3 特別清算

(当事務所の取扱業務)

① 簡易裁判所(民事訴訟・民事調停)の代理、法律相談

② 地方裁判所等へ提出する裁判書類の作成、裁判書類作成事務の相談

③ 和解書等各種文案書類の作成代理、各種文案書類作成の相談

④ 登記申請の代理、登記申請手続事務の相談

⑤ 登記に関する審査請求手続(不服申立手続)についての代理

(目次)

(1) 特別清算手続の意義等

(2) 特別清算手続の概要

① 特別清算開始申立の前提要件

② 株式会社解散までの準備と解散

③ 特別清算開始の申立

④ 特別清算開始後の手続

⑤ 債権者集会

⑥ 協定の手続

⑦ 特別清算手続の終了

(3) 特別清算手続の標準スケジュール例

(1) 特別清算手続の意義 等

ア 特別清算手続の意義
特別清算手続は、通常の清算手続を行っている株式会社について、「① 清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある場合」又は「② 債務超過の疑いがある場合」に、利害関係人の申立により開始される特別な清算手続です。

イ 清算手続の方法
清算手続では、債権者に対する平等弁済を確保するために、債権申出催告期間内の弁済が禁止されているものの、その後における債権者の個別権利行使は許容されていますが、清算手続の円滑な遂行のために、これを制限する必要がある場合もあります。

・ また、債権者が、清算手続への協力の前提として、裁判所の監督下における透明な清算手続としての特別清算手続の遂行を求める場合もある。

ウ 清算手続が目的とする清算の結了
本来は、清算会社が負担する債務とその引当となるべき資産の双方が完全になくなることを意味すると解されるので、無担保債権の全額を弁済するについて資産が不足する場合には、債務の減免を得ることが必要であり、任意の減免が得られない場合には、そのために特別清算手続を利用することが必要となります。


(2) 特別清算手続の概要

ア 特別清算開始申立の前提要件
特別清算手続を利用できる会社は、下記のとおりです。

① 株式会社であること

② 清算中の会社であること

* 清算会社の例
設立無効及び株式移転の判決が確定した場合も清算の原因となるが、ほとんどは解散した場合である。

③ 清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること、又は債務超過の疑いがあること

(ⅰ) 清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること

(ⅱ) 債務超過の疑いがあること

(ⅲ) 会社法514条所定の事由(下記のとおり)がないこと

a 特別清算手続の費用の予納がないとき

b 特別清算によっても清算を結了する見込みがないことが明らかであるとき

c 特別清算によることが、債権者の一般の利益に反することが明らかであるとき

d 不当な目的で特別清算開始の申立がなされたこと、その他申立が誠実になされたものでないとき

イ 株式会社解散までの「準備」と「解散」

(ア) 特別清算手続の利用例
特別清算手続は、株式会社の通常清算手続の特則として規定されています。

(最近の実際の運用例)

事業再生の一環として、事業譲渡又は会社分割後の譲渡会社又は分割会社の清算のために利用される例が多いです。

・事業上の取引は継続しながら、主に金融機関の債権者の返済を一定期間停止し、事業上の資産及び負債だけを譲受会社又は新設会社ないし承継会社に引き継がせ、主に金融機関の債権者のみを譲渡会社又は分割会社に残して特別清算手続により処理する方法です。

(イ) 解散までになすべきこと

① 株主総会における解散決議(特別決議)が必要である。
解散決議は特別決議となるので、議決権を行使することができる株主の半数以上が出席し、かつ当該株主の議決権の3分の2以上の多数の同意が必要です。

② 債権の確定手続が存在しないため争いのある債権等は、できるだけ事前に解決しておかなければならない。

③ 資産の処分がスムーズに行われるように事前に準備をしておかなければならない。 

* 解散は登記事項(登記は第三者対抗要件)
解散した場合、解散登記をするまでは、解散の事実を善意の第三者に対抗することができません。

・つまり、解散したことを、善意の第三者(解散したことを知らない第三者)に主張できません。

(ウ) 清算株式会社(会社が解散した場合)の機関等

あ 清算株式会社の機関は、下記のとおりです。

① 株主総会

② 清算人

③ 清算人会(清算人が複数いるとき)

④ 監査役

* 清算株式会社には、1人又は2人以上の清算人を置かなければなりません。

い 清算人の就任
定款で定める者若しくは株主総会の決議によって選任された者が清算人になるのが一般的ですが、これらの者がいない場合には取締役が清算人なります。

う 清算人の職務等
清算人は、清算株式会社との委任関係に基づき、清算株式会社の下記の業務を執行します。

① 現務の結了

② 債権の取立及び債務の弁済

③ 残余財産の分配

え 清算人の責任等

① 清算株式会社についての破産手続の開始
清算株式会社の財産をもって、会社の債務を完済できないことが判明したときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立をしなければなりません。

② 清算株式会社に対する損害賠償責任
清算人がその任務を怠ったときは、清算株式会社に対し、それによって生じた損害を賠償する責任を負います。

③ 第三者に対する損害賠償責任
清算人が、その職務を行うについて、悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います。

お 清算人の就任・解任は登記事項(登記は第三者対抗要件)
清算人の就任・解任は、「清算人の就任・解任登記」をした後でなければ、清算人の就任・解任を善意の第三者に対抗できません。

・つまり、清算人の就任・解任を、善意の第三者(清算人の就任・解任を知らない第三者)に主張できません。

ウ 特別清算開始の申立
特別清算開始の申立は、「① 清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある」か、「② 債務超過の疑いがあるとき」に、債権者、清算人、監査役又は株主が申立をすることができます。

* (ア) 債務超過の疑いがある場合の申立
清算人に申立義務が課されています。

(イ) 特別清算事件の裁判管轄
清算会社の本店を管轄する地方裁判所(原則)。

エ 特別清算開始後の手続
特別清算開始決定があると、これと抵触する破産手続開始申立等が禁止され、既になされている強制執行等の手続を中止した上、開始決定が確定すると特別清算手続との関係で失効するほか、一定の要件を満たす場合には、裁判所は、担保権実行の中止を命ずることもできます。

(ア) 特別清算手続に服する債権
特別清算開始により、「① 個別執行が禁止され、弁済が制限されます」が、「② 一定の期間、時効が完成せず」、「③ 相殺は制限されます」。

(イ) 特別清算手続と裁判所の関係
特別清算手続は、裁判所の監督に服し、裁判所は必要な調査をすることができます。

(ウ) 清算人の職務
清算人が特別清算手続を遂行し、財産の換価にも当たるが、清算人は、債権者、清算株式会社及び株主に対して公平・誠実義務を負担し、清算株式会社が一定の行為をするには、裁判所の許可又は裁判所が選任した監督委員の同意を得なければなりません。

オ 債権者集会
債権者集会は、特別清算の実行上必要がある場合には、清算株式会社が随時招集できます。

① 債権者集会の招集に当っての「各協定債権の議決権行使の許否及びその額の決定」
清算株式会社が定めます。

② 債権者集会の指揮
債権者集会は、裁判所が指揮し、議決権に争いがある場合に、裁判所が定めます。

③ 財産目録の作成
清算人には、財産目録の作成義務があり、作成が完了したときは、別途債権者に対する周知方法をとった場合を除き、清算株式会社は遅滞なく債権者集会を招集し、清算会社の業務及び財産の状況の調査の結果並びに財産目録の要旨を報告するとともに、清算の実行の方針及び見込みに関して意見を述べなければなりません。

カ 協定の手続
協定とは、債権者集会において、清算株式会社と債権者の協議により清算株式会社の債権者に対する債務の免除の割合を決定することです。

・協定債権の減免の手続は、清算株式会社が債権者集会に対し協定の申出をすることによって行われ、破産手続における別除権者や優先破産債権者に相当する債権者の参加を求めることもできます。

* 個別和解と協定
特別清算では、全ての負債を弁済して負債をゼロしなければなりません。

・ 債務超過の場合、債務の全部又は一部について免除を受け、免除後の債務を弁済することになります。

・ 免除を受ける方法として、「① 個別和解」と「② 協定」の方法があります。

・ 「① 個別和解」による場合は、債権者集会は不要ですが、各債権者の同意を得る」ことが必要です。

・ 「② 協定」による場合は、債権者集会を行う必要がありますが、多数決による画一的な処理が可能です。

(ア) 協定の申出
清算株式会社は、債権者集会に対し、協定の申出でをすることができます。

(イ) 協定の可決
債権者集会における協定の可決には、「① 出席した議決権者の過半数の同意」、かつ「② 議決権者の議決権の総額の3分の2以上の議決権を有する者の同意」が必要です。

 なお、債権者集会における通常の決議事項の可決は、「① 出席した議決権の過半数の同意」、かつ「② 出席した議決権者の議決権の総額2分の1を超える議決権を有する者の同意」にて可決されます。

(ウ) 協定の認可

あ 協定の認可の申立
債権者集会において協定が可決されたときは、清算株式会社は、遅滞なく、裁判所に対し、協定の認可の申立をしなければなりません。

・ なお、利害関係人は、協定を認可すべきかどうかについて、意見を述べることができます。

い 協定の認可の決定
協定認可の申立があった場合には、裁判所は、不認可決定をする場合を除き、協定の認可を決定します。

(協定不認可決定の事由)

裁判所は、下記4つの不認可事由に該当する場合は、協定の不認可の決定をします。

① 特別清算手続又は協定の法律違反があったとき

② 協定の遂行可能性がないとき

③ 協定が不正の方法によって成立したとき

④ 協定が債権者の一般の利益に反するとき

キ 特別清算手続の終了

(ア) 「① 特別清算が結了する」か、「② 特別清算の必要がなくなったとき」は、清算人、債権者、株主又は調査委員の申立てにより、裁判所が特別清算終結の決定をします。

(イ) 特別清算手続が挫折した場合
破産手続に移行し、特別清算手続のために生じた債権や、手続に関する費用の請求権は、財団債権として取り扱われます。

* あ 財団債権の意義
破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けるこができる債権(① 財団債権の破産債権に対する優位性、② 破産配当によらない破産管財人の弁済義務)。

い 財団債権の例

(あ) 一般の財団債権

① 破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権

② 破産手続開始前の原因に基づく租税等の請求権等

(い) 特別の財団債権

① 使用人の給料等

② 破産管財人が双方未履行の双務契約を解除した場合の「相手方の反対給付価額償還請求権」等


(3) 特別清算手続の標準スケジュール例
多様な運用が行われている特別清算手続の標準的なスケジュールを示すことは難しいことです。

・ 下記は、特別清算手続のスケジュールの一例です。

平成26年1月10日

解散及び清算人選任のための株主総会

平成26年1月20日

解散登記・清算人就任登記完了

平成26年1月25日

特別清算手続開始の申立

平成26年1月30日

債権者に対する異議申述のための官報公告
(2か月以上の期間必要、会社法499条)

平成26年2月10日

特別清算手続開始決定(会社法510条)

平成26年3月10日

財産の現況報告のための債権者集会
(会社法562条)

平成26年7月10日

協定案決議のための債権者集会
(会社法567条)

平成26年7月25日

協定認可決定(会社法569条)

平成26年8月10日

協定認可決定官報公告(会社法901条)

平成26年8月30日

協定認可決定の確定(会社法570条)

平成26年9月25日

協定に基づく配当実施

平成26年10月15日

特別清算手続終結決定