犬は喜び?

年明けから暖かい毎日が続いておりましたが、先週の秋田市はまさに冬。数年に一度の寒波が到来、東京でも大雪となりました。

東京の大雪のニュースを聞いて思い出すのは、父親が大学時代に通い詰めた喫茶店のマスターのことです。今から20年前の冬、父親と東京に行ったとき、一緒にその喫茶店に行きました。父親とマスターは、毎年年賀状をやり取りするなど交流があったようですが、息子を連れてきたということで大変喜んでくれて、昔話をたくさん聞かせてくれました。

神田にあったそのお店は、5人も入ればいっぱいになるような小さなお店。マスターはちゃきちゃきの江戸っ子。もともとはコーヒー豆の卸をやっていたそうですが、当時、自分が卸した豆で上手にコーヒーを淹れてくれるお店がなかったため、それならば自分で美味しく淹れたコーヒーを飲んでもらえる喫茶店をやろうと思って始めたお店だったそうです。

その年の東京も珍しく大雪でした。私の勘違いでなければ、成人の日(1月15日)が大雪で、東京各地の成人式が大混乱となったとのニュースを見た記憶があります。
自然と話題も雪かきのことに。「秋田の人に比べたらねえ」と申し訳なさそうに言いながら、久しぶりに雪かきをしたというマスターが、「普段雪かきをする習慣がないものだから、このシャベルしかなくて・・・」と、古いシャベルを納戸から持ってきたのですが、そのシャベルはなんと、あの二・二六時件の大雪の雪かきに使ったものだというではありませんか!
さらによく見ると、そのシャベルにはコンクリート片が付着していたのですが、それは戦後の復興時にコンクリートを混ぜるのに使った名残りとのこと。涙ぐみながら戦時下の体験、生きながらえたことの幸せを語っていたマスターの顔が忘れられません。

60年の時を経て、再び雪かきに動員されたシャベル。
歴史の証言者としての佇まいには静かな重みがありました。

今朝のお供、
ブルーノ・マーズ(アメリカのミュージシャン)の『24K Magic』。
                                   (佐々木 大輔)