アーカイブ:2013年2月

ラトルの勇退

先日、ベルリン・フィル(BPO)の首席指揮者であるサイモン・ラトルが、2018年をもって、そのポストを退くことを発表しました。2018年はまだ5年も先のこと、とも思いますが、BPOの首席指揮者といえば、クラシック音楽界における最高峰のポスト。その後継者を選ぶための期間としては、必要にして十分ともいえます。
2018年、ラトルは64歳。指揮者としていよいよ成熟に向かう年齢ですが、彼は同郷であるビートルズの曲「When I’m Sixty-Four」の歌詞を引用し、「64歳になっても、僕を必要としてくれるかい?」と自らに問いかけ、今回の決断に至ったそうです。

ラトルは、若い頃からその才能を認められた存在で、20代から多くの一流オーケストラに招かれキャリアを積んできました。BPO、ウィーン・フィルの指揮台にもそれぞれ34歳、38歳でデビューしています(どちらもプログラムはマーラーの交響曲)。
1980年から98年まではバーミンガム市交響楽団の首席指揮者を務め、その間、当時あまり知名度の高くなかった同オーケストラを、名実ともに世界的なオーケストラに育て上げました。
94年には、30代の若さでナイトの称号(サー)が与えられています。

BPOの首席指揮者として白羽の矢が立ち、2002年に就任した時は47歳。これは奇しくも同ポストを34年間務めたカラヤン(カラヤンの場合は終身首席指揮者兼芸術総監督)の就任時と同じ年齢だったため、「ラトルの時代」「長期政権か」とも騒がれました。
ラトルの4期16年というのが長期なのかどうかは分かりませんが、残り5年、さらに素晴らしい演奏を聴かせてくれることを楽しみにしています。

退任後はフリーな立場で活動するのか、あるいは別のオーケストラの首席指揮者や音楽監督になるのか。
いずれにしても私としては、近年スケジュールの都合で共演の機会が少なかったウィーン・フィルとの共演回数の増加、若い頃に衝突して以来、関係が修復されているとはいえないコンセルトヘボウ管弦楽団やクリーヴランド管弦楽団との再演を期待しています。

 

今朝のお供、
FUN.(アメリカのバンド)の『SOME NIGHTS』。
収録曲「WE ARE YOUNG」により今年のグラミー賞で主要2部門(最優秀楽曲賞と最優秀新人賞)を受賞。
一度聴いたらメロディが頭から離れません。

(佐々木 大輔)

大鵬

先日、幕内最高優勝32回を誇る昭和の大横綱、大鵬が亡くなりました。秋田の老舗「菓子舗榮太楼」さんからお嫁さんをもらったこともあって、秋田にもゆかりのある方でした。
未だ歴代1位の座を譲らない優勝回数や2度の6連覇など、数々の記録を打ち立てた功績を称え、国民栄誉賞の授与が内定しています。

当然のことながら人気も絶大で、当時、通商産業省(現経済産業省)の官僚だった堺屋太一氏が記者会見で使用した「巨人、大鵬、卵焼き」(大鵬本人は好ましく思っていなかったとのことですが)のキャッチコピーや、取組時間には銭湯から人が消えると言われたことなど、その人気ぶりを示すエピソードには事欠きません。

私は、大鵬の取組をリアルタイムで観たことはありません。過去のVTRで触れることができるのみですが、懐の深さと柔軟な取り口で、いつの間にか自分の流れに持ち込み、得意のすくい投げで勝負を決する姿は、まさしく相撲の妙。

一方で、天才と呼ばれることを嫌い、常々「人より努力をしたから強くなった」と話していたそうです。その華やかな功績を支える実直な姿勢も、人々に好かれた要因だったのでしょう。

今年の初場所は、若貴なきあとの角界人気を支えた元小結高見盛の引退など、他にも寂しい話題がありました。
それでも、「美しい横綱」は、大鵬から貴乃花を経て、現在の白鵬へと受け継がれています。もう少し先のことになるかとは思いますが、この系譜に連なる新たな横綱の誕生をゆっくり待つのも、相撲ファンの楽しみですね。

 

今朝のお供、
ドナルド・フェイゲン(アメリカのミュージシャン)の『The Nightfly』。
音はもちろんのこと、ジャケットデザインが大好き。
週末(できれば土曜日)の夜、アナログ盤のジャケットを眺めながら、ウイスキー片手に聴きたくなる名盤です。

(佐々木 大輔)