こんにちは。田口司法事務所です。
佐々木倫子著の漫画『おたんこナース』にこんなお話があります。
主人公の看護師は作家太宰治の大ファン。そんな彼女が偶然、見た目が太宰そっくりの入院患者さんを担当することになります。
彼女はその患者さんに憧れの太宰を重ね合わせ、淡い恋心を抱きます。
「きっときれいな愛人がお見舞いに来たりするんだろうなあ」などと想像するのですが、残念ながらその患者さん、彼女のイメージとは全く一致しません。
「勝手な妄想だったんだ」と彼女は自分に言い聞かせると、恋心を捨て、看護師としての仕事に徹する決意をします。
・・・・・・
退院の日。その患者さん、見送りに出た彼女のもとにすっと歩み寄ると、彼女の耳元でひと言、「グッドバイ」。
主人公の彼女のみならず、多くの太宰ファンを悶絶(?)させる秀逸なお話です。
実は、私も悶絶させられたファンのひとり。太宰の作品は、10代の頃、読み耽りました。今でもこの時期になると手に取ってしまいます。
太宰に再会できる喜びに顔を紅潮させて本を開くと、当時の書き込みや傍線があちらこちらに見つかり、たちまち赤面。
それでも、多くの言葉に励まされてきたんだなあとの感慨に、今度はしんみり。
ひとつ紹介しましょう。
「人間のプライドの窮極の立脚点は、あれにも、これにも死ぬほど苦しんだことがあります、と言い切れる自覚ではないか」
(『東京八景』より)
太宰は、人間の弱さに対し、誰よりも敏感で、優しいまなざしをもった作家でした。
6月19日。桜桃忌。
今日の最後のあいさつも、『津軽』から太宰の言葉を拝借して。
「命あらばまた他日。元気で行こう、絶望するな。では、失敬」
(佐々木 大輔)
こんにちは。田口司法事務所です。
村上春樹の新作、『1Q84 BOOK3』が発売されましたね。
さっそく私も買いました。読む時間が出来るのを楽しみに待ちたいと思います。
村上春樹の小説は全て読んできましたが、読むたびに好きな作品は変わります。
今なら『ダンス・ダンス・ダンス』や「蜂蜜パイ」(『神の子どもたちはみな踊る』収録)でしょうか。
ラストに明るい希望があるからかもしれません。
村上春樹には外国人のファンも多いため、私は外国人とコミュニケーションをとる際、共通の話題として重宝しました。
イギリス人の知人が言うには、日本人の作家でありながら日本をあまり感じさせないため、小説の世界に入りやすいとのこと。
たとえば小説の舞台が「東京」であっても、東京である必然性はなく、「ニューヨーク」や「ロンドン」など読む人それぞれにとって身近な都市と置き換えても、違和感なく読めるというのです。
なるほど!たしかに。
村上春樹の特徴のひとつは、物事や事象を記号化して(つまり交換可能なものとして)表現していることにあるのかもしれません。
また、大江健三郎は、
「優れた芸術家・小説家とは、新しい表現のかたちを持っていて、
私たちは彼に与えられたかたちを見て、自分の生きている
世界とはこういうものかと、あらためて理解することがある」
と言っています。
村上春樹の小説を通して見ると、皆さんの日常がすっきりと、そして鮮やかに見えてくるかもしれませんね。
通勤のお供、
MUSE(イギリスのバンド)の『THE RESISTANCE』。
こちらもジョージ・オーウェル著『1984年』をモチーフとした音楽です。
(佐々木 大輔)
こんにちは。田口司法事務所です。
秋田市の連休はあいにくのお天気でしたね。どんよりとした空につられて瞼も重くなり、自然とまどろんでしまいました。
みなさん、映画『ゴールデンスランバー』はご覧になりましたか?
残念ながら、私は観られずに終わってしまいました。
でも、以前、伊坂幸太郎の原作は読みました。
仙台を舞台に、めくるめくような疾走感。
呆れるほど面白かったです!
そして驚くのは、その文章の巧みなこと!!
日々、訴状や答弁書などの文章と格闘している私は、彼の文才に、羨望と嫉妬の入り交じった複雑な思いを抱いてしまうのも事実ですが・・・
それはさておき。
これから読む方、DVDで観ようと思っている方のために、ここでストーリーは書きませんが、多くのことを考えさせられる作品でした。
ご覧になった方の中には、結末に納得がいかないという方もいらっしゃるでしょう。
しかし、どんな状況でも「必死に頑張る」「とにかく生きる」ことの大切さ、そして誰にでも陰日向になって支えてくれる人が必ずいることのありがたさを思い、私は涙が出ました。
作品が誘うのは涙だけではありません。
絶体絶命にもかかわらず飛び出すユーモアに、思わず今度は泣き笑い。
読み終えて改めて見る『A MEMORY』というサブタイトルにも、鼻の奥がツンとするようなせつなさが伴っています。
春を待ちつつ、『ゴールデンスランバー』を読んでみてはいかがでしょう。
ビートルズの『ABBEY ROAD』を聴きながら。
(佐々木 大輔)