アーカイブ:2013年3月

日本語

日本語って難しいと思うことありませんか。
私は、日本語の持つ美しさや語感が大好きで、正しい日本語を使うように心掛けていますが、気付かず誤用していることもあります。
今も昔も、日本語の誤用や乱れが指摘される一方で、当初は誤用であった言葉が、現在では辞書にも載っている言葉として慣用化している例もあります。

そんなことに思いを巡らせたのは、先日、新聞記事で目にした「独擅場(どくせんじょう)」という言葉に驚いたからです。おそらく皆さんも「独壇場(どくだんじょう)」という言葉の方に親近感があるのではないでしょうか。しかし、もともと「独壇場(どくだんじょう)」という言葉はありませんでした。
よく見ると「独擅場(どくせんじょう)」の「擅」の字、「壇」という字と似ていますよね。そのため、多くの人たちが誤って、「独擅場」を「どくだんじょう」と読み、「擅」を「壇」と書いているうちに、「独壇場(どくだんじょう)」という言葉が生まれ、定着しました。今では、ニュース番組でもほとんどの場合「独壇場(どくだんじょう)」が使用されています。

豪華な装飾などを見て、「綺羅星(きらぼし)のようだ」と使うのも、もともとは間違い。「綺羅星の如く」は、「きら、ほしのごとく」と読みます。
「綺」「羅」というのは美しい服のことをいい、その美しさが星のようであることを表した言葉です。優れた人たちが居並ぶ様子にも使われます。「綺羅星」という言葉はありませんでした。
しかし、今では、キラキラと光り輝く星のことを「綺羅星」と呼び、「綺羅星の如き有名人たち」とたとえたりします。
もしかしたら、「綺羅星」という言葉が定着した背景には、童謡「きらきら星」のタイトルの影響もあるのかもしれません。
とはいえ、歌詞は♪Twinkle twinkle little star ~ ですから、訳詞は「きらきらひかる お空の星よ(小さな星よ)」となり、やはりどこにも「綺羅星」という言葉は出てきません。

一方で、消えていく日本語もあります。最近では「緑の黒髪」という言葉を聞かなくなりました。何年か前の新聞にも、「街中に明るい髪の色の女性が増え、緑の黒髪という言葉は死語となったのか」との記事があったことを思い出します。
と思っていたら、最近は女性の間で黒髪がブームとのこと。経済状況の悪化から、美容院でのカラー代を節約するといった現実的な事情もあるようですが。
ともあれ、再び黒髪が注目されたことをきっかけとして、「緑の黒髪」という美しい日本語が、将来にわたり生き残ることを願っています。

 

今朝のお供、
デヴィッド・ボウイ(イギリスのミュージシャン)の『The Next Day』。
自身66歳の誕生日である今年1月8日、何の前触れもなく、10年振りの新作を3月にリリースすることを発表したボウイ。
PVの顔は老けたけど、格好良さと妖しい色気は全く衰えず!

(佐々木 大輔)

『フェイク』

週末、お気に入りの映画、『フェイク』を観ました(本当に最近は、新しい作品よりも馴染みの作品に手が伸びます)。
マフィアの巨大ファミリーにたった一人で潜入し、壊滅に導いたFBI捜査官ジョー・ピストーネ(偽装名ドニー・ブラスコ)の実話に基づく映画です。

マフィアの一員であるレフティに接触する機会を得たドニーは、レフティに見込まれ組織に食い込み、一方のレフティは、人生の黄昏を迎える中、若いドニーに再び出世の夢を託します。
組織内部の抗争が激化する中、レフティとドニーは、“兄弟関係”を超えた絆を深めていきますが、向かう先の結末は、最初から決められていて・・・

落ち目のレフティを演じるのはアル・パチーノ。そのくたびれた哀愁を漂わせる様子は、これが『ゴッド・ファーザー』のマイケルを演じた男と本当に同じ人物かと目を疑うほど。
潜入捜査官としての任務と、レフティに対する愛情の狭間で葛藤するドニーを演じるのはジョニー・デップ。初めから二人の結末を知っている彼の目は、全編通じて悲しみと切なさに満ちています。

両名優が名を連ねた豪華な映画でありながら、あまり認知度が高いとはいえないのが残念なところ。特に、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『チャーリーとチョコレート工場』をきっかけにジョニー・デップのファンになった方には、ぜひ観ていただきたい映画です。

最後に全てを悟ったレフティの表情。潜入捜査を終え、その成功を形ばかりに表彰されるドニーの目。アル・パチーノとジョニー・デップの演技が素晴らしく、二人の間に築かれた親愛の情がどれほどのものであったのか、まっすぐ胸に迫り、熱くなります。

何度観ても、レフティがドニーに残した最後の言葉には、涙が止まりません。

 

今朝のお供、
LED ZEPPELIN(イギリスのバンド)の『LED ZEPPELIN Ⅰ』。
最近は、2ndよりも、この1stの方をよく手に取ります。

(佐々木 大輔)