8 警察に対する苦情申出

(当事務所の取扱業務)

① 苦情申出書の作成代理
苦情申出書提出手続代理

② 苦情申出書の作成の相談

(目次)

(1) 警察

① 警察権の定義

② 警察権行使の4原則(警察権の限界)

③ 警察の機能

④ 警察官の仕事

(2) 公安委員会

① 公安委員会の意義等

② 公安委員会の概要

③ 公安委員会の権限

④ 公安員会の委員

⑤ 警察に対する苦情申出制度

(3) 公安委員会への「警察に対する苦情申出制度」

① 公安委員会への「警察職員に対する苦情申出制度」とは

② 「警察職員に対する苦情」の意味

③ 苦情申出の方法

④ 苦情処理のフローチャート

(1) 警察

ア 警察権の定義
警察権とは、「社会や公共の秩序を維持するため、国民に対し命令や強制を加える公権力のこと」です。

イ 警察権行使の4原則(警察権の限界)
警察権は、その性質上強大な権力を持っており、その行使により国民に多大な影響力を与えることになります。

・そこで、その行使に当っては、慎重を期する必要上、下記の4原則を順守しなければなりません。

① 警察公共の原則
警察権は、「私生活・私住所・民事上の法律関係」に関与しない。

② 警察責任の原則
警察権は、「故意・過失、自然人・法人の別は問わないが、社会公共の秩序に対する障害の発生について、責任ある者にのみ」発動する。

③ 警察比例の原則
警察権の発動は、「社会公共に対する障害の大きさに比例しなければならず、常に必要最小限度」でなければならない。

④ 警察消極の原則
警察権は、「公共の安全と秩序に対する侵害の具体的危険性があるときに、それを除去するためにのみ」発動されるべきである。

ウ 警察の機能
警察の機能は、下記の3つに分類することができます。

① 一般予防部門
「犯罪の予防」や「治安の維持」などの行政警察活動のことです。

② 犯罪捜査部門
「発生した犯罪の捜査」や「犯人逮捕」などの司法警察活動のことです。

③ 公安警察活動を行う特別部門
「反政府活動」や「暴動・騒擾の調査や警戒、防諜」などの公安警察活動のことです。

エ 警察官の仕事

(ア) 警察官の役目
警察官は、「国民の暮らし」や「国の安全」を守るため、「交番・駐在所」、「警察署」、「警察本部」において、日夜業務に精励しております。

(イ) 警察組織
警察の組織は、下記のように分かれています。

① 都道府県警察
都道府県ごとに置かれた警察組織で、日常的に惹起される事件や事故の処理に対応しています

(ⅰ)「警視庁」は、東京都の警察のことです

(ⅱ)「交番・駐在所・警察署・警察本部」などがあります。

② 警察庁
国の機関であり、主な業務は「安全に関する法律の作成」や「犯罪対策」です。

(ウ) 都道府県警察の役割
都道府県警察は、各都道府県内で発生した事件や事故処理に対応しています。

・複数の都道府県にまたがる犯罪が起きた場合は、各都道府県警察は警察庁の指示に従って、警察活動を行います。

・国際テロなどの国全体として取り組まなければならない事案に対しては、警察庁が中心となって対応しています。


(2) 公安委員会

ア 公安委員会の意義等

(ア) 公安委員会の意義
警察を管理する合議制の機関です。

(イ) 公安委員会の設置経緯
公安委員会制度は、第2次大戦後、警察制度の根本的変革をめざし、「警察の地方分権化」、「警察責務の限定化」と並んで導入されました。

(ウ) 公安委員会の設置目的
「警察運営の民主化」と「政治的中立化」を実現することを目的としています。

イ 公安委員会の概要
「① 国家公安委員会」、「② 都道府県公安委員会」、「③ 方面公安委員会(北海道は4つの方面ごとに公安委員会が設置されている)」が設けられています。

(内容)

 国家公安委員会は、警察庁の管理のために、内閣総理大臣の所管の下に置かれています。

 都道府県公安委員会は、都道府県警察の管理の自治事務を行うために、都道府県知事の所轄に置かれています。

 事務は、「国家公安委員会は警察庁」、「都道府県公安委員会は警視庁・道府県警察本部」が行っています。

ウ 公安委員会の権限
都道府県公安委員会は、都道府県警察の運営を管理する権限を有しています。

(具体的内容)

 警察行政の運営が、大綱方針に即して行われるよう都道府県警察に対して、事前事後の監督を行っています。

* 警察行政の大綱方針とは
国家公安委員会が、警察の民主的運営と政治的中立性に鑑み定めた警察行政の大綱方針のことです。

 警察事務の執行が法令に違反し又は大綱方針に即していない疑いが生じた場合の是正等の措置を指示します。

「運転免許証の発行」、「交通規制」、「駐車禁止除外標章の発行」、「風俗営業の許認可」、「デモ行進の届出受理」、「古物商営業の許認可」、「質屋営業の許認可」、「警備業の許認可」の権限を持っています。

エ 公安委員会の委員
委員は、都道府県議会の議員の被選挙権を有するもので、任命前5年間に、警察又は検察の職務を行う職業的公務員の前歴のない者のうちから、都道府県議会の同意を得て知事が任命します。

(委員となれる要件・任期等は下記のとおりです。)

 委員となるには、年齢は25才以上で、日本国民でかつ当該都道府県の住民であることが必要です。

 任期は3年で、2回の再任が可能です。

 秋田県の公安委員は3人です。

 委員長は委員の互選により選任し、任期は1年(再任も可能)です。

オ 警察に対する苦情申出制度
警察職員の職務執行について苦情のある場合は、警察法79条に基づいて、都道府県の公安委員会に対して文書により苦情を申し出ることができます。(* 詳細は、下記のとおりです。)

* 警察を含むそのほかの苦情申立については、請願法に基づく請願により行います。


(3) 公安委員会への「警察に対する苦情申出制度」

ア 公安委員会への「警察職員に対する苦情申出制度」とは
各都道府県の公安委員会では、警察法第79条の規定に基づいて、都道府県警察職員の職務執行についての苦情の申出を受け付けています。

イ 「警察職員に対する苦情」の意味
警察職員に対する苦情とは、下記のことです。

 警察職員が職務執行において、「違法・不当な行為をしたり、なすべきことをしなかったことにより何らかの不利益を受けたとして、個別具体的にその是正を求める」不服のこと。

 警察職員の「不適切な執務に対する不平不満」のこと。

* (ⅰ)「警察の任務といえない事項」や「申出者本人と直接関係のない一般論として申し出られた苦情」はこの制度の対象とはなりません。

(ⅱ)「告訴状・告発状の提出先」は、犯罪地又は被告訴人・被告発人の現在地を管轄する検察庁又は警察署となります。

ウ 苦情申出の方法
公安委員会への苦情申出は、下記の方法にてなす必要があります。

 下記②の事項を記載した申出書に署名・押印して、公安委員会へ提出(持参又は郵送)する。

* 様式の定めはありません。

② 申出書の必要記載事項

(ⅰ)「氏名・住所・電話番号」

(ⅱ) 処理結果報告を、申出者の住所以外の場所へ通知してもらうことを希望する場合は、処理結果報告書の「送達受取先の名称・住所・電話番号」

(ⅲ) 苦情申出の原因となった「警察職員の職務執行の日時及び場所」、並びに「当該職務執行に係る警察職員の執務の態様その他の事案の概要」

(ⅳ) 苦情申出の原因となった「警察職員の職務執行により申出者が受けた具体的な不利益の内容」又は「当該職務執行係る警察職員の執務の態様に対する不満の内容」。

エ 苦情処理のフローチャート

① 苦情申出の受理及び調査の指示
本制度による苦情の申出を受理した都道府県の公安委員会は、都道府県公安委員会に対して、事実関係の調査を指示します。

② 都道府県警察による調査報告
公安委員会から指示を受けた都道府県警察の取扱所属長は、必要な調査をした結果を踏まえて措置を行い、その調査結果及び措置について公安委員会に報告します。

③ 処理結果の通知
都道府県警察から報告を受けた都道府県の公安委員会は、当該報告を基に審議した上で、通知する内容を決定し、苦情申出者に処理結果を文書で通知します。