皆さんはお釣りを間違えられた経験ありませんか?
例えば、1000円の買い物をして五千円札を出したところ、店員さんが五千円札を一万円札と間違えて、9000円のお釣りを渡してきたとします。そこで「得したぞ!」と思って何も言わずそのままお釣りを受け取った場合、これは罪になるでしょうか?
良心が痛む・・・だけ?
結論から言うと、刑法246条の詐欺罪が成立します。
詐欺罪とは、専門的には「人を欺いて錯誤を生ぜしめ、その錯誤に基づく財産的処分行為により、財物または財産上の利益を得ること」で成立する犯罪です。
分かり易く言うと、「財物等を入手するために相手を騙し、騙された状態にある相手が渡したその財物等を受け取る」と詐欺罪になります。
なので、上記のケースに当てはめてみると、お釣り(財物)が間違っていることを気付きながら店員さんに告げないことは、積極的にではないものの店員さんを騙したことになります。また、店員さんは間違いを指摘されなかったことで過分のお釣りを渡してしまったのですから、騙された状態でお釣りを渡していることになります。
そしてこの場合、お釣りを受け取ろうと手を差し出した時点で詐欺未遂罪(詐欺罪は未遂も処罰対象になります)が成立し、お釣りを財布に入れた時点で詐欺罪が完全に成立します。
では、今度はお釣りが多いことに気付かず受け取り、家に帰ってから気付いたとしましょう。「まあ、いいか」と思い、そのままお釣りを返さなかった場合、詐欺罪になるでしょうか?
実はこの場合は詐欺罪にはなりません。
なぜなら、この場合には、相手を騙してお釣りを手に入れたのではなく、気付いたら手元にあった過分のお釣りを自分のものにしたに過ぎないからです。騙す行為は相手の処分行為(上記のケースではお釣りを渡す行為)に対して行われなければならないのです。
ただし、詐欺罪が成立しない代わりに、刑法254条の占有離脱物横領罪(他人の占有に属しない他人の物を、不法に入手する罪)が成立します。
法定刑について。詐欺罪は10年以下の懲役(重いです)、占有離脱物横領罪は1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料となっています。
今朝のお供、
THE WHITE STRIPS(アメリカのバンド)の『WHITE BLOOD CELLS』。
2月3日、解散が発表されました。好きでした。解散発表から毎日聴いていますが、今朝は一番好きなアルバムを選びました。
(佐々木 大輔)
法律上、婚姻している夫婦から生まれた子供は「嫡出子」と呼ばれ、そうでない子供は「非嫡出子」と呼ばれています(この「非嫡出子」という呼び方には批判もあります)。
民法を見てみると、第900条で、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1と定められています。このような扱いは、平等をうたう憲法14条に違反しているのではないかということが、以前から議論されている問題なのです。
憲法14条について、最高裁判所は、「合理的な区別を否定するものではなく、あくまで不合理な差別のみを禁止するものである」と考えています。しかし、何をもって「合理的な区別」「不合理な差別」とするかという基準までは明示していません。
それでは、民法の非嫡出子に対する相続上の扱いは合理的といえるでしょうか。
合理的とする根拠として、婚姻制度の維持ということが重視されています。法律婚で生まれた嫡出子とそうでない非嫡出子の相続分を同等とすることは、非嫡出子の保護に厚すぎるという意見です。さらには、扱いを異にすることで婚外関係を抑止することができるとの意見も主張されています。
対する批判としては、婚姻制度を維持する重要性は認めても、生まれてくる子供に嫡出子と非嫡出子の区別をすることまでが正当化されるわけではない。まして、区別ができるとしても、相続分に関してまで扱いを異にすることは別問題である、との主張がされています。生まれてくる子供に不利益を与えることで婚外関係を抑止することは、そもそも憲法14条のもとで正当かどうかという批判もあります。
平成7年7月5日、最高裁判所(大法廷:15人)は、10対5で、この非嫡出子に対する相続上の扱いを合憲とする判断を示しました。
「相続制度の定めは立法府の合理的な裁量に委ねられており、民法が法律婚制度をとった結果、嫡出子と非嫡出子との間に区別が生じるのはやむを得ない。民法900条の規定は法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものであり、2分の1という相続分は著しく不合理とはいえない」との理由でした。
現在、民法900条の合憲性について、再び最高裁判所で争われています。そしてその判断は、通常であれば小法廷(5人)で行われるところ、大法廷においてされることになっています。最高裁判所の大法廷で判断されるのは、過去に裁判所自らが下した判断を変更する場合など、一定の重要な判断を下す場合に限られます。
つまり、大法廷に回されたということは、平成7年決定が覆る可能性があるということです。
今後、目が離せません。
今朝のお供、
カニエ・ウェスト(アメリカのミュージシャン)の
『MY BEAUTIFUL DARK TWISTED FANTASY』。
(佐々木 大輔)
新しい年を迎え、新年会などでお酒を飲まれる機会も多いかと思います。ワイワイ盛り上がり、ほろ酔い気分でふとお酒のラベルに目をやると、そこには「飲酒運転は法律で禁止されています」の文字。
「そんなことは言われなくても・・・」というのが本音でしょうが、それではこの飲酒運転を「禁止している法律」とは具体的に何を指すのでしょう?
『六法』を開いてみると、道路交通法に飲酒運転についての罰則が規定されています。
「酒気帯び運転」の場合には「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、「酒酔い運転」の場合には「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科せられます。
「酒気帯び」とは、道交法施行令によると「呼気中アルコール濃度が1ℓあたり0.15mg以上」を指し、「酒酔い」とは、アルコール濃度にかかわらず「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」を指します。
また、刑法には、危険運転致死傷罪が規定されています。
「アルコール等の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させた場合」について、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合には1年以上の有期懲役が科せられます。
お酒を飲んだら運転はしない。当たり前のことです。しかし、お酒が入ると気が大きくなってしまうことも考えられます。「自分は酔っていない」「少しの距離だから大丈夫」・・・このような甘えが、誰かの、そして他ならぬ自分の大切な人生を奪うことになってしまうのです。
それから。
自転車の飲酒運転も道交法違反となり、酒酔い運転には刑事罰が科されることもお忘れなく。
今朝のお供、
AC/DC(オーストラリアのバンド)の『BACK IN BLACK』。
(佐々木 大輔)