6 障害者虐待防止問題

(当事務所の取扱業務)

① 障害者虐待防止の監督官庁たる市町村・県(あるいは市町村長・知事)等へ提出する「障害者虐待防止に係る申立書」等の書類作成代理、提出手続の代理 、その書類作成事務の相談

② 「刑事告訴状・告発状」等を警察あるいは検察庁へ提出する書類の作成、提出手続の代理、それらの書類作成事務の相談

(目次)

(1) 障害者虐待防止に関する法律

(2) 障害者虐待防止法の概要

(3) 障害者の定義

(4) 障害者虐待の定義

(5) 障害者虐待を発見した場合の通報等・その後の措置

(6) 「高齢者虐待防止法」と「障害者虐待防止法」の通報義務の相違

(7) 市町村障害者虐待防止センターの設置

(1) 障害者虐待防止に関する法律
平成24年10月1日に、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援に関する法律」(以下、「障害者虐待防止法」という。)が施行されました。
(目的)
この法律は、障害者の尊厳を保つため、虐待の防止、早期発見、保護、自立支援などを行うことにより、障害者の権利利益の擁護に資することを目的としています。


(2) 障害者虐待防止法の概要

 障害者虐待とは、下記による虐待行為のことをいいます。

(ⅰ) 「養護者」による障害者虐待

(ⅱ) 「障害者福祉施設従事者等」による障害者虐待

(ⅲ) 「使用者」による障害者虐待

② 虐待行為とは、下記の行為のことをいいます。

(ⅰ) 身体的虐待

(ⅱ) 性的虐待

(ⅲ) 心理的虐待

(ⅳ) 放置(ネグレクト)

(ⅴ) 経済的虐待


(3) 障害者の定義
障害者とは、下記の障害がある者で、障害及び社会的障壁により、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者のことをいいます。

* 「傷害者手帳を取得していない者」、「18歳未満の者」も含まれます。

① 身体障害者

② 知的障害者

③ 精神障害者(発達障害者を含みます。)

④ その他、心身に機能障害がある者


(4) 障害者虐待の定義
障害者虐待行為とは、下記の何れかに該当する行為のことです。

① 身体的虐待
障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれがある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束する行為のことをいいます。

(具体例)

・平手打ちをする・つねる・殴る・蹴る・壁に叩きつける・無理やり食べ物や飲み物を口に入れる・やけどや打撲をさせる。

・身体的拘束
柱や椅子やベッドに縛り付ける。医療的に必要のない投薬によって行動を抑制する。ミトンやつなぎ服を着せる。部屋に閉じ込める。施設側の都合で睡眠薬を服用させる。

② 放置(ネグレクト)
障害者を衰弱させるような著しい減食をする。長時間放置する。身体的虐待・心理的虐待をする。障害者を養護すべき者が職務上の義務を著しく怠ることなどをいいます。

(具体例)

・食事や水便を十分に与えない・食事の著しい偏りにより栄養状態が悪化している・入浴させない・汚れた服を着させ続ける・排泄介助をしない・髪や爪が伸び放題にしておく・室内の掃除をしてあげない・ごみを放置したままにするなど劣悪な住環境で生活させる・病気やけがをしても受診させない・学校に行かせない・必要な福祉サービスを受けさせない、又は制限する・同居人による身体的虐待や心理的虐待を放置する。

③ 心理的虐待
障害者に対し著しい暴言、若しくは著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動、その他障害者に著しい心理的外傷を与えるような言動をすることをいいます。

(具体例)

・「馬鹿」「阿呆」など侮辱する言葉を浴びせる・怒鳴る・ののしる・悪口を言う・仲間はずれにする・子ども扱いにする・人格をおとしめるような扱いをする・話しかけているのに意図的に無視するる。

④ 性的虐待
障害者にわいせつな行為をすること、又は障害者にわいせつな行為をさせることです。

(具体例)

・性交・性器への接触・性的行為を強要する・裸にする・キスする・本人の前でわいせつな言葉を発する又は会話する・わいせつな映像を見せる。

・キスをする・性器へ接触をする・セックスを強要する。

⑤ 経済的虐待
障害者の財産を不当に処分すること、その他障害者から不当に財産上の利益を得ることをいいます。

(具体例)

・年金や賃金を渡さない・本人の同意なしに財産や預貯金を処分、したり運用したりする・日常生活に必要な金銭を渡さなかったり、、使わせなかったりする・本人の同意を得ることなく年金等を管理して渡さない。


(5) 障害者虐待を発見した場合の通報等・その後の措置

① 養護者による障害者虐待があった場合

(ⅰ) 市町村への通報義務
養護者による障害者虐待を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければなりません(義務です)。

(ⅱ) 通報後の措置

A 通報を受けた市町村の措置
障害者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる場合は、障害者を一時的に保護するため障害者支援施設等に入所させる等の措置を講じます。

B 通報を受けた市町村長
市長村長は、必要に応じて、成年後見開始審判の請求をするものとされています。

② 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の防止

(ⅰ) 市町村への通報義務
障害者福祉施設従事者等は、障害者虐待を発見した場合は、速やかにこれを「市町村」に通報しなければなりません。

(ⅱ) 通報後の措置
通報を受けた市町村は、これを都道府県に報告しなければなりません。

(ⅲ) 通報を受けた市町村及び都道府県知事の対応
通報を受けた市町村及び都道府県知事は、「社会福祉法」、「障害者自立支援法」その他の関係法律の規定による権利を適切に行使しなければなりません。

* 権利の具体例
「報告の徴収、出頭質問権、立入調査権」等の権限があり、障害者福祉施設の指定取消権限等を含め適切な権限行使しなければなりません。

(ⅳ) 都道府県知事による措置の公表
都道府県知事は、障害者虐待があった場合の措置等を公表することにしています。

③ 使用者による障害者虐待の防止等

(ⅰ)市町村への通報義務
使用者による障害者虐待を発見した場合は、速やかにこれを「市町村」又は「都道府県」に通報しなければなりません。

(ⅱ) 通報後の措置

A 通報を受けた市町村の措置
市町村は、その虐待行為を都道府県に通知します。

B 通報を受けた都道府県の措置
「都道府県は、市町村から上記の通知を受けたとき」や「都道府県が直接虐待の通報を受けたとき」は、都道府県労働局に報告しなければなりません。

C 都道府県労働局の措置
「労働基準法」・「障害者雇用の促進等に関する法律」等 による権限を適切行使することになっています。


(6) 「高齢者虐待防止法」と「障害者虐待防止法」の通報義務の相違

① 高齢者虐待防止法の場合の通報
高齢者虐待防止法では、「生命身体に重大な危険が生ずるおそれ」がない場合は、一般人による通報は、努力義務とされています。

② 障害者虐待防止法の場合の通報
虐待を発見した場合の通報は、義務となっています。


(7) 市町村障害者虐待防止センターの設置

 市町村障害者虐待防止センター
市町村は、「障害者担当部局」等において、「市町村障害者虐待防止センター」として、障害者虐待防止に関する機能を果たすことになっています。

* センターは、この業務の全部又は一部を民間に委託することもできます。

② 民間団体との連携協力体制の整備
市町村は、「高齢者虐待防止法」と同様に、民間団体等との連携協力体制を整備しなければなりません。