家族信託セミナー

先日、ハウスメーカーさんが主催するセミナーの講師として、「家族信託」をテーマに1時間ほど講演してきました。
皆様とても熱心に聴講してくださり、質疑応答でも鋭い質問が多く、私自身も大変勉強になりました。

家族信託についてのセミナーということでお招きいただきましたので、もちろん家族信託のお話を中心にしたのですが、いきなり家族信託のお話をしても理解の難しい部分があるかと思いましたので、「遺言」や「成年後見制度」といった現在広く活用されている制度について説明をした上で、これらの制度と家族信託との相違点(メリット、デメリット)について説明をしました。
ちなみに、「信託」において、受託者(財産の管理を託された人のことです)が商売として財産管理を行うものを「商事信託」といい、商売として行わないものを「民事信託」というのですが、民事信託の中で家族が受託者となるものを特に「家族信託」と呼んでいます。

紙幅の関係上、家族信託の具体的な中身を当ブログで説明することはできませんが、少しだけセミナーでお話しした内容に触れると、たとえば「遺言」には、法定相続分にとらわれず財産を承継させることができるというメリットがある反面、数世代にわたって承継先を決めることができないというデメリットがあります。
また、「成年後見制度」には、判断能力を失った人の財産を第三者が管理し得るので、資産の保全が可能であるというメリットがある反面、積極的な資産運用ができず、柔軟性を欠くというデメリットがあります。
このように、各制度ではどうしても手の行き届かない領域ができてしまいますが、この領域に含まれる問題を柔軟に解決することができる可能性をもった制度が信託制度というわけです。

「信託」と聞くと、何となく資産がたくさんある人が利用する制度というイメージを持たれるかと思いますが、財産の管理や処分は必ずしも資産の多い方だけが必要としているわけではありません。「自分が亡くなった後、誰が財産を引き継ぐのか」、「認知症になってしまい施設に入らなければならなくなった場合、自宅を処分するにはどうすればよいのか」など、考えなければならないことはたくさんあります。
実務においても、先に挙げた「遺言」や「成年後見制度」では対応しきれない問題に出会うことはたくさんありますし、より柔軟な解決を図るために、今後、信託制度が活用される場面は増えていくことと思われます。

ただし、信託制度は、まだまだ発展途上の制度であり、未成熟な部分もたくさんあります。決して万全な制度ではありません。
多くの方々に安心して信託制度を利用してもらうためには、法律専門家はもちろん、税理士の先生や金融機関などが一体となって信託制度を成熟させていく必要があることも付け加えさせていただきます。

今朝のお供、
JUDY AND MARY(日本のバンド)の曲「BLUE TEARS」。

                                   (佐々木 大輔)