも指揮者が最も強い権力を持っていた時代です。
では現在はどうかというと、歌手も指揮者も、演出に合わせて音楽を作っていくことが求められているらしく、演出の時代と言われているようです。一般的には、演出について保守的なアメリカよりも、ヨーロッパの歌劇場での方が、前衛的な音づくりのオペラに接する機会が多そうです。
ただ、オペラはなかなかとっつきにくくて・・・という方もいらっしゃるでしょう。
そこで、私がお勧めするのは、ヴェルディの『椿姫』、プッチーニの『トスカ』あるいは『ラ・ボエーム』です。これらのオペラは、音楽も内容も分かりやすく、上演時間も2時間ほどですから、映画感覚で観ることができますし、良いDVDもたくさん発売されています。
そして少しオペラに慣れてきたら、ワーグナーやR.シュトラウス、ベルクなどのオペラに進んでみてはいかがでしょうか。
最後に。イタリアオペラは社交的な人が好み、ドイツオペラは思索的な人が好むとよく言われます。皆さんはどちらのオペラを好むのでしょう。
今朝のお供、
The Beatlesの『HELP』。
ワーグナーがオペラ『トリスタンとイゾルデ』で効果的に用いた倚音(いおん。ある音符にくっついてそれに先だって奏される音)が、このアルバム収録の名曲「Yesterday」でもさりげなく使われているんですよ。
(佐々木 大輔)