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ラトルの勇退

先日、ベルリン・フィル(BPO)の首席指揮者であるサイモン・ラトルが、2018年をもって、そのポストを退くことを発表しました。2018年はまだ5年も先のこと、とも思いますが、BPOの首席指揮者といえば、クラシック音楽界における最高峰のポスト。その後継者を選ぶための期間としては、必要にして十分ともいえます。
2018年、ラトルは64歳。指揮者としていよいよ成熟に向かう年齢ですが、彼は同郷であるビートルズの曲「When I’m Sixty-Four」の歌詞を引用し、「64歳になっても、僕を必要としてくれるかい?」と自らに問いかけ、今回の決断に至ったそうです。

ラトルは、若い頃からその才能を認められた存在で、20代から多くの一流オーケストラに招かれキャリアを積んできました。BPO、ウィーン・フィルの指揮台にもそれぞれ34歳、38歳でデビューしています(どちらもプログラムはマーラーの交響曲)。
1980年から98年まではバーミンガム市交響楽団の首席指揮者を務め、その間、当時あまり知名度の高くなかった同オーケストラを、名実ともに世界的なオーケストラに育て上げました。
94年には、30代の若さでナイトの称号(サー)が与えられています。

BPOの首席指揮者として白羽の矢が立ち、2002年に就任した時は47歳。これは奇しくも同ポストを34年間務めたカラヤン(カラヤンの場合は終身首席指揮者兼芸術総監督)の就任時と同じ年齢だったため、「ラトルの時代」「長期政権か」とも騒がれました。
ラトルの4期16年というのが長期なのかどうかは分かりませんが、残り5年、さらに素晴らしい演奏を聴かせてくれることを楽しみにしています。

退任後はフリーな立場で活動するのか、あるいは別のオーケストラの首席指揮者や音楽監督になるのか。
いずれにしても私としては、近年スケジュールの都合で共演の機会が少なかったウィーン・フィルとの共演回数の増加、若い頃に衝突して以来、関係が修復されているとはいえないコンセルトヘボウ管弦楽団やクリーヴランド管弦楽団との再演を期待しています。

 

今朝のお供、
FUN.(アメリカのバンド)の『SOME NIGHTS』。
収録曲「WE ARE YOUNG」により今年のグラミー賞で主要2部門(最優秀楽曲賞と最優秀新人賞)を受賞。
一度聴いたらメロディが頭から離れません。

(佐々木 大輔)

12月半ば。秋田市もついに雪化粧です。雪が舞い始めると、いつも私の頭の中には、槇原敬之の曲「北風」が流れます。

そして12月と言えばクリスマス。街にもイルミネーションの光が溢れています。
クリスマスが近づいてくると我が家では、サンタさんの絵が盤面に描かれた思い出のレコードに針を落として楽しむことを以前のブログで書きましたが、もう1枚、思い出のレコードがあります。
その1枚とは、キリスト最後の7日間を描いたアンドリュー・ロイド・ウェバー作のミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』です。我が家にあるのは、映画版(1973年)のサウンドトラックで、今やクラシック音楽界の大巨匠アンドレ・プレヴィンが指揮を務めるもの。
ちょっと話がそれますが、プレヴィンの指揮する音楽は、華美な虚飾を排しながらも洒落ていて、特に彼のモーツァルトを聴くとほっこり幸せな気持ちになります。
とはいえ、もともとプレヴィンはジャズ畑出身の音楽家ですから、『ジーザス』に聴くビートの効いた音楽の処理も素晴らしく、上品になり過ぎないワイルドな演奏を堪能できます。

『ジーザス』の内容は、かなりシニカルで刺激的なものですから、クリスマスにはそぐわないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、我が家のクリスマスには欠かせないレコードです。

ミュージカルには詳しくない私ですが、ロイド・ウェバーの作品は大好きで、『ジーザス』以外にも『オペラ座の怪人』『キャッツ』『エヴィータ』などを愛聴しています。

 

今朝のお供、
IRON MAIDEN(イギリスのバンド)の『Fear of the Dark』。
ヘヴィ・メタルが聴きたい、と思ったとき真っ先に思い浮かぶバンドです。

(佐々木 大輔)

オペラという媚薬

来年の話をすれば鬼が笑うと言いますが、そろそろ始めても許されるのでは?

ということで、さっそく来年の話をしますと、2013年は、オペラ史に名を刻むヴェルディとワーグナーの生誕200年を祝うアニバーサリー・イヤーです。イタリアオペラとドイツオペラを代表するこの両雄は、奇しくも同じ年(1813年)生まれ。来年はオペラ好きにはたまらない1年になりそうです。

オペラは、歌、演技、演奏、演出等全てを楽しめる総合芸術です。
昔は、オペラと言えば歌手の時代でした。指揮者が誰であるか、演出がどうであるかといったことは二の次で、観客の関心は専らスター歌手。
もちろん、歌手の歌声に酔い、拍手喝采する楽しみは今も変わりありませんが、カラヤンが帝王と呼ばれる存在になった頃から、オペラは指揮者が主役の時代に入りました。告知ポスターには「カラヤンの○○」「クライバーの○○」と謳われ、上演そのものにも指揮者が最も強い権力を持っていた時代です。
では現在はどうかというと、歌手も指揮者も、演出に合わせて音楽を作っていくことが求められているらしく、演出の時代と言われているようです。一般的には、演出について保守的なアメリカよりも、ヨーロッパの歌劇場での方が、前衛的な音づくりのオペラに接する機会が多そうです。

ただ、オペラはなかなかとっつきにくくて・・・という方もいらっしゃるでしょう。
そこで、私がお勧めするのは、ヴェルディの『椿姫』、プッチーニの『トスカ』あるいは『ラ・ボエーム』です。これらのオペラは、音楽も内容も分かりやすく、上演時間も2時間ほどですから、映画感覚で観ることができますし、良いDVDもたくさん発売されています。
そして少しオペラに慣れてきたら、ワーグナーやR.シュトラウス、ベルクなどのオペラに進んでみてはいかがでしょうか。

最後に。イタリアオペラは社交的な人が好み、ドイツオペラは思索的な人が好むとよく言われます。皆さんはどちらのオペラを好むのでしょう。

 

今朝のお供、
The Beatlesの『HELP』。
ワーグナーがオペラ『トリスタンとイゾルデ』で効果的に用いた倚音(いおん。ある音符にくっついてそれに先だって奏される音)が、このアルバム収録の名曲「Yesterday」でもさりげなく使われているんですよ。

(佐々木 大輔)