ロックTシャツ愛

ロックTシャツ。
ロックバンドのロゴやメンバー写真、アルバムジャケットなどがデザインされたTシャツです。
最近は街なかでも普段着としてロックTシャツをおしゃれに着こなす若者を見かけるようになり、ロックのすそ野も広がったものだなあと嬉しく思っていたのですが、事はそう単純でもないようです。

以前あるバラエティ番組で、ロックTシャツを着ている人にそのバンドの代表曲のイントロを聞かせて曲名を答えられるか検証するという企画を放送していましたが、検証結果はなんと9割以上の人が答えられないというもの。そればかりか、中には着ているTシャツのバンド名さえ知らない人もいたという衝撃的な結果!

確かに今では通販でも幅広く手に入りますし、バンドの音楽よりもデザインに惹かれてTシャツを購入したという人がいてもおかしくありません。

私がロックに夢中だった中学時代は、好きなバンドのTシャツを欲しいと思っても情報すらほとんどなく、雑誌の片隅に小さく載っていた取扱い業者―多くが新宿のマンションの一室で商売をしていました―に電話をかけて注文したり、雑誌の懸賞に応募したりしていたことを懐かしく思い出します。
いずれにしても選べるほどの種類はなく、各デザインにつきサイズもワンサイズ。明らかにオーバーサイズな海外サイズのLを購入せざるを得ないことも度々で、実際着てみるとやっぱりぶかぶか。
悲しいかなロック感よりもヒップホップ感の方が強かった・・・。
それでも手に入れられたことが嬉しくて、学生服の中に着て通学していました―本当は校則違反だったのかもしれませんが―。

その頃の思い出が詰まったTシャツは、さすがに現役ではありませんが、今でも大切に保管してあります。

そんなノスタルジックな思いもあり、私はロックTシャツにひとかたならぬこだわりがあります。
それは「好きなバンドのTシャツしか着ないこと」。
デザインがおしゃれだ、可愛いなどといった生ぬるい理由で、音を聴いたこともないバンドのTシャツを着ることはありません。
もっと言えば、ベストアルバム(ヒット曲だけを収録したもの)を持っている程度のバンドのTシャツも着ません。
そもそも、ロックTシャツがおしゃれだと思ったこともありません。
むしろ、「このダサいデザインのTシャツを身に着けられるほど、お前はこのバンドを愛しているのか」と挑まれている気がして、そのバンドに忠誠を誓うがごとき熱い気持ちで袖を通しているのです。

そんな訳で、昔は若気の至りもあり他人にも自分の価値観を押し付けがちで、聴いたこともないバンドのTシャツを着ている人に対して否定的でした。
最近は少し丸くなったのか、音楽を知らずに着ている人たちにも、ロックTシャツをきっかけにそのバンドの音楽を聴いてもらえたらいいな、そして本当にそのバンドのファンになってもらえたらいいなと思っています。

 

今朝のお供、
AC/DC(オーストラリアのバンド)の『Let There Be Rock』。

(佐々木 大輔)