アーカイブ:2024年4月

芸とは何か

3月、4月とミルハス(中ホール)に落語を聴きに行きました。
3月は春風亭昇太さん、林家たい平さん、桂宮治さんなどのいわゆる笑点メンバーによる落語会、4月は立川談春さんの独演会です。

まずは3月の笑点メンバーによる公演から。
3番目に宮治さんが登場したとたん、会場の雰囲気が華やかに変わるほどのまばゆい売れっ子オーラ。まくらも噺(「看板のピン」)も立て板に水のごとし。
続く4番目のたい平さんの「粗忽長屋」はさすがの安定感。
中入りをはさんで大トリの昇太さんの「壺算」は余裕たっぷり。
開口一番での若手の丁寧な「子ほめ」もベテランの上手さも、いろいろ味わえた1日でした。

そして4月の立川談春さん独演会。
今回は初めから演目が「包丁」と「紺屋高尾」と決まっていました。
特に前半の「包丁」が素晴らしかった!まさに研ぎ澄まされた包丁といった至芸。ギラギラした凄みがありました。
その場に居合わせているかのような臨場感があり、話の筋は知っているはずなのに、次の展開がどうなるのかドキドキしながら見守っていました。
師匠の立川談志さんから「俺よりうめえ」と褒められたとのエピソード(立川談春著『赤めだか』より)でも有名な演目ですから、聴く前から期待のハードルは上がっていましたが、そんなハードルなんてなんのその、「包丁」だけで十分聴きに行った甲斐のある公演でした。

ところで、談春さんは立川流、立川流の家元は故立川談志さん。談志さんは笑点の初代司会者。
その笑点、3月いっぱいで黄色い着物の林家木久扇さんが卒業して、4月から新しいメンバーが入ることに。
新メンバーは立川晴の輔さん。談春さんの兄弟子である立川志の輔さんのお弟子さんです。
そして晴の輔さんの加入により、笑点は4団体(落語協会、落語芸術協会、五代目円楽一門会及び立川流)すべてからメンバーが出そろうことになりました。

3月に聴いた笑点メンバーによる落語会と4月に聴いた立川談春さんの独演会。こんな感じで繋がるとは。

今年に入って演奏会や落語などいろいろな催し物を鑑賞していますが、どれも一流の芸を堪能できたとともに、自分の仕事に対する姿勢についても改めて考えさせられる機会となりました。
皆、芸に人生を賭しています。対してお前はどうだ、と覚悟を問われた思いです。

これは先日の公演内での発言ではないのですが、談春さんが芸の体得について語った印象的な言葉がありました。
「基礎は誰でも身に付けられる。やるかやらないか、だけ。それを1年で身に付けるか、10年かけるか。そこに個性は不要です」
けだし名言。
もし、当ブログを読んでくださっている方の中に司法書士試験の受験生がいらっしゃるのであれば、僭越ながらその方々に同じことを伝えたいと思います。
受験生活はつらいものですが(そしてこの時期が精神的に一番大変な時期であることは、私も身をもって知っています)、合格するためには皆が必ず通る道ですから、ポジティブに考え、受験勉強を通してしっかり基礎を身に付けてください(実務に入ると、腰を据えて基礎を勉強する時間は無くなります)。
基礎を身に付けることは遠回りのように見えますが、焦ってテクニックに走るよりも確実に合格へ近づきます。
そして、一度身に付けた基礎は、最後まで自分を助けてくれますから。

今朝のお供、

Blur(イギリスのバンド)の『The Ballad of Darren』。

                              (司法書士 佐々木 大輔)