(当事務所の取扱業務)
① 事業承継に関する文案書類の作成、文案書類作成の相談
(例)
「現経営者と後継者間の経営承継に関する覚書、株式譲渡契約書」等の文案書類作成
② M&Aに関連する文案書類の作成、文案書類作成の相談
(例)
「株式譲渡契約書、合併契約書、吸収分割契約書、会社合併・分割に関する公告、事業譲渡契約書、取締役会議事録、株主総会議事録」等の文案書類作成
③ M&Aに関連する登記申請の代理、登記申請手続事務の相談
(例)
会社合併登記・会社解散登記、会社設立登記、会社分割登記、株式交換・株式移転登記等
(目次)
(1) 事業承継は重要な課題
(2) 事業承継のポイント
(3) 事業承継の方法(親族内承継・親族外承継)
(4) 事業経営の引継において重要なポイント
(5) 税金等の対策をとることによる事業承継の方法
(6) M&A(企業の合併と買収)の手法による事業承継
(7) 適切な選択
(8) 当事務所の取扱業務とその業務方法
(1) 事業承継は重要な課題
中小零細企業の経営者の承継問題(以下、この承継問題を「事業承継」という。)は、全国でも高齢化のスピードが早い秋田県にとって重要な課題の一つです。
・経営者が、長年の苦労を積み重ねて育ててきた会社を自然消滅させてしまうと、下記のような結果を招くことになり、その社会的影響は計り知れません。
記
① 「経営者個人」にとって
長年の苦労が水泡に帰すことになります。
② 「会社の従業員」にとって
働く場を失うことになります。
③ 「その会社と取引をしていた相手方」にとって
取引先を失うことになり、売上高の減少につながってしまいます。
(2) 事業承継のポイント
ア 事業承継のポイント
事業承継のポイントとしては、下記の点が挙げられます。
① 経営の承継
② 経営者の交代
③ 資産の承継(自社株・不動産等の譲渡、税務対策)
イ 事業承継の各ポイントの重要事項のチェック
事業承継にあっては、各ポイントの重要事項をチェックする必要があります。
(ア)「経営の承継」に当って
① 事業の将来性を判断する。
② 企業が継続可能かどうかを判断する。
③ 企業価値を向上させる対策を練る。
④ 危機管理体制を構築する。
⑤ のれん・人脈・熟練の技などの知的資産を承継する。
(イ)「経営者の交代」に当って
① 社内の人材を後継者となれるように教育する。
② 社外から後継者となる人材を選抜する。
③ 人事制度を見直し、構築する。
④ 「会社合併・会社分割・事業譲渡」などM&A、「会社清算・特別清算」による廃業などの対策をとる。
⑤ 会社債務につき、経営者が連帯保証人となっている場合、その交代の方法を探る。
(ウ)「資産の承継」に当って
① 自社株式対策をとる。
② 後継者に対し、最低でも過半数、可能なら3分の2以上の株式を譲渡し、経営判断が容易にできるようにしてやる必要があります。
③ 贈与税・相続税対策をとる。資産の承継に当っては、贈与税や相続税の対策をたてる必要があります。
④ 納税猶予制度を利用する。
⑤ 一般社団法人制度を活用する。
⑥ 納税資金対策をとる。
相続税・贈与税をどのように節税するか、どのように納税資金を確保するかなどの税務対策をたてる必要があります。
⑦ 相続人対策をとる。
(3) 事業承継の方法(事業承継の方法における「親族内承継」と「親族外承継」)
ア 親族内承継・親族外承継の意義
(ア) 親族内承継の意義
経営者が、息子や娘など身内に経営権を譲渡することです。
(イ) 親族外承継の意義
「経営者の身内以外の従業員あるいは外部から人材を登用して会社を継がせる場合」又は「M&Aで会社を第三者に売却する場合」などです。
* 外部からの人材登用
自社内に適当な後継者がいない場合は、外部から人材を発掘し登用するのも事業承継の一つの方法です。
(人材発掘の方法)
人材を発掘するには、下記の方法があります。
① 地元銀行に相談する。
② 東京にある人材紹介会社から紹介を受ける。
イ 親族内承継・親族外承継の問題点等
(ア) 親族内承継の問題点
① 後継者自身に経営能力があるかどうかという点。
② 後継者が、「既存の経営幹部・従業員・取引先・金融機関」等に受け入れてもらえるかどうかという点。
(イ) 親族外承継の問題点
① 会社内の「経営者の身内以外の人」が承継する場合
(ⅰ) 長所
会社内の内容を把握しており、かつ会社の取引先とのコミュニケーションもとれているので、スムーズに承継できる。
(ⅱ) 短所
会社の株式を前経営者一族が所有したままで、経営者が会社内の他人に交代した場合は、「前経営者一族に会社運営の実権を握られており、雇われ社長になったに過ぎず、後継社長は「前経営者一族に気をつかい、手腕を発揮できなかったり、経営に対するモチベーションが上がらなかったり」する場合がある。
② 社外の人を選抜して会社を承継してもらう場合
(ⅰ) 外部から来た経営者と既存の幹部や従業員との間で、コミュニケーションがうまくとれるかどうかという問題がある。
(ⅱ) M&A(企業の合併と買収:詳細は後記のとおり)の場合の問題点
この方法も、優れた事業承継方法の一つですが、大企業のM&Aと同じように単に「物」や「金」を中心に考えた場合、今まで培ってきた企業の理念や文化を排斥することになり、会社継続ができなくなってしまうことがあります。
* a M&Aの意義
M&Aとは、企業の合併・買収のことであり、2つ以上の会社が合併して1つになったり、ある会社が他の会社を買収したりすることです。
・また、業務提携もM&Aの一つです。
b M&Aの手法
M&Aの手法には、「株式譲渡」、「新株引受」、「株式交換・株式移転」、「事業譲渡」、「会社合併」、「会社分割」等の手法があります。
ウ 事業の「縮小・撤退」・「廃業」
会社を承継するということは、会社が今後とも存続し得る経営状態にあることが前提となります。
・しかし、先行きが不透明な場合は、下記のような方法をとることも大事なことです。
① 事業の縮小・撤退
採算が合わない事業を縮小したり、その事業から撤退すること。
② 廃業
切羽詰まった段階まで進行しないうちに、余力を残して廃業し、会社の資産を処分したお金を、従業員の給料・退職金、買掛金等の支払に充て、すべての債権債務を清算した上で、会社を廃業すること。
(4) 事業経営の引継において重要なポイント
ア 親族内承継の場合
① 人材面 |
: | 後継者教育に力を入れる。 |
② 会社の体制面 |
: | 事業の再構築を含む体制の整備・改善に力を注ぐ。 |
③ 経営面 |
: | 経営理念・ビジョンの明確化、将来を予測した戦略の見直しをする。 |
④ 組織・人事面 |
: | 承継後の組織体制を検討する。 |
⑤ 事業面 |
: | 各事業の内容・採算性等を見直し、事業のリストラ、業務のリストラを検討する。 |
⑥ 財務面 |
: | 負の遺産を整理し、財務の健全化を図る。 |
イ 従業員・外部から選んだ人への承継の場合
① 人材面 |
: | 社内及び取引先等外部に納得してもらえる人材を選ぶ。そして、現経営者の下で後継者教育をし、かつ社内及び外部に認知してもらうようにする。 |
② 財務面 |
: | 現経営者の連帯保証を解除することが可能かどうかを検討する。 |
ウ M&A(企業の合併と買収)の場合
① 人材面
(ⅰ) 同業者によるM&Aの場合は、買収先の会社が、適任者を指名するので、経営者の能力面の心配はない。
(ⅱ) 異業種によるM&Aの場合は、事業に関する特徴等が分からないので、そのことに関する研修が必要となる。
② M&A実施後の対策
(ⅰ) 会社の風土の異なる会社を買収した場合に、従業員との融和策をとることが重要である。
(ⅱ) 事業の再構築・改善を行う。
(ⅲ) 新体制の下で、事情計画を策定する。
(5) 税金等の対策をとることによる事業承継の方法等
事業承継に当っては、財産権(株式・機械・動産・不動産等)の譲渡がなされます。
・そこで、財産権承継においては、下記のような税務対策をとることが大切です。
ア 事業承継における自社株対策
非上場会社である中小企業の企業承継において重要なことは、後継者が安定的に会社経営ができるように、後継者を中心とする特定の人間に株式を集中させて承継させるということです。
・その方法は、「贈与・相続・売買」等ですが、課税関係に配慮し、できるだけ税負担を減らす方法を検討することが肝要です。
イ 株式の評価と承継に伴う課税関係
自社株の承継は、適正な時価での承継が原則です。その場合の評価方法と課税関係は下記のとおりです。
(ア) 株式の評価と評価方法
あ 贈与・相続の場合の株式の評価
贈与又は相続による当該財産の贈与時・相続時における時価です。
(株式の時価とは)
① 上場株式
証券取引所で公開されている株価で評価します。
② 未上場株式
国税庁が公表している財産評価通達によって株式の評価を行います。
い 非上場株式(取引相場のない株式)の評価方法
① 原則的評価方式
(意義)
原則的評価方式とは、取引相場のない株式につき、相続や贈与等で株式を取得した株主が、その株式を発行した会社の「経営支配能力を持っている同族株主」の場合の評価方法のことです。
(評価方法)
評価する株式を発行した会社を、「従業員数、総資産価額、売上高」により、「大会社、中会社、小会社」に区分して、下記の方法で評価します。
(ⅰ) 大会社
原則として、類似業種方式により評価します。
* 類似業種方式の意義
類似業種の株価を基に、評価する会社の「a 一株当りの配当金額、b 利益金額、c 簿価純資産価額」の三つで比準して評価する方法です。
(ⅱ) 中会社
類似業種比準方式(大会社方式)と純資産価額方式(小会社方式)の評価方法を併用して評価します。
(ⅲ) 小会社
原則として、純資産価額方式により評価します。
* 純資産価額方式の意義
会社の総資産や負債を、原則として相続税の評価に置き替えてその評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法です。
② 特例的評価方式(配当還元方式)
(意義)
特例的評価方式とは、「取引相場のない株式につき、相続や贈与等で株式を取得した株主が、その株式を発行した会社の『経営支配能力を持っている同族株主等以外の株主』の場合の評価方法」のことです。
(評価方法)
配当還元方式は、その株式を所有することによって受ける一年間の当該金額を、一定の利率(10%)で還元して元本である株式の価額を評価する方法です。
③ 特定の評価会社の株式の評価
下記の会社等は、原則として純資産価額方式(相続税評価額によって計算した金額)により評価します。
(ⅰ) 株式保有特定会社
(ⅱ) 土地保有特定会社
(ⅲ) 開業後3年未満の会社
(ⅳ) 開業前の会社又は休業中の会社
(ⅴ) 比準要素数1の会社
(ⅵ) 長期間清算中の会社
* 分配を行わず長期にわたり清算中のままになっている会社のことです。
ウ 事業承継における贈与税対策
(ア) 贈与税と贈与税対策
贈与税とは、個人が個人から無償で財産を貰ったときに課される税金のことです。
・個人が、一年間に受ける贈与額が110万円までは、非課税です。
(イ) 事業承継における贈与税対策
相続対策の基本は、長期の計画的な生前贈与をすることです。
・生前贈与を実行するに際しては、相続時課税清算課税と贈与税を合わせた税務対策を講ずる必要があります。
(ウ) 生前贈与制度を利用した贈与の例
生前贈与の非課税枠を活用することにより、毎年金110万円相当の財産を10年間に亘って贈与しますと、その合計額金1,100万円の財産を、贈与税を掛けることなく移転することができます。一度に贈与した場合に比し、約金300万円弱の節税をすることができます。
(エ) 相続時精算課税制度を利用した贈与
相続時精算課税制度とは、相続税の後払いとしての性格を持ち、この制度の適用を受けると、贈与財産は贈与した時の価額が相続財産に含まれ相続税が算定されます。
* 相続時精算課税制度を利用しますと、贈与額が金2,500万円までは、贈与税が課税されません。
(オ) 暦年課税・相続時精算課税
あ 暦年課税
① 1年間に贈与により取得した財産の価額から控除する金額
毎年金110万円
* 課税価額が金110万円を超える場合は、申告が必要です。
② 税率
「贈与を受けた財産価額」×超過累進税率(下記の贈与税率表)
* 相続税との関係
a 贈与者が亡くなったときの相続税の計算
原則として、相続財産の価額に贈与財産の価額を加算する必要はありません。
b ただし、相続開始前3年以内に贈与を受けた財産の価額(贈与時の時価)は、加算しなければなりません。
い 相続時精算課税
(あ) 概要
① 1年間に贈与により取得した財産の価額から控除する金額
特別控除額 金2,500万円
* 前年までに相続時精算課税方式を利用して贈与を受けた場合には、金2,500万円から既に贈与を受けた額を控除した残額が特別控除額となります。
② 税率
「特別控除額を超えた部分」×20%(一律)
(い) 要件
① 平成26年3月31日までに贈与を受けた場合(改正前)
贈与をした年の1月1日現在において、「65歳以上の親から20以上の者(贈与者の推定相続人)」へ贈与がなされたこと。
② 平成27年1月1日以降に贈与を受けた場合(改正後)
贈与をした年の1月1日現在において、「60歳以上の親から20以上の者(贈与者の推定相続人)」へ贈与がなされたこと。
う 相続税との関係
① 贈与者が亡くなったときの相続税の計算
相続財産の価額に相続時精算課税を適用した贈与財産の価額(贈与時の価額)を加算して相続税額を計算します。
② 贈与時に既に支払った贈与税相当額
贈与時に既に支払った贈与税相当額は、相続税額から控除されます。
(カ) 贈与税の税率
改正前(平成26年12月31日まで)と改正後(平成27年1月1日以降)の贈与税の税率
基礎控除後の課税価格 |
【改正前】 |
⇒ |
【改正後】 |
特例税率 |
|
~ 200万円以下 |
10% |
10% |
10% |
||
200万円超~ 300万円以下 |
15% |
15% |
15% |
||
300万円超~ 400万円以下 |
20% |
20% |
|||
400万円超~ 600万円以下 |
30% |
30% |
20% |
||
600万円超~1,000万円以下 |
40% |
40% |
30% |
||
1,000万円超~1,500万円以下 |
50% |
45% |
40% |
||
1,500万円超~3,000万円以下 |
50% |
45% |
|||
3,000万円超~4,500万円以下 |
55% |
50% |
|||
4,500万円超 |
55% |
(キ) 贈与税の諸事例
① 会社などの法人から無償で財産を貰った場合
(結論)
所得税が課されます(贈与税は課されません)。
② 「保険料を負担していない者が生命保険を受け取った場合」、「債務免除により利益を受けた場合」
(結論)
贈与税が課されます。
③ 死亡した人が、自分を被保険者として保険料を負担していた場合
(結論)
相続税が課されます。
エ 事業承継における相続税制対策
(ア) 相続財産・相続税額の把握
相続税対策のため、現在所有している財産を把握し、将来の相続税額を試算することが大事です。
(イ) 相続税が課税される部分
相続税は、下記の「①~③」の合計額から④の金額を控除した価額(正味の遺産額)が⑤の基礎控除額を超える場合に、その超える部分(課税遺産総額)について課税されます。
・つまり、「『①+②+③』-④」>⑤の場合には課税されます。
① 相続又は遺贈によって取得した財産
② 被相続人から、相続時精算課税方式の適用を受けて贈与により取得した財産の価額
③ 相続時開始前3年以内に、被相続人から取得した贈与財産(暦年課税適用財産)の価額
④ 債務・葬式費用などの金額、その他の非課税財産の額
⑤ 基礎控除額
(ⅰ) 被相続人が、平成26年12月31日以前に死亡した場合の遺産(相続又は遺贈により取得する財産)に係る相続税の基礎控除額
記
金5,000万円+「相続人1名につき金1,000万円×相続人数」
(ⅱ) 被相続人が、平成27年1月1日以降に死亡した場合の遺産(相続又は遺贈により取得する財産)に係る相続税の基礎控除額
記
金3,000万円+「相続人1名につき金600万円×相続人数」
* a 相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとして、相続人の人数に数えます。
b 相続人に養子がいる場合の法定相続人の数に含まれる養子の数は、下記のとおりとなります。
(a) 実子がいる場合 =1人
(b) 実子がいない場合 =2人
* ただし、特別縁組による養子(縁組の時に6歳未満の者)は、実子として取り扱います。
(ⅲ) 配偶者控除
a 配偶者が相続により取得した財産が、「法定相続分以内」であれば相続税は掛かりません。
b 配偶者が相続により取得した財産が、法定相続分を超える場合でも、「金1億6,000万円」までは相続税が掛かりません。
(ウ) 相続税の申告・遺産の算定
あ 相続税の申告
課税遺産総額がある場合(相続税を納付する必要がある場合)には、相続人は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に相続税の申 告をしなければなりません。
い 遺産の算定方法
遺産の計算方法は、「不動産、株式、預金、生命保険金」等の資産の種類ごとに定められており、これらの計算方法については「財産評価基本通達」に記載されています。
う 相続税額の計算方法
相続税額の計算方法は、下記のとおりです。
記
課税遺産総額×相続税の税率=その相続財産全体に対する税額
* 相続税の税率
改正前(平成26年12月31日まで)と改正後(平成27年1月1日以降)の相続税の税率
各法定相続人の取得金額 |
【改正前】 |
⇒ |
【改正後】 |
|||
|
~ |
1,000万円以下 |
10% |
10% |
||
1,000万円超 |
~ |
3,000万円以下 |
15% |
15% |
||
3,000万円超 |
~ |
5,000万円以下 |
20% |
20% |
||
5,000万円超 |
~ |
1億円以下 |
30% |
30% |
||
1億円超 |
~ |
2億円以下 |
40% |
40% |
||
2億円超 |
~ |
3億円以下 |
45% |
|||
3億円超 |
~ |
6億円以下 |
50% |
50% |
||
6億円超 |
~ |
|
55% |
* 各法定相続人の取得金額の意味
課税遺産総額(課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を控除した金額)を法定相続人の数に算入された相続人が法定相続分に応じて取得したものとした場合の取得金額のことです。
(エ) 具体策の検討
① 資産運用計画を立てる。
所有している不動産資産を有効活用するため、下記のような方法をとる。
(ⅰ) 被相続人が死亡した場合に、相続人が相続税を支払わなくてもよいように、不動産管理会社を設立し、そこに不動産を現物出資する。
(ⅱ) 資金の借入れのため、不動産を担保に供する。
(ⅲ) 不動産を売却して、現金に換価して、何時でも利用できるようにしておく。
(ⅳ) 資産構成の見直しとして、株式や生命保険に投資する。
② 保険の利用を検討する。
現金を年金保険に換えておいた場合において、保険金を年金で受け取ることにより、相続税法上の財産評価額が下がる。
③ 税務規定の活用を検討する。
「生前贈与」、「相続税の物納・延納」等につき検討し、最良のプランを立てる。
④ 将来、相続争いがないような対策を立てる。
遺言書を作成するなどして、被相続人が死亡したときに、相続人間に争いがないようにしておく。
(オ) 「相続分・相続税」支払のための資金繰りについての計画
① 相続分の支払いのため、相続開始時までに「現預金」をどの位確保できるかの計画を立てる。
② 相続税を支払うための借入れが必要な場合は、その必要額と返済方法についての計画を立てる。
(カ) 計画実行のための方法(例)
① 相続分や相続税の支払のため、資産を売却し現金化しておく。
② 相続分や相続税の支払のため、融資を受ける。
③ 不動産管理のため新会社を設立し、不動産を現物出資し、不動産を永続的に所有できるようにする。
オ 事業承継税制の活用(平成30年3月31日までの税制)
非上場会社は、下記の特例を利用することにより「相続税」及び「贈与税」の納税猶予及び免除の特例を受けられます。
(ア) 平成30年3月31日までの事業承継税制
① 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例
一定の要件を備えた会社については、後継者である相続人等が、相続・遺贈により、経済産業大臣の認定を受ける非上場株式会社の株式等を被相続人(先代経営者)から取得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき相続税の内、その株式等(一定の部分に限る)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予され、後継者の死亡等により猶予されている相続税の納付が免除されます。
* 非上場株式等の意義
非上場株式等とは、中小企業者である非上場会社の株式又は出資(医療法人の出資は含まれない)のことです。
② 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例
後継者である受贈者が、贈与により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を贈与者(先代経営者)から全部又は一定以上取得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき贈与税のうち、その株式等(一定の部分に限る)に対応する贈与税の全額の納税が猶予され、先代経営者の死亡等により、猶予されている贈与税の納付が免除されます。
(イ) 平成30年度創設の事業承継税制の特例措置の創設・拡充(平成30・4・1施行)
① 下記のように、平成30年度税制改正において、事業承継税制の特例措置の創設・拡充がなされました。ただし、この税制を適用するには、厳格な要件が課されていますので、詳細については、国税庁のホームページを確認してください。
② 平成30年度税制改正では、事業承継税制について、これまでの措置(以下、「一般措置」という。)に加え、10年間の措置(以下、「特例措置」という。)として、下記の事項が創設されました。
(ⅰ) 納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)が撤廃されました。
(ⅱ) 納税猶予割合が、80%から100%へ引き上げられました。
③ 税制改正のポイント
(ⅰ) 承継時の税負担をゼロに(対象株式数・猶予割合の拡大)
対象株式数の上限を撤廃し、全株式を適用可能にしました。
・納税猶予割合も100%に拡大することで、承継時の税負担をゼロにしました。
(ⅱ) 中小企業経営の実情に合わせた多様な事業承継を支援(株主対象者の拡大)
親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象になりました。
(ⅲ) 経営環境の変化による将来の不安を軽減
売却額や廃業時の評価額を基に納税額を計算し、承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免することとしました。
(ⅳ) 雇用要件の緩和
a 平成30年3月31日までの税制(緩和前)では
税制適用後、5年間で平均8割以上の雇用を維持できなければ、「贈与税・相続税」の猶予が打ち切られることになっていました。
b 平成30年4月1日以降の税制(緩和後)では
承継後、5年間で平均8割以上の雇用要件が未達成の場合でも、「贈与税・相続税」の猶予が継続可能になりました。
* ただし、経営悪化等が理由で、雇用要件を維持できない場合は認定支援機関の指導・助言を受ける必要があります。
④ 特例措置の概要(* 一般措置との比較)
A 事前の計画策定等 |
(5年以内の特例承継計画の提出) * 一般措置の場合 |
---|---|
B 適用期限 |
(10年以内の贈与・相続等) * 一般措置の場合 |
C 対象株数 |
全株式 * 一般措置の場合 |
D 納税猶予割合 |
贈与・相続とも100%となりました。 (贈与税の猶予を受ける条件) 先代経営者等である贈与者から、全部又は一定数以上の非上場株式等の贈与を受ける必要があります。 * 一般措置の場合 |
E 承継パターン |
複数の株主から、「最大3人の後継者」までの承継が可能となりました。 * 一般措置の場合 |
F 雇用確保要件 |
弾力化されました。 * 一般措置の場合 |
G 事業の承継が困難な事由が生じた場合の免除 |
あります。 * 一般措置の場合 |
H 相続時精算課税の適用 |
60歳以上の者から20歳以上の者への贈与に適用されます。 * 一般措置の場合 |
カ 一般社団法人の活用
一般社団法人を設立し、その法人に出資として相続予定財産を移転する場合は、その後相続が発生しても、相続税・贈与税の対象になりません。
* このことを活用することにより、事業承継を容易にすることもできます。
(出資分が相続税の対象とならない理由)
一般社団法人には持分という概念がないので、出資した分は相続税の対象外となるからです。
(6) M&A(企業の合併と買収)の手法による事業承継
ア M&Aの意義と手法
(ア) M&Aの意義
M&Aとは、企業の合併・買収のことであり、2つ以上の会社が合併して1つになったり、ある会社が他の会社を買収したりすることです。
* また、業務提携も「M&A」の一つです。
(イ) M&Aの手法
M&Aの手法には、「① 株式譲渡 ② 新株引受 ③ 株式交換・株式移転 ④事業譲渡・営業譲渡 ⑤ 会社合併 ⑥ 会社分割」等があります。
イ M&Aの各種手法の説明
(ア) 株式譲渡
株式譲渡とは、オーナー経営者等の株式を、経営能力のある第三者に譲渡し、その第三者に会社の経営を任せる手法のことです。
(イ) 新株引受
事業を承継する個人又は会社が、事業を承継させようとする株式会社が新たに発行する株式を引き受け、その株式会社の過半数以上の株式を持つことにより、会社運営の実権を握ることによる事業承継の方法です。
ウ 株式交換・株式移転
① 株式交換
株式会社は、その一方が他方の発行済み株式を有する会社(これを「完全親会社」と称し、他方を「完全子会社」と称します。)となるため、株式交換ができます。
・株式交換により、完全子会社となる会社の有するその会社の株式は、株式交換の日に、株式交換によって完全親会社に移転し、その完全子会社となる会社の株主は、その完全親会社となる会社が株式交換に際して発行する新株の割当てを受けることにより、その日に完全親会社の株主となります。
* 株式交換は、グループ企業内の会社を完全子会社としたり、グループ外企業の買収のために利用されています。
② 株式移転
株式移転によって、完全子会社となる会社の株主の有するその会社の株式は、株式の移転によって設立する完全親会社に移転し、その完全子会社となる会社の株主は、その完全親会社が株式移転に際し発行する株式の割当てを受けることにより、その完全親会社の株主になります。
* 株式会社は、完全親会社を設立するため、株式を移転することができます。
エ 事業譲渡・営業譲渡
① 事業譲渡
事業譲渡とは、会社が、事業を「取引行為(特定承継)」として、他社に譲渡する行為です。
・このことにより、譲渡会社の「業務上のノウハウ」や「人材」が譲受会社に移動します。
・借入金が過大若しくは債務超過の状態にあり、借入金の返済負担及び金利負担が大きい企業においては、債務を整理し事業の再生を図ることができます。
② 営業譲渡
個人商人が行う営業の譲渡のことです。
* 商法上、個人の場合は「事業」ではなく「営業」という文言を使用しています。
・内容については、事業譲渡と同じ意義を持ちます。
オ 会社合併
会社合併とは、2つ以上の会社が合併契約によって、一方の会社に合体することです。
・同業他社と合併することにより、譲受会社は、譲渡会社から「① のれん・ ② 業務上のノウハウ・ ③ 人材・ ⑤ 資産・④ 取引先」等を譲り受け、それらを活用して、より競争力のある会社となることができます。
カ 会社分割(新設分割・吸収分割)
会社分割とは、会社が有する事業を分離することにより、「経営の効率化」や「企業の再編」を図るための制度です。
(ア) 新設分割・吸収分割
① 新設分割
新設分割とは、業務を承継させる会社を、分割と同時に設立して、分割会社の業務の一部又は全部を承継させる方式の会社分割のことです。
② 吸収分割
吸収分割とは、既に存在する会社に、分割会社の業務の一部又は全部を承継させる方式の会社分割のことです。
(イ) 会社分割により、分割会社は下記のようなメリットを得られます。
① 業務を細分化して競争力を高められます。
② 財務内容を改善できます。
③ 借入金が過大若しくは債務超過の状態にあり、借入金の返済負担及び金利負担が大きい企業においては、債務を整理し事業の再生を図ることができます。
(7) 適切な選択
事業承継に当っては、その会社にとって最も適切な方法を選択し、その方法が定まった場合は、適正な手続をとることが肝要です。
(8) 当事務所の取扱業務とその業務方法
ア 当事務所の取扱業務
当事務所は、事業承継に関して下記の業務を取り扱っています。
① 事業承継に関する文案書類の作成、文案書類作成の相談
(例)
「現経営者と後継者間の経営承継に関する覚書、株式譲渡契約書」等の文案書類作成
② M&Aに関連する文案書類の作成、文案書類作成の相談
(例)
「株式譲渡契約書、合併契約書、吸収分割契約書、会社合併・分割に関する公告、事業譲渡契約書、取締役会議事録、株主総会議事録」等の文案書類作成等
③ M&Aに関連する登記申請の代理、登記申請手続事務の相談
(例)
会社合併登記・会社解散登記、会社設立登記、会社分割登記、株式交換・株式移転登記等
イ 他の士業者との連携
事業承継問題は、「契約・登記・税務・雇用・不動産の鑑定等」多岐にわたって検討しなければなりません。
・そこで、当事務所では、「税理士」・「社会保険労務士」・「不動産鑑定士」等と協同でこの問題に対処しております。