(当事務所の取扱業務)
① DV防止法に基づく地方裁判所への「保護命令申立書」の作成
② 「保護命令申立書」作成事務の相談
(目次)
(1) DV防止法の目的
(2) 保護命令手続
① 保護命令の対象となる暴力の意味
② 保護命令の種類
③ 保護命令申立前の手続
④ 保護命令の申立て
⑤ 審理手続
⑥ 保護命令の発令及び告知
⑦ 保護命令違反の効果
⑧ 即時抗告
⑨ 保護命令の取消し
⑩ 再度の申立て
(1) DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)の目的
配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス=DV)に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備し、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることにあります。
・ その方法としては、下記のものがあります。
① 配偶者暴力相談支援センターを中心としたDV被害者の保護
② 自立支援態勢の確立
③ 裁判所における「保護命令手続」があります。
* このなかで、最も強力な効果を発揮するのは、保護命令手続です。
(2) 保護命令手続
ア 保護命令の対象となる暴力の意味
(ア) 配偶者等からの暴力とは、「配偶者からの身体に対する不法な攻撃であって、生命又は身体に危害を及ぼすもの」をいいます。
(イ) 配偶者等の意味
① 婚姻届を出したことによる配偶者
② 婚姻届を出していないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者
(いわゆる、事実婚の状態にある者)
③ 元配偶者
* 離婚後又は婚姻取消後であっても、当該配偶者であった者から引き続き更なる暴力を受けるおそれが大きい場合は、対象となります。
④ 生活の本拠を共にする交際相手
* いわゆる、デートDVと呼ばれる恋人間の暴力がエスカレートし、被害者やその家族が襲われる事件が後を絶たないため、このような相手方も対象になりました。同居期間は問わず、同居解消後に引き続き暴力を受けている被害者も適用対象となります。
イ 保護命令の種類
① 接近禁止命令
6か月間、被害者の住居(ただし、当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。)その他の場所において、被害者の身辺につきまとい又は被害者の住居、勤務先、そのほか通常所在する場所の付近の徘徊を禁止する裁判です。
② 退去命令
2か月間、被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること及び当該住居の付近を徘徊することを禁止する裁判です。
* この制度は、被害者が暴力から逃れるために転居する時間を確保するための制度です。
③ 子に対する接近禁止命令
被害者が、未成年の子と同居している場合に、接近禁止命令が効力を有している間、子の住居(被害者及び加害者と共に生活の本拠としている住居を除く。)、就学する学校その他の場所において、その子の身辺につきまとい又はその子の住居、就学する学校その他、通常所在する場所の付近を徘徊することを禁止する裁判です。
* 接近禁止命令が発令されていても、被害者が未成年の子と同居している場合は、加害者が子を連れ戻そうとすることにより、命令の効果を減殺する恐れがあるので、これを避けるための制度であり、独立した制度ではありません。なお、その子が15歳以上であるときは、その同意を要します。
ウ 申立前の手続
保護命令の申立てをするには、その前提として、次のいずれかの手続をとる必要があります。
① 配偶者暴力相談支援センター又は警察へ相談し、又は援助若しくは保護を求めること。
② 配偶者から暴力を受けた事情に関する被害者の供述を記載した書面について、公証人の認証を受けること。
エ 申立て
(ア) 申立の裁判所管轄
下記の地を管轄する地方裁判所に、申立てをする必要があります(家庭裁判所には、管轄権はありません)。
① 相手方の住所地(住所が分からないときは居所)
② 申立人の住所地又は居所
③ 配偶者から、身体に関する暴力が行われた地
(イ) 申立書の記載事項
① 当事者の氏名及び住所
② 申立の趣旨及び理由
③ 保護命令事件のうち、既に係属するもの又は既に保護命令が発せられたものの表示
④ 配偶者から、身体に暴力を受けた状況
⑤ 配偶者から、更なる身体に対する暴力により生命又は身体に重大」な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる事情
⑥ 配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に対し、「配偶者から、身体に対する暴力に関して、相談し、又は援助もしくは保護を求めた事実の有無」
(ウ) 虚偽の申立て
虚偽記載の申立書により保護命令の申立てした者は、金10万円以下の科料に処せられます。
オ 審理手続
(ア) 裁判所書記官による書面の取り寄せ
裁判所書記官は、申立人が、審理前の面接と前後して、「配偶者暴力相談支援センターの職員」や「警察職員」に対して相談し、その記載がある場合は、「相談内容」や「採られた措置」の内容を記載した書面の提出を求めることができます
(イ) 相手方の審尋等
申立人の面接を経た後、相手方に防御の機会を与える必要があるので、裁判所書記官が相手方に対して審尋期日に出頭する旨の呼び出しをします。
カ 保護命令の発令及び告知
(ア) 発令
相手方を審尋した結果、保護命令が必要と認められた場合は、裁判所は命令を発します。
(イ) 告知
相手方に対する保護命令の告知は、決定書の送達又は口頭弁論期日若しくは審尋期日における言渡しによって行われます。保護命令は、相手方に告知されることにより効力を生じます。
キ 保護命令違反の効果
1年以下の懲役又は金100万円以下の罰金に処せられます。
ク 即時抗告
保護命令の申立ての裁判に対しては、即時抗告が可能です。
① 申立てを認容した場合は、相手方から即時抗告ができます。
② 申立てを却下した場合は、申立人から即時抗告ができます。
ケ 保護命令の取消し
保護命令の裁判が確定した場合でも、必要がなくなった場合は、保護命令の取消しができます。
コ 再度の申立て
一度目の保護命令の申立ての理由となった暴力と「同一の事実」を理由として、再度保護命令の申し立てをすることは、一応可能です。