ジャックダニエルの思い出

忘年会のシーズンですね。
同じテーブルの方々とお酒を注ぎあったりしているうち、「お酒は何がお好きですか」と尋ねられることがありますが、私はいつも「ビール、日本酒、ウイスキー」と答えることにしています。実際この3つが好きなのですが、まず初めはビールで喉を潤したいですし、秋田県民として日本酒は外せません。特にこの季節は、冷でも燗でも日本酒が美味しいですね。
そしてウイスキー。最近はハイボールが流行りですが、私はできればウイスキーをそのまま味わいたい。本当は氷も入れたくありません。香りが「開く」のでトワイスアップ(ウイスキーと水を1:1)が良いというのも分かりますが、それでもやはりストレートで味わいたい。
飲み方のお話は際限がなくなるのでこのくらいにして、それでは「ウイスキーならどの銘柄がお好きですか」と問われたら、迷うことなく―本当は迷いに迷うので初めから答えを決めていて―「ジャックダニエル(ブラックOld No.7)」と答えます。理由は2つあって、1つは中学時代に大好きだったロックバンドのポスターにジャックダニエルの瓶が写っていたため、ロックファンとして「ウイスキーといえばジャックダニエル」というイメージができたこと、もう1つは大学時代に通った自動車学校の思い出があるからです。

大学の春休みを利用して、大曲(大仙市)の祖父母の家に泊まり込み、約20日間、毎日近所の自動車学校に通いました。春休みの自動車学校は、高校を卒業したばかりの人たちもたくさん通っていたので、講義も実習も予約でいっぱい。そこで、自分が予約した時間以外にもキャンセルが出たら優先的に入れてもらえるように、朝8時から夜8時まで、読書をしながら自動車学校の待合室で待機し、ひたすらキャンセルが出るのを待っていました。
近所の自動車学校といっても歩いて30分くらいはかかりましたし、3月とはいえ大曲の朝は寒いのです。毎朝マイナス10℃まで冷え込んだ記憶があります。その極寒の中、徒歩で通い、自動車学校に着くと講義、実習、キャンセル待ち、実習、キャンセル待ち、講義、キャンセル待ち・・・。
一日終わって帰るとクタクタでしたが、腕によりをかけた栄養満点の手料理を食べ、寝る前にショットグラスで1杯のウイスキーを飲んでぐっすり眠ったおかげで、体調を崩すこともなく、無事春休み中に免許を取ることができました。このとき、毎日飲んでいたウイスキーがジャックダニエルだったのです。なぜジャックダニエルだったのかというと、第1の理由のとおり「ウイスキーといえば・・・」というイメージがあったからなのですが。

ちょうど自動車学校卒業とともに空になったジャックダニエルの瓶は、今でも記念にとってあります。

ジャックダニエル独特の酸味と樽の香り、追いかけてくるメープルシロップのような甘みを口に含めば、祖父母の愛情と20年(くらい)前の春休みの日々が鮮明に蘇ってくるのです。
何かを頑張らなければならない時、ジャックダニエルを飲んでぐっすり眠ることで、明日の活力が得られる。私にとってジャックダニエルは、元気をくれる親友のような存在です。
とはいえ、映画『セント・オブ・ウーマン』のアル・パチーノのように、“ジョン”と呼ぶまでにはまだ至りませんが。

今朝のお供、
ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管弦楽団他の演奏によるJ.S.バッハ作曲『クリスマス・オラトリオ』。

                                   (佐々木 大輔)