6 夫婦財産契約(登記)

(当事務所の取扱業務)

① 夫婦財産契約書作成代理、夫婦財産契約書等文案書類作成の相談

② 公正証書作成手続の代理、その手続の相談

③ 登記申請の代理、登記申請書作成、登記申請手続事務の相談

(目次)

(1)「夫婦財産契約」・「夫婦財産契約登記」の活用

① 「夫婦財産契約登記」の活用

② 「夫婦財産契約」の活用

(2)「夫婦財産制」・「夫婦財産契約」・「法定夫婦財産制」

① 「夫婦財産性」

② 「夫婦財産契約」

③ 「法定夫婦財産制」

(3)「夫婦財産契約書の記載内容」・「夫婦財産契約登記」

① 「夫婦財産契約書」の記載内容

② 「夫婦財産契約登記」

(4)「夫婦財産契約の締結」・「夫婦財産契約登記の実務」

(5)「夫婦財産契約登記」の書式例

(1) 夫婦財産契約・夫婦財産契約登記の活用

ア 夫婦財産契約登記の活用
夫婦財産契約登記は、結婚(特に、「① 収入の多い方・多額の資産を持っている方同士の結婚」、「② 外国人との結婚」、「③ 中高年の財産家の再婚」)に当り、各々の相続人等に相続争いを生じさせないため、又は離婚の際の紛争予防のために効力を発揮する登記です。

イ 夫婦財産契約の活用
日本は長寿社会となり、50代から70代の方が結婚することは珍しくありません。

・シニア層の再婚に当り大事な注意点は、親が死亡した場合の相続財産をめぐって推定相続人(子供等)と結婚相手との間に相続紛争が発生しないようにすることです。
(相続紛争を避ける方法例)

① 婚姻前に夫婦財産契約を締結しておくこと。

② 遺言書を作成しておくこと。


(2) 夫婦財産制(夫婦財産契約・法定夫婦財産制)

ア 夫婦財産制

(ア) 夫婦財産制の定義
夫婦財産制とは、婚姻中の夫婦の財産上の権利義務のことをいいます。

(イ) 夫婦別産制
夫婦別産制とは、夫婦であっても、その財産は個々別々の所有であるという意味です。
(根拠)

民法762条1項:

夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は特有財産とする。

民法762条2項:

夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

(ウ) 婚姻中の財産法的効果(民法755条)
婚姻中の夫婦の財産関係は、婚姻前に、「① 夫婦財産契約を締結した場合」と「② 夫婦財産契約を締結しなかった場合」で、下記のような相違があります。

① 夫婦財産契約を締結した場合
婚姻前に夫婦財産契約を締結した場合の夫婦の財産関係は、その契約内容によることになります。

② 夫婦財産契約を締結しなかった場合(法定夫婦財産制)婚姻前に夫婦財産契約を締結しなかった場合の夫婦財産関係は、法定夫婦財産制となります。

(エ) 夫婦財産契約と法定財産制の関係
夫婦が、婚姻の届出前に、その財産につき別段の定め(夫婦財産契約)をしなかったときは、その財産関係は民法の定めるところ(法定夫婦財産制)により、「夫婦の収入等を考慮して婚姻費用を分担」したり、「日常家事債務の連帯責任を負う」ことになります。

・つまり、法定夫婦財産制は、夫婦財産契約を締結しない場合の補充的役割を担っているのです。

イ 夫婦財産契約

(ア) 夫婦財産契約の定義
夫婦財産契約とは、婚姻届出前か、少なくとも婚姻届出と同時に、婚姻中の夫婦の財産関係についての契約を締結することです(民法755条)。

(イ) 夫婦財産契約の詳細

① 契約締結時期
婚姻届出前か、少なくとも婚姻届出と同時に、契約を締結しなければなりません。

② 効力発生時期
婚姻の時から効力が発生します。

* 婚姻が取消し又は無効となれば夫婦財産契約は効力を失い、夫婦の一方が夫婦財産契約によって得た利益があれば、相手方にその利益を返還しなければなりません。

③ 契約内容
契約内容は、当事者間で自由に決めることができます。

* ただし、「夫婦間の平等」又は「婚姻共同生活の本質」に反する内容は無効となります。

④ 夫婦財産契約の対抗要件(夫婦財産契約登記:民法756条)
夫婦が、法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出前か、少なくとも届出と同時にその登記(夫婦財産契約登記)をしなければ、これを夫婦の承継人(夫婦の相続人及び包括受遺者)及び第三者に対抗することができません。

* 夫婦財産契約登記(民法756条)

(ⅰ) 夫婦財産契約登記

a 夫婦財産契約登記は、不動産登記とは別個の登記記録に記録されます。

b 夫婦財産契約登記と不動産登記は、管轄登記所を異にします。

(ⅱ) 夫婦財産契約登記の登記事項は、下記のとおりです。

a 各契約者の氏名及び住所

b 登記の目的

c 登記原因及びその日付

d 夫婦財産契約の内容

* 夫婦財産契約の対抗要件の趣旨(民法756条)

(ⅰ) 取引の安全を図る。
登記によって、夫婦財産契約の「存在」や「内容」を明らかにすることにより、取引の安全を図ります。

(ⅱ) 相続人間の争いを防ぐ。
夫婦の一方が死亡した際、「相続人間での無用の混乱」や「争い」を防ぎます。

* 問題点

(ⅰ) 夫婦財産契約よって生じる不動産に関する夫婦の権利関係が不動産登記に表れてこない場合
(問題事例)

夫婦財産契約により共有となるべき不動産に関し、取得の際に夫名義で登記をしていた場合、夫から当該不動産を譲り受けた第三者に対し、妻が共有持分権を主張し得るか?
(多数説の見解)
多数説は、「夫婦財産契約の登記があっても、各不動産について登記がなければ、不動産登記上の名義人と取引をした第三者に対抗できない」と解しています(理由:取引の安全保護 )。

(ⅱ) 税法上の取扱例
夫婦財産契約により、婚姻後に得た財産を共有とする約定をしていたとしても、夫の収入は夫の所得として扱うとの判例があります(最判平成3・12・3)。

⑤ 契約内容の変更
夫婦財産契約登記をした場合は、婚姻の届出後は、変更することができません。

* 変更ができない理由
契約内容を確定させ、第三者に公示(登記)することによって取引の安全を図っているからです。

⑥ 財産の管理者の変更・共有財産の分割
これらの事態が発生した場合は、その登記をしなければ、夫婦の承継人及び第三者に対抗できません。

ウ 法定夫婦財産制

(ア) 法定夫婦財産制の意義
法定夫婦財産制は、夫婦財産契約を締結しない場合の補充的役割を担っており(民法760条、761条、762条)民法の規定に従うことになります。

(イ) 夫婦財産の帰属、管理・収益

① 夫婦財産の帰属
夫婦の一方が婚姻前から所有する財産や婚姻中自己の名で取得した財産は、その特有財産となります。

・婚姻共同生活中に、帰属不明財産が生じた場合は、夫婦の共有に属するものと推定されます。

* 特有財産の意義
夫婦の一方が単独で所有する財産のことです。

② 夫婦財産の管理・収益
各自で管理・収益をすることになります。

(ウ) 婚姻費用の分担
婚姻費用については、夫婦の資産、収入その他一切の事情を考慮して夫婦が分担します。

* 婚姻費用の意義
婚姻費用とは、未成熟の子供を含む家族が共同で営む生活に要する費用のことです。
(例)

① 一時的又は日常的に支出する「生計費・交際費・医療費」等

② 配偶者間の子供の出生費・養育費・学費等

(エ) 日常家事債務の連帯責任
日常の家事債務については、夫婦が連帯して責任を負います。


(3) 「夫婦財産契約書」の記載内容・「夫婦財産契約登記」

ア 夫婦財産契約書の記載内容

(ア) 当事者名等

① 当事者名
「夫となる者」と「妻となる者」は婚姻する旨。

② 夫婦財産契約の目的
財産に関する「権利」・「義務」を明らかにする。

(イ) 合意内容

① 財産の開示
資産・負債を明確にしてリストを作成する。

② 特有財産の表示

(ⅰ) 婚姻前から有する財産
婚姻前から有する財産を別産制として特有財産とする場合 法定財産制に従うことになりますが、財産関係を明確にするため、開示リストに「特有財産」であることを明記するのが適切です。

(ⅱ) 婚姻後に取得する財産
別産制を貫く場合等

③ 夫婦共同財産の表示

④ 使用収益と注意義務

⑤ 婚姻費用の負担

⑥ 負債の負担

(ⅰ) 婚姻前から有する負債

(ⅱ) 婚姻後に生じる負債

a 日常家事に係るもの

b 夫婦のそれぞれに生じるもの

⑦ 子の監護と扶養

⑧ 婚姻解消時の財産の分離

⑨ 離婚の扶助料

⑩ 相続に関する事項

* 中高年の再婚で、前婚の子を有する場合は、相続に関する合意をしておくのが望ましいです。

⑪ その他の契約事項

⑫ 契約の変更と廃止

* 夫婦財産契約は登記をとらなくても、契約は夫婦間では有効です。

・事情変更により、契約内容の変更や廃止をしたい場合も生じます。

・そこで、夫婦財産契約登記をとっておらず、かつ第三者への影響がない場合は、この条項を入れておけば、契約内容の変更や廃止ができます。

(ⅰ)登記をとっていない場合は、「契約内容の変更、廃止」が認めるられる理由
(理由)
夫婦財産制は、夫婦の自治に委ねられているからです。

(ⅱ)登記をとった場合は、「契約内容の変更、廃止」が認められない理由
法定財産制と異なる財産制を採用する場合は、婚姻の届出前にその登記を行うこととし、これをしない場合は、夫婦の承継人と第三者に対抗できません。

・そして、その夫婦の財産関係は、婚姻届出後は、取引安全保護の観点から、契約内容の変更や廃止をすることはできません。

イ 夫婦財産契約登記

(ア) 夫婦財産契約登記簿の意義
夫婦財産契約の登記は、登記所に備えられている「夫婦財産契約登記簿」に記載されます。

(イ) 管轄登記所

① 夫婦となるべきものが夫の氏を称するとき
夫の住所地を管轄する法務局・地方法務局又はその支局、出張所

② 夫婦となるべきものが妻の氏を称するとき
妻の住所地を管轄する法務局・地方法務局又はその支局、出張所

(ウ) 夫婦財産契約登記の申請(夫婦の共同申請)
当該夫婦財産契約の当事者の双方が、共同してしなければなりません。

* ただし、司法書士に依頼する場合は、司法書士が代理人として登記申請をします。

(エ) 登記事項

① 各契約者の氏名及び住所

② 登記の目的

③ 登記原因及びその日付

④ 夫婦財産契約の内容

(オ) 夫婦財産契約登記申請書の添付書類

① 登記原因証明情報(夫婦財産契約書)

② 独身証明書(戸籍謄本)
契約当事者が婚姻していないことを証明するため、それぞれの戸籍謄本

③ 住所証明書(住民票又は戸籍附票謄本)

④ 代理権限証書(委任状)

⑤ 印鑑証明書
申請人2人の印鑑証明者(市区町村長の作成した証明書)で、作成後3か月以内のもの。

(カ) 登録免許税
1件につき、金18,000円


(4) 夫婦財産契約の締結・夫婦財産契約登記の実務
「夫婦財産契約の締結」・「夫婦財産契約登記」は、高度の法律判断と、ち密な思考による将来設計を必要とするので、「司法書士・弁護士・公証人」等の法律専門家に依頼することをお勧めします。


(5) 「夫婦財産契約登記」の書式例(参考)


夫婦財産契約登記申請書

登記の目的

夫婦財産契約の設定登記

登記原因・日付

平成29年7月1日夫婦財産契約設定

契約者の氏名・住所

住所 秋田市山王     

氏名 秋田 一郎


住所 秋田市八橋         

氏名 山田 花子

夫婦財産契約の内容例

* この内容は、個人ごとに異なることに注意してください。

1 婚姻

2 目的

3 婚姻の成立要件・契約の効力

4 夫の特有財産

5 妻の特有財産

6 特有財産の管理等

7 共有財産・その他

8 婚姻費用の負担

9 債務の負担

① 婚姻前の債務

② 婚姻中の日常家事債務

③ 個別債務

10 婚姻の解消

① 共有財産の分割

② 特有財産

11 相続に関する事項

12 その他の契約事項

13 変更と廃止


申請人

夫となる者 住所 秋田市山王     
氏名 秋田 一郎

妻となる者 住所 秋田市八橋
氏名 山田 花子


添付書類  登記原因証明情報(夫婦財産契約書)
独身証明書(戸籍謄本)