相続における平等とは?

法律上、婚姻している夫婦から生まれた子供は「嫡出子」と呼ばれ、そうでない子供は「非嫡出子」と呼ばれています(この「非嫡出子」という呼び方には批判もあります)。
民法を見てみると、第900条で、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1と定められています。このような扱いは、平等をうたう憲法14条に違反しているのではないかということが、以前から議論されている問題なのです。

憲法14条について、最高裁判所は、「合理的な区別を否定するものではなく、あくまで不合理な差別のみを禁止するものである」と考えています。しかし、何をもって「合理的な区別」「不合理な差別」とするかという基準までは明示していません。
それでは、民法の非嫡出子に対する相続上の扱いは合理的といえるでしょうか。
合理的とする根拠として、婚姻制度の維持ということが重視されています。法律婚で生まれた嫡出子とそうでない非嫡出子の相続分を同等とすることは、非嫡出子の保護に厚すぎるという意見です。さらには、扱いを異にすることで婚外関係を抑止することができるとの意見も主張されています。
対する批判としては、婚姻制度を維持する重要性は認めても、生まれてくる子供に嫡出子と非嫡出子の区別をすることまでが正当化されるわけではない。まして、区別ができるとしても、相続分に関してまで扱いを異にすることは別問題である、との主張がされています。生まれてくる子供に不利益を与えることで婚外関係を抑止することは、そもそも憲法14条のもとで正当かどうかという批判もあります。

平成7年7月5日、最高裁判所(大法廷:15人)は、10対5で、この非嫡出子に対する相続上の扱いを合憲とする判断を示しました。
「相続制度の定めは立法府の合理的な裁量に委ねられており、民法が法律婚制度をとった結果、嫡出子と非嫡出子との間に区別が生じるのはやむを得ない。民法900条の規定は法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものであり、2分の1という相続分は著しく不合理とはいえない」との理由でした。

現在、民法900条の合憲性について、再び最高裁判所で争われています。そしてその判断は、通常であれば小法廷(5人)で行われるところ、大法廷においてされることになっています。最高裁判所の大法廷で判断されるのは、過去に裁判所自らが下した判断を変更する場合など、一定の重要な判断を下す場合に限られます。
つまり、大法廷に回されたということは、平成7年決定が覆る可能性があるということです。
今後、目が離せません。

 

今朝のお供、
カニエ・ウェスト(アメリカのミュージシャン)の
『MY BEAUTIFUL DARK TWISTED FANTASY』。

 

(佐々木 大輔)