『ローマの休日』
当ブログ、今回で100回目となりました。皆さんに「読んでいますよ」と声をかけていただくことが励みとなり、ここまで続けることができました。本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
100回記念ということで、今回は少しだけ思い出話にお付き合いください。
私がまだ学生だった頃の夏休み、大仙市(大曲)に住む祖父母と一緒に、映画『ローマの休日』を観た時のことです。
私の祖父は、大正生まれの無口な人。本当はとても温かい人なのですが、不器用で、ふだんはあまり感情を表に出しません。
そんなクールな祖父が、その日は珍しく、身を乗り出して映画を観ていました。途中、コミカルな場面では大きな声で笑ったり、最後の場面では目を潤ませたり。ふだん見られないような祖父の姿に驚いたものです。
映画を観終えて余韻に浸る中、祖母がある思い出を大切そうに話してくれました。若い頃の話だそうです。
ある休みの日、祖父は祖母に「(一緒に)出かけるぞ」と声をかけます。しかし、無口な祖父らしく、どこに、何をしに行くとも言わないので、祖母は黙ってついて行くしかありません。
大曲から汽車に乗って向かった先は秋田市。ところが、秋田駅についても、やっぱり祖父は何も言いません。また無言で歩き出し、ようやく祖父の足が止まったのは映画館の前。何が上映されるのかもわからず戸惑う祖母でしたが、その時ふたりで観た映画が『ローマの休日』だったのだそうです。
今から60年も昔のこと、大曲から秋田市まで『ローマの休日』を観に行くなんて、私の祖父母は映画に負けないくらい素敵な休日を過ごしていたんですね。
日本男児の見本のような祖父の、びっくりするくらい甘くてロマンチックな思い出です。
祖母のする思い出話を、そばで黙って聞いていた祖父の、照れたような、懐かしむような、柔らかい表情が忘れられません。
先月、最期を迎えた時も、穏やかで優しい顔をしていました。
今度の休日、ローマの青空のように気持ちよく晴れ渡ったら、久しぶりに『ローマの休日』を観てみようかな。
今朝のお供、
桑田佳祐の曲「愛しい人へ捧ぐ歌」。
(佐々木 大輔)