4 債権請求・労働債権請求

(当事務所の取扱業務)

① 簡易裁判所の「民事訴訟・民事調停」の代理、法律相談

② 地方裁判所等へ提出する裁判書類の作成、裁判書類作成事務の相談

③ 和解書等各種文案書類の作成代理、各種文案書類作成の相談

(目次)

(1) 一般債権の請求

(2) 労働債権の請求

(3) 時効の中断、停止

(1) 一般債権の請求

ア 会社経営や一般人としての生活の中であり得る「債権回収」に関する例

① 友人にお金を貸したが返してくれない。

② 取引会社に運営資金を貸したが返してくれない。

③ 売った商品の代金を支払ってくれない。

④ 不動産を売買したが代金を支払ってくれない。

⑤ 物品製作・土木工事・建築工事等を請け負い、完成引渡しをしたが請負代金を支払ってくれない。

⑥ 貸家・アパートの賃料を約束どおり支払ってくれない。

⑦ 通行中、道路に面した民家の屋根からの落雪により怪我をしたが、治療費や慰謝料を支払ってくれない。

⑧ 買った商品の代金より多い金員を支払ってしまったことが、後日分かり、返還請求したが、売主は返金してくれない。

イ 債権回収方法

① 内容証明書等の書面により催促する方法

② 民事訴訟を提起する方法

* 勝訴判決を得ても、相手方が支払ってくれない場合
強制執行(給料の差押え、銀行預金の差押え、動産の差押え、売掛金の差押え等)をして回収することになります。

ウ 各種債権の消滅時効(令和2年3月31日までの消滅時効)
債権の種類により、消滅時効の期間が異なります。下記にその内容を表示します。


債権の種類

起算日

時効期間

根拠条文

備考

定期金債権(家賃、年金、マンション管理費等)

弁済期間

5年

民法169条

病院の治療費

弁済期間

3年

民法170条

公立病院の診療費も含まれます。

工事業者・設計士報酬

弁済期間

3年

民法170条

司法書士・弁護士に預けた書類の返還請求権

事件終了日

3年

民法171条

公証人に預けた書類の返還請求権

職務執行日

3年

民法171条

司法書士・弁護士・公証人の報酬

事件終了日

2年

民法172条

生産者、卸売・小売商人の商品代金

弁済期間

2年

民法173条1項

注文により物を製作し、自分の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする職人の報酬債権

弁済期間

2年

民法173条2項

近代工業的な機械設備を備えた製造業者の報酬債権は含まれません。

学校、塾等が生徒に対して有する教育、衣食、寄宿費債権

弁済期間

2年

民法173条3項

大工、左官、植木屋等肉体労働を提供する者の報酬債権

弁済期間

1年

民法174条2項

演芸を業とする者の報酬債権

弁済期間

1年

民法174条2項

運送料金

弁済期間

1年

民法174条3項
商法586条

運送業者への損賠賠償請求権

荷物受取日

1年

商法586条

旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の料金、消費物の代金又は立替金

弁済期間

1年

民法174条4項

貸ボート、貸衣装、レンタルビデオの延滞金のような短期の賃料(民法の条文は「動産の損料」と記載されています。)

弁済期間

1年

民法174条5項

使用貸借、賃貸借の借主が契約に反した使用をしたことにより発生させた損害賠償請求権

貸主への返還日

1年

民法600条

使用貸借、賃貸借の借主の費用償還請求権

貸主への返還日

1年

民法600条

不法行為に基づく損害賠償請求権

損害及び加害者を知った日

3年

民法724条

不法行為日

20年

民法724条

裏書人の再遡及権

手形受戻日/提訴日

6か月

手形法70条3項

為替手形引受人に対する債権

満期日

3年

手形法70条1項

裏書人への遡及権、振出人への手形金

債権満期日 /満期後拒絶証書の日

1年

手形法70条2項

保険金請求権、保険料返還請求権、保険料積立金払戻請求権

被保険者の死亡,症状固定等支払事由の発生日

3年

保険法95条1項

保険料請求権

保険料の支払期日

1年

保険法95条2項

労働基準法上の賃金、労災補償金

就業規則等に定められた支払期日

2年

労働基準法115条

退職金

就業規則等に定められた支払期日

5年

労働基準法115条

場屋営業者の寄託物保管責任

寄託物返却日又は客の退去日

1年

商法598条


担保責任の存続期間

担保責任の種類

起算日

存続期間

根拠条文

「権利の一部が他人に属すること」、「制限物権の設定有ること」、「数量指示売買での数量不足又は一部滅失等による瑕疵」、「目的物の隠れたる瑕疵」による担保責任

買主がその事実を知った時

1年

民法564条、565条、566条、570条

「建物等土地工作物の工作物及び地盤の瑕疵」についての請負人の担保責任(原則)

引渡日

5年

民法638条1項

同担保責任~「工作物が石造・土造・れんが造・コンクリート造・金属造」又はこれに類する構造の場合

引渡日

10年

民法638条1項

同担保責任~工作物が前記の瑕疵によって滅失し、又は損傷した場合

引渡日

1年

民法638条2項

(注)

① 商人間の売買において、買主は、目的物受領後遅滞なく検査を行い、目的物の瑕疵、数量不足を発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、これを理由として、「契約解除」、「代金減額」、又は「損害賠償請求」ができません(商法526条2項)。

② 売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合においても、買主が6か月以内にその瑕疵を発見しなければなりません(商法526条2項)。

*(ⅰ) 確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その消滅時効の期間は10年となります(民法174条の2)。

(ⅱ) 裁判上の和解、調停、その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した判決の権利についても、同様に10年で消滅時効となります(民法174条の2)。

エ 令和2年4月1日以降(改正後)の消滅時効

(ア) 改正後の消滅時効期間(原則)
職業別の短期消滅時効期間の特例を廃止するとともに、消滅時効期間を原則として「5年」としました。

* 民法改正前の消滅時効期間
今回の民法改正前は、消滅時効により債権が消滅するまでの期間(消滅時効期間)は、原則10年であるとしつつ、例外的に、職業別に短期の消滅時効期間(弁護士報酬は2年、医師の診療報酬は3年)を設けていました。

(イ) 改正後の消滅時効期間(例外)
債権者自身が、自分の権利を行使することができることを知らないような債権については、権利を行使することができる時から「10年」で時効消滅します。


(2) 労働債権の請求

ア 賃金等の支払義務
労働基準法第24条第1項は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と規定しています。

* 賃金とは(労働基準法11条)
「賃金・給料・残業代・手当・賞与・その他名称のいかんを問わず労働の対償として使用者が労働者に支払う全てのもの」のことです。

・賃金には、「月給・週給・日給等の定期的に支払われる賃金」はもとより、「時間外・休日労働に対する割増賃金・年次休暇期間中の賃金等」が含まれます。

イ 未払賃金の回収方法
未払賃金がある場合は、下記のような方法で回収することができます。

① 使用者と口頭で交渉する方法

② 内容証明書等の書面で請求する方法

③ 労働債権取立訴訟を提起する方法

ウ 賃金債権等の消滅時効
労働基準法に規定されている賃金等は、請求できる時から下記の期間を経過することにより、時効によって消滅します(労働基準法115条)。

① 賃金(退職金を除く)の請求権
2年間

② 退職手当の請求権
5年間

* 使用者に作成義務がある賃金台帳の保管期間は、3年間です(労働基準法115条)。

③ 労働基準法115条の適用を受けない債権の場合

(例)

(ⅰ) 安全配慮義務に基づく損害賠償請求権

(ⅱ) セクハラによる被害に対する損害賠償請求権

(ⅲ) その他、上記に準ずる損害賠償請求権

(消滅時効期間)

(ⅰ) 不法行為による構成で請求する場合
3年間

* この消滅時効の起算日
被害者又は法定代理人が損害及び加害者を知った時。

(ⅱ) 債務不履行による構成で請求する場合
10年間


(3) 時効の中断、停止

ア 時効の中断

(ア) 「時効中断」の意義
時効の中断とは、時効期間が一旦進行を始めた後、進行を中断して、それまでに進行した期間を無意味にすることをいいます。

(イ) 時効の中断事由(民法147条)
時効は、次に掲げる事由によって中断します(民法147条)。

① 請求

② 差押え、仮差押え又は仮処分

③ 承認

* 民法147条の意義
本規定は、一応限定列挙とみるべきです。

(理由)

本条の列挙は、列挙事項が法定中断事由であるからです。

* その他
それぞれの内容として、いかなる事由を含ませるべきかという点では、民法149条以下の事由に準ずるものをかなり広く中断事由として認めてよいと解されています。

(ⅰ) 「請求」・「差押え、仮差押え又は仮処分」
「請求」と、「差押え、仮差押え又は仮処分」は、時効が完成すれば権利を失う権利者の側からの権利行使行為です。

* 請求
請求は、時効によって利益を取得する者に対して裁判上又は裁判外で権利内容を主張する行為ですが、いずれも権利の存在が公に確認されたといえるような手続をとることが必要です。

(ⅱ) 承認
「承認」は、時効が完成すれば義務を免れることになる「義務者」の側からの権利者に対する義務承認行為です。

イ 時効の停止

(ア) 時効停止の意義
時効の停止とは、天災事変など、時効完成の間際になって権利者が中断行為をすることが困難な事情がある場合に、時効期間の延長を認めて、一定期間、時効の完成を猶予することです。

(イ) 時効の停止事由・停止期間
民法に定められています(民法158条~161条)。

(ウ) 時効停止の効力
時効停止事由の終了後6か月(民法158条~160条の場合)又は2週間(天災等による時効停止:民法161条)を経過すれば時効が完成します。