アーカイブ:2025年9月

ひやおろし

秋、といえば「ひやおろし」。
今年は秋刀魚も入手しやすくなり、秋刀魚を肴にひやおろしを一献という日本の秋が戻ってきました。

ひやおろしとは、春先に一度だけ火入れ(加熱殺菌)を行い、夏の間貯蔵庫で熟成させ、秋に出荷される日本酒のことです。
江戸時代に誕生したとされ、秋になり外気温と貯蔵庫の温度が同じくらいになった頃に、二度目の火入れをせずに「冷や」の状態で樽から「おろして」出荷したことから名付けられました。
涼しい気候になってから出荷することで、お酒の品質を保っていたのです。
今は毎年9月9日(重陽の節句)を目安に出荷されます。
ひと夏を越して熟成されることで、新酒の荒々しさが取れ、穏やかな香りとまろやかで深みのある味わいを楽しむことができます。

なお、「冷酒」(冷たいお酒)を求めて飲食店で「日本酒を冷やで」と注文するのは正しくありません。
「冷や」とは常温のお酒を指します。
優しいお店は注文の意をくんで「冷酒」を出してくれますが、頑固なお店では常温のお酒が提供され、お客「冷たいお酒を頼んだのに冷えてないじゃないか」、お店「冷やとおっしゃいましたので常温でお出ししました」みたいなやり取りがなされることも。

昔は冷蔵庫がなかったため、お酒を冷やすという習慣がなく、お酒の飲み方は常温か燗をつけるかのどちらかでした。
そのため燗よりも温度が低い常温のお酒を「冷や」と呼んでいたのです。
この名残で、今も常温のお酒を「冷や」と呼びます。

また、日本酒には温度に応じて呼び名があり、冷酒には雪冷え(5℃)、花冷え(10℃)、涼冷え(15℃)、燗には人肌燗(35℃)、ぬる燗(40℃)、熱燗(50℃)などがあります。
特に冷酒は呼び名が洒落てますよね。

まあ、あまり青筋たてずこだわりすぎず、楽しく飲むのが一番。
ひやおろしは、冷酒でも、冷やでも、燗をつけても、美味しく飲むことができます。
気温にあわせて、食事にあわせて、気分にあわせて、お酒の温度もいろいろに今宵の一献を選んでみてはいかがでしょう。
ただし、飲みすぎにはご注意を!(自戒をこめて)


今朝のお供、

The Beatlesの『A Hard Day’s Night』。

                              (司法書士 佐々木 大輔)