アーカイブ:2019年7月

(真)夏の夜の夢

秋田市も梅雨が明け、いよいよ暑い夏がやってきます。

暑いのが苦手な私は、毎年、ひと夏をどう乗り切ろうかと梅干を食べながら思案するのですが、一服の清涼剤となるのがメンデルスゾーン作曲の劇付随音楽『真夏の夜の夢』(op.61)です。
あまりにもひねりのない選曲に自分でもあきれてしまうのですが、メンデルスゾーンらしい明るく爽やかな旋律にあふれた『真夏の夜の夢』を聴くと、蒸し暑い夜にも涼風を感じることができます。

ご存じのとおり『真夏の夜の夢』は、シェイクスピアの同名戯曲をもとに作曲された音楽です。細かいことをいうと、メンデルスゾーンは同名の『序曲』(op.21)を17歳の時に作曲しており、後年、『真夏の夜の夢』の上演に付随する音楽の依頼を受けて作曲したものが、有名な「結婚行進曲」を含む劇付随音楽版(op.61)です。
劇付随音楽として全曲演奏される際は、冒頭に『序曲』(op.21)が演奏されることがほとんどですので、通常は序曲(op.21)と劇付随音楽(op.61)とをあわせてひとつの『真夏の夜の夢』として聴かれています。

ところで、近年、『真夏の夜の夢』というタイトルは、『夏の夜の夢』と称されるようになりました。シェイクスピアの原題は『Midsummer ~』ですから「真夏」でいいのではとも思うのですが、劇の舞台が五月祭の前夜4月30日のことであるので、さすがに「真夏」の訳は適さないのではないかとの議論が起こり、舞台背景を考慮して『夏の夜の夢』と訳されるようになりました。一方、坪内逍遥以来使用されてきた『真夏の夜の夢』のタイトルについて、「(舞台背景は別として)真夏は恋の狂熱を示唆する名訳」との評価もあります。
専門外の私としては、『真夏の夜の夢』の方に馴染みがあり、「真夏」は「恋の狂熱」のメタファーとの解釈が成り立つのであれば、とりあえず「真夏」推しでいきたいと思います(そもそも五月祭なら「真夏」どころか「夏」ですらないんじゃないの?という疑問も)。

閑話休題。
『真夏の夜の夢』を題材にした音楽はほかにもたくさんありますが、私にとってメンデルスゾーンの同曲よりも思い入れがあるのは、ヘンリー・パーセル作曲の『妖精の女王』です。私が初めてオーケストラで演奏した楽曲で、その時は『真夏の夜の夢』というタイトルでプログラムに載りました。当時はまだインターネットも普及していない時代でしたので、パーセルの『真夏の夜の夢』のCDをなかなか発見できず、苦労したことを覚えています(パーセルの同曲はメンデルスゾーンに比べてはるかに知名度が低い)。十数年前、インターネットで検索し、パーセルの同曲は『妖精の女王』と呼ばれる方が一般的であることを知り、やっとのことで同曲のCDやレコードを入手することができました。
インターネットは本当に便利ですね。

また話がそれてしまいましたが、言いたかったのは、夏が苦手な私でも夏の音楽は大好きであるということ。
ポップス音楽やロック音楽にも夏の名曲はたくさんあり、それこそ紙幅に限りがなければ、大好きな夏歌を1曲ずつ、くどいくらいにアナリーゼ(楽曲分析)してみたいと思ったりもしますが・・・。
あれ?どうやら誰も望んでいないようなので自粛いたします。

今朝のお供、
KISS(アメリカのバンド)の『KISS』。
KISS最後の来日公演決定。「DEUCE」という曲が好き。夏歌とはまったく関係ありませんが。

                                   (佐々木 大輔)